Fate/IF Extra   作:新参者基本読み専

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聖女
新たなる出会い


 

落ちる、落ちる、落ちる。

 

 底の見えない黒い海と化したグランドを突き抜け、深い深い闇へと落ちて行った。

 

 

 落下に終着が無い。

 ただひたすらに削げ落とされ、失っていく。

 

 五感、持ち物、記憶、何もかも無くなって行き、いずれ何もかも残らないだろう。

 

 これが現実。これが事実。

 ここでゲームオーバー。ここで死亡。

 

 自分の過ちに後悔した。涙を流し声を出して号泣した。だが涙は一滴も流れ落ちず、声と言う声も出せなかった。

 でも、出せた所でもう何も意味はない。だってもう救われない、ここで終わりなのだから。

 

 一瞬、または永遠、どちらとも取れ、ただ周りには黒い景色しかない空間での落下はどこか無重力を思わせる。

 日の光はおろか、かつていたであろう地上の事さえも思い出せない。

 

 手足も動かすことが出来ない。ただあるだけのものにまで退化してしまった。そして、それは目も同じようになってしまった。何かを見るという機能は初めから無かったかのように失った。さらに心も緩やかに閉鎖していく。

 

 泥の様な体と鉛の様な心。終わらせてしまいたい。手離してしまいたい。

 永遠にこのままなのかという不安から目をそらし、消えてしまいたい。

 

 なのに、

 何か、意識の外皮にかすっていくものがある。

 気のせいだ。気のせいだ。気のせいだ。

 そう言い聞かせる。だって磨耗し、擦り切れた心に引っ掛かるものなんて在る筈がない。あり得ない。

 

 でも、どこか希望に縋り、求めているのだろう。

 心が見せた幻影でも、その声は聞き逃せなかった。

 遥か遠くから、その声は光の尾を引いて全身を燃やしながら、なお加速する。

 

 -ソラを見ろ。

 

 -手を伸ばせ。

 

 -ただ一言、■ ■ ■を呼んでと。

 

 その声に対し声を出そうと使わなくなって何万年も経ったと思われる喉に、肺に熱を入れる。だが声は出ない。全身何一つ動かない。

 やっぱり幻聴、やっぱり気のせいだと、心はまた蓋を閉じて行く。

 なのに。

 

 『諦めるな』

 声が聞こえた。

 何処まで続くか分からない暗黒の世界に幾つもの光が過ぎてゆく。

 身を削りながら、その暗黒を切り裂き、自分の元へ走る流星が見えた。

 

 「ダメ、届かない。・・・早く目を覚まして!そこから先は一度踏み込んだらもう戻る事は出来ませんよ!」

 

 初めて聞く女性の声に少し戸惑いを感じた。

 

 「手を伸ばして!早く!!」

 

 だが、その声の主は自分の事をまるで自分自身の様に心配してくれている。

 

 「名前が分からないのでしたら、私が教えてあげます。だから!」

 

 その思いが、自分の中に届いた気がした。

 失われた喉に、衰えた腕に、全身に力を入れる。

 そして、教えられた名を呼ぶ。

 

 「来い、ル-ラ―!!」

 

 「ああ、良かった。本当に・・・助ける事が出来て良かった」

 

 暗黒が、その全てがガラスの様に音を立てて崩壊していく。

 伸ばした手に触れる確かな感触。

 いつの間にか落下は止まり、自分の手を両手で握る女性の姿が見えた。

 その女性は修道服を思わせる服装をしているが、所々鎧の様なもので覆われ、金髪の三つ編みの髪型が特徴的だった。

 しかし、この女性とはどうも会った事が無かったので戸惑いを隠せなかった。

 

 「驚くのも無理はありません。何せ私とあなたは本来契約していませんから。でも、貴方が落ちて行くのを見たらなりふり構ってはいられませんでした」

 

 ル-ラ-という女性はそう話してくれた。その思いはとても嬉しかった。お礼を言いたいが、さて、どうやってここから脱出しよう?

 

 「大丈夫ですよ。貴方が目を覚ました以上、ここから脱出できます。さぁ、もう一度目を閉じて。次目を開けた時、貴方が本来居るべき所へ戻っていますから。もちろん、私も貴方と共に居ますよ」

 

 そう言われ、再び目を閉じると意識が急速に覚醒していく感覚を感じた。

 

 「安心してください。どんな事があっても、私が貴方の傍に居ますから」

 

 その言葉を最後に、今の自分の意識が途絶えた。

 

 

 

 本来交わる事の無かった二人の出会い。これが何を意味するか、それは分からない。だが、この二人の内、本当に救われたのがどっちなのか、それは彼らが歩んだ道を見れば分かるだろう。




クリスマスも近いですね。寒くなってきていますので皆さんもお体に気を付けてくださいね。
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