◇2 リリカルなのはにお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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アイス溶ける開幕

俺が聖祥に赴任してからという物、実に数日が経った。俺も先生の仕事に慣れて来て、なんとか新春のバタバタした作業も落ち着いてきた頃、変化は起きた。

 

"――――誰か、誰か助けてください!"

 

 こんな声が俺の頭に響いた。今は夜で、俺はコンビニに行った帰りだった。はやての待つ家へと帰る途中、そんな声が聞こえたのだ。助けてと言われてもなぁと思ったりする。すると、後ろの方から誰かが走ってくる足音が聞こえた。見ると、俺のクラスの生徒である、高町なのはがそこにいた。

 前回では分からなかっただろうけど、実は高町なのはは俺のクラスの担当生徒だったりする。いつもはアリサ・バニングスや月村すずかというクラスメイトと一緒にいるが、整った顔立ちから男子生徒からは聖祥三大美少女とか言われてファンクラブまであるそうだ。俺からしたら小学生がマセてんじゃねえと思ったりするが、本人は無自覚らしいのでなんとも言えないもどかしさがある。

 

「はっ…はっ…あ、あれ? 珱嗄先生!?」

 

「おう、なのはちゃんこんばんわ。こんな夜更けに何してんだ?」

 

「あ、あの……その……私! 行かなきゃいけない所があって!」

 

 ふーん……となると、これも原作イベントなのか? さっきも変な声が聞こえたし、きっとそうに違いない。【気功】による索敵を発動させてみると、同担当生徒の転生者三名がある一点に向かっている事が分かった。この場所からして動物病院のようだ。さらにいえば、その場所になにやら危険な気配が感じられる。

 

「……なのはちゃん」

 

「な、なんですか?」

 

「とりあえずお前は帰りな。この先の動物病院に近づくのはちょっと危険だ」

 

 すると、なのはは驚いた様な顔をした。おそらくこの子の向かう先は動物病院なのだろう。だとすれば、あの危険な気配の主に遭遇し、危険な目にあうのが今回のイベントだろう。魔法少女リリカルなのはという世界の名前からすれば、きっとその時に魔法少女たる力を得るのだろうが、あまりに危険すぎる。

 

「でも……私、行かないといけないんです!」

 

 それでもなのはは強い瞳で俺にそう言い返した。相変わらず精神が成熟した子供だ。大人相手にそう言い返せる子供はそういないよ?

 

「……仕方ない。じゃあ俺も付いて行くからな。……ったく、折角買ったアイスが台無しだな」

 

 そう言うと、俺は動物病院へと駆けだす。その後ろからはなのはがのろのろと走り出した。遅い、なんというか運動が苦手とは聞いていたが、此処までなのか。

 

「ちょっと失礼するよー」

 

「にゃわ!?」

 

 俺はなのはが余りに遅いので、脇に抱える様にして再度駆けだす。この方が早い。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「どういうことコレ」

 

「えーと……あ、いた! フェレットさん」

 

 目の前には茶色のフェレット? と襲い掛かる黒い何かがいた。病院の壁は若干壊れており、黒い何かは触手を出して連続攻撃を仕掛けていた。フェレットってあんなに速く動けるんだなぁ。

 

「あ、なのはちゃんいねぇ」

 

 見ると、なのはは俺の隣から既に離脱しており、フェレットを抱えていた。マジかよ。考えなしに動き過ぎだろう。ってあれ? これってなのはが傷ついたら教師である俺の責任になる? そしたらどうなるだろうか、答え、解任→無職。はい、不味いよー、さっさと助けないとー………ヤバいってこれ!!!

