ストライクウィッチーズ 大怪獣空中決戦   作:サイレント・レイ

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第3話 夢見るバルクホルン

――― ????? ―――

 

 

「…此所は……私は『サラトガ』にいた筈…っ!?」

 

 少しの間自分の状況を分からずにいたバルクホルンだったが、足下から爆発音が聞こえた事から正気に戻り、今いる街が多数のネウロイの攻撃で至る所で火災と爆発が起きていて、その中を人々が阿鼻叫喚を上げながら逃げ回っていた。

 勿論、人間側も黙ってやられている訳ではなく、カールスラント空軍(ルフトバッフェ)の主力戦闘機Bf109の編隊だけでなく、本来は空軍とあまり仲が良いと言えない陸軍(どちらかと言えば空軍側に原因があるが…)の高射砲隊が援護射撃を行い、バルクホルンの同僚のウィッチ達も戦闘機を模した現代の魔女の箒であるストライカーユニットを両足に装着してネウロイの迎撃に当たっていた。

 だが元々魔法力が無いと倒す事が極めて困難なネウロイが今回は多数おり…

 

『駄目だ! 逃げ切r…』

 

『隊長がやられました!

誰か救援を…うぎ!?』

 

…左耳のインカムからは戦闘員達の悲鳴しか聞こえてこない通り、戦闘不能となっているウィッチが少なからずおり、正規軍に至ってはBf109群や高射砲隊が早くも壊滅寸前になっていた。

その為、ネウロイの一部は逃げ回っている民間人へ攻撃目標を変えていた。

 

「まさか…」

 

 そしてバルクホルンは此の場所、此の時がカールスラント撤退時に起き……現在も彼女自身を苦しめる悪しき出来事が起こった街である事を理解した。

 

「……っ!」

 

 現にバルクホルンが辺り一帯を見渡すと…

 

「…走れ!!

走れ、クリス!!」

 

…逃げている一団の中に妹のクリスことクリスティアーネ・バルクホルンが父に押されながら走っていた。

 

「クリス! 父さん!」

 

「クリス、走るんだ!」

 

 疲労から泣きかけているクリスを父が必死に励ましていた。

 

「逃げ切れたら、新しい服を買ってやるからな!」

 

「うぅ…」

 

「人形も沢山買ってやるぞ!

ケーキも食べ放題だ!」

 

 周囲の人達の一部がネウロイのビーム攻撃や、そのビーム攻撃で落ちてくる瓦礫に殺られるのが多々あるのを、父がクリスの目に入らない様にしていた。

 

「…っ! 不味い!!」

 

「その代わりギブアップしたら暫く飯抜きだぞ……っ!?」

 

 何かを感じたのか、不意に背後を振り向いた父が、ネウロイの一体が向きを変えて自分達の方に向かってきたのに気づいた。

 しかもネウロイが自分達目掛けてビームを放とうとしていた。

 

「…糞ぉぉー!!!」

 

 当然、父と妹を助けようとバルクホルンは急行したが、ネウロイが先端部を赤く光輝かせ……ビームを発射しようとした。

 

「…ダッシュ!!」

 

 自分が助からないと瞬時に判断した父は、せめてもクリスだけは助けようと彼女の背中を思いっきり突き飛ばした。

 

「ファーター!?」

 

「走れ、クリs…」

 

父の突然の行為に驚きながらよろめいたクリスが背後の父の方に振り向いた直後、その父がネウロイのビームによって後続の人達諸共蒸発した!

 

「父さん、父さぁーん!!」

 

「……ファーター…」

 

 目の前で父を見てしまったクリスが父の死に場所となった所の黒い染みの前で踞って泣いていた。

 だが此の行為が幸いして、ネウロイがクリスの真上を過ぎて、先を行く人達に攻撃を始めたお陰で、彼女は難を逃れる事で出来た。

 だが後方でネウロイ独特の不気味な呻き声が聞こえたと思ったら、別のネウロイが二体も向かってきていた。

 此のネウロイ達に気づいたクリスは父の最後の言葉を思い出して、直ぐに立ち上がって泣きながら走り出した。

 

「クリス!」

 

「…お姉ちゃん! お姉ちゃん!」

 

 当然、バルクホルンは両手の機関銃を先頭のネウロイ目掛けて射ちながらクリスに向かった。

 だかバルクホルンの銃撃はネウロイの表面こそ破壊出来てはいたが、ネウロイの急所であるコアを捉えていない為に直ぐに再生しながら、ビーム発射体制に入ろうとしていた。

 その為、バルクホルンは撃破は無理だとしてもクリスの楯になろうと飛ばしていたが、何処かのウィッチのモノと思われる砲撃(直後に此のウィッチのモノと思われる悲鳴が聞こえたが…)が上方から翔んできて先頭のネウロイを真っ二つに引き裂いた。

