やはり俺のハンター生活は間違っている   作:眠魚

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繋ぎの話


第8話 閑話

ドンドルマ近くの草原にて―――

 

おっす、俺最近ハンターになったばっかりの普通の新人ハンター。最近ハンターの街って言われているドンドルマまでやってきてある商人からの依頼でドンドルマまで商隊を護衛しているところなんだ。

 

さっそくだけど俺の魂の叫びを聞いてくれ。

 

 

……誰か……誰か助けて! ヘルプミーーーー!

 

青々とした敵に囲まれながら俺は心の中で叫んだ。

 

そう、絶賛俺は生死に関わるピンチの真っ最中なのである。僭越ながらこれまでの経緯を説明しよう。

 

あれはのどかな春のこと……というかついさっきのことなのだが―――

 

 

当初俺は近くのドンドルマまでの護衛ということでどうせ出てくるとしてもランポスの一匹や二匹だろうと高をくくっていた。

現に襲撃してくるモンスターはランポスが一匹程度だったので特に道具を使うことも無く危なげなく積み荷を守ることが出来ていた。

また暫く行って今度はランポス二匹の襲撃があったのだが、二匹とはいえ所詮ランポス。

本当なら自分は一人なので閃光玉などを使って速攻で仕留めるべきだったのだが残念ながらこのとき調子に乗った俺はケチってそれをしなかった。

一匹目を何とか倒したのは良い。問題なのはこっからだ。

相も変わらずチンタラと最後の一匹に斬りかかる俺。しかし、ランポスは甲高い声を上げてある行動を起こしたのだ。それすなわち

 

ランポスAは仲間を呼んだ

 

   ランポスB~Jとドスランポスが現れた

 

お分かりいただけただろうか。楽な仕事が一転、初心者ハンターにとっては地獄のような光景がそこに広がったのである。

これには良く一緒にいる幼馴染二人に人生楽しそうだねと良く褒められていた俺も流石に血の気が引いた。

いやいやいや、ランポス10匹は分かるけど一際でかい君は来ちゃいけないでしょ!

 

ドスランポス。ランポスどもを束ねるリーダー格。一応過去に倒したことはあるがそれはパーティを組んでの話。今の俺は一人でしかも取り巻きは10匹だ。自慢じゃないが勝てる気がしない!

 

いつの間にか商人たちも俺を犠牲にしてどこかにとんずらし、現在俺は依然ランポス達に囲まれてハーレム状態。……さんざん無理して明るく考えていたけど泣きそうになってきた。

 

死の恐怖からもう一度今度は口に出して叫ぼうとした。

 

「誰かたs「おい、お主! 火竜を打ち破ったそなたの力を見せつけてやれ!」けて………え?」

 

がしかし、その声はいつの間にか近くに来ていた大規模の竜車から響く凛とした声にかき消されることとなる。

 

そして俺は呆然とした。その声が誰かに呼びかけたかと思うとそちらの方から自分より頭一つ分大きい男が飛んできたのだ。

 

そう飛んできたのだ。なんの比喩でもなく。そのよく鍛えられていて引き締まった体に短めの黒髪を持つその男は竜車からジャンプしたかと思うとこちらの近くまで飛んできてランポス達の中心に割って入ってきたのだ。

 

驚く暇もなくその男は武器の分類でいう所の片手剣を構え人とは思えない速度でランポス達に突っ込んでいく。

 

俺の頬を一陣の風が撫でる。

 

そっから先は俺には見えなかった。気づくとあれだけいたランポスの群れは一匹たりとも例外なく首を掻っ切られ盛大に血をぶちまけて倒れている。

その間に俺に分かったことと言えばその男はとてつもなく強いってことと俺は幸運にも助かったらしいということだけだった。

 

俺が死を覚悟した状況をこんなにもあっさりと……。

 

突如繰り広げられたその光景に呆然としているとその男が手を差し出してくる。未だに夢心地のような感覚でその手を取り、立ち上がる。助け出してくれたその青年を見ると意外にも俺よりも若い風貌をしている。

 

そして、ふと竜車群の後ろにある巨大な物体が目に付く。

 

それは訓練所で習った絵でしか見たことのない強力な飛龍の骸であった。

 

俺より若そうなのに俺の数十倍は強いのか……。

 

何故だか無性に恥ずかしくなって簡単なお礼を言った後、俺はドンドルマへと逃げ出すように駆け出して行ってしまった。

 

……もし次逢ったらちゃんとしたお礼をしないとな。

 

 

――――

 

 

 

(逃げられてしまった……)

 

 

お嬢さんの命でランポスの群れに囲まれてしまった青年の助けに入ったクレイは突然逃げ出され小さくなっていく背中を眺めながら若干しょぼくれていた。

 

よくよく思い返して見るとクレイは今までも何もしていないのに他のハンターに避けらているなあ、と感じ泣きそうになったことは多々あったもののここまであからさまに逃げられたのは初めてで大分傷ついたようである。

 

クレイは盛大にため息を吐きながら剣に付いたランポスの血を振り払い依頼主の居る竜車へと戻る。

 

中に入とる年配の執事服の男性、メイド服を着た女性と自慢気な顔でこちらを見る紅い少女がふんぞり返っていた。今回散々こちらを困らせてくれた他ならぬ第三王女パーティである。

 

クレイはそれを確認すると壊れた剣の代わりに借りていたお姫さんのレイピアを差し出す。

 

「……これ、お貸し頂いてありがとうございます」

 

「そう固くならなくても良いと言うておるのに……。まあ、良い。わらわの剣を貸し与えたのだから当然とはいえ素早いランポスの討伐、見事であった!」

 

