「ここが…校長室」
めぐねぇが部屋の鍵を開け、私たちが中へと入る。別段、おかしい所など室内を見回したところで何も出てこないが…。ここに、『本当のこと』が隠されている可能性が少しでもあるのなら、探すしかない。
「私が一番何か有りそうな机を見るよ。皆は他の所をお願い」
「わーいっ!宝探し宝探し♪」
楽しそうに部屋を探索する由紀と違い、部屋をくまなく探す私たちの中には真剣な空気が流れている。
ふと、私が引き出しの最下部を漁ろうとしたところでその引き出しに鍵が掛かっていることに気がついた。……いや、正確には――慌てて閉めたのか、鍵が確りと締まりきっては居なかった、というものなのだが。
「…もしかして」
小さく呟いて、引き出しを開ける。――すると、そこにあったのは…一冊の本だった。表紙を見るに、日記かそれに準ずるものと言ったところか。
「これは…」
ペラペラとページを捲る。日にちの欄に書かれている日数は、私たちが学園生活部を始めた頃に途切れていた。日記の内容は――所謂自白。思うがままに書き殴ったのだろう、字は大きく歪んでいる。私が期待していたようなものではないが……
『あの会社と接触など持つべきではなかった』
この文だけは、やけに印象に残った。残念ながら、この『会社』の名前は明言されていなかったが――緊急避難マニュアルの内容とも合わせて考えると、恐らくこの『会社』は『ランダルコーポレーション』なのだろう。
――そんなことを考えながら私が日記を閉じると同時に、突然後ろから声が掛けられた。振り向くと、後ろにいたのは悠里さん。
「愛莉さん、何か見つけたの?」
「あんまり大したことは書いてなかったけど……これ」
日記を差し出すと、悠里さんは少し緊張した表情で頷き、それを受け取った。
「この日記、途中で止まってる…。…校長先生は、どうなったのかしら」
悠里さんは、不意に日記を捲る手を止めて呟いた。彼女の声音には、間違いなく心配が混ざっている。
「…さぁ、ね。生きているのかさえ分かんないし」
彼女の視線が、日記に書かれている最後の文字を辿るのを尻目に、私は静かに天井を見上げた。
*******
「結局、何も無かったなー」
校長室から部室へと戻り、自分の席に座ると、あたしは頬杖を立てて呟いた。由紀は校長室で訳の分からないものを沢山掘り出していたが、これと言ったものは無かったので特に語らない。
「そうね…」
りーさんが机の上に開いた家計簿を憂鬱そうに眺めながら溜め息をつく。りーさん曰く、園芸部の畑やあたし達が見付けてきた地下室での食料を全て含めても、後1ヶ月程しかこの学校ではまともな生活が出来ないらしい。畑の使用可能面積が大幅に減ってしまったのと、何よりも大きいのが人工の増加だ。めぐねぇ含めた学園生活部の五人だけでもカツカツだったのに、それに二人も加わっては流石にどうにかできる範囲を越えているのだ。
その言葉を聞いたとき、畑の半分を丸々使い物にならなくした張本人の愛莉はすまなそうに項垂れていたが、命あっての物種、とも言う。その事については誰も責めよう等とは考えていなかった。
「次、何処か行く当てはあるんですか?」
本を読む手を止めて問い掛けてきた美紀の問いには誰も答えることが出来なかった。辛うじてめぐねぇだけは何かを考えている様子ではあったが、ここで言うことができるほど意見が固まっているわけではないらしい。
だが、そんな微妙な空気が漂った部室の沈黙を破ったのは、由紀だった。
「高校卒業したら、大学に進学するんじゃないの?」
キョトンと目を丸くして、首をかしげる由紀の姿に、あたし達は思わず吹き出してしまった。
いつもこうだ。…由紀は、あたし達が迷ったら行き先を教えてくれる。
由紀の言葉に反論する人は、この部屋にはいなかった。
後二、三話で完結します!(多分、恐らく、きっと)
もうちょっとだけご辛抱してお付き合いください!