◇2 リリカルなのはにお気楽転生者が転生《完結》 作:こいし
さて、その日の放課後のこと。ヴィヴィオが学校に行っている間は暇でしかないので、珱嗄はずっと自宅でゴロゴロしていたのだが、ヴィヴィオ達が学校から帰る時間帯に、クリスからミストへと通信が入った。勿論ヴィヴィオからだ。
なんでも、放課後ノーヴェと練習するからパパも来て、とのことだ。
珱嗄はその連絡を受け、とりあえず待ち合わせ場所に指定されたミッド中央街の喫茶店へと向かうことにした。昨日ヴィヴィオの練習に付き合うと言ったのだから、その責任くらいは果たすとしよう。
そして、今はその待ち合わせ場所に着いた所。珱嗄は立ち止まりながら、目の前に佇む少女を苦笑気味に見つめた。
「わはは、また会ったね。覇王ちゃん」
「………どうも、昨日はやってくれましたね」
「でもちゃんと帰れたようで良かったじゃないか」
「………むぅ」
珱嗄の目の前にいたのは、昨日会ったヴィヴィオの友人であるリオとコロナ、そして娘であるヴィヴィオ、ノーヴェを始めとしたナンバーズのメンバー達、それに六課時代の仲間だったスバルとティアナだ。
そして、今珱嗄の目の前にいるのは、昨日珱嗄を襲撃してきた少女。覇王を自称するアインハルト・ストラトスだ。
彼女も彼女で、珱嗄との再会は予想外だったようで、気まずそうな表情をしている。
「あれ? パパ、アインハルトさんと知り合い?」
「パパ!?」
「あ、うん。アインハルトさん、この人は私のお父さんだよ!」
「………そ、そうなんですかー……」
「なんで眼を逸らすの!?」
アインハルトは、自分の目の前にいる少女に、貴方の父親を襲撃しました。とは言えなかった。さらに気まずさと罪悪感が増して、目を合わせられない。
珱嗄はアインハルトの目線の高さまでしゃがんで、頭を撫でた。
「ま、そういう訳だ。娘共々、よろしく頼むぜ。アインハルトちゃん?」
「……ちゃん付けはやめてください……」
「やなこった」
「むぅ……」
珱嗄は立ち上がり、此方を見ていたナンバーズとスバル達を見た。すると、ナンバーズのメンバーは教会で会った二人を除いて少し申し訳なさそうな表情をしていた。どうやら、同じ様にヴィヴィオを攫った時の事を気に掛けているらしい。珱嗄的には、面倒臭い。
「ああ、いいから。もう気にしてないからその顔面止めてくれる?」
「整形しろと!?」
「わはは、その調子で頼むぜチビ」
「チンクだ」
「え? ちん「言わせないよ! パパ!」……やるな、ヴィヴィオ」
珱嗄のボケをヴィヴィオが事前に止めた。流石に魔法少女の物語で下ネタはご法度だろう。
機動六課時代にセクハラ云々あった気もするけれど、多分気のせいさ。
そして、そんな珱嗄に近づいてきたのは、スバルとティアナの二人だった。フォワードとして、珱嗄と共に戦った二人だが、あの聖王の一件以来会っていなかったので、実に4年ぶりの再会となる。
「お久しぶりです! 珱嗄さん!」
「お久しぶりです!」
スバルの元気な挨拶に、ティアナも続いてそう言った。珱嗄はそんな二人の顔を見て、少し考える。そして無言で少し二人の顔を凝視した。二人は、そんな珱嗄に疑問を抱きながらも、黙ってその視線に耐えた。
すると、珱嗄はしばらくして短く言った。
「誰?」
「スバルです!」
「ティアナです!」
「二人合わせて?」
「「巣穴です! ってやかましいわ!!」」
珱嗄の4年ぶりのボケに二人は渾身のツッコミをかました。正直、珱嗄は二人の事をほぼ忘れかけていた。だが、このツッコミ混じりの自己紹介とツッコミのキレで思い出した。
「ああ、ティアナとスバルか。今思い出したよ」
「はぁ……珱嗄さんは変わりませんね」
「わはは、そういうティアナはなんか変わったのか? 全く変化が無いように見えるんだけど」
「胸の
「凄いねティア、そんな事言えちゃうんだ!?」
「そっか、じゃ確認していい?」
「何言ってるんですか珱嗄さん!?」
「どうぞ」
「どうしたのティア!? そんなキャラじゃなかったよね!?」
「スバル、アレからもう4年も経ったのよ? 私もいつまでもあの時のままじゃないわ」
「おっかしいなぁ! この4年間クールで仕事の出来る女だったティアは何処行ったのかなぁー!?」
どうやら、珱嗄の影響はヴィヴィオだけではなく、ティアナにも深く出ていたようだ。元々ティアナはツッコミだったのだが、珱嗄の影響であのセクハ……もとい、矯正の一件以来、ボケもこなせるハイブリッドツンデレにレベルアップしたらしい。とはいえ、この4年間は珱嗄と関わっていなかったから大人しかったようだが、此処に来て珱嗄と再会したので、その一面が表に出て来たようだ。
スバルはそんなティアナと珱嗄の怒涛のボケ連打にたじたじである。もともとは猪突猛進で冷静なティアナを振り回していたスバルだが、もうこうなってはツッコミに回るしかなかった。
「さて、と……スバルは何か変わったのか?」
「あ、切替え早い………えと、私は……ちょっとは偉くなりました!」
「偉くなっただけか……はぁ、失望したぞスバル」
「あ……うぅ……」
「馬鹿ねスバル、そこはえ『ら』くなった、じゃなくてえ『ろ』くなったでしょ?」
「そうだそうだ」
「あーれー? ここは変態の集まりだったっけー?」
珱嗄とティアナはスバルをある程度弄ると、満足気に笑みを浮かべた。そして、珱嗄はティアナとスバルの頭に手を乗せてわしわしと撫でる。
「なにはともあれ、久しぶりだな、二人共。4年前はまだまだひよっ子だったのに、今じゃすっかりひよっ子じゃないか」
「えへへ、ありがとうございま………変わってない!?」
「ありがとうございます!」
「ティア! 気付いて! 今の言葉じゃ私達何も変わってないよ!?」
スバルはもうそのノリについていけなくて悲鳴を上げた。
「パパ、そろそろ良い?」
「うん、結構満足した」
そんなスバルの悲鳴を聞いて、頃合いを見たヴィヴィオが切りの良い所で終止符を打ったのだった。