そこは、自分の家だった。
家族が笑って。友達と遊んで…
家族?私の家族は――
急に視界が反転。次の瞬間に私がいたのは、父の車の中だった。幼い私がにこやかに父に話しかける。
「ねぇおとうさん。ゆうえんちたのしみだね!」
「あぁ、そうだな!」
父も幸せそうに笑う。何も起こるはずはなかった。
しかし――
私の視界は紅く染まった
「――っ‼」
目が覚めた。心臓の音がやけに大きく聞こえる。そして誰かの呼吸音――
(いや…)
これは自分のだ。
嫌な夢を見た、と思う。
ここはどこだろう…見慣れた自室の天井ではないが――
そこまで考えたところで昨日のことを思い出した。
慌てて部屋のなかを見回す。
奴らは――いない。
ドアは――開いてない。
「…ふぅ。ひとまずは落ち着いたかな」
大きく深呼吸。
酸素が頭に回って思考がクリアになる。
今私がするべきことは何だろうか。
それを考える。
ゲームでは。アニメでは。小説では。
《主人公》はこういうとき何をした?
答えは簡単。武器と拠点を見つけるのだ。それだけで生存確率は格段に上がる。
やることは見つかった。あとはそれを実行するだけだ。
しかし――どうすれば?
武器を入手する前に奴らと遭遇したら元も子もない。せめて間に合わせでも持っておくべきだ。
「仕方ない…よね」
そう呟き、私は司書室を漁った。
暫く経ち、そこには武器を持った私がいた。
ゲームのようにハンドガンが落ちているなんてことはなく、有り合わせのものだけだったが。
準備は出来た。あとは進むだけ。
「……よしっ!」
気合いをいれて、ドアを開ける。
自分以外が動く音は聞こえないので、安全だろう、という判断だ。
開けた先は…見慣れた図書室ではなく、荒らされた教室…だった。
「っ‼」
何となく分かってはいたが酷い有り様だ。自分の学校生活の大半を過ごした場所だっただけに、少し辛い。
気持ちを落ち着かせるために深呼吸をすると、私は走り出した。
まず向かうのは購買部。図書室のすぐ近くだし、物資もあるはずだからだ
――と、思っていたのだが。
収穫は特になかった。武器になりそうな類いが置いてなかったのだ。
まぁ、仕方ないことと言えばそうだ。
生徒が頻繁に来るような購買部に殺傷能力のある武器など置いてる筈がない
「何となく分かってはいたんだけどなぁ…」
しかし、いつまでも落ち込んでるわけにはいかない。次の場所に行かなくては――
「ア゙ア゙ア゙ァ゙」
入り口の方から嫌なうなり声。
《奴ら》だ。
一人しかいないから《彼》だろうか。
どうする――いや、入り口が1つしかない時点でもう選択肢はない。
死ぬか、戦うか、だ。
…そして何より。
「死ぬのは嫌かな…」
本能的な恐怖を理性で無理矢理押さえつけ、《彼》を睨んだ。ポケットから殺虫剤とライターを取り出し、周りを見回す。燃えそうなものはない―ならば。
ライターの火を通して《彼》に殺虫剤を吹き掛ける。実際に掛かるのは薬品ではなく火、だが。
ライターと殺虫剤を組み合わせれば
簡素な火炎放射器が出来る。
本で得た知識だったが、こんなところで役に立つとは思っていなかった。
《彼ら》はよく燃えるようで、火を吹き付け続けると、少し唸って倒れ、そのまま動かなくなった。
「……ふぅ…」
一匹は倒せた。…倒せたのだが。
私には…なんというか…
「物足りないなぁ…」
そう、物足りなかった。
ふと、口から漏れた言葉に戸惑う。
――なぜ、こんな時に手応えを求めるのか、と。
これはゲームとは違う。体力なんてものは存在しないから、噛まれたら一発アウトですらある。
だけど――
ここまで考えたところで、やめた。
考えるだけ無駄なことだ。…そう、少なくとも今は。
「――ごめんなさい」
目の前で倒れている《彼》に謝る。
手を合わせ、せめて安らかに眠ってほしい、と心から思った。
意識を目の前に戻す。
もう自分以外の気配はない。
これ以上ここに留まっても不利になるだけ――それが分かっていたので、私は次の場所に向けて走り出した。
ヤバい…。当初考えてた愛莉との差がかなり酷いよ…
少なくとも最初に考えてた愛莉は戦闘狂なんかじゃなかったorz