ストライクウィッチーズ 大怪獣空中決戦 作:サイレント・レイ
――― 大西洋 ―――
501JFWの基地を早朝から出港したジム達はリベリオン本国からの増援と無事に合流を果たしてブリタニアの離れて西進していた。
「……しかしまさかシスター・サラが投入されるとはねぇ…」
そして現在、シャーリーとジムはシスター・サラこと世界最大の空母であるレキシントン級空母『サラトガ』の艦橋を飛行甲板のほぼ中央部分で見上げていた。
只、同世代に当たる扶桑の『赤城』が姉妹艦の『天城』共々未だに第一線にいるのに反して、此の『サラトガ』は老朽化だけでなくエセックス級空母の大量竣工(更には近々エセックス級処か、レキシントン級さえ超えるミッドウェー級空母が順次竣工していく予定、更にミッドウェー級をも超える大型空母群も建造開始)した事から練習艦(扶桑で言えば『鳳翔』と同じ扱い)となっていた。
現に此の『サラトガ』の艦長に中佐のジムが就いた事から、嘗てはコロラド級やテネシー級の
因みに『サラトガ』の姉妹艦である
「それにしても精鋭艦隊とは聞いて呆れるな…」
しかもジムが言う通り、『インディアナポリス』以下の護衛艦艇以外はオハマ級軽巡洋艦、ファラガット級やポーター級にマハン級、グリッドレイ級、バッグレイ級駆逐艦等、いずれも近海警備や船団護衛しか出来ない
「まっ、此れが此の船の最後の御奉公になるかもしれないって事だから盛大な花道を用意してやらんとな」
此の任務後に『サラトガ』はエセックス級やミッドウェー級の建造資材として解体される公算が大である事を伝えられていたジムは艦橋の前後に背負い式に配備された20cm連装砲4基に目線を移した。
因みにこの20cm連装砲は当初は12.7cm連装両用砲に改装していたのだが、今回の任務の為にわざわざ外されて倉庫の片隅で埃を被っていた物に再改装されたのだ。
勿論、最悪の場合は環礁をこの20cm連装砲で吹き飛ばしてやろうとの上層部の目論みから来ていて、対空火器が貧弱で上空を高速で飛び回るネウロイには役立たずのグリッドレイ級とバッグレイ級のリベリオン艦屈指の重雷装駆逐艦が投入された事にも繋がっていた。
「ジムさん、シャーリーさん、そろそろ打ち合わせをしたいので来て欲しいそうです」
「ああ、すまん」
自分達を呼んだ芳佳に続いてジムとシャーリーは直ぐ艦橋に上がった。
「…環礁の動きが分かったのか?」
航海艦橋に着くや、ジムは敬礼して出迎えた部下達に報告を求めた。
「環礁は浮上して海流に流されているらしく、漁船を初めとしたブリタニアの艦船だけでなく西欧諸国のモノからもかなり情報が入っています」
「それ等に加えて潮の流れを測定した結果、大体此の円内部に存在していると思われます」
「……おい、此れ結構な範囲だぞ」
航海長がブリタニアからかなり離れた大西洋にコンパスを用いて円を描いたが、かなりの大きさだった為にバルクホルンが思わず文句を言った。
「…この海域は……『タイタニック』が沈んだ海域も入ってますよね?」
更に兵卒の1人が円の中に『タイタニック』沈没地点が入っている事に気づいたが、でしゃばった為に上官から怒られていた。
「『タイタニック』って、30年前に氷山にぶつかって沈んだ豪華客船ですよね?」
「ああ、そうだよ。
だがな、『タイタニック』にはちょっと面白い噂があるんだ」
「リベリアン!!」
芳佳の質問に答えたシャーリーだったが、余計な事を言おうとした為に露骨に顔をしかめたバルクホルンに怒鳴られた。
「『タイタニック』に何があったのです?」
「……『タイタニック』が沈んだ時、多くの乗客が真冬の海に投げ出された上、救命ボート群が怖じ気づいて救援に向かうのが大遅れをした為に大半が凍死したんだ。
処が、何人かの子供とその親達は環礁によじ登っていたお陰で凍死を免れたんだって噂が有るんだよ。
しかもその環礁は子供達がボートに乗り移った直後に沈んだ」
因みに、同コンセプトに“夜と氷の中で”より僅差で早いリベリオン製の“Saved from the Titanic”が存在するが、残念ながらこの作品はフィルムが散逸状態となっていた。
「しかもその環礁から何かの生物らしい鳴き声が聞こえたそうだ」
「今回のと『タイタニック』のとの関係も疑われるが、答えがどうであれ、害を及ぼす存在であればネウロイ同様に撃退するだけだ」
シャーリーの補足に続いてのジム言葉に芳佳以外の全員が一斉に頷いた。
――― 501JFW基地 ―――
「……警察の方々が何のご用で?」
芳佳達が大西洋にて活動を始めていたのとほぼ同時刻、501JFWの基地にて新人ウィッチの1人であるリネット・ビショップを求めてスコットヤードの面々と言う珍客が訪れていた。
「アイスランドが音信不通である事はご存知ですよね?」
「ええ、その事で先日から私の兄が部隊を率いて調査に向かったのですが…」
刑事の質問に答えたリネットだったが、彼女なりに何か嫌な予感を感じている様だった。
「もしかして兄さんの身に何かあったのですか!?」
「…それがよく分からないのです」
「分からない?
