おいでませドーソン箒専門店!-ホグワーツ魔法学校出張所- 作:Out Lazy
無事、何事もなくホグワーツ特急。それからあれよあれよと言う間に、アンリは舟に乗っていました。
「…………き、気がついたら舟に乗っていた。な、何を言ってるのか分からねーと思うが」
「何ぶつぶつ言ってるの?」
「あーいえなんでもありませんメアリ様」
一隻の定員が4名のその舟。本当なら同じコンパートメントにいたあの2人と一緒に乗りたかった彼はそのチャンスを逃し、メアリと他女子2人の舟に乗ることになったというわけで。
「成る程、あなたがメアリの言ってたアンリ君なのね?」
興味本位、という感じでアンリ君に顔を近付ける女子に、アンリ君はタジタジ───────
「どんな紹介をされたかは分からないッスけど、おそらくそうですね。どうも、アンリ・ドーソンです」
にはならず、見事な他所向きの顔を浮かべながら自己紹介をしました。流石は、お店の子。
そこから女の子達も自己紹介をし、雑談に入ったのですが、
「うーん、メアリ? どう見ても貴女の言ってた様な人には見えないわ」
「流石に初対面の人の前で暴走する程常識知らずじゃないわよ流石に」
「そんなものなのかしら」
「ちょい待て。メアリてめーなんて説明しやがった」
思わぬところで悪い噂が広がってるのではと危機感を抱くアンリ。すぐさま問いただそうとすると──────
「箒作りに本気出す箒キチ」
「うん、否定できねー」
むしろアンリを適確に表現した言葉故に、何も言えなくなりました。
「んんっ。まあそういうワケっスから、もし何か縁があれば『ドーソン箒専門店』をよろしくお願いします」
「あ、ついでに『シールズ小物店』もね? 同級生ってことでサービスするわよ」
「「せ、宣伝が露骨……」」
女の子2人は顔を見合わせ、2人が幼馴染であることに納得したとさ。
≡≡≡≡≡☆
眼前に聳え立つ大きな城…………の前にたどり着いた新入生達。
今の今まで新入生達の引率をしていた大男────名前をハグリッドという、ホグワーツの禁じられた森の番人────は、城の扉を叩きます。
扉が開き、中から出てきたのは、エメラルド色のローブを纏った、背の高い黒髪の魔女。…………いっちゃあアレですが、めちゃくちゃ厳しそうな方ですねぇ。四角い眼鏡掛けてますが、逆三角の眼鏡を掛けても似合いそうです。
「マクゴナガル教授、イッチ年生のみなさんです」
「ご苦労様ハグリッド。ここからは私が預かりましょう」
そうして、次の引率であるマクゴナガル先生に、新入生達は付いていき、城の玄関ホールの脇にある空き部屋に入っていきます。
「…………狭ぇ」
個人的に狭いところがあまり好きではないアンリ君。さらにこの狭い部屋には今年の新入生全員が押し込まれているのです、窮屈で仕方ありません。青筋を立てるまではいきませんが、そのやる気無さげな顔に苛々を浮かべながら腕を組みます。
しかしまもなく、マクゴナガル先生が挨拶をはじめました。
「ホグワーツ入学おめでとう。新入生の歓迎会が間もなく始まりますが、大広間の席に着く前に、みなさんが入る寮を決めなくてはなりません。ホグワーツにいる間、寮生がみなさんの家族のようなものですから、寮の組み分けはとても大事な儀式です」
ホグワーツには、4つの寮があります。
・グリフィンドール
・ハッフルパフ
・レイブンクロー
・スリザリン
それぞれ、ホグワーツの創始者達の名前から取った名前であり、寮ごとにその特色が違います。
まずグリフィンドール。勇猛果敢な者が集う寮。よく言えば勇者、悪く言えば向こう見ずな生徒が集まる傾向にあります。触れ込みは騎士道精神に溢れた云々なのです、が。そういう生徒も多いのは多い反面、傲慢な生徒や騎士道精神とは程遠い生徒もいないこともないです。やはり共通するのは、ある程度の怖いもの知らずということでしょうか。刺激的な学校生活を送るなら、間違いなくここがオススメです。
