イケメン女提督と艦娘達 艦これSS《完結》   作:室賀小史郎

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最終回なので長めにしてます。
よろしくお願い致します!


最終回:海色

 

 海上ーー

 

 今あたしは艦隊と共にキス島海域のF地点にて、戦闘を終えたとこだった。

 

 今回の作戦はキス島に残された守備隊を収容し撤収することを目的とした撤退作戦だ。

 

 その為、艦隊は機動力重視の水雷戦隊で挑まなくてはならない。

 旗艦を球磨に任せ、後の五隻はみんな駆逐艦の娘達だ。

 

陽炎「司令、各艦損傷無し。任務続行出来るわ!」

不知火「球磨さんは既に観測機を飛ばしました」

黒潮「うちらはどうするん?」

女督「ご苦労。観測機と連絡を取りつつ進軍する。球磨を先頭に単縦陣へ移行だ」

六名「了解しました(クマー)!」

 

 進軍中ーー

 

綾波「少し霧が出てきましたね……」

初春「ここらは霧がよく立ち込めると言われた通りじゃの……」

女督「視界が悪いからこそ、神経を研ぎ澄ませろ。砲弾や魚雷の残弾数も今の内に確認しておけ」

綾・初『はい(うむ)!』

 

 暫くしてーー

 

球磨「提督、観測機からの信号がポイントH付近で途絶えたクマ!」

女督「……そうか。全艦、警戒態勢をとれ。球磨は上空を警戒。綾波、初春の二名は海中に気を配れ。陽炎は正面、不知火は左舷、黒潮は右舷を見張れ」

六名『了解(クマ)!』

 

 警戒態勢で進軍ーー

 

 やがて霧は更に濃くなった。

 この海域特有の濃霧……これを使い敵の目を誤魔化せれば重畳だ。

 だが警戒し過ぎるあまり、仲間を見失うことが無いようにあたしは艦隊全体に目を配る。

 

 するとあたしの頭に何者かの声が入り込んだ。

 

『キテハダメ……!』

 

 何処かで聞いたことのある声……。

 思い出そうと思考を巡らせるが、それはすぐに停止したーー

 

球磨「上空に敵艦載機発見クマ!」

女督「撃ち落とせ!」

六名『了解(クマ)!』

 

 ダダダダダッ!

 

 ボン、ボンボン!

 

 艦載機が飛んでいるということは空母が居る。

 事前の調査報告では空母は確認されていなかったが、状況が目まぐるしく変わるのが戦争だ。

 

『ダメ……! コナイデ……!』

 

 今度は先程よりも鮮明に聞こえた。

 

女督「まさか……!?」

 

 お前だと言うのか……?

 

陽炎「敵艦見ゆ! 先頭から軽巡ホ級、軽巡ト級、駆逐ニ級二隻、輸送ワ級二隻の複縦陣よ!」

不知火「ワ級は二隻共エリートの様ですね……!」

黒潮「ホ級はフラグシップみたいやな!」

 

女督「砲雷撃戦用意! 速やかに目標を排除せよ!」

六名『了解(クマ)!』

女督(おかしい……何故空母が居ない?)

 

球磨「なめるなクマー!」

 

 ババーン! ババーン!

 

陽炎「不知火、黒潮! 例のあれやるわよ!」ウインク

不知火「いつでもどうぞ!」ウインク

黒潮「いきなりフラグシップ狙いかいな!」ウインク

 

 三人は合図と共に縦一列にホ級へ向け急加速するーー

 

綾波「援護します! 突撃してください!」

初春「しっかりの! 雑魚はわらわ達に任せよ!」

 

 バーン! バーン!

 

ワ級『……!!』

球磨「お前らの相手は球磨だクマー!」

 

 ババーン! ババーン!

 

女督(あの技を使うのか……)フフ

 

ホ級「……!!」

 

 ボーン! ボーン!

 

 ホ級が放つ砲撃を陽炎達は巧みに交わし、反撃に出るーー

 

黒潮「ほな、お先に行くで~!」

 

 バーン! バーン!

 

不知火「弾幕を張ります!」

 

 バラララララッ!

 

 二人の連携に翻弄されるホ級。

 とそこへーー

 

陽炎「ボディががら空きよっ!」カチャ

 

 ドバーーーーンッ!

