◇2 リリカルなのはにお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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ヴィヴィオの才能

「……はぁっ……はぁっ……っ……っはぁ……! パパ……もう、無理だよ……! これ以上は……もう……っ!」

「大丈夫だ。ほら、身体の力を抜いて、大きく深呼吸するんだ」

「うん……すー……はぁ……すー……はぁ……」

「大丈夫か?」

「うん……少しだけ、楽になったかも」

「それじゃ、もう一回だ……」

「っ……来て、パパ……!」

 

 熱い熱気の中、汗だくで息も荒くなったヴィヴィオへ、珱嗄が近づいた。そして、ヴィヴィオのお腹をコンッと叩く。その衝撃だけで、ヴィヴィオは小さく悲鳴を上げて腰が砕けた様に地面へと座り込んでしまった。

 

「うー……やっぱり分かんない!」

「わはは、もう根を上げたか」

 

 というわけで、もう何度目かになる不知火の披露を終えてヴィヴィオが出した結論は、『何をどうしているのか分からない』だった。

 珱嗄はあの後、ヴィヴィオに不知火の説明をしようとしたのだが、負けず嫌いなヴィヴィオは自分で何をどうしているのかを見抜くと言ったのだ。故に、珱嗄はヴィヴィオが根を上げたたった今まで、数十回にも及ぶ不知火の披露を繰り返していた。

 

 ヴィヴィオが不知火で押し飛ばされるのも、おそらくもう何十回にも及ぶだろう。

 

「で、どうする?」

「むむむ……教えて下さい」

「素直でよろしい」

 

 ヴィヴィオは降参し、珱嗄は苦笑した。そして、不知火について解説を始める。

 

 まず最初に言っておくと、『不知火』という技は念能力あっての技だったものだ。珱嗄はそれを魔力を使うことで代用し、使用するに至っている。

 それに、この技にはハンターハンターの世界でも、この世界でも、大きな欠点がある。致命的で、直しようもない欠点が。

 それは、『オーラを感知出来ない一般人には使えない』ひいては、『魔力を感知出来ない一般人には使えない』という所だ。この技は元々、最初に膨大なオーラで意識を誘導し、逸らすことで自らの姿を隠す。相手がそのオーラ、この世界では魔力を感知出来ないのであれば、前提条件から崩壊するのだ。まぁ、そういう相手には『不知火』を使う程の実力者はいないのだが。

 

 一般人であること、それが『不知火』の攻略法ということだ。

 

 さて、それでは『不知火』の内容を説明していこう。

 まず、『不知火』は先も言った通り『相手の意識から自分を消失させ、高速で最大の一撃を打ち込む技』だ。言ってしまえば、ただの『突撃技(チャージ)』である。これを珱嗄の様な怪物が行なうからこそ、『不知火』という必殺技になる。

 

 最初の工程で必要なのは、相手の意表を衝く程の膨大な威圧感。つまり、膨大な量の魔力だ。

 これをがむしゃらに放出し、相手を怯ませるだけの威圧感を与える。良くある、『ビビらせたら勝ち』という奴だ。

 

 次の工程。意表を衝いたら間髪入れず、行動を開始する。放出していた魔力と威圧感の瞬時切替え、所謂気配を消すという工程だ。最高から最低への大きな幅での切替が、相手を更に困惑した状態へと陥れる。これにより、自分の姿を数秒の間完全に空気に溶け込ませるのだ。

 

 そして最後。その気配を消失させたその数秒で、相手の懐へ高速で潜り込み、全力の一撃を叩き込む。これが『不知火』の全貌。たったこれだけの構成で作りあげられた繊細で、大胆な必殺技である。

 

「……それだけ?」

「それだけ、簡単だろう?」

「……まぁ、そうだね。それなら、私でも出来そう!」

 

 ヴィヴィオはそう言って、元気を取り戻した様に立ちあがった。

 

「それじゃ、後は頑張れ」

「うん!」

 

 時刻は20時を回った。ヴィヴィオが眠るのはいつも21時。つまり残り1時間、ヴィヴィオは『不知火』の習得の為に費やしたのだった。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 昨晩、珱嗄は訓練場で疲れて死んだように眠るヴィヴィオを、洗浄魔法で身体の老廃物や汗等を取り除いた後、クリスに寝巻を展開して貰ってベッドに運んだ。

 今はその翌朝。ヴィヴィオは疲れの残る身体を起こして、先に起きていた珱嗄の朝食を食べた後、眠そうに眼を擦りながら学校へと向かって行った。

 

 そして、珱嗄はというと……訓練場の掃除をしていた。

 

「いやはや……我が娘ながら末恐ろしいね……」

 

 この訓練場には攻撃を当てる為のダミー人形がかなり設置されている。ヴィヴィオはこれらを相手に『不知火』の練習をしていたようで、30体の内の5体が、破壊されていた。内4体は何十回もの攻撃を与えられた末に破壊された物だと分かる。

 

 が、

 

 最後の1体ばかりは――――一撃で破壊されていた。

 

「不知火、とは行かないまでも……凄まじい速度で習得まで迫っている」

 

 ヴィヴィオは、凄まじい速さで『不知火』を習得しようとしている。少なくとも、一撃の威力に関しては問題ないくらいには習得に近づいているのが分かった。 

 

 

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