「ええ、じいも初めてクレイ殿の腕前を見せて頂きましたが想像以上でした。感服いたしましたぞ。

 

……後は姫様が先日のしおらしさを維持してくだされば完璧なのですが」

 

「何か言ったか! じい?」

 

「いえいえ何でもございませぬぞ!」

 

火竜討伐時はなかなかしおらしい態度で傲慢さが鳴りを潜めていたお姫さんであったが今ではすっかり復調したらしく、いつもの口調に戻り労いの言葉を掛けてきてくれた。

 

ここ数日でいくらかこの少女に慣れ始めていたクレイは照れくささは残るが、ちゃんと返事をして少し微笑む。

 

目的の怪鳥はいないが竜車群の後ろにある巨大な竜の骸が存在感を放っている。

 

現在、クレイ一行はドンドルマに凱旋に向かう途中である。

 

 

―――――――

 

―――――

 

―――

 

 

 

翌日、いつもの酒場にて

 

 

「おい、知ってるか? あの男、今度は一人で火竜を仕留めたらしいぜ」

 

「ああ、最初はどこぞのお嬢様がそれを触れ回っていたから、嘘だと思っていたがどうやら本当だったらしいな」

 

「まじかよ、やっぱり上位のハンターはものが違うねぇ」

 

 

そこには早くも噂好きな誰かによって火竜を滅した男の話で持ちきりであった。

 

火竜リオレウスはその狩猟難度と素材の有用性からハンター達にとって一つの目標足り得るモンスターである。

四人で狩猟しても話題に成り得る程の知名度を持つモンスターをよりによって一人で狩猟したというのだから話題に挙がるのも当然と言えるだろう。

 

そして、それは酒場の一角で料理を食べているまだ初心者の域を出ないあるパーティも例外では無かった。

三人のうちの一人が話題の男についての話を自分の事のように自慢していた。

 

 

「―――途中まではな、数十のランポス群を千切っては投げ千切っては投げと大活躍だったんだが、流石の俺も数の暴力には勝てなくてな……。あわや殺されると思った瞬間に助けに入ってきたのがそのハンターよ!」

 

他でもない、先日ランポスの群れに囲まれて死にかかっていた青年である。ちなみに最近ここドンドルマに来たので、まだそのハンターがどのような人物なのかは聞いていないらしい。

 

そんな彼に彼と一緒にドンドルマへと来た幼馴染の二人が半ば呆れたように口を開く。

 

「ジン……君ってこの前ランポス3体倒せて喜んでいたレベルじゃなかったっけ?」

 

「うんうん、ジンって村では一番の力持ちだったけどそこまでできるとはとても……ジンの虚言癖は今に始まった話じゃない訳だし」

 

一人は眼鏡をかけていて線の細い印象を受ける、ハンターと言うより学者と言った方がしっくりくる長身の男性。

もう一人は虫も殺せないような何処か抜けた雰囲気を持つ小さめの女性であった。

 

二人ともこの青年、ジンというらしい、と長い付き合いらしく遠慮のない指摘にジンは若干言葉に詰まる。

 

「少し盛ったかな……。まあ、肝心なのはそこじゃない! あんなに若いハンターでも火竜が狩れるんだから俺たちもそろそろ上を目指そうぜ!」

 

が、元来細かいことを気にしないジンはすぐに話を切り替え、そのハンターに助けてもらってから考えていたことを口にしていた。

 

それすなわち今いるランクよりもっと上のクエストへの挑戦である。

 

現状にそこまで不満を抱いていなかったジン青年だが、あの獅子奮迅の活躍をするハンターを見て何か感じ入る所があったのか向上心に目覚めたようだ。

 

今まで足止めを喰らっていたクエストを受けようとジン青年は二人に熱弁を始める。

 

「アル、ラン。今動きださなきゃ一生このまま地味な仕事をやることになるんだぞ。それじゃあ、此処まで出張ってきた意味がない。……だろう?」

 

「そうは言ってもなぁ……そもそも僕らってジンが心配だからついてきただけであんまり上を目指す気はないんだけど」

 

「私も未だに血を見ると立ちくらみしちゃうしね、うん」

 

しかし、二人ともあまり乗り気では無いようでジンの言葉はあまり受け入れられないらしい。

………ちなみに眼鏡の青年はアル、女性の名前はランと言う。

 

「大丈夫だって! 一人でだってあの火竜を倒せるぐらい強くなれるんだから、三人集まれば何とかなるだろ!

物は試しでとりあえずやってみようぜ!」

 

ジン青年は二対一という状況でもめげない、なかなかのポジティブ思考を持っているようだ。

あまり乗り気ではない二人の意見を勢いで却下して無理やりクエストカウンターへと連れていく。

 

「すいませーん。前言っていたクエスト、早速受けさせてくださーい!」

 

「えっ! 本当に行くのか? 流石にまずいんじゃ」

 

「止めときなよ、ジン! イャンクックにすら苦戦していた私たちじゃ無理に決まってるよ!」

 

めちゃくちゃ反対されるジン青年。

 

「お前らは心配し過ぎなんだって。確かにまだ狩ったことのないモンスターだけどいつまでも立ち止まっているのは性に合わないからな。付き合ってもらうぜ!」

 

しかし、その歩みは止まらず遂には依頼書を受け取ってしまった。

 

 

 

 

 

依頼名は『洞窟に白影潜む』

 

白くて不気味なあるモンスターの討伐依頼。ある理由から依頼の危険度のわりに失敗率が高い依頼でもある。

 

 

……もちろん、彼らはそれを知らない。 

 

 

ジンとそれに流されたアル、ランの三人は結局狩猟の準備をするために各々家に帰っていった。

 

 




次回

「クレイ、(出番が)死す」

デュエル、スタンバイ!
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