 

「…っ!?」

 

 此の出来事に、後方のネウロイに狙いを変えるか、クリス保護を優先しようかと迷ったバルクホルンだったが、先頭のネウロイは前部を消失してコアを剥き出しにしながらクリス目掛けて飛んできていた。

 しかもネウロイがビームを放とうとしていたが、バルクホルンの動きが僅かに遅れてしまった。

 

「…っ!?」

 

「ああ!!」

 

 だが突然、クリスの右側の建物が破壊されたと思ったら、何故かボロボロの別のネウロイと先頭のが衝突して二体共に破壊され………しつこい事に後方のネウロイが仲間(?)の残骸で自分自身が傷付く事を気にせずにクリス目掛けて突進してきたが、そのネウロイも真上から落下してきた何かに潰されてしまった。

 だが後者の余波で、吹き飛ばされたクリスが半ば転がって姉の所に来て、そのバルクホルンも機関銃を二丁とも捨てながら妹を抱き止めた。

 

「お姉ちゃん、お姉ちゃん!!」

 

 姉に抱きついた事で安心したからのか、クリスは泣きじゃくっていた。

 

「…あ、ああ……無事で良かった」

 

 バルクホルンもそんなクリスの頭を優しく撫でていたが、違和感を感じていた。

 

(…違う……あの時、私はクリスを守れなかった)

 

 此れが夢だと自覚し始めていたバルクホルンの経験では、クリスに襲い掛かったネウロイはギリギリの処で自分が撃破したが、そのネウロイが砕けた欠片の一つがクリスに直撃して、ある意味彼女自身がクリスを傷つけてしまったのだ。

 その為にクリスは現在も昏睡状態であり、バルクホルンは妹の医療費として自分の給料を全額注ぎ込んでいた。

 

「「……っ!?」」

 

 だが先程のネウロイが、しつこい事に呻き声を上げながら這い出ようとしていた事に気づき、より強く抱き付いたクリスを抱えたバルクホルンも、直ぐ近くの機関銃の一方を拾って身構えたが、ネウロイの真上の何か……否、巨大な右足が体の大半諸共コアを踏み抜き、ネウロイが消失した後も直下の地面を踏みにじっていた。

 此の出来事にバルクホルンとクリスが呆然と右足を見つめていたが、今度は二人の直ぐ脇に垣と一瞬勘違いてしてしまう程の巨大で長い尻尾がゆっくりと下りた。

 

「……何だ、コイツは?」

 

 クリスと共に目の前の右足と尻尾の主を見上げたバルクホルンだったが、生物感がある手足に反して岩とも装甲とも思える、見るからに強固な背中を見て、首に傷みを感じる程の巨体である主は、彼女が知る実在・空想問わずに見た事のない巨大生物……否、もはや怪獣と言うべき存在であった。

 そして此の怪獣からあらゆるネウロイと比較出来ない強大な力を感じ取れたが、何故か拒絶反応や恐怖を感じられず、逆に信頼感や安心感らしいモノを感じ取れ、どうもクリスも見た処、バルクホルンと同じ様であった。

 だが混乱しているバルクホルンに反して、絶滅したサーベルタイガーを連想させる牙を生やし、巨体の割りに比較的小さい顔を上げた怪獣は唸り声を上げて前上方の空を睨んでいた。

 

「…あ!?」

 

 怪獣の存在に忘れかけていたが、現在此所は戦場であり、怪獣が撃退した三体以外にネウロイはまだまだ多数いるのを思い出したバルクホルンだったが、ネウロイ側も此の怪獣を脅威と判断して総掛かりで押し寄せて来ていた。

 だが問題はその数で、歴戦のバルクホルンでさえ血の気が引く程の大多数であった。

 

「…っ!?」

 

「迎え撃つ気か!?」

 

 だが怪獣は僅かに伏せた後、上半身を後ろにゆっくり反らしながら大きく息を吸い込み始め、此の余波で残骸が大小問わずに吹き飛ぶ嵐級の大風が吹き……クリスを抱えていると言え、バルクホルンがストライカーユニットの出力を全開にして必死に耐えていなくてはならない程のモノであったが、怪獣は右足と尻尾を使って二人を守っていた。

 そして不意に怪獣が息を止め、ほぼ同時に大風も止んだ後、怪獣が攻撃体勢の最終段階に入ろうとしていたのを察したネウロイ達も、迎え撃とうと一斉にビームの充填を始めた為に空が不気味に赤く光っていた。

 

「…!? クリス!!」

 

