◇2 リリカルなのはにお気楽転生者が転生《完結》 作:こいし
珱嗄の無双試合が終わってから、ヴィヴィオ達の4日間に及ぶ合宿旅行は恙無く終了した。川で遊んだり、トレーニングをしたり、なのは達の試合を見たり、珱嗄に汚い戦い方を教わされたり、実践訓練をしたり、およそ10代女子がするようなことではない様な日々だったが、ヴィヴィオ達も楽しめたようで、帰りには皆大分筋肉痛に苛まれていたものの、皆笑顔を浮かべていた。
更に言えば、珱嗄は身体を動かしていなかった分あった多少の鈍りを解消出来た様で、最終日にはその威圧感だけで子供組を黙らせるという大人げない事をしていた。
殺し合いを日常にしていたこともある珱嗄だ、その殺気は本物なのだろう。
さて、とはいえ合宿から帰ってからもトレーニングは続く。ヴィヴィオ達の年齢は既に10歳を超え、インターミドルの公式大会に出場出来る年齢となっている。つまり、ヴィヴィオ達はこれから2ヵ月先にあるインターミドルチャンピオン大会に出場するつもりなのだ。
この大会ではエリートクラスとノービスクラスで出場者が分けられ、予選が行われる。エリートクラスは過去の実績や入賞歴のある者が振り分けられる故に、ノービスクラスに比べて実力の高い者がうじゃうじゃいる。初参加のヴィヴィオ達は、当然ノービスクラスだ。
出場申請は既に受け付けており、ヴィヴィオやリオ、コロナ、アインハルトの出場申請は、既にノーヴェが済ませている。
だが、問題が発生した。
「なんで俺も出場する破目になってんの?」
「いやいやいやいや、ごめんって! セインの奴が勝手に書いて出しやがったんだよ! あたしのせいじゃねー!」
「はぁ? 知らないんですけど、そんなの知らないんですけど?」
「いたたたたたたた!! 悪かったって! でも受付されちまったもんは仕方ねーだろ!? インターミドルは一応男女別になってるし、ヴィヴィオ達とは戦わないから良いだろ!?」
そう、ノーヴェの出す出場申請用紙に、セインが珱嗄の名前を書いて紛れ込ませていたらしく、珱嗄が参加する破目になってしまったのだ。セイン曰く、書き忘れかなと思ってやった、とのこと。本当に親切心でやっている分性質が悪い。
アイアンクローで悶えるノーヴェに、珱嗄ははぁと溜め息を吐いた。
現在ヴィヴィオ達は学校に行っている。珱嗄の出場が知らされたのは、ノーヴェが珱嗄の家まで謝りに来たからだ。
とはいえ、珱嗄の参加申請が通ってしまった以上、珱嗄も参加するしかない。優勝せずとも軽く負ければ良いだろうと考えることにした。いくら19歳として戸籍登録をしたからといって、それは流石に無いだろうと思うのだが、設定は設定、貫き通さねば意味は無い。
「はぁ……全く……」
「あ、と……代わりにってわけじゃないが、優勝者にはそれなりに賞金が出るぞ?」
「マジか」
珱嗄の考えが変わった瞬間である。
お忘れかもしれないが、珱嗄は現在無職。聖王事件の謝礼で生活しているので、このままだとそのお金もなくなり、生活も苦しくなってくる。そこに舞い込んできた賞金の話……珱嗄は目ざとくもその賞金を手に入れようと思った。
生活費も段々と苦しくなってきたしなぁと考える珱嗄。誰かがこれを聞けばすぐにこう思っただろう……働け、と。
◇ ◇ ◇
その日、インターミドルチャンピオンシップを開催する側である、DSAA公式魔法戦競技会のお偉いさん方が、参加者のリストを見て頭を抱えていた。何故なら、その参加者の中に問題児が1人紛れ込んでいたからだ。
この上に立つ人間達は、なんとあの機動六課で働いていた魔導師の1人である。彼は魔導師の才能は低いものであったのだが、その代わり分析や指揮能力に優れていた。それ故に、DSAA公式魔法戦競技会に就職し、スピード出世で上に立つ者達の仲間入りをしたのだ。
だから知っている。珱嗄という男の規格外さを。
「……もう一度聞こう、本当なのかね? この泉ヶ仙珱嗄という男がその……かのエースオブエースやS級魔導航空艦『ヴァルキリー』の艦長、神崎零を始め、フェイト・テスタロッサ執務官や夜天の書の主である八神はやて、更にはあのアリシア・テスタロッサよりも、強いというのは」
「残念ながら本当です。私はあの聖王事件で見たのです、珱嗄さんは当時機動六課にいた全ての魔導師が一斉に襲い掛かった所で、返り討ちにしてしまう程の力を有していました。ここ4年ほどはめっきり姿を見せていませんでしたが……まさかインターミドルに出てくるなんて……あの人なんで19歳で戸籍登録してんだよおかしいだろふざけんなよぶつぶつぶつ……」
真っ暗な空気を纏いながらブツブツとつぶやくようになってしまった男は、舞い込んできた問題に頭を抱えてしまっていた。最早この男の姿が、珱嗄という男が厄介な存在であることを証明していた。
「と、とりあえず……この泉ヶ仙珱嗄の参加をどうするか、だが……下手に参加を禁止すれば、理由も無いのだ……ますます厄介な事態になる。かといって参加させれば確実に優勝してしまうだろう……どうしたものか」
「もう参加させて、秘密裏にハンデを背負わせるしかないんじゃないかね? 魔法禁止、とか……」
「いやでも……素直に受け入れてくれるか……」
うーん、と悩む競技会の面々。
結局、まずは珱嗄と直接交渉してみるしかないなと結論を出したのだった。