 

 見事な連携が決まり、ホ級は成す術もなく轟沈したーー。

 

球磨「ワ級二隻共轟沈確認クマ」ブイ

綾波「他の敵艦も轟沈確認です」ケイレイ

初春「ざっとこんなものじゃの」フフン

 

女督「よし。このままキス島に残った守備隊の収容作業に移行する。球磨、綾波、初春は守備隊の誘導を頼む。残りの陽炎達は周囲を警戒しろ」

六名『了解(クマー)!』

 

 

 守備隊を無事に救出用の船へと収容し、後はこの船を本土へと送り届けるだけだ。

 

球磨「守備隊全員の収容完了クマ!」

綾波「幸い怪我人の皆さんは軽傷みたいです!」

初春「残りは無傷だそうじゃ!」

守備隊長「救援感謝します。船の運転は私が責任を持って努めます!」ケイレイ

女督「救援が遅れて申し訳ない。了解した。船は我が艦隊が無事に本土へと送り届けることを約束しよう」ケイレイ

 

 こうしてあたし達は守備隊を収容した船を護りつつ、帰投することとなったーー。

 

 帰投中ーー

  

 相変わらずの濃い霧だが幸い戦闘も無く何とか安全海域まで船を連れてくることが出来た。

 

女督(だが……胸騒ぎが止まない……)

 

 守備隊が乗った船を中央に置き、球磨を先頭とした輪形陣。

 最後尾には私と陽炎が後ろを気にしながら海上を進んでいた。

 

陽炎「司令、難しい顔をしてどうしたの?」ノゾキコミ

女督「いや……敵の艦載機が飛んできたのに、結局その後の戦闘や今まで空母は確認されなかった。それが気になってな……」ハハ

陽炎「確かに……でも、あの霧じゃ空母が居たとしても手が出せなかったんじゃないかしら?」

女督「ふむ……」

  (あの声と敵艦載機は関係があるのか……?)

 

 そこであたしは肝心なことに気が付いた。

 

女督(今は安全海域内、だが先程の様に視界を遮るものはない……まさかっ!?)

 

 バッーー

 

 透かさず背後へ目をやると、一つの影が見えていた。

 

陽炎「司令、いきなりどうしたの……っ!?」

女督「球磨! 綾波! 初春! お前達は船を護衛したまま全速前進! 急げ!」

球磨「!? 了解クマー!」

不知火「不知火達が時間を稼ぎます!」

黒潮「頼んだで!」

綾波「無理をしないでくださいね」

初春「御武運を祈っておるぞ!」

 

女督「最後の最後に来たな……」

陽炎「それも空母ヲ級のフラグシップがね!」

不知火「司令、不知火達の後ろへ!」

黒潮「お客さんが団体さんをぎょ~さん送ってやって来たで!」

 

 ブ ォ ー ー ー ン !!!!

 

 数にして二十はある艦載機が晴れた空に散らばるーー

 

『ゴメン……ナサイ……!』

 

 またも聞こえた声。

 

女督「っ!! お前達、援護を頼む!」バッ

不知火「司令っ!?」

陽炎「ボヤボヤしてないで艦載機落とすわよ!」

黒潮「終わったらキッチリ説明してもらおか!」

 

 バラララララ!

 

 ヒューンーー

 

女督「どけっ!」バンバンッ

 

 チュドン!

 

 ヒュンヒュンヒューーーン

 

陽炎「なっ!? この艦載機達、司令を狙ってるの!?」

黒潮「うちらは外野かいな!」

不知火「早く援護に!」

 

 

 

女督「」バンバンッ ダンダンッ ボンッ

 

 あの声をあたしが間違えるはずがないーー

 

 ヒューーーン! ヒューーーン!

 

陽炎「くっ! 当たって!」バーンバーン

不知火「司令は必ず守ります!」ダンダンッ

黒潮「数が多すぎやで!」バラララ

 

女督「ふっ」ダンダンッ ボンッ

 

 お前はーー

 

 

 

 艦載機を掻い潜りヲ級の眼前までやって来たあたしは、ヲ級に声をかけるーー

 

女督「お前なんだな……?」

ヲ級「……ヲ……ヲォ……!!」

  『ゴメンナサイ……!!』

女督「静かに眠れなかったのか……」

ヲ級『墜チロッ!』グワッ

女督「っ!?」

 

 ヒュンヒュンヒュン!

 

陽炎「また!」

黒潮「キリないで!」

不知火「弱音は吐かないでください!」

 

女督「くっ!」

 

 バンバンバン!

 

 バーーーン!

 

ヲ級「死ネ……!!」

  『イヤーーーー!!』

 

陽炎「司令っ!」

不知火「司令ーーっ!」

黒潮「司令はんっ!」

 

 ヒューーーン!

 

女督「神風!?」

 

 ダンダンッ! バンバンッ!

 

 バーーーン!

