おいでませドーソン箒専門店!-ホグワーツ魔法学校出張所-   作:Out Lazy

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結局自分で書くことになるとは…………
なんにせよ、よろしくお願いします。


商品その1-ワイバーンの翼骨、ギョリュウモドキの尾[ホワイト:プロトタイプ]

 

『箒』

 

今も昔も、魔法使いが空を飛ぶ際に使用する、本来は清掃用具である道具であります。

 

現代では、競技用箒という物も現れ、色々と謎な進化を遂げています。

 

魔法使いにとっては杖の次に必需品。その為、一定の需要が存在するのです。杖職人ならぬ、箒職人という職種が存在していた程度には。

 

しかし悲しいことに、時代を経ることによって、箒も大量生産物が出回るように。昔ながらの手作り箒は、魔法による大量生産、大量出荷の箒へと取って代わられることになりました。。

 

時の流れはどうしようもないもの…………下手に抗えば、為すすべなく全てを流される慈悲なき濁流。

 

しかし、そんな時の流れに逆らいながら、魔法界にその名を轟かす箒職人が1人。

 

『アンリ・ドーソン』

箒販売店『ドーソン箒専門店』を経営する夫婦の元に生まれ、齢七つにして両親に先立たれたにも関わらず、己が才能と努力と根性で、親の忘れ形見である店を建て直した、稀代の天才箒職人。完全オーダーメイドをウリにしたその古臭すぎて逆に斬新なスタイルで作られる箒は非常に人気で、魔法界中からひっきりなしに予約が舞い込んできます。

 

しかし、今でこそ彼の作る箒は賞賛を浴びているとは言え…………昔は全く見向きもされなかったといいます。

 

 

 

さて、長々と前書きを垂れるのはやめましょう! 今より語られるはそんな稀代の天才箒職人『アンリ・ドーソン』の、あまり知られていない昔話!

箒への情熱を迸らせた彼の学生時代、『ホグワーツ魔法学校』での暴走記録でございます!

 

 

[おいでませドーソン箒専門店! -ホグワーツ魔法学校出張所-]

 

 

≡≡≡≡≡☆

 

 

時は1991年7月1日の昼。

 

ダイアゴン横丁の隅っこにある、まるで廃墟の様な構えをした店にて。

 

「アンリ! アンリ! 起きなさい! 今何時だと思ってんのよ!!」

 

その店の扉をバンバンと叩く1人の少女がいました。名を、『メアリ・シールズ』。少しウェーブのかかった金髪に、透き通るような碧眼、少し目が吊り上ってはいるものの均整のとれた顔立ち、将来に期待が持てるスタイルと、まるで人形がそのまま大きくなったような少女です。

 

「…………うるさいメアリ。近所迷惑」

 

そしてその店の扉から出てきた少年。名を、『アンリ・ドーソン』。赤銅色のボサボサの髪、細く開けた目は髪と同じ色をし、ぬぼーっとしたその何処と無く緩い顔付きの、やる気のなさそうな少年です。

 

「うるさいじゃないわよ全く! もう2時よ!? 少しはまともな人間らしい生活を送りなさい!」

「………だが断る」

「だまらっしゃい!」

 

2人は、俗に言う『幼馴染』の関係。互いの家がこのダイアゴン横丁に店を構える同士でそれなりの交流があった為、それはもうヨチヨチ歩きの時分からの仲であり…………、

 

「全く…………いくつになってもアンリはだらしないんだから…………」

「……それが僕の生き様(キリッ」

 

付き合いが長いからなのか、齢11にしてダメ男とダメンズウォーカーの構図ができあがっている、というわけでして。

 

「う〜…………目ぇ覚めた。というわけで店開けるぅ〜」

 

彼は懐から杖…………本体は空木、芯はサンダーバードの羽軸。長さは18cmと短く、それなりに丈夫な一振りを取り出し、店の扉をトントンと2回叩きました。

 

すると、廃墟のような店が音を立てながら様変わりしていき…………まるで新装開店したと言わんばかりのピカピカの店が現れたではありませんか!

