おいでませドーソン箒専門店!-ホグワーツ魔法学校出張所- 作:Out Lazy
『ふぁっ!!?』
すぐにオレンジを経て黄色になると思いますが、なんで赤く染まってんすか…………いや、ありがとうございますすっごい嬉しくて気絶しそうです。
無事、組分けの儀式も終わり、校長…………アルバス・ダンブルドア先生の有難くも訳のわからない頭おかしい挨拶の後、歓迎会という名の飲み食いパーティーの最中のこと。
「へー、じゃあアンリは早い段階で?」
「そーなんだよー。3歳のガキが箒をお猿さん掴みでブラブラしながら曲芸飛行したんだってさ。じーさんは『将来こいつは立派なクディッチ選手になるに違いないっ!!』ってはしゃいでたね」
「おー! てことは、来年からグリフィンドールのクディッチの選手入りを狙う感じ?」
「まさか! 僕は箒職人、選手になんかならないよ。ま、専属箒職人の枠があるなら今からでも転がり込むけどね!!」
饒舌アンリ君、めちゃくちゃ輝いてます。これ以上無いくらいにテンション高いです。…………まぁ、同年代と話す機会が無かったから、確かに楽しいのだろうとは思うのですが。
「ハァーイ、アンリ。楽しんでる?」
「おぉ、我が愛しの幼馴染殿! 見ての通りさ!」
「気持ち悪いからその変なキャラやめなさい」
「…………へーい」
そしてそんなアンリに話しかけるのは、彼とどっこいどっこいでテンション高めのメアリさん。組分け後の渋い顔が嘘のようです。
「(あ、そういえばメアリ。一つ聞きたいことが)」
「(…………なによ?)」
急にひそひそ声になるアンリに、嫌な予感をしながらも、彼女は耳を寄せます。
「(いやあのな? あそこに、ハリー・ポッターがいるじゃん?)」
「(うんうん)」
「(なんか、超有名人らしいんだよね。僕も聴いたことあるような気がするんだけど、どうにもね、思い出せないのね。メアリは知って…………メアリ?)」
彼の言葉に、彼女は頭を抱え始めました。この幼馴染、何をトチ狂ったことをとでも言い出しそうです。
「(…………聞いたのが私で良かったわええ本当。彼を知らないなんて、いろんな意味で失笑物だし、悪ければこの学校にいられなくなるわ)」
「(う、うそん…………)」
「(本当よこのバカ!! 彼はね、ハリー・ポッターはね、『生き残った男の子』なのよ!!)」
ひそひそ声で叫ぶという奇妙な特技を披露しながら、胸ぐらを掴みガクガクと揺らし…………あ、アンリ君の顔が青ざめ始めました。
「(…………う、うそん。どーりで聞いたことがある気がした)」
「(聞いたことがあるレベルじゃないわよこの箒キチ!!)」
「(ご、ごめん…………あ、でも)」
…………あれ、アンリ君の顔がいけない方向に輝き出しましたよ?
「んじゃメアリ、あんがとさん!」
「あ、ちょ、アンリ! 逃げるなァ!!」
スルリとメアリから逃げ出した彼は、そのまま件のハリー・ポッターのもとへ。
「ハァイ、ハリー! 元気にやってるゥ?」
「あ、アンリか。急に声をかけられてビックリしたよ」
「んお? ソイツはすまなんだ」
ケラケラ笑いつつも少しも済まないような雰囲気は感じられないんですがねぇ…………それはともかく、アンリの顔、妙な笑顔を保ったままで気持ち悪いんですが。ホラ、ハリーだってビクついてますよ?
