次に私が向かおうと考えたのは下の階だった。
目的は二つほど。
一階にある技術室と、地下にある
家庭科部の備蓄倉庫だ。
技術室には武器になりそうなもの。
備蓄倉庫はシャッターがあったはずなので拠点になるだろう。そう、下の階はかなり充実しているのだ。
――――恐らく、《奴ら》の数も。
私は今、二階の窓から運動場を眺めていた。奴らが徘徊する、グラウンドを。
それにしても朝からずっと頭が痛い…
あまり眠れていないからだろうか――
「「ア゙ア゙ア゙ア゙」」
思考が断ち切られた。一階からは複数のうなり声が聞こえている。下に向かうにしても何の準備も無しでは無駄にやられるだけだろう。
「さて…」
準備と言っても何をすればいいのだろうか。窓から《奴ら》がワラワラと蠢く運動場を眺める。
(作戦1。適当に誘き寄せて一体ずつ倒す)
地道に数を減らすのは大事だが――
倒すための道具がろくにない今の状態ではやめておいた方が良いだろう。
そう考え、別の作戦を探す。
(作戦2。…観察?)
よく考えると、私は《奴ら》の性質をろくに知らない。
観察はしておくべきだろう……が。
(気持ち悪い…)
――あまり、見たいとは思えないビジュアルだった…。
よし、また今度やろう。
いや、だって肉腐敗してますし。血が流れっぱなしですし。…いたいけな少女に見せるものじゃないと思うんだ、うん。
(作戦3。下じゃなく上を探してみる)
「…」
――もはや準備ですらない。
大丈夫か私…
色々な方法を私が考えているうちに、校内放送が始まった。
『下校時刻となりました。用のない生徒は――』
感情が無いような機械音声が流れる。
もうそんな時間か…。
(真面目にどうするか考えないと…
って、うん?)
《奴ら》の行動に変化が起きた。
――見えるところにいた全員が同じ方向に向かって動き出したのだ。
それも校門に向かって。
(どういうことだろう?)
じっと見ていると、校舎の中からも《奴ら》が続々と出ていく。
制服を着た彼らが校門へ向かう様はまるで――
「下校、してるみたいだな…」
生前の記憶を残しているのだろうか?
もし、そうなら…彼らには心が残っているのだろうか――?
私は頭を横に振った。
もし、心が残っていたとしても私のすることは変わらない。
生き残る。それだけだ。
「にしても…」
さっきの放送はいつも聞くものと変わりがなかった。もしかしたら。
「放送機具が残ってる…?」
なら――生きてる人を探せるかも…?
だが…生き残っている人がいたとしても。
友達どころか、まともに話してくれる人すら学校にろくにいない私が探してどうすると言うのだ。
「………ふぅ」
でも。スタンドプレーを続けて生き残ることが出来るのは映画の主役とかだけだ。現実では…すぐにガタが来る。
…私主役じゃないですし。
問題は――放送室の位置だ。確か三階の…
「ここの上?意外と近いのか」
生徒手帳を見ると近いことが判明した。
(よし……。行こう)
いまだに続く頭痛とめまいを落ち着かせるために一度深呼吸。向かうのは放送室だ。
願わくば――この選択が私にとって
いい方向に向かうように。
それだけを願って。