 

ヲ級「ヲ……ヲォ……!!」

  『ア……アァ………………!!』

 

 プスプス……ーー

 

陽炎「あんたは生かして帰さない!」ジャキッ

不知火「沈め……!!」グワッ

黒潮「砲撃開始!」スチャッ

 

陽炎「黒潮、お願い!」

黒潮「任せとき!」

 

 バシュンーー

 

ヲ級「ッ!?」

 

陽炎「不知火!」

不知火「分かってます!」

 

 バラララララッ! ボンボンボン!

 

ヲ級「クッ……!!」

 

不知火「後は頼みますよ! 陽炎!」

陽炎「任せなさい!」

 

 シュンッーー

 

ヲ級「ヲッ!?」

陽炎「悪いわね、もらったわっ!」

 

 バーーーン!

 

ヲ級「グァァァ!」

黒潮「止めやで!」

 

 チュドーーーン!

 

陽炎「轟沈確認ね……」クッ

不知火「司令っ、しっかりしてください! 司令っ!」

黒潮「司令はんなら大丈夫や! 早く鎮守府へ運ぶで!」

陽炎「不知火、泣いてる場合じゃないわよ!」

不知火「っ!! はいっ」グシッ

黒潮「ほな行くで!」

 

陽炎(司令のバカ!)

不知火(死んだら一生恨みますから!)

黒潮(だから生きとってや!)

 

 ……。

 …………。

 ………………。

 

女督『ここは……?』

 

 見渡す限りの闇……そして遠退く光ーー

 

女督『そうか……あたしは……』

 

 応戦はしたが神風を受けてーー

 

??『大丈夫だよ……』

 

 薄れゆく景色の中ーー

 

 馴染みの顔が見えた気がしたーー

 

??『ごめんなさい。これで許されるとは思わないけど……』

女督『お前が悪いんじゃない……分かってるさ……』

??『ありがとう……これからも約束守ってね……』

女督『難しいことを……あたしはもうーー』

 

 するとソッと手であたしの口をふさいだーー

 

??『約束……』ニコッ

女督『本当にお前ってやつは……』ニコ

 

 そしてそれを最後にあたしの意識は途切れたーー

 

 ………………。

 …………。

 ……。

 

女督「」パチッ

 

 白い天井……白い壁……白いカーテン……。

 寝たまま窓の外を見ると、見慣れた建物が見えた。

 

女督(ここは鎮守府の医務室か……)

 

 周りを見ると点滴やら包帯やら大袈裟に付けられていた。

 

女督「まだあたしにはやることがあるってことか……」

 

 ふと手に違和感を感じ、見てみるとーー

 

女督「やっぱりな……」ハハ

 

 親友がいつも肌身離さず付けていたあたしと親友が写った写真を入れたペンダントが握られてたーー

 

 

 シャッーー

 

 すると不意にカーテンが開き、そこには陽炎、不知火、黒潮が立っていた。

 

女督「おぉ、お前達か。見舞いに来てくれたのか?」ニコッ

 

陽炎「司令……?」ポカーン

不知火「司令が起きてる……?」ポカーン

黒潮「司令はんが笑っとる……?」ポカーン

 

女督「ん? なんだ、ボーッとして?」クビカシゲ

 

 ぼんやりとしている陽炎達にあたしが小首をかしげながら微笑みかける。

 

 すると陽炎達のあたしを見据える瞳に大粒の雫が湧き、充たし、こぼれはじめるーー

 

 涙を止めようとするようにみんな手を顔へと近づけるが、止めることは出来ないみたいだ。

 せきを切ったようにその涙は勢いを増し、頬を伝い続ける。

 

女督「ど、どうしたんだ、お前達!?」コンワク

 

 すると陽炎達の手があたしの腕へと近づいてきた。

 まだ、おぼつかない不安そうな手ーー。

 

 あたしは訳が分からず陽炎達をただただ見つめた。

 

 やがて陽炎達は確かめるようにあたしの腕や手に触れ、掴み、それから抱きついてきた。

 

 不安そうだった顔が一瞬和らいだが、またすぐに泣き顔へと崩れていく。

 

陽炎「し……れい……。しれ……い、ふぁ、うぅっ、うわぁぁぁ、ああぁぁぁんっ!」ギュー

 

不知火「ふぇ……し、ふぁっ……ひっく、ひっ……れぃ……ぐす……し、れいぃっ」ギュー

 

黒潮「ホンマによかった……司令はん……ホンマっ……ぐす……よかったわぁ……。ひっく……も、もう……目、覚まさん……へんのか……って、おも……て……ぐすっ」ギュー

 

