「これは…無茶があるんじゃない?」
私が呟くと、仕方ないだろ、と言わんばかりにくるみが首を振る。
四人乗りの車に七人は詰め込めないため、助手席にいる悠里さんの膝にゆきが乗り、圭さんが美紀君の膝に乗ることになった。運転するのは、勿論めぐねぇだ。
「よし、しゅっぱ――」
「じゃあ、行きましょうか」
めぐねぇの台詞に被せられるように発せられた悠里さんの言葉に、車内の皆が頷く。
「私…顧問…」
呟くめぐねぇの背中には、哀愁が漂っていた。
車が発進してから、少し経つと初めの方に騒いでいたゆきや圭さんが疲労のためか眠ってしまい、車内はかなり落ち着いた。生存者が多数いたことに驚きを隠せないのか、美紀くんが次々とこちらへ質問してくる。
――と、彼女の質問が一段落したとき、悠里さんが切り出した。
「他に生存者は、いたのかしら?」
「――っ」
顔を俯かせる。その反応で、皆が大体のことを理解する。これ以上聞くのは酷だろう、と私が話を切り替えるために口を開こうとしたときだった。訥々と、美紀くんは語り始めた。
初めは数人で住んでいたこと。だが、仲間が感染して、内部からコミュニティが崩れたこと。
「そこからは、圭と二人で――」
仲間が感染して、の所で悠里さん達は俯いた。私は、ふとくるみに目を向ける。くるみもこちらを見た。
私達はモールに行く前、二人で話し合った。
もし、感染したら、と言うことを。あの時は結論が出なかったが――…
どちらからともなく目を逸らす。窓から外を眺めながらため息をつく。流れていく景色。所々に《奴ら》が見える。生活感が一切ない風景は、行きの時と変わっていなかった。車内は無言のまま、ただ車は進んでいく。
――と。窓ガラスに水滴がポツリ、と当たるのを見て
「雨か…」
段々と強くなる雨足に、私は何か嫌な予感がした。総じて、こういうときの嫌な予感は大体当たる。
くるみ達もジメジメとする雨に顔をしかめていた。
*******
私達が、巡ヶ丘学園に到着したのは辺りも暗くなってきてからだった。ゆきちゃん達を起こして車から降りるように促す。暗いから、《彼ら》は《帰宅》しているだろう。外は大体安全だ。
だが、雨が降っているため、風邪を引かないように、なるべく急がなくてはならない。
警戒をしつつ、くるみを先頭に学校の入り口に向かう。――と、くるみが入り口の前で固まった。
「…おい、壊れてるぞ…」
くるみの言う通り、暗闇のなか目を凝らすと、入り口の扉は木材でバリケードもどきが作ってあったのに今は大きく穴が開いている。――そう、人が数人入れるくらいの穴が。
「うそ…」
思わず、声が漏れる。学校に《彼ら》が入り込んでいる可能性があった。
「取り合えず、教室を1つ制圧して、そこから部室を目指すしかないね」
愛莉さんがシャベルを肩に担ぎながら言う。めぐねぇが確か…、と呟く。
「技術室と学食倉庫があったはずよ。あそこなら物資もあるかも…」
めぐねぇの言葉に、私達は頷いた。そんな私達を見て、ゆきちゃんが首をかしげる。
「…みんな学校に入らないの?」