転生したら狩人×狩人 作:楯樰
ネテロ会長との試合二日前。
私は裸になり、姿見の前に立って鏡に映る自分を見ていた。
何故か。
それは私の作った能力の説明が必要になる。
……私は全裸の自分を見て喜ぶような趣向は無いからね?
確かに元男として自分でも惚れ惚れとするようなプロポーションを持っている事には違い無いのだけれども。
とりあえず一つ目の能力の説明。
【理の眼】
・操作系
自分の生態情報(念も含む)を読み取る。
・制約と誓約
鏡の前に立って全身を見れる状態で無いと発動しない。
凝をしていなければならない。
1分間その場から動いてはいけない。
動けない1分間の間誰かに見られると発動しない。
前世の記憶は読み取れない。
……ご覧のようにかなり発動条件が限られてくる。
記憶や生態情報を読み取ったりするのは特質系だろうと考えたが、自分の生態情報に限っては操作系でも何とかできるんじゃないかと考えた次第だ。
そして結局のところ出来たか出来てないか。
結果で言うと出来た……ただ物凄く頭が痛い。
何コレ、死ぬ! ってレベルの痛さだ。とっさに念で脳みそ強化出来てなかったら多分死んでた。
得られた情報は体重や身長、スリーサイズ。遺伝子の配列、病気の有無、念の得意不得意、忘れていた記憶から何から何まで。
前世の記憶まで読み取らなくてほんとに良かったと思う。
30年に及ぶ記憶だ。交通事故で死んだ時の痛みの記憶まで思い出したら吐いていた。
今度発動した時は一度見てるからそこまでの情報量にならないと思うけど、この頭痛は覚悟しておこう。
もう一つの念能力は私の残りのメモリ、全てつぎ込むような能力だ。
ただ発動できれば、それこそ神の御業であり、残りのメモリ全て費やしたとしてもお釣りが帰ってくるほどの能力だ。
ただ今行った生態情報を知るという前提が必要で、おまけに制約と誓約を此処までか、と思うくらい厳しくしないと発動できなかった。
生態情報を知る事が能力の行使に必ずいるかと聞かれれば、実際の所知らなくても使える。
知っていないと後々後悔する事になる事が目に見えているから知る必要があった。
もう一つの能力。それは……
「姉ちゃん入るよー……は?」
私の姿を見て段々と赤くなるラディスト。
うん? なんでだ?
「ラディ? ……いや、ら、らラディストぉッ!」
そういや今、全裸じゃん私! 弟に痴女扱いされるーっ!
「な、なんで姉ちゃん裸で鏡の前座ってんのッ!」
「の、ノックしてから入れーッ! バカーッ!」
「うわっ、ちょ、念弾飛ばすなーっ!」
「煩い五月蝿いうるさーい!」
うぅ……ノックくらいしろぉ……。
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案の定両親とビスケに、鏡の前に真っ裸で座っていた事がラディスト経由で伝わり、家族全員から大笑いされた。
そんな中服を着た私は、肩をすぼめつつ念能力の行使に必要だった事を話すと『それなら仕方ないね(笑)』と半信半疑だが一応納得してもらえた。
――ラディめ、一生恨んでやる…。
で、そんな事があったのが二日前の夜。
今日はネテロ会長との試合だ。
私は万全の態勢で試合に挑むため廻をしつつ、体力の回復と精神統一をする。
廻は実の所、オーラの循環速度を上げる事で通常の絶よりも体力の回復が出来る。
循環速度を上げれば上げるほど防御力も上がるので戦闘中の体力回復にはもってこい。速度が早いと、例を挙げるなら擦り傷なんかは一分くらいで完治してしまう。
しかしお父さんは広めようとはしない。何故なら悪用されるのを防ぐためだ。
――臨、廻、剛。
傍から見るだけなら、どれも世間一般には防御力がなくなる絶の状態にしか見えない。