次にハッフルパフ。心優しく勤勉でまっすぐな者が集う寮。よく言っても悪く言っても、なぁなぁと言うべき寮でしょうか? 他の寮と違って引っかかる基準が低いので、劣等生が集まる寮とも言われます(本当は、良くも悪くも目立つ生徒が少ないだけで、劣等生自体はどの寮にもそれなりにいることはお忘れなく)。生徒間同士のいざこざは他の寮と比べて少ないので、非常に過ごしやすい、とても良い寮だと思います。
さて、レイブンクローは、機知と叡智に優れた者が集う寮。よく言えば頭の良い、悪く言えば薄情な生徒が集まります。知力を重視する風潮があり、総じて成績優秀です。が、それ故に高圧的になったり、同じ寮の生徒でも基準に合わない…………つまり劣等生を見下し村八分にしてしまうなど、俗に言う嫌なヤツが集まりやすい傾向にあります。ですが、頭の良い生徒が集まるのは間違いないので、自分の知力を高めたい生徒にとっては、周りと競い合いながら切磋琢磨していける、最高の環境と言えましょう。
最後に、スリザリン。狡猾な者が集う寮。よく言えばプライドの高い、悪く言えば差別意識の高い生徒が集まります。まずのっけから良い印象の抱けない寮です。それもその筈。俗に言う闇の魔法使い達の排出率が高い、純血の魔法使い、魔女以外の存在を認めんと言わんばかりの純血主義者の巣窟なのですから。他の三寮も、共通してスリザリンを毛嫌いする傾向にあります。ですが、悪い面ばかりではなく、良い面もあります。身内同士の結束が高いので、狡猾な者が集まるとはいえ寮内の雰囲気は良好。更には不得手無く満遍なく優秀な者が多い為、文武両道であります。さらにここに選ばれる生徒の親には金持ちだったり権力者だったりが多い為、コネを作るチャンスが非常に多いです。自分の才能を開花、発揮し、約束された成功の未来を勝ち取るなら、スリザリンがダントツでしょう。
「それでは、学校側の準備ができたら戻ってきますから、それまでに身なりを整えて静かに待っていてください」
そう言って、マクゴナガル先生は部屋を出ていきました。
静かに、とは言ったものの、新入生の大半は組み分けの儀式がどの様なものか不安なのか、ざわざわとした声が部屋に漂います。
しかし、アンリはそのぬぼーっとした顔に、不安は浮かべませんでした(苛々は浮かべっぱなしですが)。
「(儀式…………っても、そんな大層なことはやらんだろう。マグル出身の新入生もいる以上、まさか魔法を使わせるわけでもあるめぇし。寮ごとの適正が心の在り方と単なる適性である以上、頭を読み取られる系の何か、と推測するが…………)」
…………流石はアンリ君。断片的な情報から大体の儀式の内容を推測してしまえるとは。流石は、『天才』と言ったところでしょう。間違いなくレイブンクローの適性がありますね。
そしてそんな感じで思考の海に沈んでいるアンリは、マクゴナガル先生が来るまでずっと無反応でありました。…………ゴーストが入ってきて、周りがガヤガヤしてるのに気付かないって、どんだけっすか。
≡≡≡≡≡☆
戻ってきたマクゴナガル先生が、1列になった新入生達を連れてきたのは─────
「…………おおぅ」
空中に浮かぶは何千ものロウソク。天井は魔法がかけてあるのか星の見える夜空が。そして4つの長ーいテーブルには上級生達が着いていて、その先にはさらに長いテーブルがあり、おそらく教職員の方々が座っていました。
そう、此処がホグワーツ魔法魔術学校の大広間! 何度と無く生徒が集まることになる、ある意味で始まりの間です!
