「誰か来るかな――」
気になるのはそこだった。
疲労と寝不足とで朦朧とする頭を懸命に働かせる。
学校の様子を見た限りでは、生存者がいない――そんな可能性もある。
その場合はどうするか…
(それにしても…お腹、空いたな)
考えが纏まらない。
空腹感がすごかった。そう言えば昨日から何も食べていない。頭がろくに回らないのもそのせいだろうか。
(まぁ、何でもいいかな――)
とにかく眠い。しかし寝るわけにはいかなかった。放送で呼んだ以上放送室の鍵を閉めるわけにはいかないし、鍵を閉めずに寝れるほど安心できる環境でもない。
「あふ…」
あくびを噛み殺す。――このままでは寝てしまいかねない。何かしないと…
そう言えば――
背負っていたリュックの中から本を取り出す。《あの日》読んでいたが途中で読むことが出来なくなってしまい、結局今まで手をつけていなかった。
内容は――丁度今の状態と似ている気がする。
ゾンビが表れパニックが起こり、そんな環境で主人公達が必死に生きる様が描かれていた。
まぁ事が起きたのは学校ではなくショッピングモールで、だが。
(もし、今日中に誰も来なかったら…モールに行くのも手かな)
確かそこまで遠くない距離に大きめのモールがあったはずだ。ここから徒歩で行くにはどのルートを通ればいいのか…。
なるべく考えることを止めないように。ただ、思い浮かぶことだけを思案していく。
停滞は嫌いだ。最近は特に。
何かをしていないと、現実に押し潰されそうな気がして。
パラパラ、とページをめくる。
《奴ら》はゾンビなのだろうか――?
この本を開いた途端、そんな考えが頭をよぎった。
(いや――)
死んだ人が動き、噛みつくと感染する。それだけを聞くと確かに《奴ら》とゾンビの差はない。
だが――
《奴ら》をゾンビと考えると、私の中で命と言うものが軽いものになってしまう気がして。
「彼らはゾンビなんかじゃない」
思わず呟く。それはまるで、自分に言い聞かせるかのような言い方だった。
深呼吸。気持ちに区切りがついたためか気持ちは軽くなった気がする。
もしかしたら…心のどこかで《奴ら》とゾンビが同じものだと考えていたのだろうか。
――そして、そんなときだった。
「誰かいるのか!」
ドアを開けて、彼女たちが入ってきたのは。
***********
あたしはかなり焦っていた。放送室が危険ではない、と分かっていてもそう割りきれるものではないのだ。
バリケードはまだ完成していない。
《奴ら》が入ってきている可能性もあった。
だから、だろうか。飛び込んだ放送室に"生きている"人を見つけたとき、あたしの中に色々な気持ちが入り込んできた。
それは安堵、喜び、そして――希望。
そういう類いのものだ。
しかし彼女はかなり衰弱しているようで、今にも倒れそうになっている。
ようやく追い付いためぐねぇが彼女を見て息を飲んだ。
「…愛莉…ちゃん…っ」
めぐねぇの知り合いだろうか。あまり生徒をちゃん付けで呼ばないめぐねぇが素で《愛莉ちゃん》と呼ぶと言うことはかなり親しい間柄なのだろう。
――って。
「こんなことしてる場合じゃない!めぐねぇ手伝ってくれ!」
彼女の様子を見る限り、かなり危ない。まともな食事と睡眠を取れていないようだ。
「え、えぇ!」
めぐねぇは看病にも慣れているようで(教師になるときに少し勉強したらしい)テキパキと対処していた。
めぐねぇが来てくれたことに改めて感謝を覚える。多分あたし一人じゃ何もできなかっただろうから。
彼女は横になるとすぐに寝てしまった。まぁそれも仕方のないことだろう。一人で二日間、何も食べずに生きていたのだから。
「あたし――二人を呼んでくるよ。めぐねぇはここの鍵閉めて待ってて」
見た感じ、彼女は噛まれてはいなかった。つまり《奴ら》になることはない。そう考えたあたしは、Aクラスで待っている二人を呼びにいこうと決め、三階の廊下を走り出した。
没シーン
このままでは寝てしまいかねない。何かをしなければ――
私は日記を取り出すと、こう書き始めた――
『かゆ…うま…』
くるみ「おいバカやめろ」
と言うわけで、学園生活部と愛莉合流です。
愛莉がゾンビと《奴ら》の違い(?)を考えているシーンですが――
僕なりに、くるみ達が《奴ら》をゾンビと呼ばない理由を考えてみた結果、こうなりました。