 涙に濡れた陽炎達の瞳はあたしを懸命に見つめ、あたしの存在を確認して不安を取り除こうとしているように見える。

 

 感情の発露は抑えられず、手は震え今にも崩れ落ちそうになっているが決して離そうとはしていない。

 

女督「心配を掛けたな……」ナデナデ

 

 苦しそうな呼吸を少しでも和らげようと、呼吸に合わせて一人ずつ背中を撫でる。

 

 それから陽炎達は暫くの間泣き続けた。

 

 ようやく落ち着きを取り戻した陽炎達は涙で目を腫らしながらも笑顔だった。

 

 ……。

 …………。

 ………………。

 

女督「まさか二週間も眠って居たとはな……」ニガワライ

陽炎「本当に心配したんだからね!」キッ

不知火「不知火を置いてきぼりにしたら一生恨んでました」ギロリ

黒潮「残された者の辛さ分かってるやろ?」ジトー

女督「す、すまない……」

陽炎「神風を仕掛けた艦載機が司令の射った弾でぶつかる直前に爆発して、司令は爆発に巻き込まれたのよ?」

不知火「奇跡的に火傷も傷も軽傷でしたが……」

黒潮「爆発のショックが強すぎたんよ」

女督「そ、そーなのかー」カワイタエガオ

 

 それからあたしが眠っている間の話を陽炎達から聞かされた。

 妙高と羽黒は毎日見舞いに足を運んでくれ、那智と足柄は願掛けに禁酒をしてるとか。

 球磨型姉妹はあたしの代わりに艦隊の訓練をしてくれていたとか。

 初春型姉妹や綾波型姉妹達はあたしがいつ起きても良いように、遠征で資材を調達してくれていたとか。

 元帥殿が四六時中あたしの容態を聞いてきて困ったとか……。

 他にも様々な話を聞いた。

 

女督「あのヲ級はあたしの親友だった……」

陽炎達『え?』

 

 話が一段落した所であたしは静かに当時のことを語った。

 

女督「攻撃をしながらあたしの頭にはずっと親友の叫びが聞こえていた。そして、あたしを救ってくれたのも親友だった。『約束を守れ』ってな……」

不知火「その人が司令を追いやったくせに……」ボソッ

陽炎「こら、不知火っ」

女督「不知火の言い分も分かるさ……だが意識は親友のままだった。あいつも今度こそちゃんと眠れたはずだ……あたしはそれで十分だ。こうして生きてるしな!」ニコッ

黒潮「そんな顔をされたら、何も言えんくなるわぁ」ニガワライ

 

不知火「司令、そのペンダントは?」

陽炎「あ、本当だ。今まで気が付かなかったわ」

黒潮「それどないしたん?」

女督「親友の形見さ」ニッ

 

 いたずらっぽい笑みでそう返すと、陽炎達は揃ってムスッとした表情を見せた。

 

陽炎「その人より、私の方が司令のこと好きなんだからね!」ズイッ

不知火「不知火に落ち度はありません!」ズイッ

黒潮「司令はんの親友はんでも、この気持ちは負けへん!」ズイッ

 

 何を今更そんなことを言い出すのかと思い、あたしは思わず声をあげて笑ってしまった。

 陽炎達も最初は笑われたことに抗議したが、あたしの笑顔に釣られたのか、あたし達は互いに笑い合っていたーー。

 

 

 

 それから数ヶ月後、あたしと陽炎、不知火、黒潮はケッコンカッコカリの契りを交わした。

 

 鎮守府の全員から祝福を受け、あたし達は更に絆を深めた。

 

 そして、この海を平和な海に戻すその時までーー

 

陽炎「司令! 敵艦隊発見したわよ!」ニコッ

不知火「ご指示を、司令!」ニコッ

黒潮「バッチリ頼むで、司令はん!」ニコッ

女督「分かってるさ……全艦、砲雷撃戦用意しろ!」ニコッ

 

ーー今日も新たな戦場へ立つ。

 

 

 人間がどういう審判を下されるかはあたしには分からないが、あたしとあたしの大切な娘達が築く絆は必ず良い結果をもたらしてくれると信じてるーー。

 

 

 

 

 

 

          『イケメン女提督と艦娘達・完』

 

 

 

 




なんかごちゃごちゃで読みにくかったらすいません。

何はともあれ、これにてこのお話は終わりに致します!

こんな筆者の作品をここまで読んでくれた読者の皆様、本当に本当に、ありがとうございました!
登場キャラが少ないのはご了承ください。

また新しいお話を書いた時、読んでもらえるように日々精進して参ります!

では、また違うお話でお会いしましょう!
ありがとうございました!

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