◇2 リリカルなのはにお気楽転生者が転生《完結》 作:こいし
それからというもの、ヴィヴィオもアインハルトも、お互いの修行を着々と行い、そして、遂にヴィヴィオとアインハルトの勝負の日を迎えた。
なんだか顔付きが変わった様に見えるのは、恐らく気のせい。錯覚であって、やはり二人の成長が彼女達をそう見せるのだろう。一目で分かった、一週間前よりも成長していると。
「強くなったみたいだね、アインハルトさん」
「はい、今度は必ず勝ちます」
対峙するヴィヴィオとアインハルトはそんな会話を交わす。
珱嗄やノーヴェ、一週間前にヴィヴィオとアインハルトが戦った際、観戦していたメンバーが全員揃っている前での対戦。しかも両者が最強の男、珱嗄による手ほどきを受けている。
間違いなく、彼女達の年齢で言えばトップクラスの実力者同士の勝負。
「どっちが勝つと思う? 珱嗄さん的に」
対峙する二人を見て、珱嗄にそう問いかけたのはスバルだ。
「さてね、どうなるかは分からない。元々ヴィヴィオは同年代じゃ頭一つ飛び抜けた実力に育ってるし、俺の教えた技も習得している可能性も十分にある。
珱嗄は二人の事をそう分析し、勝負がどうなるのかは分からないと言った。スバルもそれを聞いて息を飲む。つまり、実力は拮抗しているということ、勝負は何が起こるか分からない。ただでさえ才能に恵まれた二人だ、戦いの中で成長することもあれば、両者のバトルセンスが勝負を決める事もある。
「ま、強いて言うならば手札の数の差でヴィヴィオに軍配が上がるかな……アインハルトちゃんがそれをどうやって覆すか、見物だな」
珱嗄がそう言って、視線をヴィヴィオ達に移すと、丁度審判を務めるノーヴェが勝負を開始するところだった。
「それじゃ……始めんぞ、5分間魔法無しの一本勝負だ」
「はい!」
「はい」
構える二人、ノーヴェは両者を見て、手を上げる。
「試合―――開始!」
そして手を振りおろして、試合が開始する。
瞬間、二人の身体から膨大な魔力が溢れた。
『!?』
観戦していた珱嗄以外の全員が驚愕の表情が浮かぶ。
「おいおい……最初から全開かよ」
珱嗄がそう言った瞬間、膨大な魔力の気配が一瞬にして消え去り、
―――二人の姿が消えた。
そして直ぐにその姿は二人が立っていた場所の中間で現れる。
「はああああああああ!!!」
「っりゃああああああ!!!」
雄叫びをあげ、まるで自身を鼓舞するかのように拳と拳が衝突する。それはまさしく、不知火のぶつかり合い。
最初の一撃、打ち負けたのはヴィヴィオだった。
ただの不知火に、伽楼羅が負ける筈がない。一撃の威力に重きを置いたアインハルトの拳が、ヴィヴィオの拳を弾き飛ばす。苦悶の表情を浮かべるヴィヴィオと、打ち勝ったことに油断しないアインハルト。此処でただ打ち負けるだけな筈がないと、アインハルトは確信していた。
故に、ヴィヴィオが弾き飛ばされた後に身体を回転させ、斜め上から打ち下ろすように蹴りを入れてきたことは、アインハルトにとって予想の範囲内だった。
「ふっ……!!」
その半ば踵落としでもある蹴り落としを腕で防ぎ、足を絡め取ろうとした。しかし、
「まだです!」
「っ!?」
そこからヴィヴィオは――――三撃目の不知火に繋げてきた。
「不知火―――『惨殺』!」
それは、一撃の威力に欠ける半面『連撃』に重きを置いた不知火。そして、過去珱嗄が対戦した実力者……ビスケット=クルーガーはこの三撃目を絶対に躱せない必殺の太刀だと評価した。
果たして、ヴィヴィオの放ったこの三連目の不知火、アインハルトにとっても予想外な攻撃。防がれる前にもう一方の足も地面を跳んでおり、防がれた蹴りの上から踵落としを振り下ろす。
「ぐっ……!!」
だが、アインハルトはそれを躱した。腰を低く落とし、防いだ蹴りの軌道から身体を外して足から腕を放し、逆の拳で踵落としを迎え撃ったのだ。踵と拳がぶつかり、お互いの威力に弾かれる。
「きゃっ……!」
「っ……!」
そしてお互い弾かれた衝撃を利用して距離を取った。僅か数秒の間に行われたやり取りは、完全に二人の実力が拮抗していることを示している。
珱嗄も他のメンバーも、この勝負がどう転ぶか分からない。だが、二人の実力はもう十分高いレベルにまで到達していることは容易に理解出来た。
不知火と不知火の衝突が痛み分けで終わった、初撃決殺の企みはお互いの頭の中にあったのだ。だがそれが不発に終わったとなれば、後はどのタイミングで互いの攻撃を入れるかが勝負を決めてくる。
「行くよ……アインハルトさん!」
「負けません……!」
どちらにせよ――――二人の勝負はまだ、終わっていない。