◇2 リリカルなのはにお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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セクハラ

 さて、それから数日。珱嗄もなんとか落ち込んでいたヴィータを立ち直らせて、いつも通りに訓練を続ける毎日を送っていた。

 だが、ティアナは珱嗄の言葉なんて何のその。変わらずオーバーワークを続けていた。珱嗄としてはその事に関してもはや言う事は無い。言うだけの事は言ったし、後は他の誰かがやってくれと問題を放り投げたからだ。珱嗄は何処かの主人公達みたいに正義感溢れてる訳でもないし、別段ティアナが大切という訳でもない。

 

 ただ面白い展開ならば、何でもいいのだ。故に、ティアナが危険である事を知りながら放置もするし、そのせいで誰かが傷つこうが死のうが関係なかった。

 

 そんな珱嗄は現在、食堂で朝食を食べていた。ちなみに、一人で食べている訳ではない。対面には神崎がおり、その隣にはヴィータが居る。そして珱嗄の隣にはアリシアもいた。

 今の機動六課の食堂はバイキング形式で、好きな物を好きなだけ取って食べろという物だった。無論、何時もそうという訳ではない、時には注文式になったりもする。原作はどうか知らないが。

 ちなみに、高町なのはとフォワード勢は現在朝練中。ヴィータは行かなくても良いのかと問われれば、別に毎回ヴィータが付いている訳ではないという答えを返す。

 

「で、今日はどういうスケジュール?」

 

「今日はなのはとフォワードの模擬戦だよ」

 

 珱嗄がパンをかじりながら言うと、ヴィータが答えた。そう、今日はなのはとフォワード勢の模擬戦。神崎と珱嗄の頭の中にある原作知識で言うならば、ティアナが暴走して魔王化したなのはにボコボコにされる日だ。

 言い方は悪いが、特に間違ってはいない解釈だろう。

 

 無論、神崎はそれを知っているし、珱嗄は思い出した様な顔をした。ヴィータはそんな二人に気付かずにため息を吐き、困った様に続けた。

 

「でもなぁ……ティアナの奴がちょっとな……」

 

「心配?」

 

「ああ。言ってる事は間違ってねーんだ。でも、焦り過ぎて周りが見えてない……このままじゃいつか本当にぶっ壊れちまう」

 

 サラダを咀嚼する珱嗄の問いに、ヴィータは悔しそうな顔で答えた。神崎も、どうにか出来ないかと思案するが、原作で解決している以上、自分がティアナをどうにか出来るとも思えなかった。

 

「大丈夫だよ。お兄ちゃんがいるもん」

 

「え」

 

 そんな空気の中明るい声でアリシアが言う。珱嗄はそのアリシアの言葉にナニイッテンノ? という顔で短い声を上げた。対して、ヴィータと神崎はアリシアに視線を向けた。

 

「はやての時もフェイトの時もお兄ちゃんはいつだって誰も傷つかない展開に私達を導いてくれたよ? なら今回だってきっとなんとかなるよ!」

 

 実際には、はやてやフェイトだけでなく幼少期のなのはの寂しさを埋めたり、アリシアを復活させたり、プレシアを生存させたり、神崎を改心させたり、なのはの怪我を治したりと、あげれば色々なことをして来ている珱嗄。その実績を考えると、確かに今回もどうにかしてくれそうだなぁと思えるのは、仕方ない事だろう。

 実質、神崎とヴィータはそんなアリシアの珱嗄への信頼が確かであると思えた。故に、無責任ではある物の今回も珱嗄はどうにかしてくれるのではないかと期待を持てた。

 

「え、俺が何とかするの?」

 

「出来ないの?」

 

「え~……」

 

 珱嗄はそんな三人の期待の眼差しに若干ひきつった笑みを浮かべながら頬を掻く。

 

「つってもなぁ……俺左腕無いし」

 

 珱嗄はとりあえず言い訳をする。実は今現在においても珱嗄は左腕の存在を隠していた。というか言いだせるタイミングを逃してしまったのだ。

 

「……でも、そんなのお兄ちゃんの魔法で治せるんじゃないの?」

 

「……バレたか」

 

 珱嗄はアリシアの言葉に肩を落とし、左腕を袖に通した。ソレを見たヴィータはかなり吃驚した様だったが、珱嗄は特に気にせずに左手で頬杖を着く。

 

「とはいっても、俺が何言ってもティアナには何の効果もなかったんだぜ?」

 

「もう一回言ったら変わるかもしれないよ?」

 

「……いっそアイツのトラウマ穿り返してみようか」

 

「「「駄目に決まってるだろ/でしょ!?」」」

 

 珱嗄は面倒臭くなってしらーっと明後日の方向を見る。背もたれに深く寄りかかり、だらだらと姿勢をくずした。

 

「正直、面倒だ。面白くない」

 

「ぶっちゃけたね……」

 

「だって俺がティアナを矯正した所で、俺に何の得がある。それにー俺あいつに左腕ふっ飛ばされたしー、結構痛かったしィ、かなり身勝手だしィ、正直やりたくないってゆーかァ!」

 

「根本的に駄目だなコイツ」

 

 珱嗄は駄々っ子の様にめんどくさがる。ヴィータはそんな珱嗄の様子に複雑な様子でそう言った。とはいえ、珱嗄の言う事も正論。というより、何でもかんでも珱嗄だよりというのは幾らなんでも身勝手すぎる。

 元々珱嗄はティアナの所属するスターズの人間ではないし、ここはスターズ副隊長であるヴィータが動くのが本当の所だろう。

 

「仕方ねぇ、今日の模擬戦……今のままなら確実になのはとティアナは意見を違える。その前にどうにか手を尽くすしかねぇ……あたしに何ができるか分かんねぇけど、やるだけやってみる」

 

 ヴィータはそう言ってごちそうさまと小さく言うと、席を立った。珱嗄はそんなヴィータを見ながら、焼き魚を咥えて嘆息する。

 神崎は神崎で何か思案しているようだが、何も思い付いた様子は無い。

 

「さて、それじゃあ行くとしますか」

 

 珱嗄はそう言って立ち上がる。そんな珱嗄の言葉に、アリシアは首を傾げながら言った。

 

「何処に行くの?」

 

 珱嗄はアリシアの問いに対し、ゆらりと笑ってこう言った。

 

 

 

「決まってるだろ。面白いから、ちょっとあのツンデレツインテールに―――――セクハラしてくんだよ」

 

 

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