ストライクウィッチーズ 大怪獣空中決戦   作:サイレント・レイ

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第6話 悪手の始まり

――― スカパ・フロー ―――

 

 

「…兎に角、基地に帰らせて下さい!」

 

「アンタに来て貰わないと困るんです!」

 

 アイスランドでの鳥との出来事から数日後、扶桑艦隊と共同での“アイスランドの島民達の避難”と“鳥群の監視”をリベリオンとブリタニアの両海軍に引き継ぎをして、やっとブリタニアに戻った501JFWの面々はミーナと合流した。

 美緒達の報告でアイスランドの鳥の脅威性を理解したミーナは直接での駆除は危険と判断して、ブリタニアか扶桑の戦艦部隊を主体の艦砲射撃で巣があるだろうレイキャビク諸共焼き鳥(フライドチキン)にするのが1番として連合軍司令部に要請する事を決めていた。

 ところがミーナ達の要請は連合軍司令部だけでなく、ブリタニアと扶桑の両国からも拒否され、更に警察を経由してリネットに出頭要請が出された。

 

「お願いします!」

 

「ですが、着替えや資金も無いんです」

 

「用意します!!

我々が衣食住を責任を持って用意します!」

 

 只、出頭の理由が一切無かった事もあって、拒絶し続けているリネットを警察官達が必死に了承させようとしていた。

 

「いい加減にしろ!!!」

 

 で、彼等のあまりにしつこい要請にリネットに付き添っていた美緒が、彼女の意を察して怒鳴った。

 

「分かってあげなさい!!

リーネさんは兄が殺されて辛いのですよ!」

 

 更に一緒にいたミーナも彼等を睨んで注意し、“此れ以上やったら唯じゃおかさない”と表情に出していた。

 此の2人の上官の行為にリネットも安堵の息を小さく吐いていた。

 

「…リネットさんの気持ちは考えていませんでした」

 

 美緒とミーナに怯えて少し下がった警察官達だったが、我に返ったらしく直ぐリネット達3人に頭を下げて素直に謝った。

 

「ですが、あの鳥がブリタニアにやってきたらと思う我々の気持ちも分かって下さい」

 

 だが警察官達の言う事にも一理あり、更に彼等の無茶ぶりは使命感等から来ている事も察し、ミーナと美緒は“言い過ぎたかな?”とお互いの目線を合わせていた。

 

「……私は何所に行けばいいのですか?」

 

 リネットもそれ等全てを察して警察官達の要望に従う事とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 同・海軍司令部 ―――

 

 

「…失礼します……っ!?」

 

 美緒とミーナの同伴を条件に警察官達の案内でやって来たリネットが入室した司令部の一室には、ブリタニア軍の陸海空三軍の将校達がずらりと並んでいた。

 

「…初めまして、リネット・ビショップ軍曹」

 

「「…っ!?」」

 

 将校達の雁首に既に気が引けたが、彼等将校達の首班として自分達に背を向けて立っていて、リネット達の存在に気付いて振り返った人物がトレヴァー・マロニー空軍大将だった事に、気後れしているリネットは兎も角として、ミーナと美緒はギョッとした。

 元々、一挙一足処か存在そのモノが“傲慢”を表していたマロニーは、501JFW司令官ヒュー・ダウティング空軍大将の政敵であるだけでなく、過去の作戦会議でミーナに論破された事を逆恨みしていた事から501JFWの反対勢力の急先鋒で、彼の存分から自分達501のブリタニアや扶桑への要請が揉み消されていたのはマロニーだなと察した。

 当然ながらマロニーにミーナと美緒は警戒心から睨んでいたが、当の本人は(一方的な)因縁のミーナに微笑して、直ぐにリネットの方に振り向いた。

 

「……え、え~と…」

 

「…ふむ、幼いが中々優秀そうだな」

 

 目線が胸主体だったような気がするが、リネットを観察したマロニーは、ミーナの様に彼女が自分の政敵にはならないだろうと判断したようだった。

 

