◇2 リリカルなのはにお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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試合結果

 ―――それはまるで、理不尽な自然災害の様でした。

 

 by泉ヶ仙 ヴィヴィオ

 

 

 ◇

 

 

 その場にいた、全員が地面に倒れ伏していた。エースオブエースと名高い高町なのはを始めとして、執務官であるフェイト・テスタロッサやティアナ・ランスター、そしてスバル・ナカジマ、キャロ・ル・ルシエ、エリオ・モンディアルを加えた元フォアード組、ルーテシアにノーヴェのナンバーズ組に、更にそこにヴィヴィオやアインハルト、リオにコロナを加えた面々が、全員もれなく倒れ伏していた。

 立っているのは、珱嗄ただ一人。自分の周囲に大量の魔力弾を配置して、ゆらゆらと笑っている。

 

 陸戦試合(りくせんエキシビジョン)

 

 大人も子供も混ぜたこの団体試合で、珱嗄以外の全員が倒れ伏す羽目になったのだ。

 珱嗄のポジションはフルバック……本来ならば前線に立つことなく、回復や補助といった部分で後方支援をするポジションだが……何故だか珱嗄だけが立っているのだ。前線のメンバーはもれなく倒れているというのに。

 

「うーん、ちょっと選択を間違えたかな?」

 

 珱嗄はそう漏らし、頭を掻く。

 さて、此処で何が起こったのかの説明だが……なんてことはない。試合が開始された瞬間に、珱嗄が目の前を魔力の絨毯爆撃で吹っ飛ばしたのだ。そう、視界に入る全ての建物を吹き飛ばし、味方諸共全て薙ぎ払ったという訳だ。

 フルバック、後方支援特化型の回復及びサポート要員。聞こえはいいが、それはつまり最も安全な位置に居る、戦闘では大した役に立たない、回復の為の魔導師だ。だが、珱嗄は裏を返して認識する。

 

 フルバック、最も後方に居る者―――つまり、開始直後は背後からの攻撃の心配が一切無く、その上で目の前のモノ全てを吹き飛ばせば必然的に勝利を収められる者。

 

 最も後ろにいるからこそ、最も勝利に近い。ソレが珱嗄の考えるフルバックというポジションだった。

 

 全てを薙ぎ払った珱嗄は言う。いつ俺がどちらかの陣営の味方になったと言った? 背後から撃たれない可能性がどこにある? 俺に背中を見せた奴から死んでいく、と。

 最早ルール無用のデスマッチじゃないかと言いたくなる気持ちは分かる。だが珱嗄はこの試合のルールをまず知らないのだ。試合形式だと言われたから配置して貰ったが、誰が敵で誰が敵じゃないのか、教えて貰っていないのだ。

 

 ならば全員吹き飛ばすしかないだろう。結論はここにあった。

 

 まぁ全ては話を聞いていなかった珱嗄が悪いのだが、こうなってしまっては元も子もなかった。

 

「まぁ俺の勝ちってことで」

 

 珱嗄はそう言うと、踵を返して観客として見ていたルーテシアの母メガーヌやセクハラシスターにしてナンバーズであったセインの下へと移動する。引き攣った笑顔で珱嗄を見る2人は、デバイスで測っていたストップウォッチを見た。もう止まっているが、その数字はこうだ。

 

 ―――00:00:12:34

 

 12.34秒、それが今回の試合が終わる前に掛かった時間だった。魔法が発動し、展開し、事象と化し、そして全てを薙ぎ払い、全員が倒れ伏すまでに掛かった時間が、たったのそれだけ。

 メガーヌもセインも、最早呆れるしかなかった。しかも、非殺傷設定の攻撃だというのに全員が気絶しているというのは、その威力が凄まじかったことを示している。本当に殺す気であれば、珱嗄の爆撃攻撃は全員の肉体を消し飛ばしていただろう。

 

 未だに、聖王のゆりかご事件の際に見せた珱嗄の実力は衰えてはいない。いや、むしろ増している気がするのは気のせいではないだろう。魔力操作技術も、魔法を発動する効率の良さも、その威力と鋭さも、そしてなによりその身体能力も、何もかもに磨きが掛かっている。ヴィヴィオ曰くずっとぐうたらしていたというのにも拘らず、だ。

 

「と、とりあえず皆を回収しましょうか」

「そ、そうですね!」

 

 もしかして、珱嗄はほんの少し動くだけでも急成長するのではないだろうかと思ってしまう。ヴィヴィオ達の訓練を見ているだけでも、成長するのではないだろうか、そう思ってしまう程の成長幅。

 メガーヌとセインは気絶した全員を回収するべく動く。余りの魔力攻撃に、バリアジャケットを展開していた全員がすっぽんぽんなのだが、同じ女性が回収したので後々の禍根は残らないだろう。

 

 エリオ以外は。

 

「わ……わわ……エリオ君、こんなに……!」

「あらあら……男の子って成長が早いものねー」

 

 セインとメガーヌがそれぞれエリオのアレを見て反応をする。何をとは言わないが、ナニを見て反応する。セインは頬を紅潮させて興味津々に、メガーヌは母親故に微笑ましい物を見たとばかりの反応だ。

 珱嗄はあーあー、エリオ君かーわいそーとゆらゆら笑っているが、動く気は無さそうだ。ぶっちゃけメガーヌとセインが女性陣の身体を隠し、珱嗄に見るなと威圧してくるからエリオの方を見るしかなかったのだ。

 

「エリオ君、強く生きろ」

 

 空を見上げながら、珱嗄はそう言った。

 

 この後第2、第3試合と、珱嗄抜きで試合が行われたのだが……その後、メガーヌが取っていた試合の映像記録の中で、エリオの全裸(股間アップ)が移った時……エリオは死にたくなった。

 割と本気で自殺しようとしたので、キャロが何かをして止めたらしいのだが……翌日珱嗄が聞いたら顔を真っ赤にして俯くばかりであった。

 

 エリオが妙につやつやしてて上機嫌だったのが、印象に残っている。

 

 

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