「――い、起きろ愛莉」
誰かが私を揺さぶる。だが、基本朝が弱い私は意識を閉ざす。まだ起きる時間じゃない…
「――きろって。交代の時間だぞ」
うるさい。私は眠いんだ。眠らせろ。
私は断固起きるのを拒否し、布団を引き寄せる。
「はやく起きろって!」
誰かが私の毛布を剥がそうとする。
しかし、私は毛布を握りしめた。これなら剥がせまい。
「こいつ…」
諦めたのだろうか?
これで寝れる――
「起きろって言ってるだろ!」
シーツごと引っくり返された。私は椅子を転げ落ちる。頭をぶつけた。とても痛かった。
「――っ」
仕方ないので目を開けると、くるみが私の顔を覗き込んでいた。
「やっと起きたか」
私は目をゴシゴシと擦ると、批難の目をくるみに向ける。だが、くるみは知らんぷりだ。
「見張り?」
「おう」
私が聞くと、くるみが答える。
私は思いきり伸びをした。車内で寝ていたためか、背中からパキパキと音がする。
「了解。お疲れ様」
くるみが布団に入ると、すぐに寝息が聞こえてきた。かなり眠かったようだ。それに、今日は色々な事があったので疲れているのだろう。
シャベルを手に取り、肩に担ぐ。車を降りると、悠里さんがコーヒーが入った紙コップを片手にボーッとしていた。まだ空は暗い。今は大体3時くらいだろうか。
「お疲れ様」
私が言うと、悠里さんはようやく私に気付いたのか、振り向く。
「あら、おはよう」
私達は特に何も話すことはなく、ただボーッと空を見上げていた。見張りと言っても、この時間に《奴ら》は殆どいない。大体が家に戻っているため、基本的にすることは無かった。
「不思議ね――」
空を見ながら悠里さんが呟く。その目は私ではなくどこか遠くを見ているように思えた。続きを待つ。
「空を見ていると、元の日常が続いているように感じるの」
――確かに。《あの日》からも空は変わっていない。
何となく空を見上げる。それきり、悠里さんは黙ってしまった。
暫く無言の時が過ぎる。ふと目をやると、悠里さんは既に船を漕いでいた。やはり彼女も疲れていたのだろう。
「空は変わらない…か」
私は呟くと、悠里さんを背負い、車に寝かせた。後の時間は私一人だ。
「――さて、と」
最近やり始めた、筋力トレーニングをいつもより多めに繰り返す。やり始めた理由は、勿論体作りのためだ。前の雨の日に、体力不足を身に染みて感じたからでもある。
「――ふぅ」
一通りトレーニングが終わり、汗を拭う。
今は何時くらいだろうか?
ふと気になって携帯電話を開けた。点灯し、時間が表示される。5時38分。電波は圏外だが、ライトや時計としてはかなり便利だ。
空は既に明るくなっている。皆が起きるのもそう遅くはならないだろう。そして明日のメインである…モールの探索。
(いよいよか…)
私はモールの方向を見つめる。シャベルを握る力が、いつの間にか少し強くなっていた。
「心配?」
後ろからの声に振り替えると、めぐねぇが立っていた。
めぐねぇにしてはかなり早起きだ。
「ん――まぁ、ね」
答える。めぐねぇは微笑んだ。
「大丈夫よ」
何が、とは言わない。
ため息をつく。めぐねぇはいつもこんな感じだ。例えるなら――母親のような。そんな安心感がある。
(そう…私は、めぐねぇに助けられてばっかりだ)
思う。私が助けられた分だけ、めぐねぇを助けよう、と。
(私の命がある限り――)
そして、私はめぐねぇに救われた。家族を失った私に、家族の代わりとして側に居てくれた彼女のおかげで、私は壊れずにすんだ。
――だから。
「でも」
めぐねぇの声で思考が断ち切られる。
「私のために死のうとはしないでね」
「――っ」
少し焦る。まるで私の考えていたことが分かっているような言い方だった。
めぐねぇを見ると、さっきと変わらないように微笑んでいる。私にはその微笑みがとても悲しそうに見えた。
だが…。
私は、何も言えなかった。
ただ、目を逸らす。めぐねぇはため息をついたが、それ以上は聞いてこなかった。
寝起きってキャラがブレたりするよね!うん、だから愛莉のキャラがブレてる気がするのも仕方ない、うん。
と言うわけでガソリンスタンドで一夜を過ごします。
次こそはモールに…っ