がっこうぐらし +α   作:ラビ@その他大勢

16 / 29
タイトル通りに話が進むとは限りません。


きゅうじょ

階段を一段飛ばしで駆け上がる。声が聞こえたのは恐らく5階だ。そして声が聞こえた、と言うことは。

 

安全である室内にいない、と言うことだ。

 

(急がなきゃ)

 

――と焦ったその時。

 

「ア゙ア゙ア゙」

 

注意が散漫になっていたのだろうか。

4階についた途端、突然横から唸り声が聞こえた。考えるより早く、条件反射でシャベルをそちらへ振り抜く。ゴシャ、と音を立てて私に掴み掛かろうとしていた《彼》の頭が潰れた。

 

「流石にここら辺は沢山いるか…」

 

内心、冷や汗をかく。今のは危なかった。一応防具としてコートを着ているとはいえ、必ずしも安全とは言えない。噛まれるのはなるべく避けておきたい。

 

辺りを見回し、すぐ側に《奴ら》がいないことを確認すると、私は売り場に身を潜めた。

4階から5階に掛けての階段には、《奴ら》が沢山いるのが見える。小さく舌打ち。流石に、あの群れの中に突っ込んでいく勇気はない。

ならば、どうするか。

一度落ち着くために深呼吸。そして、思考。

 

(《奴ら》の気を引くためには音――)

 

何か、大きな音を出すもの。

 

例えば――警報器のような。

 

その考えに至り、私は素早く辺りを見やる。だが、非常ベル等は近くにない。

 

「――…なら」

 

私はそう呟くと、紳士服売り場に向かった。

 

 

 

*******

 

「あいちゃん遅いね」

 

隣にいるゆきが呟いた。退屈そうに足を揺らしている。

 

ここは一階の正面玄関。あたし達はここまで走ってきていた。だが…確かに愛莉が来るのが余りにも遅い。単純に撒くだけなら途中であたし達に追い付けた筈なのに。

 

(もしかしたら、もう…)

 

何となく浮かんだ嫌な考えを、頭を振って飛ばす。愛莉なら大丈夫、そう信じるしかない。だが。

 

(あいつは無茶しすぎなんだよな…)

 

少しの怒りが沸いてくる。もし無事に戻ってきたら一発くらい殴ってやろうか。

 

――と、そんなことを考えていたときだった。

 

ジリリリ、とベルの音が広いモール内に響き渡ったのは。思わず音源を探して上を見上げる。あれは…

 

「煙…?」

 

隣にいたりーさんが呟く。

そう、黒い煙が四階の窓からもうもうと出ていた。まるで…そう、火事みたいに。どうやら、今も鳴っているこのベルは、火災報知器のものらしい。

 

「なんで…」

 

めぐねぇも呆然としている。だが、あたしは確信していた。

あれは愛莉がやったのだ、と。

 

「誰かいたってことかよ…」

 

わざわざ、あんなところに残ってまで何かをする理由。それは、生存者がいた、くらいしか考えられない。

 

(あたしは《奴ら》がいたからすぐに引き返したしな…)

 

なら――愛莉を信じて待つしかない。

助けに行く、という考えも浮かんだが、めぐねぇ達が危険すぎるので断念。

 

「無事でいろよ、愛莉」

 

あたしは、黒い煙を見上げてそう呟いた。




状況を整理しよう。
四階の紳士服売り場に向かった愛莉。
そして四階の窓から出る火事の煙。

そうです、愛莉ちゃん、やっちゃいました。流石初期装備が簡素火炎放射器!安全性を省みないにも程があるぜ!
…焦ってるとは言え、他にも何か方法あるでしょうに。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。