【習作】物理で殴る!   作:天瀬

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第九話、後始末

 それは、ドニとの決闘中に一度剣が死んだ時の事。

 

「おぉ、剣よ。死んでしまうとは情けない。でもあたし的にはまた会いに来てくれてラッキー、みたいな」

「おっかさん、ついこの間会ったばっかでしょう」

「おおぅ、いつも済まないねぇ」

 

 意識が浮上して即聞こえた声に慣れた調子で返すと、幼い声が乗ってくる。何となく周りを確認すれば、全てが灰色で塗りつぶされた、見慣れた世界が見える。

 あぁ、またここに来たのか、と剣は状況を理解した。やはりというか、なんというか、死んだらしい。

 生きているときは思い出せないのに、此処に来ると以前来た時の事なんかも思い出せるのは実に不思議である。

 

「って、誰がおばあさんかー!」

「生きた年数でいやぁ四桁えてるんじゃないっけ?」

「正式な女神として不死の領域に居るから、現世で生きてる訳じゃないからノーカンよ!」

 

 そんなもんなのか、と剣は頷いた。やはり女神であっても女である以上は歳は気になるんだなぁ、なんて感想が思考の端をよぎり、そのまま消えていく。

 自分の死の直前に胸にドニの剣を突き立てられ、あの腕の権能の効果により切り刻まれた所まで覚えているため、今回の死因については考える必要もない。

 どうせ此処であれこれ考えたところで忘れるのだ、と。何時も通りに義母の気が済むように付き合おうかと意識を切り替え。

 

「って、今回はちゃんと、伝えなきゃいけない事があるからここで待ってたのよ。どうせ剣の事だからすぐ死ぬと思ってたし」

「その信頼は待とうか、自称義母」

「実際今あたしの目の前にいるんだし、何か間違えてる?」

「返す言葉もございません」

 

 あっさりとやり込められて頭を下げる剣へ、どうだ、とばかりに胸を張るパンドラ。平らだな、と剣は内心だけで素直に思った。

 姿勢を戻したパンドラにじと目を向けられ、表情に出てない筈なのにこうも読まれるのは何故だろうか、と剣は考える。

 

「良いこと教えてあげるわね、剣。女は視線に敏感なのよ」

「成程、納得」

 

 つまりは自覚があるという事だろう。何処に視線が向いているかを感じて直ぐに何を想っているかの想像がつくという事は。

 女神というのも大変なんだろうな、等と思った瞬間に向けられるじと眼がさらに強くなった気がした。

 

「剣、あなたって時々敏いのに馬鹿ね」

「なぜ思考がばれたし!?」

 

 どうせ忘れるのだから、と。この場所では結構剣もはっちゃけていたりする。

 さてこの場をどう切り抜けようか、と思考を回したのは僅かの間。一度ゆっくり息を吸い、吐いて。

 

「で、伝えなきゃいけない事って?」

「うわっ、おもいっきり話逸らした!? まぁ良いけど。えっとね、剣、今あなたがいる極東には、最強の鋼が眠っているの」

「最強の鋼?」

「最強の鋼」

 

 ふむ、と考え込む。鋼で最強と言われれば、やはり思い浮かぶのは英雄の中の英雄、数多の試練を乗り越え不死を得た神の子であるのだが。

 しかし、と思う。それを自分に伝えてどうしようというのか。

 

「そろそろ起きそうだとか、なんかそんな事でもあるの?」

「そんな事は無いんだけれど、でも、彼のお方は鋼だけに、竜蛇に反応するの」

「成程、竜蛇に反応するのか、鋼だけに」

「えぇ、竜蛇に反応するのよ、鋼だけに」

「……思いっきり僕の権能は竜蛇から簒奪したものな訳だけど、大丈夫なのコレ?」

「竜蛇そのものではないのだし、たぶん大丈夫じゃないかしら?」

 

 実にいい笑顔で不安な事を仰せになられる義母に、剣はため息を吐くしかなかった。

 しかし、大丈夫でないならばやれるべきことをやるだけである。とくに彼女に対し文句を口にする必要性も理由もなく、あっさりと剣は意識をシフトする。

 

「まぁ、気になるのであれば一度、試してみたらどうかしら? 確か、日光の方に、対竜蛇用の鋼の方がおられる筈よ。反応したらまずいかもって事で」

「日光? 猿軍団?」

 

 言われた言葉に思いついた言葉をそのまま口にすると、なぜか義母は剣から目を逸らした。はて、と首を傾げても説明してくれる様子はない。

 まぁ、何か言いにくい事でもあるのだろう、と納得しておくことにする。彼女は女神、本来神の一員であるから言えない事も多いのだろうと。

 まさか『猿』が当っている、等という発想は剣にはなかった。

 

「……しかし、警告を貰ったはいいけれど。これ、どうせ現世に戻ったら忘れるんだよなぁ」

「あぁ、大丈夫。無意識の領域には残ってるから」

「……なんですと? つまりあれか、此処で馬鹿やった事は実は無意識に覚えてるのか、僕」

 

