学校を去る、ということは、慣れ親しんだここ――巡ヶ丘学院高校から去るということである。…それを一言で表すとするならば、卒業。
だから。由紀の『卒業式、やろう!』という言葉には誰も反論することなく、卒業式の用意が始まった。色々と辛い記憶もあれど、楽しい記憶もあるのは確かなのだ。
めぐねぇと悠里さんの指導のもと、学校中を掃除していく。“立つ鳥跡を濁さず”という諺があるが、私たちが今しているのはまさしくそれに近い。学校に対する、私たちのせめてもの礼儀だ。
襲われない私が学校中にいた《彼ら》を皆殺しにしてから校内に入ってくることは無くなったが、壁に飛び散った血等の汚れはそのままに放置していることが多く、それを落とすのは中々に骨が折れる仕事だった。
淡々と洗い落としていた私やくるみと違い、圭さんや美紀さんはずっと辛そうに顔を歪めていたことが記憶に残っている。
――いや、彼女達が人間としては正しいのだ。
私やくるみの精神はもう摩耗され尽くし、殆ど《ソッチ》関係のことに感情を動かさないように適応してしまったのだから。
正しい人間が居れば、それだけで少し救われた気分になる。
それなりに人数も居ることだし、ということで卒業式は講堂ですることになった。卒業するのは私も含めた3年生4人と、美紀くん達2年生2人。めぐねぇも入れると、この学校を出ていくのはなんと7人もの人数になってしまう。この騒ぎが始まった当初の時は、一人ぼっちで生きている人に会えるかどうかも不安だったのに。巡り合わせというものは不思議なものだ、と軽く苦笑を漏らす。
私とくるみ、悠里さんと圭さんの四人で卒業式用の教壇やら椅子やら何やらを運び終えると、卒業証書等の用意をしていためぐねぇ達別グループが講堂へ入ってきたところだった。
「丁度終わったみたいね。…じゃあ、始めましょうか」
めぐねぇの言葉を始まりの合図に、私たちの卒業式は始まった。
在校生の送辞は美紀くん、卒業生の答辞は由紀がやることになった。その詳細は控えるが、両方ともとても素晴らしいことを言っていた、とだけ言っておく。
卒業証書を受け取り、私たちは正式に巡ヶ丘高校を卒業した。卒業式が終わり、学校を去ろうと言う今になって色々と過去のことが思い浮かび、全員揃って卒業できることのありがたみを改めて噛み締めることになった。
初日のあの混乱の時点で、私は死んでいても可笑しくなかった。それに、くるみ達が来てくれなかったら餓死していたかもしれない。
そう思うと今生きていることが本当に嬉しくなってきた。
「ふふ」
軽く口元に笑みを浮かべる。そんな私に、学園生活部の皆が手を振った。
「おーい、行くぞー!」
「愛ちゃん早く早く!」
「愛莉さーん」
「先輩!」
「愛莉先輩!」
くるみ、由紀、悠里さん、圭さん、美紀くん。そして
「愛莉ちゃん」
めぐねぇ。
本当に幾つもの偶然が重なりあって、今のこの命がある。…私だけは人間ではない、仮初めの命かもしれないけれど。それでも、生きている。
私たちはここにいる。
完結しました!
今まで半年以上もお付き合いくださり、本当にありがとうございました。処女作と言うことでずっと手探りでしたが、この作品が自分に与えてくれた経験と言うものは代えがたいものだと思っております。
本当にありがとうございました!