ストライクウィッチーズ 大怪獣空中決戦   作:サイレント・レイ

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第8話 発令、鳥捕獲作戦(後編)

――― 重巡『筑摩』 ―――

 

 

「…巨大、不明生物?」

 

 アイスランドの鳥群捕獲作戦が開始するとのほぼ同時に現れたシャーリーとバルクホルンの警告に近い報告に対し、マロニーは驚き戸惑っていた。

 通常のマロニーだったら501の一員であるシャーリーとバルクホルンの言葉など馬鹿にしながら笑って否定していた筈だが、今回2人はジム達リベリオン艦隊の正式な報告書類を持ってきていたので………多分信用はしていたと思う…

 

「それが真っ直ぐ此所に向かってるんだ!」

 

「今すぐ、此の海域から離れろ!」

 

「シャーリーさん、バルクホルン大尉、そうは言われても、ですね…」

 

 当然の事だが、突拍子もないとも思えてしまう2人の言葉はマロニーだけでなく、少なくとも『筑摩』の艦橋にいる者達全員が完全に信用する事が出来ず、現に同僚のペリーヌでさえ疑っていた。

 

「バルクホルン大尉、お伺いしますが、その巨大生物はどれぐらいの大きさなのですか?」

 

「少なく見積もっても60m以上!!!」

 

 此の時点で既にそうであったが、リネットは感情の高まりもあって顔が赤いバルクホルンの自分の質問への返しに、ペリーヌと目線を合わせて益々疑っていた。

 因みにバルクホルンの頭上の水袋は『筑摩』の乗組員の厚意で氷入りの新しい物と取り替えられていた。

 

「此方は15mの生物で手一杯だ!」

 

 だがバルクホルンとシャーリーの訴えは、マロニーによって取り付かれる事はなかった。

 マロニーに同意なのが若干癪と思われるが、ペリーヌとリネットは無言で“仕方がない”と示していた。

 

「もういい、お前達じゃ話にならん!!

ミーナに話を着ける!

ミーナは何所だ!!?」

 

「ミーナさんは今、小佐達と鳥を追い込んでますから無理です」

 

 バルクホルンはミーナを最後の頼みにしていたようだが、リネットにそのミーナが不在である事を伝えられて露骨に舌打ちをし、そんなバルクホルンをシャーリーが笑っていた。

 

「…お2人方、リーネさんにミーナさんと同じ様に上官としての扱いをして下さい。

此の娘は今、戦時小佐として作戦指揮を取ってますので」

 

「「…え?」」

 

 おそらくバルクホルンがリネットに八つ当たりをすると思ったのか、ペリーヌがムスッとしながらリネットが戦時昇進してバルクホルンとシャーリーの2人より上官になっているのを伝えて注意し、更にリネットが苦笑しながら揃って疑っていた2人に襟の階級証を見せたので、揃って顔を青くしながら少しの間固まった後、一斉に「失礼しました!!」と言いながら頭を下げた。

 此のバルクホルンとシャーリーの揃っての謝罪に、リネットが戸惑っていた事もあって、マロニーが馬鹿にした様に笑っていて、ペリーヌが彼を軽く睨んでいた。

 

「ヴィルケ中佐より通信、“2020(ニーマルニーマル)に艦隊上空に到着”だそうです!」

 

 此の直後に伝令越しに入ったミーナからの通信で、リネットは腕時計を確認して捕獲作戦の次の段階に入ろうとしていると判断した。

 

「『赤城』に移ります。

短艇を用意して下さい」

 

「ほぉ~…頑張ってるな…」

 

 リネットがマロニーが頷いての了解を得ると、直ぐに艦橋から出ていこうとして、そんな彼女にペリーヌが付いていくのを見て、杉田が感心していた。

 で2人が出ていって直ぐに入れ違いに近い形で、妙な報告が伝令から伝えられた。

 

「『イラストリアス』より通信、哨戒機が沖合い50kmの所属不明の物体が航海中!!」

 

「物体?

船じゃないのか?」

 

 また作戦に水を指しかねない報告に、マロニーが露骨に嫌な顔をした。

 

「速度、65ノット!

当艦隊を目指して直進中だそうです!」

 

 “65ノット”の単語にマロニー達上層部が一斉にギョッとしたが、此の当時の艦艇………例えとして扶桑のを上げるが、海軍期待の最新鋭駆逐艦『島風』は40ノット、更に扶桑海軍が誇るもネウロイ戦では役立たずの酸素魚雷でも約48ノット(但し設定や型式で若干前後する)、後日に魚雷艇『震洋』(ロケット推進有りの6型)が50ノットを出すも、不明物体の速度は当時の人類の科学技術では出すのは不可能だったのだから仕方がなかった。

 更に新たな伝令による追加報告で、物体が潜航していた事が伝えられて、不明物体が艦艇ではないと簡単に断定出来たが、その正体までは分からずにいたが、シャーリーとバルクホルンはギョッとしながら目線を合わせて正体を察した。

 

「奴だ!!」

 

「もう来たのか!!?」

 