 顔を上げてネウロイ達を睨んでいる怪獣の僅かに開いた口から、火の粉を含んだ白煙が出たのを見たバルクホルンがクリスの上に被さりながら伏せた直後、頭を激しく揺らした怪獣が特大の炎を爆音と熱波と共に吐き出した。

 ネウロイ達も遅れてビームの一斉射撃を行ったが、それ等は怪獣の炎に打ち負けるだけでなく、ネウロイ達もその炎に飲み込まれ……悲鳴とも絶叫とも思える呻き声を上げながら表面が沸騰するかの様に泡立って焼失していき、剥き出しとなったコア諸共一斉に破壊された。

 

「……うぁ…凄い…」

 

「……あれだけのネウロイが………唯の一撃で…」

 

 落ち着いたのが感じられ、クリス共々立ち上がったバルクホルンは、ネウロイ達が蒸発するだけでなく、射線上の建築物群までが消し飛んで地平線の彼方まで伸びていそうな更地が出来ている光景に呆然としていた。

 だが怪獣は数歩前進すると、勝利の雄叫びとも「二度と来るな!!」と言わんばかりのモノとも思える特大の咆哮を天上へと上げた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― サラトガ ―――

 

 

「……さん……ルンさん…」

 

「……?」

 

「…バルクホルンさん!」

 

「…っ! クリ、いや、宮藤か」

 

 目を覚ましたバルクホルンは少し寝ぼけてクリスと勘違いしたが、芳佳が体を揺らして起こそうとしている事に気づいた。

 らしさがあまり無いとは言え、軍人である以上は芳佳が何の為にやったのかをバルクホルンは何となく察した。

 只、素っ裸で寝ていたとは言え、芳佳の口から涎が僅かに垂れているのが気になっていたが……寝起き直後に彼女の両手が気になる動きをしていたし…

 

「…何があった?」

 

「先程、別動隊から例の環礁を発見したとの一報が入ったんです」

 

 芳佳の言う通りなのだろう、夕焼けで赤くなり始めている窓の外を見て、『サラトガ』が最大速度で走っているのが分かり、なにより部屋の外で乗組員達が叫びながら走り回っていた。

 

「着替えたら直ぐに行く。

先に艦橋に行ってくれ」

 

 芳佳が「はい!」と答えて直ぐ艦橋へと向かったが、その芳佳(元々クリスにそっくり)が退室直前にクリスと重なって見えた。

 

「……何故、今さらあの夢が形を変えて見たんだ?」

 

 直ぐ着替え始めたバルクホルンだったが、先程の夢がどうしても頭から離れなれかった為に動きが遅かった。

 更に着替え終えても窓の外を見つめていて艦橋に行こうとしていなかったが、『サラトガ』が減速を始めたのを感じると慌てて部屋から飛び出して艦橋へと走った。

 

「…よう、えらく遅かったじゃないか」

 

 で艦橋に着いて早々にシャーリーに笑われながら茶化されたが、普段なら言い返す処のバルクホルンが一瞬睨むもそのまま無視した為、シャーリーが逆に驚き戸惑っていた。

 

「…環礁まで後どれくらいなんだ?」

 

 バルクホルンの質問にジムが答えようとしたが…

 

「レーダーに感!!

友軍艦隊と環礁と思われます!」

 

「見張り所より前方にエセックス級空母と多数のフレッチャー級駆逐艦を確認した模様です!」

 

…その前に報告がもたらされ、環礁までもう間も無くである事が分かった。

 

「…総員戦闘配置!

艦載機、発進準備!」

 

 ジムの号令下、『サラトガ』や僚艦群が砲撃体勢に入ろうとし、更に『サラトガ』ではアヴェンジャー攻撃機が三基のエレベーターで格納庫から次々に上がって甲板上で暖気が始まり、その内の先頭の二機が艦首の射出機(カタパルト)に乗せられていたが、環礁その物は双眼鏡が無い者達には全く見えず、501JFWの場合は此所にいない美緒ならば彼女の固有魔法の『魔眼』で見る事が出来たかもしれないが、残念だが美緒をいない上にバルクホルン達三人にも見えなかった。

 最もそうこうしている間に水平線の彼方の目的のモノが序々に見え始め……主砲(両用砲)や魚雷だけでなく、役に立つか怪しい機銃さえも向けたリベリオン艦隊が包囲している中、防護服を纏った一団が環礁に上陸して調査を行っていた。




 感想・御意見お待ちしています。

バルクホルン
「…此れ、ある意味サブタイ詐欺だよな?」

 でも嘘はついてませんよ。
 さあ皆さん、いよいよ次回ギャオス登場です。
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