転生したら狩人×狩人   作:楯樰

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二人が覚えるんじゃあない――私が覚えさせるんだ。

――1974年7月9日の出来事。

 

「こんにちわ。お姉さんとちょっとおはなし――」

 

むにゅり。むにゅり。

 

「ちょ、ちょっとジン! 何お姉さんの胸を揉んで」

「うおぉお! すっげ! だって、こんなに大きいおっぱい見たの初めて」

 

私は下へと視線を下ろし、状況を把握した。

――それは衝撃ッ!

――それは驚愕ッ!

初対面でまさか、まさか胸を揉まれるとは思わなかった。

いやー焦るわー胸をいきなり揉まれるのとかマジ初めてだわー……とりあえず。

 

「――正座ね?」

「「はいぃいいッッ!」」

 

私、今凄いイイ笑顔してると思うんだ。

 

 

 

くどくどくどくど、と。

路上の大衆の面前で。

しなくてもいいのにミトちゃんも正座をして私の説教を受けていた。

説教を受けている二人。共通していることと言えば目に涙を浮かべて正座を堪えている事か。

 

私が説いたことは、まず初対面の女性の胸を何故揉んではいけないのか。

それから胸とは何か。おっぱいとの違い。現女性である私が説くのもなんだが、男の浪漫ではあるがそれ以上に重要なこと。子供だったから許されているが大人になってすれば確実に捕まるということ。

 

「そして最後。――揉むんだったら恋人の胸を揉みなさい」

「「……あい」」

 

周りから少なくない拍手が行われた。

表情がナニカ化していた二人の顔は、拍手の数に比例して真っ青になっていく。

浪漫の話のあたりから男性の皆様が集まってきて、乳がんの早期発見に繋がるだとか、フェロモン分泌によってサイズが大きくなるだとか医学的な内容の話になると、女性の方々もチラホラと聴衆に出てきて。

 

どんな羞恥プレイやねん。

 

私だったら泣いて逃げてるわー引きこもっちゃうなー……。

 

「えっと、二人とも。お姉さんの家でご飯食べて行きなさい。……この場から逃げるよ」

 

戸惑う二人を他所に私は二人を腰に抱えてこの場から逃げた。

二人の家に二人の筆跡で『外で食べてくる』という趣旨の書置きを残して、私は自宅に跳んだ。

 

あの場所にもう一度(テレポーテーション)》で家まで飛んだ私は二人を椅子に座らせて、ぱぱっと料理を作り、彼らに振舞う。

二人は状況を飲み込めないようであったが、ご飯を食べ始めたらそんな様子もなくなった。

……ジンに至ってはおかわりまでして、満腹になったらしい彼はソファーに横になり我が物顔で現在寝ている。

生意気な奴。……一応子供だから許すけど。

 

ジンが勝手に寝始めたことに代わりに謝ってくれたミトちゃんには紅茶を。私は煎茶を。

 

本題含めて束の間のティーブレイクと洒落込んだ。

 

「……そっか。二人は幼馴染で従兄妹なんだ?」

「はい。……そういえばお姉さんはなんでジンに声をかけたんですか?」

「いや、ちょっと気になることがあってね。大っぴらには言えないけど……もしかしたらジン君、超能力がつかえるんじゃないかなってね」

「え、それってどういう……」

 

念で創り上げた力あるヴィジョン。その腕で減っていたミトちゃんのカップの中に新しく紅茶を注ぐ。

驚いてくれたようで目を見開いていた。

 

「ね? こんな感じ。……ご感想は?」

「……えっと。トリックじゃないんです、よね?」

「うん、そう。これで分かったかな――ジン君」

「――え?」

 

これを見せる相手はミトちゃんではなく、やたらと精度の高い狸の寝入りをしていたジン=フリークス。

むくり、と起き上がって訝しげに私を睨んでくる。

 

「君には何が見えた、ジン?」

「……腕。殴られたらひとたまりもない腕だった」

「正解。……ね、ミトちゃん。君には何か見えた?」

「み、みえ」

「――見えなかったよね?」

「……見え、なかった……」

 

嘘を吐こうにも彼女を取り巻くオーラがすべて物語っている。

残念そうに、悔しそうにミトちゃんは言った。

 

それはミトちゃんにとって、自分は幼馴染とは違う、その再確認のようで。

きっと違いなんてないと思っていた彼女には辛いことだろう。

 

……だからっていえば可笑しな話だけど。

 

「ジン君に聞くのは勿論だけど。――ミトちゃん」

「……なんですか?」

 

 

「超能力、使いたい?」

 

 

ちょっと原作をブチ壊そうかと。

 

-------------------------

 

「そういやジンってさ、私の家に勝手に入ってきたことあるでしょ?」

「……なんでそんな急に?」

「ここ、円の役割果たしてるからね」

「マジかよ」

 

ジンは「ホント師匠は規格外だぜ」としみじみと言うが、なんだろう、一ヶ月で念の応用技に入る子に言われたくない。

ミトちゃんもまた、広げた部屋の真ん中でまるで外界から切り離されたように座禅を組み『纏』のように見える速さで『流』を続けている。

ちなみに私の教えた『流』の発展形応用技、『激』だ。

簡単な話、『硬』を高速で動かすだけのこと。

コンマ零何秒とかけずに動かすので『流』が超スピードで出来ないと意味がなく、また動体視力が抜群によくないとできない。

――まぁ、ミトの『発』があってこそ使えるような応用技だろう。

 

さて、そんな二人の修行風景はともかく。

 