 

 そう思って、全力で駆けだす。この歳ではやてに無職で責められんのはちょっといやだ。

 

「ったく……! 面倒な……」

 

 そう吐き捨てて黒い何かが襲いかかろうとしたなのはの下へ駆けていき、通り過ぎざまに抱え上げて動物病院を離れる。フェレットとなのはの体重は軽く、走る分には何も問題ない。

 

「! ……やっと来た。なのはちゃん、ちょいと我慢しろよ。もうすぐ正義のヒーロー様がやってくるから」

 

「え?」

 

「どぉけぇええええ!!!」

 

 真上からの雄叫び。夜中に近所迷惑すぎると思ったが、なにやら結界が何時の間にか張られていたようで、そうでもないようだ。

 そして真上から現れたのは、転生者三人衆が一人。神崎零。顔も隠さず、最近やっと頭身が身の丈に合って来た銀髪俺様男だ。そんな彼は真上から黒い何かに叩き込む様に拳に魔力を纏って殴り付けた。

 

「ウガアアアアアアア!?」

 

 黒い何かはその勢いに反対方向へと吹き飛ぶ。そして、そのままその黒い身体をボロボロと崩し、消えて行った。

 

「っと………ふぅ、大丈夫か? なのは」

 

 うわ、コイツ超馴れ馴れしい。そこまで仲良くないだろお前ら。

 

「え? ……もしかして同じクラスの神崎君? ど、どうして此処に…」

 

「ははは、何言ってんだ。なのはがピンチなら俺は何時でも何処でも駆けつけるさ」

 

「あ……そう、なんだ」

 

 引いてるぞ。あの友達や知り合いには全力で向かって行く事に定評のある高町なのはが引いてるぞ。ある意味凄いわ。それに、名前も名字呼びだよ。完全に他人扱いじゃん。

 

「っと、そうだ。さっさとジュエルシードを封印しちまわねぇとな。オイ、そこのフェレット。起きてんだろ。なのはに魔法の力を渡せ」

 

「あ、うん」

 

「喋った!?」

 

 うん、ナチュラルに喋るなフェレットモドキ。というかさっきから俺空気だな。まぁいいけどさ。

 

 

 で、なんやかんやでなのはがリリカルマジカル~って魔法少女化。魔法少女化って何れ魔女化しそうな字面だよね。閑話休題。

 それで変身したなのはの格好はまるで、というかまんま聖祥の制服を改造した様な物だった。その手には赤い宝石の付いたピンクの柄の杖。カード○ャプターさ○らの主人公が持ってる様な杖だな。まぁ、その杖でジュエルシードと呼ばれる青くひし形の宝石に触れて封印処理とやらを施した。

 

 その後は、結界を解いて今後の話を明日しようとか言う話に収まり、解散となった。魔法で飛んで行った彼は放っておくとして、一応なのはちゃんは送らないと駄目だろう。教師としてここで生徒を放っておいたら後々責任問われそうだ。

 

 はぁ……今夜もまたはやてにどやされるかなぁ……全く、嫌になる。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 なのはちゃんを送り届けた後、結局台無しになったアイスを買い直した。今はやっとこさ家に帰る所だ。まったく、はやての説教は長いからな。とてもじゃないか買えるのが億劫になるよ。

 

「はぁ…」

 

 で、そんな鬱気分でいればいるほど帰り道が短く感じる物で、気付けば家の前。電気は付いてるからまだ起きてるんだろうけど、玄関開けたらいるんだろうなぁ……

 

「た、ただいまー」

 

「遅いっ!!」

 

「えー……まだ10時…」

 

「家の門限は遅くても9時半や! 仕事がある時はしゃーない思てるけど、今回は違うやろ! こんないたいけな薄幸美少女放って何してたんや! 大体、アイス買いに行くだけでどんだけ時間掛かっとんねん! 亀か! もしくはナメクジかアホ!」

 

「いや、それは無いかなぁ」

 

「口応えすんなバカ兄がァ!!」

 

 何それ超理不尽。でもなぁ……言ってる事はかなり筋が通ってるしなぁ……ここは反論出来ないか。全く、良い妹を持ったもんだよ。未だに俺が来る前の生活はどうしてたのか謎だし、後見人のギル=グレアムも謎だし、魔法少女とか存在自体謎だし、なんかもう色々謎だし。いやになっちゃうよ。

 

「とにかく……心配したんやからな」

 

「あー悪かったよ。こっちにもちょっとした事情があったんだ。次から気を付けるさ」

 

「そか……じゃあアイス食べよ。溶けてもーたらもったいないしな」

 

「ん、そうだな」

 

 そうして、俺達二人はリビングに移動して仲良くアイスを食べるのだった。

 

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