「あっ、これかわいー!」
ゆきが何かを見つけたのか、立ち止まる。ここは3階。まだ生存者は見つかっていない。
――まぁ、そんな簡単に見つかる筈も無いか。
「何これストラップ?」
そう言って、見せてきたのは防犯ブザーだった。めぐねぇが苦笑する。
「ゆきちゃん、それは防犯ブザーよ?」
「ふーん…持って帰ろ」
ゆきはリュックを下ろすと、複数個のブザーをリュックに付けた。棚の影から悠里さんが顔を出す。
「ゆきちゃん、それここで絶対鳴らしちゃダメよ?」
「ん?」
「警備員さん飛んでくるわよ!」
「らじゃー!」
《奴ら》は音に反応する。こんなものを鳴らしたら引き寄せるだけだろう。私は3人の会話を聞きながら、目的のものを探す。
「――あった」
私は『それ』を手に取ると、ポケットに突っ込んだ。
そして――服屋。特にお洒落に興味のない私は外を見ている、と言ったのだが。
「愛莉さんも――ね?女の子なんだから身だしなみには気を使わないと」
悠里さんには逆らえませんでした。はい。
有無を言わせぬあのオーラに抗える人はかなり少数だろう。
「じゃあわたしがあいちゃんをコーディネートしてあげるよ!」
ゆきが元気に笑う。…心配だ。
「大丈夫?」
「だいじょーぶ!任せて!」
ドン、と胸を叩き、ゆきは上機嫌に服を選び始めた。
私は適当な椅子に腰かけ、ゆきが服を選び終わるのを待つ。
――変な服が来ないと良いが。
そして暫く経ち。
「じゃーん!あいちゃんこれ着てみて!」
「これは…」
フリフリの白いドレス。サイズは合ってるものの、私の普段着とは別方向のものだ。
「これを…着ろと?」
「うん!」
ゆきは目を輝かせている。どうやら、本気で似合うと思っているようだ。
「あら…」
くすっ、と隣から聞こえた。そちらを見ると、悠里さんが微笑んでいる。
「似合うんじゃないかしら?」
「くくっ…あぁ、似合いそうだな」
くるみなんか、完全に笑っている。あれは面白がっているな…。ゆきが、不安そうに私の顔を覗き込む。
「ダメ、かな?」
少し固まったあと、私はため息を吐いた。
「はぁ…笑わないでよ?」
この子には敵わないな、そんなことを考えながら試着室に入り、素早く着替える。少しドレスを着るときに迷ってしまったが、仕方ないことだろう。
そして試着室のカーテンを開けた。
「あら?」
「何と言うか…」
「愛莉ちゃん…」
悠里さん、くるみ、めぐねぇが固まる。ゆきも何も言わない。
やっぱり私にこんなお洒落なんて似合わないのだ。
「だから大丈夫かって聞いたのに…」
顔が紅くなっているのが自分でも分かる。涙が出てきた。
何の罰ゲームなんだろう、コレ。
「「「「すっごい似合う…」」」」
四人が口を合わせて言った。
「…へ?」
思わず間の抜けた声を漏らす。
「意外と似合うもんだな…」
「ええ、ビックリしたわ」
「あいちゃんかわいー!」
「すごく似合ってるわよ」
皆が口々に言ってくる。私は思わず顔を背けた。さっきとは別の意味で顔が紅くなるのが分かる。調子が狂う。
「あら、照れなくてもいいのよ愛莉さん」
悠里さんがニッコリと微笑みながら言う。今確信した。彼女は絶対Sだ。
「……もう行くよ」
私はシャベルを持つと、急いで店の外に出た。
「それを着て?」
めぐねぇに言われ、固まる。自分の服装を見ると、白いドレスのまま。
慌てて戻ると、すぐに元のコートに着替えた。見ると、くるみは笑いを必死に堪えている。
「――っ‼ほら、さっさと行こう!」
照れ臭さを誤魔化すために私は四人に背を向けると、店を出ていった。
愛莉も女の子です。書いてる本人もたまに忘れそうになるけど女の子なんです!
次の更新は正月になると思います。