◇2 リリカルなのはにお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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帰れ

「ふぅ~……案外しぶとかったな」

 

「あ、あぐ……う……」

 

 さて、現在俺の足元にはナンバーズの二人。クアットロとディエチが転がっていた。あの後ヴィヴィオに眼を瞑らせて全力疾走したのだ。そしてリミッターの無い俺の全速力なら、一瞬でその距離を縮められる。

 おいついた後は簡単。クアットロの白衣の裾を引っ張って振り回し、並走していたディエチにぶつける。吹っ飛んだディエチにクアットロを投げ付け、二人まとめて吹っ飛ばす。俺は吹き飛ぶ二人に例の宙歩きで追いつき、真上から地面へと叩き落したのだ。

 その結果、現在に至る。

 

「さて……次は―――!?」

 

「頂きです!」

 

「パp―――!」

 

 背後からいきなり現れた水色の髪の少女。たしかナンバーズの一人、セインだ。彼女は俺の背後に現れ、ヴィヴィオを引き剥がして地面に潜った。

 

「なっ……なるほど、これがディープダイバー……でも、引きずり出してやる」

 

 気配を察知して地面の中にいるヴィヴィオを、正確にはヴィヴィオに着せている俺のバリアジャケットを探知する。同じ魔力だ、探すのは簡単だ。

 そして発見した地点の真上へと瞬時に移動。そしてその地面向かって拳を振り下ろす!

 

「地面を揺らせば、中にいるお前は出てくるしかないだろう?」

 

 地面の中を移動出来るその武装は確かに便利だ。だが、地面に全身が密着しているのなら、地震や地割れが起きた時、どうなるだろうか? 決まっている、大ダメージを受けるだろう。地震ならば身体を揺さぶられ、地割れなら落ちていく。どちらにせよ大ダメージだ。

 

 俺はそれを故意的に起こす。拳を振り下ろした地面に衝撃を通し、正確にセインの身体へとぶつける。俺は複雑な人体構造をしている人の肉体に衝撃を正確に通せる、地面にいる人間に衝撃をぶつけるだけなら簡単すぎるぜ。

 

「ぐはっ……!?」

 

 セインは慌てた様に地面から顔を出す。その腕の中にはヴィヴィオもちゃんと抱えられていた。俺は飛び出してきたセインの腕からヴィヴィオを奪い返す。

 

「パパ!」

 

「よしよし、お帰りヴィヴィオ」

 

「怖かったよぅ……」

 

 俺はヴィヴィオの頭を撫でながら抱きかかえる。今は俺が父親なのだ。誰が好き好んでイカれた科学者の下へ娘をやるか。100年早い。

 

「ぐ……何を……」

 

「はいはい、教える筈ないだろう。さっさと死ね」

 

「っ!」

 

「!?」

 

 俺はセインの頭を踏みつぶそうと足を落としたが、そこには既にセインはいなかった。どうやら直前で連れていかれたようだ。誰かは知らないが、ナンバーズの一人だろう。クアットロにディエチも連れていかれてる。

 まぁ深追いする必要はないし、レリックもこちらにある。逃げたのなら放っておくとしよう。

 

「さて……ヴィヴィオ、帰ろうか」

 

「うん……」

 

 俺はヴィヴィオを抱き抱えながら、ゆらゆらと歩き出したのだった。

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 クアットロ達は、ナンバーズの中でも上位の戦闘要員であるトーレによって助けられていた。トーレの先天的な固有技能、高速機動のライドインパルスは珱嗄の足が振り下ろされる直前で三人を救出し即座に離脱する事が可能。珱嗄はその動きが見えていたし、追いかけて捕まえることも出来た。

 つまり、彼女達が逃げる事が出来たのは珱嗄の気まぐれとものぐささが幸いした事だった。

 

 だが、結果的にいえば彼女達はレリックの回収もヴィヴィオの奪還も出来ず、ただただ逃走するしかなかった。それほどまでに、珱嗄と彼女達の実力差は激しかったのだ。

 トーレ自身も、珱嗄に見逃して貰った事を理解していたし、戦闘になれば敗北は必至だったであろうという事も理解出来ていた。

 

「アレは駄目だ。奴には関わってはいけない」

 

「でもぉ、あの人がレリックを持っていたし、聖王のクローン素体も成功例かどうかは別として、彼と一緒にいましたし……目的を達成するためには彼を打倒しないと……」

 

「……でも、強すぎる」

 

「ディープダイバーがあんなに簡単に破られちゃ困ったもんですよ……」

 

 4人は、自身らの拠点に戻って来ており、歩きながら先程の戦闘にため息を吐く。言ってる事は正論。珱嗄は超重力効果の珠玉もディープダイバーも無効化し、ディエチのSランク相当の砲撃なんて素手で吹き飛ばしてみせた。さらに、クアットロとディエチを捕らえた時のあの速度は異常だ。一瞬以上に刹那的で、直線というよりは点と点を移動した様なまさしく瞬間移動。さらに、吹き飛んだクアットロとディエチの下へ空中を蹴って追いついて見せた。空中歩行が可能ならば、空中においても隙は無い。

 

 まさしく最強。彼女達に、珱嗄の隙は見当たらず、あったとしても付けいる手段を持ち合わせてはいなかった。圧倒的にデータが足りない。珱嗄の持てる全ての手段に対する対抗策を練らねばならないのに、彼の底は見えなかった。

 それもそのはず、珱嗄の持つ手段の数は百や千といった桁を超えている。対抗策を練るならば、珱嗄の持つ全ての魔法に対する策を練らねばならない。そう、保有魔法数34万2341個、内戦闘に使える魔法数21万7080個。全てに対策を練るならば、その準備にはかなりの時間がかかる。

 

「どうしたものか……管理局の最強は神崎零と聞いていたのだが……アレは神崎零以上だろう」

 

「神崎零の保有する稀少技術(レアスキル)、【無限の剣製(アンリミテッドブレードワークス)】。アレは確かに脅威ですが、あれは対抗策が出来てますからねぇ……あの人物は想定外ですよ……」

 

「手数が見えない……」

 

 トーレとクアットロは難しい顔でそう考え、ディエチは呟くようにそう言った。

 

「だが、まずはドクターへ報告だ。我々の持つ奴の情報を出来る限り伝える必要がある」

 

「そうですねぇ、まぁ……彼を除けば他の戦力は取るに足りない物ですからね!」

 

 4人は、どうせ現在自分達だけで考えていても結論はでないのだからと、考える事を止めた。

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 俺はヴィヴィオを連れて機動六課に帰って来ていた。ロングアーチにやって来た時には、俺の胸の中でヴィヴィオは寝てしまっていたが、気にせずに状況の確認をする。

 巨大モニターにはなにやら騎士甲冑を着たはやてがいた。どうやらリミッターを解除したようで、そのランクEXの魔力を惜しみなく発揮したようだ。まぁ完全に解除した訳ではない様だが、それでもランクS+程の実力を発揮している。夜天の書の得意魔法、広域殲滅魔法の効果は絶大で、空戦型ガジェットのほとんどを殲滅していた。

 

「なるほど、ここは原作通りか……」

 

 呟き、その場を去る。後の事は神崎にでも聞けばいい。どうやら、ナンバーズが俺を襲った事以外は原作通りの様だし、街でナンバーズ以外の気配を感じたのだが、それはきっとホテルアグスタの時に感じた少女の物だろう。こちらに手を出さなかったことからナンバーズが退却したと同時に退避したのだろう。

 

「やっと面白くなってきた」

 

 そう呟き、俺はいつものように隊舎の談話室へとゆらゆら向かったのだった。

 

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