――二人に念の修行をするかどうか提案してから6ヶ月。

まず、念能力の危険性を忠告し、その危険性を実際に見せ改めて使えるようになるかどうか問う。

もし使わない、と答えたのなら記憶から念能力についての存在を消し、無かったことにしてこれからの人生を歩んでもらうつもりだったのだけど、まぁ、面倒だから断られなくて良かった。

 

……で、結局二人とも使い方を習うことになったんだけど……私程度に念の才能があったジンはともかく、それなりにミトちゃんにも『稀代の才能』というべきものはあったようだ。

もう念の四大行を修め、ジンもミトちゃんもすでに応用技。

いまではすっかり二人だけで拠点まで通っている。

 

まぁこれだけ成長が早いのは私の教え方がうまい、っていうのもあるんだけども。

簡単に言えば二人の身体を動かして(・・・・)コツを掴ませるということ。

要するに『覚えろ』だ。

 

ただそれでも二人の才能云々についてはやはり遺伝だった。

調べてみれば、案の定、二人の共通のお婆様が相当才能を眠らせているようで。……しかしもう、そのお婆様は既にかなりお歳を召していらっしゃるので教えることはしない。

まぁ歳をとっているといっても私の精神年齢ほど歳はとっていないけど。

 

……さて。

 

「それじゃ今日の指導を始めるよ。ジン、ミト」

 

『堅』をしていたジンと『流』をしていたミトの二人に声をかけ、足元に《ゲート》を作り、《箱庭》へと落とした。

 

 

蹴り、肘打ち、殴打。

 

「はぁぁあ!」

「うん、いい調子いい調子。でも私に『堅』をさせるくらいでないと!」

「畜生! 絶対師匠可笑しい!」

「ほぅら! 『堅』が甘いよ!」

 

肉が鋼をたたく音が連続して響く。

……ちなみに肉側私で鋼側がジン。ちなみに私は『纏』だけだ。

 

「なんで手ごたえねーんだよ!」

「なんででしょうねぇ?」

「うっぜぇ!」

 

全身の骨肉すべてを『軟化』させた私に死角は無い。衝撃は現在地面にすべて逃げていた。

反撃に出る。ドヤ顔でジンの殴打を上に跳ね上げ、手首を掴んで捻る。

 

「ちぃ……ッ!」

「おおっと」

 

そのまま大人しく捕まってくれない。捻った勢いで体を回転、回し蹴りを放ってくる。

ジンは掴まれている右手首を離させようとしたのだろう。回し蹴りは掴んでいる左腕にジャストミート。

しかしそれでは終わらない。

蹴りを行った左足を私の腕に巻き付け、まだ小柄なジンは私の腕にくっつき、まだ手を離さない私の腕を外そうとする。

おそらく並の念能力者なら肩が抜ける。それを逃れるために掴んでいる右手首を咄嗟に離すだろう。

もし離さなないとしても、痛みのあまり離れる。

 

しかし……私には何の意味もなさない。

 

「……おいおい。師匠って人間やめてる?」

「んー……ニンゲンカッコカリ?」

「んだよそれッ――!」

 

ジンの思惑どおり肩は抜けた――いや正確には違う。

私は態と関節を外してしなる鞭のように腕を振り下ろし、くっついていたジンを地面にたたきつけた。

 

うーん。加減したけど……

 

「大丈夫、ジン?」

「だい、じょう……ぶ」

 

見学していたミトちゃんはぶっ倒れたジンに近づいて覗きこむ。

あーちょっとやりすぎたかなぁ…。

肺を圧迫したようで息ができなさそう。ちょっと苦しそうだ。

 

「ぶはぁああ! ――えげつねぇ。自分で自分の肩外して伸ばすとか」

「やっぱりそうなんだ。カトリアさんの腕が伸びたように見えたけど」

「えっへん」

「ほめてねーし! ちっ……! なんであんな胸でかいのに早く動けんだよ……」

「いいなぁ……」

 

何、ただのズームパンチの応用である。

やろうとおもえばロケットパンチもできるけど、切断面がグロいからそこまでの事はしない。

それにしても、ジンの戦闘センスには脱帽だ。

普通、あんな戦闘中に腕に絡みついてこない。あれにはビックリした。

 

まぁ、そんな程度でどうにかなるような鍛え方してないけど。

 

「じゃ、とりあえず今日の挑戦はお終いね。残念だったねぇージンー! 今日も私に勝てなくてぇ!」

「うぜぇ……絶対勝ってやる――!」

「大体そんな簡単に勝たせてたまるか……このマセガキめ」

「いてっ」

 

ふてくされる七歳の額を小突く。

まぁ、私に勝つことは絶対ないだろうけど。

 

……ジンが私へ挑戦し、勝利に固執する理由。

 

「絶対勝って――結婚してもらうからな!」

「はぁ……私のおっぱい揉みたいだけなくせに」

 

おう! と意気揚々と答えてくれるんだから腹が立つ。

ミトちゃんと一緒にため息を吐きながら、これもまた一緒にジンの頭に拳骨を入れる。

 

「いってぇ――っ!」

「……お昼ご飯にしよっか」

「……はい」

 

涙目のジンをミトちゃんが担いで、《箱庭》からくじら島の拠点に戻る。

一つ言えるのは、一歳差のミトちゃんがジンを担いでいる姿はとてもシュールだった。

 




ジンがマセガキでも仕方ないよね!
故郷にミトっていうヒロインな従妹件幼馴染を無視して子供作ってるんだから仕方ないよね!

ミトさんは泣いていい。
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