 

「あいも変わらず、お前んとこの封印(シール)の応用アイテムはぶっ飛んでると言わざるを得ないな…………」

「まあウチは、シールズですから?」

 

アンリの言葉に気を良くしたメアリは、少し胸を張りながら返します。

それにしてもファンタジーですね…………あ、魔法使いのお話だからまごう事なきファンタジーなんでしょうが。

 

「もう半日しかないけれど、今日も頑張って、アンリ」

「……………………どうせ開けても、もう客はこねぇよ」

「…………」

 

と、とにかく!

ドーソン箒専門店、開店です!

 

 

≡≡≡≡≡☆

 

 

店の中に入っていった2人は、奥の方にある工房へと入ります。

 

魔法以外の技術というものを軽視する魔法使いにしては珍しく、彼の工房には材料庫の他にも様々な器具が乱雑ではありますが、揃っていました。

 

「また変なのが増えてるわね…………この機械は何?」

「あーそれ? ジャパンから取り寄せたハンドサイズの研磨機…………を、魔法で動く様に改造した魔道具」

「…………アンリ。毎度思うんだけど、ぶっちゃけ箒に拘らなくてもアンタなら魔道具店開いてもやっていけるわよ」

「阿呆吐かせ。この様なもの、至高の箒を作るための踏み台でしかないわ! ふはははは!」

「似合ってないしキモい」

「アッハイ。…………あ、そうだ」

 

シュンとしながら、何かを思い出した彼は、工房内の箒専用棚に引っ掛けてあるウチの一つを下ろし、メアリに差し出しました。

 

それは、マホガニーの柄に、キラキラと輝く尾が目を引く箒。

 

「ホラよ、預かってた[ミーティア]。寿命じゃねえかって言ってたからダメになってた部分は取り替えてやった」

「あら、ありがとう。でも、それだけじゃないでしょ?」

 

悪戯げに彼女がアンリの顔を覗き込むと、バツが悪そうにかれは顔を背けました。

 

「べ、別に何にもしてねーから! 横に逸れる癖があるとか聞いて調整したとか、長時間の飛行にも腰回りが耐えられるように細工したとか、そんなことやってねーし!」

「まったく、素直じゃないわね」

 

『でもありがとう』と口にして、満面の笑みを浮かべながら彼女はその箒[ミーティア]を大事そうに抱え、それがまたアンリの顔を異様に逸らさせ…………ゴホン。

 

「と、とりあえず用は済んだだろ!? 俺は今から新作箒に取り掛かるから帰れ帰れ!」

「えー。私、気になるわ」

実家(自分らの店)の売り子の仕事はどうした!?」

「妹が百味ビーンズで代わってくれたわ。持つべきものは話の分かる妹よね」

「…………おい姉。それでいいのか」

 

思わずジト目になるアンリを他所に、メアリは工房内の椅子に座り、ワクワクしながら期待の眼差しを彼に送ります。

 

そして、なんだかんだ言って幼馴染には甘いアンリ。

 

「…………ゴーグルしとけ。目に骨粉入っても知らねぇからな」

 

自分の分と、彼女の分のゴーグルを棚から取り出し、実質的な許可を出しました。

 

「うふふ、やった」

「…………つまらなくなったら速攻出てけよ」

「あら、心配しなくてもいいわ。今までそんなことあったかしら?」

「…………ねーけど」

 

 

≡≡≡≡≡☆

 

 

基本的に、箒は柄と尾とそれらを縛る紐で構成されます。

そこで、ただの飛行用に用いる箒は最低限の、箒に座れる(・・・)細工を施します。そのまま飛ぶと、いろんな意味で痛いですからね。

そして競技用箒は、本来の清掃用具としての箒の機能をほとんど廃し(具体的には空気抵抗を減らす為、尾を完全に固定)、速度を上げたり、姿勢制御機能を付けたりなど、魔法技術を駆使し、完全な飛ぶためだけの処理がなされます。

 

さて、以上を踏まえた上で。

競技用箒を作るのは、かなりの知識と技量が必要です。少なくとも、齢11の少年が簡単に作れるものではありません。

 

が、

 

「振動制御、完了。瞬時加速、完了。姿勢制御、完了。向風障壁…………………」

 

ドーソン箒専門店の店主:アンリ・ドーソンは、大手箒メーカーお抱えの箒職人でも苦労する、柄に機能を付けていく作業を、単純作業の様にこなしていきます。

 