「…それで、空軍大将達が私達に何の用があるんだ?」

 

「なに、君達には今朝の内閣の決定を伝えるのだよ」

 

 リネットの前に出た美緒の質問へのマロニーの返しに、彼が不敵な笑みを浮かべた事もあって、美緒とミーナが嫌な予感を感じていた。

 

「我々ブリタニアはアイスランドの鳥の捕獲を決定した」

 

「なんですって!!?」

「なに!!?」

 

「此れは学術的側面ばかりでなく、稀少動物の保護と言う観点からも意義のある事と思う」

 

 ミーナと美緒が驚いている通り、只でさえ獰猛な上に複数もいる鳥の駆除に困難が予想されていたのに、駆除よりも遥かに困難な捕獲作戦の実施を決定したブリタニアを疑っていた。

 だが実際問題、とある陸戦ウィッチの「ブリタニア人は恋愛と戦争では手段を選ばない」との言葉通りに手段を選ばない傾向の強いブリタニアには前科があり、ネウロイ戦勃発前の1863年にカールスラントのゾーレンホーフェンで発見されたアルケオプテリクスの化石が始祖鳥(鳥類の先祖)である事が判明するや金にモノを言わせて買い取った為にカールスラント考古学会を怒らせる出来事(此の憎悪からカールスラントは10年後により完成度の高いアルケオプテリクスの化石を発掘した)があった。

 

「そして鳥捕獲作戦には君達501が主体となり、ビショップ軍曹には作戦主導をやってもらう」

 

「私が、ですか?」

 

「若いが、鳥に的確な対応をした以上は適任だと思うぞ」

 

 しかも捕獲作戦を501にやらせるだけでなく、作戦主導はリネットだと言われて、当のリネットが驚き戸惑っていた。

 リネット一任は一見したら小飼のブリタニアのウィッチである事からと思われるが、実際は基地訓練中に501へ編入された嫌がらせ人事だった事もあって、やはり此れも別ベクトルの嫌がらせ人事であった。

 

「で、でも、軍曹である私がやるのは…」

 

 全員が士官である501JFW唯一の下士官であると同時に最低位の階級だった事(此れは芳佳が編入された以降も同率で継続、その芳佳にも少尉昇進の形で後日抜かれる事になる)、更に内気な性格もあってリネットは先任達を引き抜いての抜擢に気が引けていた。

 まぁ、実際問題、リネットの人間性やミーナと美緒が説き伏せるだろうが、やはりペリーヌや出張で不在のバルクホルンあたりが反発しそうだった。

 

「ああ、その心配は無い。

此の作戦期間中、君は少佐への戦時特進が決まっているよ。

明日ぐらいに正式に通達される筈だ」

 

 尤も後者のは直ぐに手が打たれていて、“えっ”となっているリネットは兎も角として、その事を察していたミーナと美緒は揃って溜め息を吐いた。

 

「閣下、そろそろ説明を開始しても?」

 

「ああ、頼む」

 

「相手は行動範囲が広く殺傷能力も高い、作戦実施は貴女方501が担当ですが、作戦実施時のネウロイ防衛代行も含めて我々は協力は惜しみません。

他国にも必要な物が発生したら我々から打診を行いますので…」

 

 マロニーの許可の下に海軍中将が説明を開始したが…

 

「危険が大き過ぎます!!」

 

…それをミーナが遮った。

 

「習性も何も、確かな事はまだ殆ど分かっていないのに、推測だけでの捕獲はリスクが大き過ぎます!」

 

 只でさえネウロイ防衛戦に予断が許されない状況下での捕獲作戦の参加にミーナは危惧していたが、彼女なりに鳥捕獲作戦自体に本能的に危険性が高そうな事を感じていた。

 だからミーナは、捕獲作戦の中止は出来なくても、501JFWの作戦参加はなんとしてでも阻止してみせる、その為ならダウティング大将に迷惑が掛かろうと前回と同じくマロニーを論破してみせると、美緒でさえも驚く気迫を出していた。