廻や臨が悪用されれば人目を忍んでの犯罪が増え、才能はあるが指定級犯罪者になっている人物達……幻影旅団の団員達が覚えればそれこそ手に負えなくなる。
だからこそお父さんは世間に広めない。
私はゼノにこそ臨を教えたが、ゼノの祖父であるマハさんにも、ついこの前生まれたらしいシルバにさえも、教えてはダメだときつく脅しをかけておいた。
……アイツも親ばかになってたっぽいから教えそうだけど。
「ふぅ……」
目を開けて瞑想である点を解くと、時計は試合二時間前の時刻を示していた。
……私が瞑想してから優に一時間近く経っている。
さてそろそろ、
「…死地へと逝きましょうかね、と」
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――やかましい。
それがステージに出たときの私の感想だ。
私のジーンズを履いた足が光の下に出た瞬間のあのギャラリーの声と言ったら。
なんだ、『俺だー結婚してくれッ!』とか○chスレッドのようなテンションの高さは! ……結婚なんてしてやるものかバカヤロウ。
「ふむ、人気じゃのう。カトリアちゃんよ」
「はぁ……喧しいだけですっての。……この試合私の負けでいいですから勘弁してくれません?」
「い・や・じゃ♪」
……こんのジジイ。
いいさいいさ、やってやろうじゃんか。
こんな試合、玉砕覚悟じゃーッ!
アナウンスによってルール確認が行われる。
ルール内容は
・観客席にまで及ぶような広域攻撃は禁止。
――以上。
単純明快すぎる……。
私は少々呆れながらも、周りのギャラリーからの試合開始を告げる5カウントの中、試合前から行ってた絶を剛に切り替え初撃に備える。
自分の体からオーラが流れ出るぎりぎりまで臨をし、臨で出来た膨大な量のオーラを廻で身体の奥底から高速でかき回すように循環させる。
会長は、堅ではなく絶をしている事に少し短い顎鬚を弄りながら私を興味深げに堅をして見ている。
ちなみにだが、もちろんの事会長は心T-シャツは着ていない。
ネテロ会長、私が子供だからって甘く見ないほうがいいと思うけど。
……なんせ今の私は全力全開なのだから。
そして私が自然体のままネテロ会長の様子見をしている中、ギャラリーからは『0』のカウントが数えられた。
『……両者共に――ファイッ!』
アナウンスが試合開始を告げる。
試合開始と同時に私はステージに足を踏み込み動く。
その踏み込みで私の立っていたステージの半分が壊れた。
……くそっ壊れたせいであまり加速できなかったっ!
私は、過ぎた事は仕方ないと高速化された頭で切捨て、そのままネテロ会長に音速に近い速さで近づく。
「――……!」
――一発。
……会長の懐に入り込み、水月に掌底を一発入れる。
そして肉と肉が決して出してはいけない音が響く。
どうだ?
相手からは反応がなく、いまいち決まったとは思えない。
……良くて内臓、悪くて骨か。
踏み込んでいる私から見れば少し高い位置にあるネテロ会長の顔を見上げる。
――この人は笑っていた。心底嬉しそうにしながら。……まるで新しいおもちゃを見つけたときの童子のように目を輝かせながら。
「此処までとは嬉しいな……それに効いたぞ。……そしてまだまだ捨てたもんじゃないこの世界に感謝するぜっ!」
「くっ…!」
嫌な予感がし、私はその場からバックステップで飛び退く。
……正解だった。
私が居た所にはあの音速を超える正拳突きが打ち込まれていた。
ネテロ会長は口から血の混じった唾を吐き捨て、正拳突きの構えを解く。
――内臓は破壊できたのか。
「ふん、避けるか……ではコレは避けれるかッ!」
「なっ……!」
――《百式観音・三乃拳》
そして私は、ネテロ会長の背後に現れた観音と、左右から迫る手のひらを最後に見て意識を失った。