愛莉さんと合流して、5日が過ぎた。
「やっぱり物資が足りないなぁ…」
家計簿を見て呟く。購買部にある食糧もそこまで多くはない。底をつきそうになっていた。
どこかで食糧を補給しなければ――
(後でめぐねぇ達に相談してみよう…)
そう考え、私は家計簿を閉じた。
ドアが開く音。目をやるまでもなく、私には誰が入ってきたか分かっていた。
「おはよう、くるみ」
「んー…りーさんおはよう…」
まだ眠そうに目を擦っている。
ようやく彼女も本調子に戻ってきたようだ。三日前の雨の日から暫くは酷い筋肉痛にうなされていたが、どうやらもう治っているらしい。
「体は大丈夫なの?」
「んー…大丈夫…――ぁふ」
くるみは大きくあくびをすると、シャベルを立て掛け、机に突っ伏した。
「じゃあ私は屋上行ってくるわね」
「行ってらっしゃいー」
机に突っ伏したまま手だけ振られた。
思わず苦笑してしまう。
(さて――めぐねぇとゆきちゃんが起きる前に水をやらなきゃ)
屋上へ続くドアを開けると、コンクリートの床にはまだ血がこびりついていた。あの雨の日に、かなりの植物が犠牲になった。《彼ら》の血が半分以上の農園に降り注いでいたのだ。
流石にそんな所で育ったものを食べたくは無いので、今は残っている植物で繋いでいる。
《彼ら》の血が届かない範囲にあった植物達に水をあげる。
この時に一番心が安らぐ。もちろんゆきちゃん達と一緒にいるときも楽しいが、園芸はそういうものとは違った良さがあるのだ。
一通り水をあげ終わると、私は屋上から出た。そろそろ皆が起きてくる頃だろう。
向かうのは部室。ドアを開ける。
「あっ、りーさんおはようー。今日の朝御飯はなに?」
やはりゆきちゃんは起きていたようで目を輝かせて聞いてくる。
「そうねぇ――あ。確かうどんがあったはず」
これを聞いて既に席についていた愛莉さんが顔を少しひきつらせた。
朝からうどんは重いと思ったのだろう。
「めぐねぇはまだ寝てるのかしら…ゆきちゃん、起こしてきてくれる?」
この場で一番の年長者が最も朝に弱い。私はため息を吐いた。
大体、起きる順番としては
私⇒くるみ⇒愛莉さん⇒ゆきちゃん⇒⇒めぐねぇ、となっている。
ゆきちゃんがめぐねぇを起こしに行っている間に、私は二人に今の状況を説明した。
「――というわけなの」
私が説明を終わると、二人は少し考え込み――
「めぐねぇ連れてきたよー」
「みんなおはよぅ…」
ゆきちゃんがめぐねぇを連れてきてくれたので、一度話を区切る。
「じゃあめぐねぇも起きたことだし、朝御飯にしましょうか」
うどんをそれぞれの丼に盛りながら、私は言った。
「遠足行こ!遠足!」
そして、食事中。ゆきちゃんが突然叫んだ。
「遠足?でも由紀ちゃん、学園生活部の規約で学校からは出ちゃダメって決まってるわよ?」
めぐねぇがゆきちゃんに言う。
「ふっふっふー。私ね、気付いちゃったんだ」
不敵な笑みを浮かべてる(つもり)なのだろう。
「学校から出ないで暮らすのが学園生活部。でも、学校行事なら外に出たことにはならない!」
渾身のどや顔。だが、私達の反応がないことに自信をなくしたのか
「よね?よね?」
確認された愛莉さんとくるみは目を逸らした。
「いやいや、おかしいだろ。遠足って部でやるもんじゃないし」
このままでは埒が明かないと思ったのか、ため息をついてくるみが言う。
「くるみちゃんは頭が固いね!私達の後に道はできるんだよ!」
「ぬぅ…」
何故か言いくるめられていた。それを見ためぐねぇは苦笑し、
「じゃあ提出用の文書を提出してくれるかしら」
ゆきちゃんはまた笑い――
「じゃーん!」
リュックから一枚の紙を取り出した。
一応提出用の文書らしい。ゆきちゃんにしてはとても準備がいい。
「分かったわ。じゃあ許可を貰ってくるから、皆はここで待っててくれるかしら」
「いや、私と悠里さんも付いていくよ」
愛莉さんがそう言うと、めぐねぇが何かを理解したように頷く。
職員室に着くと、めぐねぇが文書をしまった。
「結局――行くの?」
愛莉さんがめぐねぇと私を見て問う。
彼女はあまり自分で物事を決めようとしない。まだ遠慮があるのだろうか。
めぐねえが頷く。
「私は行くべきだと思うわ。食糧ももう余裕がある訳じゃないのよね?」
「――はい。人数も多いですし、野菜もかなり少なくなってしまいましたから」
答えると、愛莉さんがすまなそうに目を伏せた。
しかし、謝るのは時間の無駄だと思ったのだろう。話を続ける。
「――じゃあ行くので決まりだね。どこに行く?」
「じゃあリバーシティ・トロン・モールに行きましょう」
めぐねぇは、元から考えていたのかすぐに案を出した。確かに、あのモールはここから行ける距離にある。
十分大きいので、生存者がいる可能性もあるだろう。私はそう考え、頷いた。
「よし、決定だね。悠里さん、ゆき達に言ってきてくれる?」
「え?ええ」
「ちょっと私は探したいものがあるからここに残るね」
愛莉さんは微笑んだ。
探し物とは何だろうか――?
気になりはしたが、ゆきちゃん達に遠足の事を言う方が優先だろう。時計を見ると、私たちが部室を出てから30分が経とうとしている。
急いで二人に言わなくては。
私は部室へ向かい、歩き始めた。
ちょっと早めに遠足に行くことになります。
めぐねぇと愛莉が居ることによって遠足の内容に何か変化は起こるのか…