「ところでハリー。汽車でのコンパートメントが一緒だったよしみで頼みがある」
「な、何かな?」
「僕の箒の広告塔になって下さいお願いしますッ!!」
ジャパニーズに伝わる最上級の謝罪である、床にデコをつける動作、【DOGEZA】。割と知名度の高いその魔法使いどころか英国人にとっても奇抜なその所作とその発言の内容に、ハリーの思考は止まり…………
「ほぼ初対面の人間に何を言っとるかこのバカちんッ!!!!!」
大広間に響き渡る、怒号とツッコミ兵装【HARISEN】の乾いた音。思わず全生徒、全教師が凍りつく程度には目を引くものでありました。
…………彼らを知る者は、後にこの事をこう語りました。
『ある意味で、あの出来事はアンリ・ドーソンとメアリ・シールズのホグワーツでのポジションを決定付けたんだ…………『変人』とその『飼い主』ってね』
≡≡≡≡≡☆
行動力のあるバカ:アンリ・ドーソンの名はすぐに広まりました…………まぁ、諸事情でアンリも意外に有名人ですしね。
そしてそんなアンリと、己の行動に頭を抱えていたメアリは、その後の校歌斉唱も、校長先生のありがたい忠告も、何もかもが右から左に流してしまいながら、いつの間にかグリフィンドール寮の談話室に着いていて。
「それでアンリ、さっきのアレはどういうこと?」
アンリ君は、グリフィンドール男子寮、寝室の一室にて、ハリー君に怒られてました。ちなみに同室の野次馬のオマケ付きです。
まあ、それも仕方がないでしょう。だって、元々出自のせいで視線を集めていてむず痒かったのが、アンリの行動によってさらに視線を集めることになったのですからね。
「…………本当すんません。いや、言った内容については他意はないんですけど」
他意が無いのは本当の様です。寧ろその方がタチが悪いんですけれど。
「ハリーは嫌がるかもしれないけどさ…………ほら、ハリーは有名人じゃん? だから、ウチの箒を使ってもらって宣伝してもらいたかったんだ」
「わぁ…………ド直球」
野次馬の1人、同じ寝室のロン君が思わず声を漏らしました。まあ、その気持ちは分かりますけれど。
「……………………」
「ああ、勘違いしない様に言っておくけど、別に有名人なら誰でもいいってわけじゃあないよ。別に有名人ってだけの括りなら君でなくても、ホグワーツの先生方に頼めばいいわけだし。それでも君に頼んだのは、君となら仲良くやっていけそうだと思ったからだよ、コンパートメントでの君の印象からね」
「でも僕、魔法のことなんか全然知らないんだけれど…………」
「そこはお気になさらず。打算コミコミで話を持ちかけてる以上、僕の持てる知識なんかは伝えるし教えるさ。それに、飛行用箒自体は魔力さえあれば簡単に乗れるモンさ。そこはまあ、飛行訓練の授業でやるから、僕が教えるまでもないんだけどね」
こと箒に関わることなら、アンリの右に出る者はほとんどいないでしょう。それは魔法のことを何にも知らないハリーでも、散々箒職人であることの誇りをコンパートメントで聞かされたからなんとなく分かったのでしょう、一応は納得した様です。
「まあ無理なら無理でそれでも構わない…………が、もし広告塔になってもらえるのなら、既存のどの箒よりも素晴らしい箒を無償で渡すことを約束しよう」
どうかな? と不安そうに上目遣いでハリーを見るアンリは、じみーに尻尾を垂らす仔犬の様であり。
「う…………」
元より、箒や飛行に興味はあったハリー。そこに追い討ちをかけるかの様にこのアンリ君です。先ほどまでの怒りが一気に薄れてグラつきます。
その反応を見て、チャンスと感じ取ったアンリ。心の中でニヤリと笑いながら、続く言葉は。
「なんなら、ハリーの同室の君たちにも。もちろん広告塔になってもらうこと込みで、箒を渡そうと思うが…………どうだろう?」
こ、この男、外野を味方につけてハリーの首を縦に振らせる魂胆なのか!? 狡い、あまりにも狡い!!
「え、本当に!?」
真っ先に反応したロンは、キラキラした顔でハリーを、期待の眼差しで…………。
「わ、分かったよ。でも、確か個人の箒を持ってこれるのは2年生からだよね? だから、その時ってことでもいい?」
「もちろん!! て言うか寧ろこんな無茶な話に付き合ってくれてありがとうッ!!!」
ヤッター!!!! と叫ぶアンリ君は、そのまま───────
「……え、気絶した?」
「うわー…………おったまげー」
「ど、どうしよう?」
「……放置で」
幸せそうな顔で、仰向けに倒れましたとさ。
…………本当に大丈夫か、この箒職人。
本格的なアンリ君の活動は次回より。具体的には学校の飛行訓練で使う箒は安物よねってことで!
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