画面を鮮やかなエフェクトが踊る。
薄い液晶パネルの中自在に駆け巡る戦士たちは、鮮やかに自分たちにとっての様々な容姿を持つ敵、通称『エネミー』を屠っていった。
そう、今俺がプレイしているこのゲームこそファンターシースターオンライン2。略してPSO2だ。
様々な種族が惑星間航行船団、通称オラクルと言う宇宙の方舟に乗って旅をし、その船団の中でもプレイヤーは惑星の調査と交流をする組織の一員『アークス』となって宇宙を冒険する…そう言ったテレビゲームだ。
俺、「
「やっぱり久し振りにやると楽しいよなぁ。PSO2は」
何事も久し振りに行う娯楽は格別なものだ。
ついつい時間を忘れてプレイしてしまい、窓の外を見ればいつの間にか夜空黒く染まっていた。
「うげ、もう三時かよ…でも緊急予告来ちゃったしなあ」
常設でない特別なクエストが始まる予告がゲームではBGMと共に鳴り響いてる。
この緊急クエストと呼ばれるソレは大体がゲーム的にはおいしいクエスト(簡単に表現するならば)であるため、予告が来ればログアウトするのも躊躇われるものだった。
(なんにしても予告から始まるまでの15分間が長い…下手に他のクエストに行って乗り遅れる訳にはいかないから、心配症の自分にとっては身動き出来ない時間だ。とにかく眠い…)
眠たげな意識を逸らすため、瞼をこすりながら意識の覚醒に務めるが、俺の意識はゆっくりと、睡魔に導かれて闇の中に落ちていくのだった…。
それは、人生での大きな分岐点だったのか。
それは、今でも俺の見ている夢なのか。
何もかも不確かなままその世界を生きていくことになる。
◆
「寝落ちはまずいっしょぉぉぉぉ!」
ガバと擬音が付きそうな勢いで目を覚ませば広大な大自然の森の中であった。
その森の多少開けた場所に大の字に倒れていたらしく上半身を起こしてあたりを見回す。
はて?ここはどこだろうか?
なんとなしに自分の格好が妙なことに気づけば、白い手袋をはめた自分の手が視界に入る。
(あれ?こんな格好していたっけか?寒い時期だったが室内暖房ガンガン効かせてたからTシャツ短パンだったはず…)
続いて上半身を見ると、礼服のようなモノを着込んだ上半身。
そして着け心地に全く違和感がないマフラーの感触。
「この格好…
一体俺はいつからこんなコスプレを!?でも服の感じとか超着心地良いしかなりのクォリティだなぁ…って違う違う!まさか夜な夜なコスプレをしてしまう奇病にかかってしまったのか!?俺の黒歴史に新たなる1ページが追加されてしまうのか!?
5分ほど自分の恥ずかしい状況に身悶えていた俺はなんとか立ち直って色々と状況を整理してみることにした。
身に着けているものはPSO2の自キャラのコス。
ここまで凝ってるなら背中に武器とか背負ってたりして…と思ったが見た感じは存在しないが、確かに感触はある。
「……あ」
思い出した。
俺の格好が自キャラと同じならば、見えない大剣を背負っているのだ。
俺の背負ってる武器は「Fate/stay night」と言う作品とのコラボ武器迷彩、『
武器迷彩とは、武器の種類にあったものを身に着けていれば武器の見た目だけ変わるというファッションアイテムだ。
この『
「誰も居ないみたいだし…とりあえず振ってみるか」
自らも見えないのにはっきりと刀身の長さ、持ち手の位置など感じて剣を抜く。その感触にやっぱこれ夢なんじゃないか…と自分を疑いつつ不可視の剣を抜いた。
「ドッキリにしても、これは無理だよなあ…」
構えた大剣からは、刀身が風を逆巻き、唸りを上げている。流石にここまで手間のかけた悪戯は俺にしてもしょうがない。現実味がない。
「ソニックアロウ!……なんちゃって」
大剣の技、PSO2ではフォトンアーツと呼ばれるソレをゲームのように真似て剣を振るって見る。
直ぐに恥ずかしくなって上を向き頭を掻いてみようと思ったのだがその行為はすぐにピタリと止まる。
ザシュ!ザシュザシュ!ザシュ!
俺のいる広場から少し離れた位置の木がザクザク切れて倒れていく。その先には俺が放ったであろう『ソニックアロウ』が円盤の刃の形をなして一直線に森林伐採をしながら飛んでいった。
ズドンズドンズドン…
続いて地面との接触を立たれた木が倒れる音。
アカン。これやっぱ夢や。
ていうかゲームだと草くらいしか伐採出来ない技なんだが…めっちゃ障害物の岩とか切ってるな…
改めて悪い夢だと確信した俺は目を覚ます為に自分の頬を抓ったり色々やってみるが目は覚めない。
「まあ……夢だし楽しんでみるか」
開き直った。いや起きれないし、超人になったみたいで楽しいし、こうなったらヤケである。
なんて思っていると森から地鳴りの様な声がする。
「誰だ!俺様の縄張りに手を出す奴は!」
俺が目にしたのは巨人達である。倒れた木々を辿ってきたのか、ドスドスと大きな音を立てながら剣を持った巨人を筆頭にやってきた。
「うぉ…ロックベアリアル版…にしてはあんま似てるとことか無いな。あれ、もしかしてここナベリウスじゃない?でも森林だしなあ」
「ごちゃごちゃうるさいチビだ!このグ様がバラバラに砕いて食ってやる!」
リーダーらしき巨人が持った剣を振りかぶると、視界の端に相手の弱点とかレベルとかが見える。
やけに相手の動きも遅く感じるのだがレベル差だろうか。
「レベル30後半かー。雑魚っぽい…」
なんて考察してると眼前まで巨人の剣が迫っていた!
「って!しまっ…危な!」
慌てて不可視の大剣で巨人の攻撃を受け止めると、ガキィンと小気味良い音が鳴り響く。
気がつけば、下半身だけになった巨人がいた。
マジグロ…これはR15ですわ…