分からないと言うのですか!?」
兄の身を案じたリネットの質問に答えられなかった刑事達に、此の場に同席していたミーナが怒鳴った。
「いや、基地や島民にアイスランドに入港した艦船からは通信がある事はあるのですが、どれもが“鳥”“鳥だ”としか…」
「……鳥…ですか?」
汗を拭いながらの刑事達の報告に、彼等の許容範囲を超える何かがアイスランドで起こっている事はミーナ達にも察する事は出来ていた。
「…リベリオンには知らせたのですか?」
「ええ、ですがリベリオン処か連合軍はネウロイで手一杯でして門前払いを受けてしまいまして…」
「だから貴女方にお願いにまいったのです」
元々ネウロイ戦勃発後に占領した事からアイスランドはリベリオンが防衛を行うのだが、明らかにネウロイを免罪符にした厄介払いが行われていた事を察し、しかもその張本人だと簡単に予測出来る、とある空軍大将の顔をニーナは思い浮かべていた。
だが501JFWもネウロイで手一杯である上、主力の2人(+α)が不在である事から正直な処は余り余計な事に関わりたくないのがミーナの本音であった。
「………」
最も警察官達の必死の訴えに加えて、なにより兄の身を案じているリネットが行きたそうにソワソワしている事から、返事を表す大きな溜め息を吐いた。
――― アイスランド ―――
警察達来訪から数日後、ネウロイ襲来が暫く無いとの予測もあって、結局折れたミーナの命によって501JFWからリネット、美緒、エイラ・イマルタル・ユーティライネン、ペリーヌ・クロステルマンの4名が空母『赤城』以下の扶桑艦隊の協力下でアイスランドに派遣されていた。
只、基地を空にしない為の人選だったが、エイラは基地残留のサーニャ・V・リトヴャクを連れてけと駄々を捏ね、美緒の同行を望んだペリーヌが無理矢理着いて、拒絶されたがフランチェスカ・ルッキーニが行きたいと言った為にミーナに変な頭痛が起こっていた。
だがアイスランド基地のあるレイキャビクに到着する前に海上で多数の艦船が無人となって漂流、中には浅瀬に座礁している光景に早くも不吉な予感を感じさせた。
そして沖合いで待機している『赤城』に残留している美緒以外の501JFWの面々が辿り着いたレイキャビクの基地は破壊の限りを尽くされて、人処か犬や猫すらいないゴーストタウンならぬゴーストベースとなっているのが確認出来た。
「この島で何が起こってんだよ!?」
「分かりません。
生存者処か遺体すら見つからないんです」
残骸と化している航空機群だらけの飛行場に先行上陸した警察と扶桑陸戦隊の誘導で着陸したリネット達だったが、ストライカーユニットを脱ぐと直ぐ様陸戦隊員を捕まえていた。
だが彼等陸戦隊も現状を理解しておらず、現在も基地の遠くで生存者捜索の為のモノと思われる呼び掛けが多数聞こえていた。
「…此の基地に何人ぐらいが駐留していたのですか!?」
「少なくとも数千人は…」
「それが全員行方不明になったのですか!?」
「はい、しかも近くの町村の住民達も姿を消しているらしいのです」
「ありえません!!
こんなのが出来るのはネウロイ以外で考えられるのは人間しかいません!」
基地の現状にリネットとエイラが顔面蒼白になって早くも来た事を後悔していたが、若手ながら一部を野沿いてしっかりしているペリーヌが質問して、その返事に3人揃ってゾッとしていた。
「…此れ等は……ネウロイの仕業…じゃないな」
「ええ、ネウロイはビーム主体だから、こんな壊され方はしませんから…」
「それに火災も起きた形跡がありませんし…」
早速生存者と犯人の捜索を始めたエイラ達は、基地の破壊痕から真っ先に犯人と思われたネウロイだとの予測が外れていると判断した。
「それに“鳥”の単語が全く分かりませんね」
「ああ、ネウロイは基本兵器みたいな形ばかりだし、偶に陸上型で節足動物型はいるけど…」
「鳥型は確認されていませんから…」
「って事は気になるのが鳥だな………どうしたリーネ?」
全く予測出来ないでいるペリーヌ達だったが、倉庫群の1つの影で何かを見つけて駆け寄っていた。
「…何だよ、此れ!?」
それは白くドロドロした山型の物体であり、凄まじい悪臭を放っているだけでなく数多の虫達が寄って集っていた。
「…糞なのか?」
「…いえ、ペレット…未消化物の塊みたいですね」
「はい」
エイラが距離を取っていたが、此の物体に手掛かりがあると判断したリネットが倉庫の中にある手袋を見つけ、更にリネットに同感のペリーヌも続いて物体に手を突っ込み……見るからに不快感を表情に出しながら調べていた。
「……っ!?」
「リーネさん?」
「どうしたんだよ?」
でリネットが物体から何かを取り出すと、それを見つめながら硬直した為、ペリーヌとエイラがキョトンとしていた。
少し間を置いてリネットは両手を開いて取り出した物を2人に見せた。
「……ペン?」
「…中々良さそうな万年筆ですけど、これが何か?」
「……兄さんのです。
此のペンは………兄さんの万年筆です!!」
「なんですって!!?」
「それじゃ、コイツは……人間、リーネの兄貴の成れの果てだって言うのか!?」
リネットの報告に叫んでしまったペリーヌとエイラは暫く物体を見つめながら硬直していた。
だがその物体からベルトの止め金と思われる金属体が流れ落ちていた…
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