 この生と不死の境界でやらかした事を思い出してみる。目の前の少女を取りあえず義母と呼んでみたり、ふざけて馬鹿やったり、コントやらかしたり、と碌でもない事ばかりをしていた気がする。

 ふむと頷き、まぁいいや、と剣は流した。碌でもない事をしているのは現世でもそう変わらない。多少はっちゃけ度合いに差がある程度である。

 

「と……どうやら今回はそろそろっぽい。伝え忘れとかはないかな、義母として」

「特にはないかなぁ。それじゃぁね、剣。また来てくれるの待ってるから」

「僕にまた死ねというのか、この義母は」

 

 別れのやり取りもいつもと変わる事は無く。そして剣の意識は現世へと引き戻されていく。

 現世に戻れば、決闘の続きとなる。せめて不意を突ける状況であることを願いながら、剣は現世へと舞い戻る。

 

* * *

 

「……、……ぎ、剣」

 

 名を呼ぶ声に意識が浮上する。思考しようとすると微妙に感じる重さを振り払うように軽く首を振り、周りを確認した剣はそのまま半ば無意識に壁にかかる時計を見上げた。

 家に帰ってきてからおおよそ三十分程か。どうやらソファーに座り、少し休憩しよう、と言ってすぐに夢に引きずり込まれていたらしい。

 なんだか忘れてはいけないような、しかし覚えていたくないような微妙な夢を見た気がするのだが、既に意識の闇に沈んでしまっていればどうしようもない。吐息を一つ。

 

「悪い、少し寝てたみたいだ」

「そう、大丈夫? 厳しそうなら今日は休む、でもいいけれど」

「いや、いいよ。鉄は熱い内に打てというし反省会はやっておこう。それに、明日……もう今日か、の予定とか急に言われて、内容聞いてないし」

 

 ドニに言った時間制限の理由となる用事。これは移動している間にレイセから剣に伝えられたことである。状況からして方便かもしれないとは考えたのだが、そうではない可能性が高かった。

 この相棒があると言った以上は本当にあるというのが何時もの事だったから。故に、剣はテーブルを挟んだ向かいで座布団を敷いて座るレイセへと首を傾げて見せる。

 

「あぁ、今日は荷物の整理を手伝って貰おうと思ってたのよ。貴方の怪力を頼らせてもらおうかなって」

「……いや、何を送ったのか知らないけどそんな早く届くとは思えない……って、レイまさか」

「自分の商売道具を人任せにするわけないでしょう? 全部もって来たわ」

 

 さらりと言われた言葉に剣は軽く頭を抱える。結社に置いていた、彼女の実験道具は如何程のものだったか、と想像して軽く眩暈がしたようだ。

 レイセが所属する結社は、その性質上魔術よりも製薬や錬金に重きを置いているが、必要に迫られたがためかある分野の魔術についてのみやたらと造詣が深い。

 収納に関する魔術である。

 たしか、バッグの容量を増やすのではなく、中に詰めるモノを折り畳む事で入れられる容量を増やす魔術だとか、逆にバッグの内部に仮想空間を展開し容量を増やす魔術だとかあるらしいと聞いた記憶はあるのだが……正直よく解らないので四次元ポケットみたいなものだ、と剣は思う事にしていた。

 荷物としてもってきたのはキャリーバッグでしかないが、それが四次元ポケットであると考えれば内にどれだけ物を詰め込んでいるのか。剣はため息を一つ、考えない事にした。

 

「さて、それじゃ反省会、と行く前に。まずはちゃんとした紹介から始めましょうか」

「……はい、そうですね」

 

 一息入れる様に自分の前に置かれたコップの茶を啜ってからレイセの発言に、同意する様に沙恵が頷く。

 ドニの事が最優先事項となっていたために互いの紹介すら後回しとなっていた。夕方過ぎに帰って来た時に軽い挨拶をしたきり、ずっとドニ対策にかかりきりだったためである。

 

「私から名乗らせてもらうわね? レイセ・シルフィスよ。所属は『アスクレピオスの弟子』という事になるけれど、気にしなくていいわ。あそこが組織としてカンピオーネに関わりたがる事は無いでしょうし」

「承知しました。正史編纂委員会所属、清秋院の分家筋、清秋院沙恵と申します。どうかよろしくお願いします」

「僕は……」

「知ってる、省略」

 

 少女同士の名乗り合いに剣も混ざろうとしたところで、バッサリとレイセに切って捨てられる。がくりと肩を落とす剣とそんな剣を気に止めた様子の無いレイセを眺め、沙恵は困惑したように眉を寄せる。

 言うべきか、言わざるべきか、と口を開いては閉じる沙恵の様子に気付いたレイセは、苦笑を浮かべた。

 

「『従者が羅刹王にそんな態度を取るなんて』……と、いうところかしら?」

「……はい。シルフィス様は剣様に対し、態度が横柄に過ぎると存じます」

「まぁ、余所の魔王にこんな態度で応じてたら取って食われても仕方ないわよね。けど、この王はそれなりに馴れ馴れしく接されることを好むわ。貴方も知ってるんじゃない?」

「それは……」

 

