◇2 リリカルなのはにお気楽転生者が転生《完結》 作:こいし
珱嗄のインターミドル出場に関して、厄介だと思った上の方の人達がやってきて、話し合いとなった。珱嗄は出場しないでいいと言ったのだが、出場者を主催者側が出場停止にすることは、何の問題も起こされていない以上無理だとなる。
ならば選手側である珱嗄が出場しないと言えば出られなくなるのかと言ったら、正直珱嗄の戦いを周囲の人々に見せるというのは、良い影響を齎してくれるのではないかという、とある場所からの後押しがあったらしく、出来れば出て欲しいらしい。
とある場所とは、つまり珱嗄を知っている偉い人達。例えば、元機動六課の魔導師達……つまり高町なのはやフェイト・テスタロッサ、八神はやて、神崎零といった最前線で仕事をする実力者達だ。どうしたものかと頭を抱えた珱嗄だが、主催者側の偉い人が、お金を積んだ。前金でこれだけ渡すから、出て貰えないかと。そして優勝すれば、追加でお金を出すとのこと。
それは賄賂という奴じゃないのか? と珱嗄は突っ込んだものの、こうなっては仕方がないので、珱嗄は特別枠で参加させるとのこと。
その特別枠というのが、『高名魔導師推薦枠』
ミッドでも幅広く名前が広まっている魔導師達が出場させてみては? と推している人物を出場させるという枠だ。コレに関しては当日知らせるだけでもイベントが盛り上がる。出場者の内訳は、出場者には知らされない。無論、珱嗄もしっかりトーナメントで勝ち上がれば文句は無いだろうという話だ。
「とんでもない暴論だよなぁ」
ともかく、そんな暴論の末に珱嗄は出場することにした。まぁ、お金をいただけるというのなら、特に辞退する必要はないかなと思ったのだ。細かいトーナメント表や業務的なあれこれは全て主催者側がやってくれるなら、特に問題はない。
まぁ、こんな例は初めてのことなので正直戸惑うこともあるだろうが、そこは頑張るらしい。
「……まぁいいや、どうせ前金段階で目的は達成されたような物だし……優勝云々はまぁ……適当に流すか」
主催者側の人間達が帰って行った後、珱嗄は一人そう呟く。ヴィヴィオが学校から帰って来るまでは大分暇なので、ソファでゴロゴロしていられるというのは、ニートにとって素晴らしい環境と言える。娯楽品は必要最低限存在しているし、お金も大量にある。やはり、素晴らしい環境だ。
すると、電話が鳴った。とってみると、相手は先程までここにいた主催者達。
「なんだ、まだ何か?」
『あぁ言い忘れていた。君には当日、魔法禁止を初めとした様々なハンデを背負って貰いたいんだ。何分、推薦者達からもそうするべきだと助言を頂いているのでね』
「ああ……はいはい、おっけーでーす。魔法禁止でもその場から動くの禁止でもなんでもいいすよ」
『そうか、そう言ってくれると助かる……ああ、あと……優勝出来なかった場合は前金を回収させて貰うので、そのつもりでいてくれ』
「なんだそれは聞いてないぞコラ」
前金の意味が無くなっているではないか。何処まで暴論だ、と珱嗄は文句を言った。すると、向こうも向こうで、珱嗄を出場させるのに無茶をしているらしい。優勝を約束出来ない人物を出場させるというのも、かなり無理な話なのだそうだ。なので、珱嗄を出場させるのに、必ず優勝出来る人物ですと言って提案を押しとおしたらしい。
そんな話は一切聞いていなかった珱嗄。話が無茶苦茶過ぎて流石に笑えてくる。
「……やっぱ俺出ない方がいいよね? 正直な話」
『…………まぁそうだね』
「あのさ、前金を出場しないで欲しいっていうお願いの対価として受け取るから、出場辞退で進めてくんない?」
『……そうだな、その方が正直進めやすい。だが上の人になんと言えばいいのやら……一度押しとおした話だからなぁ……』
「上って誰だ? スポンサー?」
『ああ、管理局の一部がスポンサーになってくれている』
「よし、じゃあ俺の名前出して良いよ。文句言うなら珱嗄がぶっ潰すって言ってたって言えば良いと思う。管理局の人間なら、多分俺の名前も知ってる筈だから。それでも分からない奴なら、直接俺がぶっ潰しに行くよ」
『物騒だな君は……分かったそうする。出場を辞退してくれて、ありがとう』
「あいよー」
ぴ、と通話を切る。
そして珱嗄はまた別の所へと電話を掛けた。連絡先は、管理局だ。数回のコールの末、電話に出たのは通話受付役の女性役員。
「あー……管理局の一番偉い人に繋いで貰って良いすか? 珱嗄って名前で取り次いで見て下さい」
『……』
短く用件だけ告げると、役員は慌てた様に待つように告げて、電話口から離れた。待機の音楽が鳴る。そして数分の後、電話に別の者が出た。
『………?』
「あーはい、その珱嗄。あの、インターミドルの参加者に俺が混じってたって話で、結局俺出場しないんで、それで担当者が文句言う様なら管理局潰します。聖王のゆりかごと同じ目には遭いたくないでしょ? それじゃ、温厚な対応お願いしますねー、じゃ」
言うだけ言って、珱嗄は電話を切った。
慌てた様な声が聞こえていたが、途中で遮る遮断の音。珱嗄は電話を元に戻し、またソファに寝転がる。
数日後、珱嗄の元に出場辞退の件がやけにすんなり通った、何かしたのか? という電話がきたのだが、珱嗄はそれに対して特になにも、と返すだけだった。