◇2 リリカルなのはにお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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 それから高町なのは達大人組とヴィヴィオ達子供組は一旦別れて、それぞれ行動を開始した。

 

 子供達は川遊びをしながらも、拳の威力を使った『水斬り』といった練習をしたりしつつ、柔軟な体力作りをして遊んでいたが、その頃珱嗄達は全く別の本格トレーニングを行っていた。

 実践トレーニングとは、基礎や救助に必要な身体的な技術、またフィジカルトレーニングに加えて、魔力トレーニング等々、かなり多く、かつ厳しい練習のことだ。今ここにいないヴィヴィオ達からすれば、全く桁違いの量の練習と、自分達よりも差があり過ぎる技術。

 

 これが実践で、現場の最前線で力を振るう実力者達の姿。素直に、尊敬出来るだろう。

 

「っ……当たらない……!」

「凄い……4年前と全然差が縮まった気がしないよ……!」

 

 だがそんな実力者達でも、現在たったの一撃すら当てられない存在が一つ。

 見た目は、そこにただ立っているようにしか見えない。ただその場でゆらゆらと身体を揺らしているだけで、彼は普通に笑って立っていた。

 

 首をコキッと鳴らしただけに見えたけれど、その瞬間顔の横を魔力弾が通り過ぎる。ただ石ころを拾っただけに見えたけれど、しゃがんだ所で槍が真上を通り過ぎる。拾った石ころを何気なしに投げただけに見えたけれど、その石ころが珱嗄の代わりにバインドに捕まった。

 

 あらゆる攻撃が全て彼に当たらないままに対処されていた。

 

「ひよっこは……結局まだまだひよっこってことか……」

 

 珱嗄の呟きは、通信を通してその場に居た全員に伝わる。

 なのはも、フェイトも、元フォワードのメンバーも、ナンバーズの面々も、全員が表情を曇らせる。まだ、まだ届かない。あの時も感じた大きな壁が、未だ自分達の目の前に立っている。あの時も感じた高みが、全くこの手の届かない場所にある。

 

 ほんの少しの成長をしたところで、珱嗄には全く届く気がしなかった。

 

「皆、退いて! 集束砲(ブレイカー)で一撃入れて見せる!」

 

 だが、それでも諦めないのが彼女(なのは)だ。不屈の心は健在であり、エースオブエースと呼ばれた彼女の尤も強い部分がその諦めない心だった。

 レイジングハートの先に魔力が集束される。おそらく、一歩や二歩程度動いた所で躱せる攻撃ではない。直撃すればその地点を中心に広い範囲を殲滅するだろう。

 

 珱嗄も、この攻撃にはゆらりと笑みを浮かべた。

 

「スターライト――――ブレイカァァァァ!!」

 

 放たれた桃色の魔力砲撃は、珱嗄へと一直線に向かう。

 珱嗄はそれを障壁を出すことで受け止めた。

 

「無駄――――です!!」

 

 だが、珱嗄の障壁は容易に砕かれる。なのはの砲撃にはシールドブレイクの性質があるのだ。たった一枚張られた障壁程度では、防ぐことは敵わない。

 

 しかしそれでも、珱嗄には届かない。

 

「よっ……っと!」

 

 珱嗄はその桃色の閃光をその手で受け止めた。そして、過去アリシアへと教えたあの魔法を発動させた。青黒い鎖が砲撃を絡め取り、消滅させる。

 

 

 ―――『魔力殺しの鎖(マジックオブキリングチェイン)

 

 

 魔術師だけではなく、魔法ですら絡め取り、消滅させるバインド魔法だ。

 例え如何なる魔法であろうと、この鎖に囚われてしまえば最早その効果を為さないのだ。

 

「さて……俺もちょっと反撃しようかな」

 

 珱嗄は指を一本立てて、その先に魔力弾を作りあげる。バスケットボール大の魔力弾だ。

 

「よっと……こんな感じかな?」

 

 それを圧縮し、圧縮し、圧縮して、小さな弾丸の形へと変形させた。本来のサイズを無視したその魔力弾丸は、ふいっと珱嗄が指を向けた方向へと向けられる。

 

「『魔力銃(マジックバレット)貫通(トルネード)』」

 

 ぱしゅっと放たれるその弾丸は、放たれた瞬間目にも止まらぬ速さで回転し、空気摩擦でバチバチと音を立てて突き進む。障害物を全て貫通し、それは放たれた瞬間に高町なのはへと直撃する。

 

「うぐっ……!?」

 

 障壁を張ったのに、砕かれるどころか突き抜けてきた。見れば障壁の中央に弾丸が通り抜けた跡であろう穴がある。凄まじい貫通力を持っていることが瞬時に理解出来た。

 

 それこそ、なのはの張った障壁が障子紙レベルに見えるほどの――――圧倒的貫通力!

 

「一人、撃墜」

 

 珱嗄のその言葉を証拠付ける様に、なのはは魔力ダメージによって撃墜。

 

 そしてそこから次々と撃墜されていき、大人の訓練メンバーは珱嗄をその場から動かすことすら出来ずに、全員撃墜されたのだった。

 

 

 ◇

 

 

 ずーん、と落ち込む大人の面々。珱嗄はその大人たちを眺めながら、ゆらゆらと笑っている。

 

 やはり4年間も無職でごろごろしていた者に、懸命な訓練に励んでた自分達が負けたというのがよっぽどショックだったのだろう。元々強かった珱嗄ではあるが、その差が全く縮まらないのは、やっぱり悔しい。

 

 しかも、一撃すらいれられない、その場を動かすことすら出来ない、それだけでもう自分に自信を失くしてしまうのだろう。

 

「なにこれ? 私達って…………今まで何してたっけ……?」

「ニートに負けた……無職に負けた……」

「うわー、きついわー……」

 

 ブツブツとつぶやくなのは達。

 

 結局、お昼ご飯のその時まで、彼女達はずっと落ち込み続けていた。

 

 

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