 だが当のマロニーは、ミーナにニンマリと笑っていた。

 

「ヴィルケ中佐、此れは政府の決定事項なんですよ。

つまり、私の命令はチャーチル卿の命令でもあるのですよ」

 

 マロニーが、チャーチル卿……現ブリタニア首相である英傑ウィンストン・チャーチルの名前を出した事で、ミーナは“万事休す”な現状を悟った。

 少なくとも、ブリタニアはシビリアンコントロール(文民統制)がしっかりしている以上、軍最高司令であるチャーチルを味方にしているマロニーが絶対的であり、現に彼が勝ち誇った笑みを浮かべているのに反してミーナが唇を噛んでいる光景が物語っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 同時刻・環礁 ―――

 

 

 昨夜に発見された、勾玉とは別の大型金属の掘り出しが、バケツとスコップ片手の交代制の夜通し作業で続けられていたが、それがつい先程終了して、大型金属が絵文字に近い未確認文字が描かれた金属碑である事が判明した。

 

「すげぇな」

 

「やはり此の環礁自体が、遺跡みたいなモノみたいだな」

 

 金属碑のカメラ撮影が行われている光景を、リベリオンの水兵達と掘り出し作業をやっていたシャーリーとバルクホルンは、溜め息を吐きながら見ていて、手空きの水兵達も……金属碑を掘り出した事で大きく抉れた穴の上で同様に見ていた。

 

「バルクホルンさーん、あと1時間ぐらいしたら工作船が到着するらしいですよ!」

 

「ああ、そうか!」

 

「おお、意外に早いな」

 

 そんな時に、1度『サラトガ』に戻っていた芳佳が、伝令として状況を伝えて、バルクホルンは了解して、シャーリーは工作船の早い到来に驚いていた。

 プルトニウムの奪還こそ出来なかったが、環礁から発掘された多数の勾玉だけでなく、金属碑の発見にリベリオンは環礁のニューヨークへの曳航を決定して、捜索艦隊にその為の準備をするようにと命じていた。

 予定では、アースドリル付きの工作船で大型の杭を打ち込んだ後、『サラトガ』がニューヨーク沖まで曳航(途中で大型曳航船と交代予定)した後に本格的な学術調査が実施予定であった。

 此の為、環礁の西側に移動して艦尾を向けている『サラトガ』から牽引用の極太綱が複数伸ばされていて、一部の水兵達は杭打ちの為の場所の特定と、緊急時に備えて爆薬の設置作業をしていた。

 因みに捜索艦隊の一部は、大量の勾玉と環礁の各種サンプルと共に、リベリオンへ帰還していた。

 

「もう少ししたら、私達は『サラトガ』へ撤収だそうです!」

 

「分かった、先に行ってろ!」

 

「あ~あー…、やっぱコイツは無駄になったな…」

 

 バルクホルンとシャーリーは、自分達のストライカーユニットであるBf109とP51を念の為に持ってきて、近くに突き刺していたが、それが無駄になったので、シャーリーが自分のストライカーユニットを抜き抜いて担ぐと特大の溜め息を吐きながら穴を登っていったので、バルクホルンに睨まれていた。

 

「まっ、私達自身が無駄骨だったって事だな……?」

 

 バルクホルンも自分のストライカーユニットを引き抜いて、苦笑しながら金属碑を何の気なしに叩いたが、此の時に金属碑から何かを感じて硬直した。

 

「…どうしたんですか?」

 

 そんなバルクホルンに、シャーリーに続いて撤収しようとしていたカメラマンの1人が気付いた。

 

「…暖かい……体温と同じくらいだ」

 

「えっ?……太陽で熱されただけじゃないですか?」

 

 カメラマンもバルクホルンと同じように金属碑に手を当てたが、どうやらカメラマンはバルクホルンと違って違和感を感じていない様だった。

 

「それと、音がする……何だろう?

