◇2 リリカルなのはにお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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少女達は地獄を見た。

 ヴィヴィオに与えられた課題。

 ――魔法無しで高層ビルから飛び降りても無傷で着地出来る様になること。クリア

 アインハルトに与えられた課題。

 ――魔法無しでセッティングされた100の戦いを勝ち抜くこと。クリア

 コロナに与えられた課題。

 ――ゴーレム創成による創成にかかる時間を現在の10分の1にすること。クリア

 リオに与えられた課題。

 ――魔力量を増やし炎と雷の属性変換を同時操作することが出来るようになる。クリア

 

 この一ヵ月、ヴィヴィオ達は珱嗄によって与えられた課題をなんとかこなした。死ぬ気でこなした。もうこれ以上ない位必死に、果ては戦争にでも駆り出されるかの様な気迫でこなした。全員こなせたのは一ヵ月の内の最終日であったが、それでもなんとかこなしてみせた。

 

 ――ミミズとゴキブリは嫌だ!!!!!!

 

 という女の子の部分が彼女達に時間の無駄使いを許さなかった。休憩も訓練も最大限の時間配分で行い続け、更には各々が課題の突破法を乞いに行った5人の先生達がドン引きする位の集中力を見せた。日常的な会話は一切耳に入らず、こうした方が良いんじゃない? という言葉に関してのみ彼女達の耳に入っていた。

 そしてそのアドバイスを即座に実行して習得してしまうのだから、その集中力はほぼ極限まで高められていた。背後にミミズとゴキブリを置かれた少女達は、最早それから逃げる為にあらゆる障害を突破する勢いを持っていたのだ。

 

「ぜー……はぁ……ぜー……はぁ……」

「な、なんとか……クリア……」

「ミミズゴキブリ……」

「融合しないで……気持ち悪いから……」

 

 一ヵ月経った今、彼女達は精神的疲労がドッと来たらしく、珱嗄の前で課題達成を証明したあと、グタッと倒れている。息は荒く、最早立つのも一苦労といった様子だが、それでも達成したのだから凄いだろう。

 珱嗄はそんなヴィヴィオ達を見下ろしながら、頬を掻く。ミミズとゴキブリはそんなに嫌だったのかと苦笑しながら、まぁ実際にやるつもりはなかったのだけどと内心で舌を出した。

 

「ぶっちゃけ本当にやってのけるとは思ってなかったけど」

「「「「―――はぁ?」」」」

「ごめんマジごめんだからそんな怖い顔しないでくれ」

 

 珱嗄の言葉に、殺意すら湧いた少女達の、無表情で冷徹な視線が珱嗄を貫いた。倒れている全員の首が、ぐりんと珱嗄の方へと向いたのだから正直恐ろしい。流石の珱嗄も少女達努力の根本を圧し折る発言を普通に謝罪する。

 でも、言葉は本当だ。本当にやってのけるとは思っていなかった。しかし実際にアインハルトは魔法無しで100人の精鋭達に勝利してきたし、ヴィヴィオもある程度高い高層ビルから飛び降り、その柔軟さでもって衝撃を受け流し、猫の様に着地してみせたし、コロナもリオも、課題をしっかりクリアしてきた。

 

 課題を終えたヴィヴィオ曰く、高い所から飛び降りる勇気があればなんとかなった。

 同じくアインハルト曰く、『不知火』を習得してなかったら無理だった。

 同じくコロナ曰く、もう何も怖くない。

 同じくリオ曰く、多分地震雷火事親父の内2つは敵じゃない。

 

 課題を終えた少女達は、それぞれの課題で一皮も二皮も剥けたらしい。なんというか、精神的にとても強くなっていた。

 

「まぁクリア出来た事は素直に凄いと思うさ。約束だし、ちゃんと御褒美をあげよう」

 

 そういった珱嗄の言葉に、少女達は色めき立つ。御褒美、ミミズとゴキブリという地獄に対する褒美だ。期待しない訳にはいかないのだろう。これ程の課題をクリアしたのだから、それに見合うものでないと割に合わないのだから。

 

「ああその前にアインハルトちゃんにほら、コレ」

「? なんですか?」

「ウチの義妹に頼んで作って貰った。お前さん専用のデバイスだ」

 

 すると、珱嗄は御褒美の前にとアインハルトへ小さな箱を手渡す。彼女がそれを開けると、中には豹柄の猫のぬいぐるみが入っていた。それは、ヴィヴィオの持つセイクリッドハートと同じサポートタイプのデバイスであり、覇王流の情報を基に作り上げた、まさしく覇王専用のデバイスだ。

 珱嗄はそれをかつての義妹である八神はやてに作らせていたのだ。一ヵ月で作れというのは、中々の鬼畜依頼だったが、アインハルトという少女のためというのならと一生懸命作ってくれたらしい。まぁその後珱嗄ははやてのお願いを一つ聞くことになったが、大したことでもない。

 

「個体名称登録はしてないから後で付けるといい」

「……ありがとうございますっ」

「喜んでくれりゃそれが一番だ、文句があったら一から作り直すからな、ウチの義妹が」

 

 ふざけんなや!! という叫びを、どこかの狸娘がした様な気がしたが、まぁ気のせいだろうと珱嗄は無視した。

 

 そしてそのまま視線を少女達へと戻すと、今度こそ御褒美タイムだと笑みを浮かべる。

 

「で、お前達に対する御褒美だが……選択肢が3つある」

 

 珱嗄は三本指を立てて、一つずつ折りながら選択肢を出した。

 

 一つ、休息を取る為の温泉旅行。

 二つ、好きなものを一つずつプレゼント。

 三つ、残り一ヵ月のコーチ

 

「一つ目と二つ目に関しては言わなくても分かるだろう。三つ目についてだが、コレはそのままの意味だ。正直俺がお前達を教えるのはこの一ヵ月だけにして、あとぐで~っとして様と思ってたんだけど、なんか協力者達に報酬をあげるって話をしたら、残り一ヵ月も見てやってくれっていうもんだからさ。仕方ないからヴィヴィオ達が選ぶのならってことで選択肢に入れた」

 

 そう、協力者達というのは、訓練中のヴィヴィオ達の様子を見ていたなのは達やアインハルトの対戦相手達、そして八神はやて達デバイス作成組らだ。あまりにも危機迫る様子が可哀想だったらしく、もっと優しく残りの一ヵ月教えてやれと全員に言われたのだ。その際の協力者達の有無を言わせない迫力といえば、訓練中のヴィヴィオ達に負けずとも劣らなかった。

 

「さ、どれがいい?」

 

 珱嗄は苦笑しながら三本指を前に出す。

 すると、少女達はお互いに見合い、頷きあう。最早答えは決まっていた。

 

「「「「三つ目!」」」」

 

 声を揃えて言う少女達に、

 

「……わはは、もの好きだねぇ」

 

 珱嗄はゆらりと笑った。

 

 

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