現在アンリは、とある伝で手に入れたワイバーンの翼骨の一部を柄として加工しています。今まで、柄に生物を使った箒が無いことに目をつけた彼が、骨を柄に用いた箒を作ってみようと思いついたのがきっかけのようです。

 

「柄の加工は終了…………次は尾」

 

研磨により形を整え、機能を仕込み、ワックスで最終処理を施した柄の出来に満足しながら彼は、既にある程度形を整えたギョリュウモドキの枝を大量に取り出しました。

これは、柄に枝を巻きつけるだけ、という単純な作業ではなく。枝1本が少しあらぬ方向を向くだけで旋回性能にかなりの影響が出てきたりするのです。大量生産品だと、この辺りが雑になり、あまり良いとは言えない性能になるのですが…………まあそれは余談ですね。

 

アンリは、ぬぼーっとした顔を普段が嘘みたいに見える程引き締めながら、形を整えて仮縛りし、調整をしながら尾を固めていき、本縛りをします。

 

最後に、最終点検。致命的な欠陥が無いかのチェックを行います。本来ならば、ここに飛行点検が入るのですが、今回は飛行データを取ることがもくてきなので、入らないようですね。

 

「ん、できた。白いから[ホワイト]とでもしておこうか」

「また安直な…………それにしてと、箒とはまた別の側面から見てもかなりの工芸品よねぇ…………」

「本来はその位気合い入れて作らないとダメなんだ。さらに言うなら、箒は完全なオーダーメイドで、自分にしか合わない箒を用意すべきなんだ。…………限定量だろうがなんだろうが知らないけど、同じツラして大量に出回るアレを高級競技用箒と宣う[ニンバスシ2000]は納得がいかん」

 

箒が完成した達成感に浸るのも束の間、彼はその顔を嫌悪に歪める。

 

「別に、大量生産品が悪いと言ってるわけじゃない。消耗品である以上、それは仕方のないことだと思うし、俺だって使わないわけじゃないからな」

 

しかし、『だが』と前置きして、アンリは口を開きました。

 

「[ニンバス]は別だ。あの程度なのに『高級箒』を名乗ってるのが心底腹立たしい」

 

速い箒というのは、乗り手を選びはしますが…………個人に合った調整を施せば、十全に乗りこなすことも可能です。アンリのイメージにある高級箒は、こういった個人に合わせるタイプの箒指します。

 

さて、では[ニンバス2000]はどうなのか。

確かに[ニンバス2000]は速度の割に扱い易くはあります。ですが、乗れない人は乗れません。この時点で、アンリの思う高級箒ではありません。…………いや、十分高級ではあるのですけどね?

 

「別に、高級量産箒と銘打ちするのなら納得してやる。確かに素材も良いし、量産品の割にかなりの性能だ。だが、高級品として、我が物顔で市場に出回るのは勘弁ならん」

「…………まあ、そのせいでアンリの作る高級志向の箒が売れなくなったわけだしね」

 

有名で実績もある箒メーカーの作る高級量産箒と、天才とは言え齢11の少年の作る自称高級箒なら、どちらが売れるか…………それは、言わずもがなでしょう。

 

「お陰で商売上がったりだクソッタレ…………リアルに泣きそうだよ」

 

早くに両親を亡くしつつも、祖父母や付き合いのあったシールズ家のみんなの協力もあり、今まで両親の形見である店を潰さずにやってこれたアンリは…………その店が潰れてしまう未来予想が頭から離れずに、参っていました。

 

「アンリ…………」

 

弱々しく丸まったその背中に、彼女は心配そうに、声をかけました。幼い頃からの付き合いだけに、彼の苦悩が手に取るように分かるのでしょう。

 

 

 

 

そんな陰鬱とし始めた2人の頭上から、何かがはらりと落ちる。

 

 

 

パサリと作業台の上に落ちた2つの封筒。

 

「…………あん?」

「…………あ、コレって!」

 

宛先は…………自分達の名前。

送り主は…………『ホグワーツ魔法学校』。

 

即ち、ホグワーツ魔法学校…………入学許可を報せる、手紙でありました。

 




箒の設定は、半分以上捏造なので、そこのところご了承ください。
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