◇2 リリカルなのはにお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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二日目


アインハルトの修行風景

 翌日、またも放課後16時という時刻に、珱嗄とアインハルトは向かい合っていた。

 まずは前日のおさらい。昨晩、珱嗄との修行でアインハルトは『不知火「迦楼羅」』の構成を理解した。威圧し、姿を眩ませ、最短距離を最高速度で駆け抜け、最大最高の一撃を叩き込む。それだけかつ、高難易度の必殺技を。

 

 そして、今度はそれを自分流に構成を造り変えていかなければならない。

 といっても、アインハルトが考えるべき点は一つだけ。最後の一撃をどのような技にするのかだ。珱嗄の知っている技としては、『覇王断空拳』等が例に挙がるが、覇王流にはどのような技があるのか知らないので、結局の所アインハルトの出せる最大威力の技を、彼女自身が選ぶしかないのだ。

 

 だが、結局の所彼女の出せる必殺技とも言える技はその『覇王断空拳』であった。しかし、しかしだ。それはそれで『迦楼羅』の難易度をさらに引き上げていた。

 珱嗄の場合、『迦楼羅』に使うのは圧縮した魔力によって威力が大幅に強化された拳だ。魔力を圧縮するだけで済む分、おそらく最も簡単かつシンプルな『迦楼羅』であろう。まぁそれだけでも十分に高難易度の技なのだが。

 

 しかしアインハルトの場合は、ただシンプルに圧縮魔力による強化をすればいい、という訳にはいかない。その一撃までの『威圧・隠遁・接近』の三工程をこなした後に、『覇王断空拳』を繰り出さねばならない。

 足先から練りあげた力を練りあげ、拳足から打ち出す技術を繰り出さねばならない。そう、確実に『溜め』が必要になる技を、一瞬で発動させなければならないのだ。

 おそらく、最高難易度になるであろう組み合わせだろう。『覇王断空拳』と『迦楼羅』とは。

 

「そこで、まずは『覇王断空拳』を極めたいと思う」

「極める……ですか?」

「そう、まずは一瞬でソレを繰り出す所までレベルアップしなければ意味が無い」

 

 一瞬で、溜めて撃つ二工程を終わらせる。威力を抑えず、速さを突き詰める。

 

「どうやってですか?」

「いいか、まず今の君が出来る断空拳ってのは『足先』から練りあげた力を、『拳』で打ち込む技だ。その力を伝達させるにはどうしても、足から手という距離が時間を食い潰す。だから、この断空拳の『練りあげる力』を別から持ってくることにした」

「別から……?」

「この世界には常に色んな力が働いている。君の知ってるモノを挙げるのなら、遠心力や重力といったものかな」

 

 アインハルトはなるほど、と頷いた。強くなる為に、珱嗄の話を一言一句聞き逃さない心構えだ。

 さて、珱嗄の言うとおり、この世界には遠心力や重力といった力がある。自身の力を練りあげるよりももっと手早く力を収束させる方法など、幾らでもあるのだ。

 そもそも、相手に一瞬で接敵する時点で『突進力』という力が味方してくれているのだ。理論上は可能な筈だ。

 

「覇王ちゃんの場合、身体を通して力を伝達する柔軟性は既に十分ある。故に、高速で接敵する際に回転するんだ。そうすることで突進力に加えて拳に遠心力が加わる。そして突進力と遠心力の力を魔力で拳に収束し、ぶつける。こうすることで断空拳をより簡単かつスムーズに行える筈だ」

 

 珱嗄の言っていることを、アインハルトは真剣に考える。遠心力と突進力というのは、今まで彼女が断空拳に使っていた、所謂『自身の身体の中で作りだす力』とは違い、『外部から発生させる力』だ。それを操るとなると、今まで以上に断空拳を撃つのは大変だろう。

 だがしかし、アインハルトはそれでもやると決めた。勝つと決めた。

 

「……分かりました。教えてください、その技術を!」

「良い返事だ」

 

 珱嗄はアインハルトの言葉に、ゆらりと笑う。そして、まずは見本を見せよう、と言って構えた。

 

「! その構え……まさか……!?」

「そう、これは覇王ちゃんの覇王流の構えの一つだ」

 

 珱嗄の構えは、アインハルトそっくりだった。元々珱嗄は戦闘において構えない。これはあくまでアインハルトの為に構えただけに過ぎない。

 珱嗄はそう言うと、その状態のまま説明しながらゆっくりと分かりやすく技を繰り出す。

 

「まず、通常の断空拳だが……これは足先で生み出した力を拳に乗せることで、」

 

 ぐっと足を開き、身体を捻り、流れる様な動作で力を伝達する。そして、少し引いた拳をそのまま

 

「通常の拳に更なる攻撃力を上乗せする事が出来る」

 

 撃ち抜いた。空気を切る音と、空気を叩く音が響き、ゆっくりな動作なのにその拳には十分な威力が感じられた。おそらく、アインハルト以上。一度見ただけでこうも簡単に習得してしまうのか、とアインハルトは少し歯噛みする。

 

「だが、これは遠心力を利用してやると―――」

 

 珱嗄はその場で片足を軸に回転する。拳を腰までぐっと溜めて、そして身体が一回転した瞬間に前へ踏み込み、回転によって生み出された遠心力を消滅させないように身体を捻る。そのまま拳を回転の勢いのまま先程と同様に打ち出した。

 すると、

 

「!」

 

 珱嗄の拳からは、先程と同じ空気を切る音と叩く音が響いた。それは紛れもない、先程の断空拳と同じ威力を持つ別方式の断空拳だった。

 

「っと、こんな感じかな。こっちでも同等の威力が出せるんだ。突進力が加わる分、もっと威力が出るかな?」

「……なるほど」

 

 珱嗄の言葉に、納得いった顔をするアインハルト。それが出来れば、自分はもっともっと強くなれると確信出来た。そして、そこまでいってもう一つ確信出来た。目の前の男、珱嗄が……おそらくずっとずっと上に、下手すれば頂点に立っている男なのだと。格闘術ではなく、闘う者としてでもなく、戦う者として、頂点にいるのだと。

 だれも辿り着けない武の頂点。アインハルトが目指す、最強の領域。ソレが今、目の前に存在していた。

 

「あ、あの……」

「ん?」

「し、師匠と呼んでも、いいですか?」

「ん……まぁ、好きにすると良いさ」

 

 珱嗄の言葉に、アインハルトはぱぁっと表情を輝かせた。

 

「ありがとうございます、師匠……私の事はアインハルトと呼んでください」

「わはは、それは嬉しいことで―――じゃ、頑張ろうか。アインハルトちゃん」

「はい!」

 

 二日目の修行中。珱嗄とアインハルトは、師弟の関係になったのだった。

 

 

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