 シャーリーとバルクホルンは接近しているのは、自分達が追っていた生物だと判断したが、“なるようになるしかない”とも同時に思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 空母『赤城』 ―――

 

 

 リネットがペリーヌと共に『赤城』の格納庫に入ると、既に6個の檻が組み立てられ、完成したバリケード付きの銃座で配置に着いた扶桑海軍陸戦からの狙撃班が三八式歩兵銃の確認作業をしていて、そして鳥用の撒き餌である豚の死骸が次々に山積みにされていた事から、準備はほぼ出来ていると判断した。

 

「サクシニルコリンの飽和溶液が3ccずつ、間違いありませんか?」

 

「ええ、数秒で筋肉の弛緩が始まる筈です」

 

 リネットは狙撃班の所に赴き、班長や軍医から麻酔の確認を取っていたら、此の直後に接近している鳥6匹が目視で確認されたのが伝えられた。

 

「…照明を落として下さい」

 

 リネットの指令は直ぐに実行され、同時に作業員が一斉に撒き餌から離れていった。

 暫くの間、リネット達は撒き餌か天井を見詰めていたら、ソードフィッシュの発動機の音が聞こ出し、その音は徐々に大きくなっていた。

 

「鳥、真上に到着!!!

『陽炎』『曙』『潮』『長月』『皐月』が探照灯の照射を開始しました!」

 

 そして伝令によって鳥群が着いた事が伝えられ、第二段階に入ったと判断したら、リネットは前方のエレベーターの開放部から鳥の1匹が見えた様な気がした。

 リネット達は知らなかったが、旗艦『筑摩』も命令を出しながら『霰』『秋月』『照月』『涼月』『初月』と共に探照灯を照射開始し、『赤城』を中央に配置した輪形陣を展開する艦隊による探照灯による光の檻で鳥群全てを艦隊上空に止める事に成功した。

 

『リーネさん、美緒が行きますよ!!!』

 

 続けて『筑摩』以下の11隻は探照灯の光を中央に向かって徐々に角度を落として鳥群の高度を落とさせ、更に美緒が先導としてわざとストライカーユニットを派手に吹かしながら急降下で第二エレベーターから『赤城』の格納庫に突入、此の行為で鳥群は『赤城』に降下をゆっくりとしだした。

 

「鳥が来るぞ!!!」

 

「…射撃、用意!!!」

 

 『赤城』の格納庫に入った美緒が銃座に飛び込んでストライカーユニットを脱ぎ捨てながら鳥の到来を報せると班長の号令で陸戦隊員が一斉に三八式歩兵銃に弾を装填して身構えた。

 尚、リネットとペリーヌもそうであり、美緒もペリーヌから受け取っている三八式歩兵銃は1905年から扶桑陸軍に採用され、東アジアを主に多くの国々にも輸出された名銃の1つであったが、流石に40年近くの月日が経つと“火力不足”“長槍の要領もあって長い銃身が邪魔”等の不満や不具合が指摘されるようになった為に5年前の1939年から、後世“キング・ボルトアクション”と称される九九式小銃に更新されつつあったが、今回の捕獲作戦で“低火力”と“弾道性の良さ”もあって敢えての使用となり、扶桑の工業力の無さや扶桑陸軍の予算難から未だに携帯者が多々いた事が今回は幸いとなって在庫に困りはしなかった。

 話を戻して、最後に美緒も三八式歩兵銃を身構えてもなお、鳥群は彼女達の前に姿を現さなかったが、鳥群の羽音が徐々に大きくなっていた。

 

「っ、来た!」

 

 第二エレベーター部分に探照灯の光が一瞬差した時に鳥の1羽が『赤城』の格納庫に進入、ペリーヌが思わず叫ぶのとほぼ同時に撒き餌に気付いた事による鳴き声を軽くしてからホバリングでゆっくりと撒き餌に近付き出すと、他の5羽も次々に進入しては同じ様に撒き餌に近付いていった。

 鳥の先頭は銃座バリケードの影に潜んでいるペリーヌ達の気配を感じて警戒しているのか、撒き餌の前で止まってしまったが、他の5羽も辿り着いて少しした後、6羽が次々に撒き餌を囲む形で降り立った。

 

「…エレベーターを上げて下さい」

 

 リネットは鳥群がまだ撒き餌に張り付こうとしていなかったが、鳥群が『赤城』の格納庫から逃げないと判断すると、銃座のほぼ反対側にいる通信士に慎重にしてゆっくりと近付いて格納庫の閉鎖を命じた。

 通信士はリネットに「了解!」と答えると、先ずは背負っていた通信機で『筑摩』の杉田に連絡して許可を了承を貰い、『筑摩』以下の随伴艦が鳥群に警戒されない様に探照灯を切ると、先ずはリネット達から見て奥の方の第一エレベーターが上昇を開始した。

 

「……ゆっくりですよ………ゆっくり、とです…」

 

「分かってます」

 

 リネットはエレベーターの上昇に慎重さを通信士越しに求めていたが、当の鳥群は撒き餌を貪りだし………瞬きが一切無しのギョロ目を初めとした強烈な不気味さでリネット達が少し引いていたが、此の為にエレベーターに全く気付いていなかった。

