転生したら狩人×狩人 作:楯樰
「「「ホンマにありがとう御座いました」」」
「いやいや、ほんと気にしなくていいですよ。当たり前の事をしただけです……いだっ! ……なにすんのさ…」
「べっつにぃ~?」
私は
くそぅ~……コイツ、私が彼女達を助けたってのにさも自分が助けた風な口利きやがって。私だよー…あなた達助けたの~…。
多分言っても信じて貰えないだろうな……ラディ、イケメンだし。おまけに彼女達、ホの字のレのタな様子だし。
やっぱりイケメンは何処行っても得するね。
ちなみにラディストが日本語を使える理由は、物心付く前から私や両親が日本語を使いながら生活していた事に起因する。……英才教育のおかげかな。
で、助けた三人はしばらくして目を覚まし、誰かが呼んでくれていたらしい救急車によって近くの病院まで運ばれた。しかし検査の結果、異常が何処にもないどころか怪我をした痕ですら見当たらないとの事だったので、その日の内に帰された。
とまぁ、我が弟のイケメン故の役得なのか、助けた三人……現役の芸妓さん達はお礼にと言う事で行きつけの茶店でご馳走になっている。
どうやら『1日安静にしなさい』と言われたらしく『それならお礼に……』との事らしい。
うー……お団子は美味しいけど納得いかないぞチクショウめ。
ちなみに、気絶した男性はと言うと白黒の警察車両に連れて行かれていった。目を覚まし次第、事情聴取を受けるらしいけど……多分ニ、三日目を覚まさないと思う。警察署から連絡があるとの事だがいつになる事やら。
私を余所に、和気藹々と談笑する三人と一人。
何も付いていない団子の串を皿に戻してお茶を啜る。
ズズズ。
ご馳走にもなった事だしそろそろお暇させてもらうとしよう。
「……ハンターさん、ちなみにどんな仕事をしてるんです?」
「えっとですね「ほらご馳走になった事だし、行くよ愚弟。……あ、お団子とお茶ご馳走様でした」ちょ、姉ちゃんっ! あ、ありがとう御座いました!」
ぽけーっとしている芸妓さん達を置き去りにして、私は弟を引っ張りながら茶店をあとにした。
……これ以上私達ハンターに深く関わってもいい事なんて無いだろうしね。
…………別に弟だけモテてたのが悔しかったわけじゃ無いんだからっ!
「ハンター
私は警察に赴き、スーツ姿の男性に話しかける。
「えぇ。本人も良いって言ってました。『お礼になるのなら是非にとも』と」
「それで、どういった経緯で事件が?」
刃の部分が妖しく紅く光る刀身を鞘にしまい、机の上に置いて私は耳を傾けた。
三日して目を覚ました男の事情聴取が終わり、今私は警察署に来ていた。
大体予想は付いているが、おそらく彼も好き好んで刀を抜いたわけではないだろう。……不慮の事故というやつだ。
独身のその男性は、鍛冶屋の跡取りで両親共に既に他界していたので被害者はあの三人の女性のみ。
事件の現場近くに彼の自宅兼鍜治場があり、本当に被害者は三人だけとのことだ。
「……はい。本人は『家に代々受け継がれてきた物で、抜くなと伝えられていたにもかかわらず、売りに出そうと思い抜いてみた』といってました」
「ふぅん。じゃ、その人お金に困ってるんで?」
「えぇ、そのようです。借金が二千万Jほどあるらしく……」
うーん……それじゃあタダでこの刀貰うのは可哀想か。この刀、売る所によれば十億やそこらはするだろうし。
「……よし、きーめた」
「うん? 一体何をですか?」
今の会話で要領を得ないといった様子の男の人は、まだ若さが残る顔に疑問の表情を浮かべつつ私に訊いてくる。
私の考えてる事を全部話す必要性も無いし、
「彼……ある意味被害者の男性に会わせて貰えません? ……少し話がしたいので」
「え、えぇ良いですよ。どうするかは分かりませんが……とりあえず彼に今回の事で非はないって事が貴女のおかげで分かりましたから。釈放手続きが済んだら案内させますので少々お待ちを」
「よろしくね、刑事さん。私は休憩所でコーヒー飲んでるから」
「は、はい! ご足労有り難うございました。それでは!」
私はニコリと彼に微笑み、彼が去るのを見送る。
…………確信犯ですけど何か?
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警察署から、釈放された男性の自宅に場所を移した私は、畳みの上に彼の目の前に座り、本題に入る。
「はい、これ刀の買取代金。貴方の借金二千万で良かったよね」
あらかじめ《王の箱庭》から出してポシェットの中に入れておいた二千万を渡す。
「は、はい! ……いや、でもホントに良いんですか?」
「全然平気だから気にしないで。それでこれが見舞金……とでも言おうかな」
私は肩から提げている《王の箱庭》と繋げたポシェットの中に手を突っ込み、八千万Jの札束を出す。
目を見開いて驚いているが気にしない。
「……これで弟子の二人や一人雇って技術を広める事を条件に今回の事はお咎め無しにしてあげます」
「…………」
あらら……目を見開いたまま固まってらっしゃる。
「おーい」
「はっ! ……いや、でもこんなに……」
「まだ若いみたいだけど才能ある貴方とその技術を此処で絶やしてしまうのは非常に残念なのよ。……私みたいなハーフが言えるような事じゃないけど」
彼に才能があるのは《神眼》で確認済み。努力を怠らなければきっと大成する。
そして此処ジャポンでも有数の鍛造技術の一つ『御影流』最期の後継者、十六代目『御影秋久』。私のお母さんの使っている包丁も御影流から派生された『烏丸流』の銘が入っていたのを覚えている。三十年近く使って居るらしいが、刃毀れなど一切していない。そしてあの
念の影響もあるだろうが、腕が相当良かったのだろう。人殺しを誘導させるような性質の悪い念になっているのは頂けないけども。
「…………」
「どう?」
俯いて何かを堪えている様子の彼の顔を覗くようにして、私は彼に訊いた。
「わ、かり……ました。恩に……報いるためにも……精一杯頑張ります……」
「うん。じゃ、頑張って。私はもう行くから。腕の良い鍛冶屋が居る噂をいつか聞かせて頂戴ね?」
「あ゛いっ! ありがどうございま゛しだ!」
手を畳みに着き、彼は深々と頭を下げる。
男は簡単に泣くなと言われるが今は元男の私が許そう。
そうして少しの間、彼が頭を下げたまま静かに泣くのを見届けた後、彼の黒髪をぐしゃりと撫でる。それから『頑張れ十六代目』と声をかけ、私はその家を後にした。
「ただいま~」
「姉ちゃんお帰り。今日の晩御飯天ぷらだから」
私が下駄を脱いで台所に顔を出すと、中々様になっているエプロン姿のラディストが向かえてくれた。
ちょっとおかしくなって笑ってしまう。
「くすっ……ホント好きだよね、三日に一回とか。……なんか手伝う事ある?」
「んー……今の所無いかな。それでどうだったの今日は?」
台所で手を洗って私は、油の中で撥ねる衣の着いた海老をつついている弟に訊く。
「えっとー――」
揚がった天ぷらを油切りの上から皿の上に箸で並べているラディストに私は、今日一日を思い出しながら説明していく。
話しながら出来たばかりの海老の天ぷらをつまんで指と口の中をちょっと火傷したりして、ラディストに怒られたり、『晩御飯抜きにするよ』と脅されたり。
そうして何だかんだで忙しかった一日の日が暮れていった。
案外早く復帰できました。
今後ともよろしくお願いします。