「こいつぁ、ビックリだわぁ」
知識で知っていても、体験すると思っていた物と違うことってありますよね? 現在のアンリ君がそんな感じです。
ともかく、新入生達は4つの長テーブルと先生達のテーブルの間まで連れていかれ、上級生達の方を向かされます。
そして全員が前に集まったことを確認したマクゴナガル先生は、新入生達の前に4本脚のスツールを置き、その上に魔法使いが被るとんがり帽子…………のボロっちいのが置かれました。
高度な魔法技術の塊とも言える飛行用箒を扱うアンリは、思わず息を飲みます。
「(な、なんぞコレ…………すんげーオーパーツ的な塊でねーか!?)」
アンリ君、戦慄。それと共に、上辺だけでも彼がこれからの箒作りで応用できる様な魔法技術を見つけることができ、口の端が面白い様に上がっていきます。
「(こいつぁスゲェ…………!! コレを見ただけでもホグワーツに来た価値があったってモンだ!!)」
と、猛烈に感動していた彼ですが。
「〜〜〜♪」
突如としてその帽子が歌い出して、驚きます。
歌の内容は、帽子自身のこと、それとそれぞれの寮のこと。
歌が終わると、広間にいた全員が拍手をした。アンリも、その1人。むしろ誰よりも気合を入れて拍手をしてました。最早この帽子の猛烈なファンとも言えましょう。
拍手が鳴り止んだところで、マクゴナガル先生が長い羊皮紙の巻き紙を手にしながら前に進み出ました。
「ABC順に名前を呼ばれたら、帽子をかぶって椅子に座り、組分けを受けてください」
「(…………うっそマジでABC順かよ!?)」
アンリ・ドーソン(Henri Dawson)…………苗字の先頭はDです。間違いなく早いですね。
「ドーソン、アンリ」
割と早期に呼ばれ、意外にもアンリ君ガチガチです。
それと共に、何故か先生方が少しだけどよめいたのですが…………この話は後ですね。
「(ど、どーしよう…………柄にもなく緊張してんぜぇ…………)」
しかし、被らないと先に進めないのも事実で…………
「(ええい、ままよ!!)」
勢いよく帽子を被り、座り込んで腕を組む。
「ふむぅ…………こいつは難しい」
「(…………え?)」
腕を組んだまま、アンリは疑問で頭を埋めてしまいます。
自分としては、レイブンクローかなーなんて思っていた以上、悩まれるとは思っていなかったのです。
「うむ、確かにレイブンクローに行ったら、君の望む知識は手に入るだろうし、成功への道も開ける。…………だが、それだけでは少々物足りない気がするのだよ」
「(物足りない、ねぇ?)」
徐々に落ち着いてきたアンリは腕組みを止め、目を開き、頭の中で帽子に問います。
「(なら帽子さん、それぞれの寮に入った場合の意見を貰っても?)」
「成る程、よろしい。まず、先程言ったレイブンクローなら、君のその叡智に更に磨きがかかることだろう。目的のため、必要な知識を貪欲に求める君にとってはその点だけで言えば最高の寮だろう」
その点だけで言えば。つまり、アンリにとってよろしくないところもあるということなのでしょうか。
「ハッフルパフは…………おそらく止めておいた方が良いだろう。確かに君は捻くれてはいるが優しく、とても勤勉だ。此処に入っても、君は上手くやっていける。だが、君の目的には、そぐわないだろう。それを良しとするならば、勧めても良いのだが…………」
確かに、なぁなぁだと時に過激さを見せるアンリの情熱にはむかなさそうです。
「スリザリンに入れば…………君は間違いなく成功するだろう。目的の為に手段を問わなくなることもある君にピッタリだ」
血の問題も、アンリにとっては関係ありませんし、虐めもなさそうです。
「最後にグリフィンドールだが…………」
「(…………帽子さん?)」
「レイブンクロー程ではないが、君はその叡智に磨きをかけられるだろう。ハッフルパフ程ではないが、不足ない学校生活を送れるだろう。スリザリン程ではないが、成功はするだろう。君は失敗することを恐れない非常に勇敢な性格だ。素質としても、問題ないだろう。私としては、此処を1番に推そう」
「(裏を返せば、どれもこれも中途半端なのに?)」
ジトッとした思念を頭に浮かべるアンリ君。その返答は。
「悪く言えば、そうなるだろう。まぁ私も、それだけでは推したりせんよ」
「(ならば、何故?)」
「どうなるかが分からない…………それが、1番
「(お、面白そう?)」
「左様。先の3つの寮に入って仕舞えば、おそらく君の未来はある程度定められてしまうだろう。だがグリフィンドールならば、君自身が、未来を選択できる。可能性を、広げることができる」
「……………………」
もう一度、アンリは腕を組み、目を瞑ります。
「(確かに、知識は欲しい…………でも、暗にそれだけしか言われてないね)」
「(学校生活は楽しく送りたい…………けど、店を再興できないのは論外だ)」
「(成功への道が確定…………でも、レールの上に乗せられるのは、自分の力じゃない様で嫌だ)」
「(…………選択肢は自分の手の中。そんな風に煽られて逃げたら、臆病モンだって思われちまうじゃねーか)」
ニンマリと口元を歪めながら、アンリは決めました。
「帽子さん、乗った」
そして、
「グリフィンドール!!!」
帽子を被ってから実に5分37秒。今年1番組分けに時間をかけた1年生:アンリ・ドーソンは、ワクワクしながら自分を歓迎するグリフィンドールの上級生達のテーブルへと駆けていくのでした。
ちなみに、
「シールズ、メアリ!」
「グリフィンドール!!」
「早っ!? もうちょっとこうないんですか!?」
「君の行き先は、あの少年の行き先だろう…………」
「……………………」
嬉しいけど、なんか喜べないメアリなのでした。
Henriは、英語読みではヘンリーで、フランス語読みでアンリだということに気がついて絶望。でも、この作品ではアンリで通します!!
というわけで、
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