 そして第一エレベーターが上昇しきって音を出した時、鳥群は一斉に頭を上げたので美緒達狙撃班が強張ったが、少しの間だけ硬直した後に口内の肉を飲み込んでまた貪りだした。

 

「…良し、次は第二エレベーターをお願いします」

 

 リネットの指令で第二エレベーターが上昇を開始、彼女達の後方の第三エレベーターは既に上昇しきっていたので、此の第二エレベーターが上昇したら鳥群を格納庫に閉じ込められる筈であった。

 

「……出来るだけ6羽を1度に、だぞ…」

 

 美緒は最終段階が目前に迫った事で狙撃班に変な緊張感が出たのを察して確認を促したのだが、彼女の言い方が不味かった為に班長が攻撃命令だと勘違いして右手を振り上げた。

 

「…っ、まだエレベーターが」

 

「撃て!!!」

 

 リネットが班長の勘違いからの行為に気付いて止めようとしたが、その直前に班長は右手を振り落としながら命じ、美緒とペリーヌがギョッとしながら班長に振り向くと同時に狙撃班は一斉に発射、美緒の制止が無視される形で前方の1羽の背中に麻酔弾が次々命中した。

 

「3羽が逃げる!!!」

 

 だが此の射撃で奥側の3羽が驚いてしまい、その3羽は閉じきっていない第二エレベーター開放部に向かって飛び出していった。

 陸戦隊員達は次弾装填中で動けなかったが、リネットとペリーヌに美緒の3人は逃亡する3羽の最後尾の背中になんとか麻酔弾を打ち込む事に成功した。

 此の結果、陸戦隊に打たれたのは直ぐ卒倒し、リネット達3人のはよたついて天井に激突した後に墜落したが、あとの2羽はそのまま閉じきっていないエレベーター開放部から抜け出してしまった。

 だが更に不味かったのは残りの2羽はリネット達狙撃班に気付いて、彼女達目掛けて突進してきた。

 当然ながら陸戦隊は直ぐに打ち始めたが、比較的近距離だったにも関わらずに全弾を回避してしまった。

 

「…っ!」

 

 そのまま鳥の1羽が取り付こうとしたが、直ぐに班長がボタンを叩く様に押して鳥用の防御装置である点滅照明が次々に起動、鳥はその場に急停止して悲鳴を上げ、その隙に狙撃班が鳥が墜落するまで連射をし続けた。

 だが狙い通りに鳥が泡を吹きだして墜落すると、此の墜落したのを楯にした最後の1羽が飛び出してきた。

 

「やられる、っ!?」

「しまった、っ!?」

 

 リネット処か美緒でさえ誰か1人が食べられると覚悟をしたが、その直前にペリーヌが飛び出し………大きく開けた鳥の口の中に三八式歩兵を横向きに捩じ込んだ。

 三八式歩兵銃が嫌な金属音を出したが、ペリーヌは取り敢えずは鳥を抑えこんだ。

 

「…『トネール』!!!」

 

 ペリーヌはそのまま雷遁魔法を発動、鳥は稀に骨が一瞬見えてしまう程の強力な電撃で変な悲鳴を上げ続けたが、ペリーヌが『トネール』を止めると直ぐに墜落した。

 美緒達は“大”の字(と言うより“木”に近い)で仰向けに倒れている鳥の状態からペリーヌが鳥を殺害したと思ってしまったが、少し間を置いてから全身から薄い黒煙を上げながら白目を剥いた状態で痙攣をした事で生存が判明し、全員が揃って溜息を吐いたら、ペリーヌが目線で抗議していた。

 

「……撃ち方止め!」

 

 残った鳥4羽が再び起きないかを警戒して、美緒が三八式歩兵銃を身構えながら陸戦隊員を数人従えてゆっくり前進………慎重に4羽を順に確認して暫くは起きないと判断して警戒を解くように命令し、陸戦隊員達やペリーヌとリネットの全員が一斉に三八式歩兵銃を下ろし、まだ点いていた防御装置の電源が切られた。

 直ぐに陸戦隊が鳥4羽を各々に硬質金属製の檻に入れ始めていたが、ペリーヌとリネットは息を乱してお互いの顔を見つめて暫くした後に苦笑しあい、美緒は鳥のプレッシャーで疲労感が重く感じながら予想以上の汗に驚いていた。

 こんな状態だったので、全員が逃げた2羽の事を完全に忘れていた…




 感想か御意見、両方かどちらかでもお願いします。

 此の場で言っておきますが、ガメラ原作では最終的なギャオスの生き残りが2羽のどちらかは不明でしたが、本作では最後にペリーヌの『トネール』にヤられたのが最終的な生き残りとします。
 その理由はしっかり決めてますので、まぁガメラ原作で“ギャオスが東京を占拠する”場面の該当辺りで書きますが、此の影響で本作のギャオスはガメラ原作より若干強くなっています。

 さぁ皆さん、次回いよいよアイツが本格的に姿を現します。
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