鼓動音みたいな音だが…」

 

「耳鳴りじゃないんですか?」

 

 バルクホルンが金属碑に耳を当てて何かを感じていたが、これもまたカメラマンは何も感じていなかった。

 だがバルクホルンは鼓動の様な音だけでなく、徐々に強まっていく何か頭に響く不快な音も聞いていたが、2つの音が突然途切れたと思ったら、何かが割れる音が聞こえ、此の音に関してはカメラマンも聞こえたようだった。

 だがカメラマンのギョッとした表情から嫌な予感を感じて、バルクホルンが金属碑から顔を離すと……彼女が耳と両手を当てていた3箇所がひび割れていた。

 しかもバルクホルンが思わず退いた直後に、3つのひびが一気に全体に広がって、そのまま金属碑は砕けてしまった。

 

「何だ、今の音は!!?」

 

「穴の方からしたぞ!!」

 

 金属碑の抱懐音に、環礁にいた全員が穴に殺到して、バラバラになった金属碑にギョッとした。

 

「…バ、バルクホルン……アンタ、何やった!?」

 

 シャーリーが叫んだ通り、金属碑の瓦礫の真ん前に立っているバルクホルンに、カメラマンが腰を抜かしている状況下だったから、バルクホルンが犯人にしか見えなかった。

 

「…ち、違う、私じゃない!!!

私は何もしていない、!!?」

 

 芳佳さえもが含まれていた、全員の驚きと冷気に満ちた視線に、バルクホルンが金属碑の瓦礫と周囲の者達に何度か振り向いた後に自分の無罪を主張しようとしたが、環礁が突然揺れ始めた。

 しかも立つ事すら出来ない激しい揺れだけでなく、炎と勘違いしかねる橙色の光を放ち出したので“環礁が爆発・沈没する”と思い、全員が一斉に環礁からの離脱を開始した。

 だが、短艇に上手く乗れたり、転げながら大西洋に落下するも短艇に引き上げられたのは少数で、殆どの者達は落下した大西洋で足掻いていた。

 昼間と言え、極寒の大西洋に落ちた以上は心不全等での死亡の危険性が高かったが、幸いな事に捜索艦隊も環礁の発光で違和感を感じて、直ぐに『サラトガ』以下の艦艇から救出の為の短艇が次々に下ろされていた。

 

「環礁が沈むぞ!!

沈没する!!!」

 

「助けて、俺泳げないんだ!」

 

「…っ! 掴まれ!!」

 

 P51を纏って無理矢理離陸したシャーリーは、穴から這い出たバルクホルンの近くで悲鳴を上げていた若い水兵を救い上げた通り、3人を助けた後に『サラトガ』へ飛んで行き、バルクホルンも彼女に習おうとしたが…

 

「うあぁぁー!!!」

 

「っ! 宮藤!!」

 

…芳佳が穴に落ちそうだったのに気付いて彼女を掴み、自分のBf109を履かせると、そのまま頭上に投げ飛ばした。

 

「バルクホルンさぁぁーん!!!」

 

 芳佳は此のお陰でなんとか飛翔して助かったが、バルクホルンは彼女を投げた反動もあって、滑り落ちてしまい……途中にあった出っ張りに左肩から激突して跳ね飛んだ後に海に頭から落下した。

 バルクホルンは着水の影響で失神するも、左肩の痛みで正気に戻った時にはかなり沈んでしまったが、気泡や上昇している水兵達が視界に入ったので、上下の感覚が失われなかったので、少なくとも彼女の近くで水没していく者が見当たらなかった事もあっての、彼等に続いて上昇しようとしたが、環礁の底が動いた事に気付いて、そちらに目線を向けた。

 

「……っ!?」

 

 なんとそこに巨大な右目と牙があって驚いたのだが、バルクホルンはその目と牙……否、此の謎の巨大生物の横顔自体に在視感のある自分自身にも驚き戸惑っていた。




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