◇2 リリカルなのはにお気楽転生者が転生《完結》 作:こいし
「うぅ……結局師匠手合わせしてくれませんでした……衝撃透しも習得したのに……」
「あ、あはは……すいませんアインハルトさん、パパは少し面倒臭がりな所があるので……」
その夜、初日のスケジュールを全て終えたヴィヴィオ達は、疲れを癒す為に皆で温泉に入っていた。
あの後、結局珱嗄とヴィヴィオによる指導でアインハルトは衝撃透しを会得した。が、その後ヴィヴィオとスパーリングをしている内に時間が経ち、アインハルトとの勝負はないままに特訓は終わってしまった。
アインハルトはそのことに少しだけ不満気味で、温泉に浸かりつつ肩を落としている。ヴィヴィオは自分だけ珱嗄と手合わせしたので、少しだけ罪悪感を感じたのか慰めている。
「でもあの水斬りといい、ヴィヴィオのお父さんって本当に強いんだね」
「あ、そういえばコロナはパパの水斬り間近で見てたんだっけ? いいなぁ」
「水斬りの方法知らなかったらしくて、ちょっと教えただけだったんだけど……一発で出来るとは思わなかったよ……」
「うん……パパって基本なんでも出来るから」
コロナは珱嗄の規格外っぷりを間近で見たことで、少しだけショックを受けていた。水斬り一つとっても自分よりずっと格上、自分が生涯を賭けて修行したとしても、追い付ける気がしない。
ヴィヴィオは肩を落とす人が二人に増えたので、少し慌てながらも慰める。珱嗄は全ての技術を持っている故に、基本なんでも出来るのだ。
とはいえ、その珱嗄から指南を受けられるというのは、願ってもない。この四日間の合宿でどれほど強くなれるか、ヴィヴィオもアインハルトも、それを考えると興奮してやまない。無論、コロナやリオ達の様に、珱嗄の事をあまり知らない者も同様だ。
「今頃何やってるんだろう? パパは」
「さぁ……でも、師匠のことですから、またどこかで寛いでるのでは?」
「あーありそうです」
ヴィヴィオ達はそんな会話をしながら、温泉で寛ぐ。
その後、ディープダイバーで水中移動をするセインの悪戯や、それを撃退するリオに火と雷の魔力変換資質があることの発覚など、色々イベントがあったのだが、それは珱嗄の知りえないことだ。
◇ ◇ ◇
一方その頃、珱嗄はなのはとフェイトの二人と一緒にいた。
空も暗くなっていたのだが、訓練の仕上げに付き合わされていたのだ。なのはとフェイトの二人を相手に、珱嗄はその攻撃を裁き続けた。時に
そして現在は、二日目のスケジュールについての話し合いをしている。
二日目は、大人も子供も混ざってのは
話し合っているのはその組分けだ。珱嗄を除けば、人数は偶数かつポジション的にも綺麗に別れた。
問題なのは、珱嗄のポジションだ。なのはとしても、フェイトとしても、実力の高い珱嗄はどこかで参加させたいと思っていた。
ポジションとしては、先陣切って最も早く衝突する『フロントアタッカー』、もしくは中盤を支え、攻守ともに高い実力を持つ者を配置するウィングバックかガードウィング、その役割はフロントアタッカーの手早い援助と劣勢を覆す為のもう一押し。ここが珱嗄にぴったりのポジションだろう。
あとは援護班を護り、正面から後方砲撃で決定打を撃てるセンターガードや、後方支援特化のフルバックなどがあるが、珱嗄向きではないだろう。
だが、
「じゃあ俺フルバックで」
「え」
「え」
「決まり、二戦目からルーテシアちゃんかキャロちゃんのどっちかと交代で入れてくれ」
何故か珱嗄は後方支援特化のフルバックを選んだ。相手を打ち崩すアタッカーではなく、それらを援護する役割。
なのはもフェイトも、茫然と口を開けている。そんな中、珱嗄は後ろ手に手を振りながらロッジへと戻っていった。
「……ど、どういうことだろう?」
「わ、分からないよ……でも、珱嗄さんは戦闘において無類の強さを持ってるけど、その実万能型だから……後方支援が出来ないわけじゃないと思う」
「……でも、珱嗄さんの後方支援ってなんかヤバそうじゃない? 回復とか一瞬じゃない?」
「……有り得るね」
フェイトとなのはは、明日の事を考えて少し嫌になった。珱嗄の後方支援がどれ程のモノなのか、遠距離魔法を行う事も出来る珱嗄だ、遠くに居ても回復が働きそうだ。そうなれば、最早無敵のチームが出来あがる。
「フェイトちゃん、二戦目の組分け決めよ」
「うん、とりあえず珱嗄さんは私のチームで」
「いや私のチームの方がいいと思うよ、ほら最近フェイトちゃん太ったって言ってたじゃん」
「それを言うならなのはだって身体が鈍り気味って言ってたよ?」
「いやいや……」
「そんなそんな……」
なのはとフェイトは珱嗄の取り合いを始めた。特訓が嫌な訳ではないが、負けるのはやはり嫌なのだろう。
「……」
「……」
そして訪れる沈黙。
「もう一戦、やろうか」
「望むところだよ」
結局、珱嗄の取り合いでなのはとフェイトは空戦試合を行ったのだった。