 実際、昨晩にもっと気楽に付き合ってくれ、と願われたばかりである。眉を寄せ戸惑う様子を見せる沙恵に、レイセは批難するわけではない、と軽く片手を振ってみせた。

 

「貴方には貴方の理由があって、剣に対して畏まっているというのは解る。ただ同様に、私は私の理由でこういう態度を取っているの」

「……承知しました」

 

 まだ表情に不服そうな様子が残ってはいるが、しかし、レイセの言葉にも一理あると判断したらしく沙恵は一つ頷く。

 よろしい、というように笑って見せてから、ふとレイセはソファーに座る己の主の方に目を向ける。なんだかしょげたままの様な、それでいてどこか嬉しそうな剣を見て、はてと首を傾げ。

 何かに思い当たったかのように少し熱を持つ頬を冷やす様に、こほんと咳払い一つ。

 

「今後も行動を共にするのなら、剣の権能について概要くらいは伝えておくわ」

「……宜しい、のですか?」

「正直な所、人手が欲しいのよ。あまり多い必要は無いけれど、私しかいないのもそれはそれで困るところがあるから。それに、別に明かしても問題ないわよね、剣?」

「まぁ、ね。知られたからどうにかなるってものでもないし」

 

 肩を竦める剣の答えに、沙恵は驚きに軽く目を見開く。

 権能とはカンピオーネが神より簒奪した力であり、それぞれのカンピオーネの戦う力であり、そして切り札である。知られないようにするのが当たり前の情報なのだ。

 無論、先に知っていたからと言って対策が取れるとは限らない。例えば先程剣と死闘を演じたドニのように、その力が単純で明快であるからこそ対策を取ることが難しいカンピオーネも存在する。

 ドニにの能力を知ってできる対策など、刃の届かない遠距離から『鋼の加護』を貫きうる威力で攻撃するか、あるいは鋼を溶かす高熱を浴びせる位しかないのだ。

 知られたからといって、という剣の言葉はそういった単純な自信を感じさせる。

 

「私が把握する剣の権能は単純に二つ。清秋院さんも見たと思うけれど……切断されても再生し、斬り殺されても蘇生する生命力と、ただの怪力」

「……は、い?」

 

 とても簡単に説明されて、沙恵は一瞬呆けた表情を見せた。

 生命力と、怪力。実に単純で解り易い権能だろう。そして剣が『知られたからって』という理由もよく解る。

 どれだけ傷を負わせようと再生し蘇生して、ただ怪力で殴りつけてくる。それだけの怪物。その意味を理解して。

 背筋を這い上がる悪寒に沙恵は己の身を震わせる。ただ純粋な暴力が無尽蔵に振るわれるというだけで、その恐ろしさは想像に難くない。

 

「あ、の。それでは剣様は死ぬ事がない……死しても必ずよみがえる、という事でしょうか……?」

「勿論、限界はあると思うわ。けれど、ただそれだけの能力に特化した権能は一度死んだ程度で限界って事はないみたいよ。この間、二回死んで蘇生してたし」

「ぁー……あれは酷かった。まさか頭突きしたら自分の頭まで爆ぜるとは思わなかった」

 

 沙恵は眩暈を覚えた。どうやらこの王は己の『怪力』でもって頭突きをかまし、その衝撃に自身の肉体が耐えられなかったらしい。

 逆に言えば、剣が権能で得た『怪力』とはカンピオーネである自身の身体すらも破壊するレベルのものであるという事か。不死性を表わす筈の『鋼の加護』を発動したドニですら吹き飛んだのも納得というモノである。

 だが、その光景を思い出したからこそ、沙恵は眉を寄せる。今剣は頭突きで頭が爆ぜたと言っていた。肉体の頑丈性よりも力の方が強いというのであれば、『鋼の加護』を殴りつけた際の反動も受けているはずである。

 記憶しているその光景では、蘇生した剣は特に腕を爆ぜさせることも無く、ドニを殴り飛ばしていた。

 

「……ですが、権能で己の身を護っていたドニ様を殴打なされた時には、腕は無事だったと記憶しているのですが……」

「えぇ、そうね。ドニ卿を殴った時は、何故か、剣の腕は無事だったわ。その腕に籠手を嵌めてね。で、剣、私はあんなものを作った覚えはないんだけれど?」

「まぁ、そりゃ、あれはレイに作ってもらったモノじゃないし。あれが新しい権能みたいだ」

 

 沙恵の指摘に頷いたレイセがそのまま剣へと疑問を投げ、困ったように頬を掻きながら剣が応じる。その回答にレイセはやっぱりとでも言いたげに頷き、沙恵は只驚愕に目を白黒させていた。

 

「ドニ卿との決闘で、一死と引き換えに剣士の剣技にある程度慣れた上、新権能一つ掌握か。儲けの方が大きいわね。効果はどんなもの?」

「掴める。後、多分全力で殴っても大丈夫。以上」

 

 とりあえず、あの時に理解したその効果をそのまま口に乗せる。新しい権能という事には驚きを見せなかったレイセだが、流石にその剣の説明には呆れを面に乗せて溜息をついた。

 説明が端的すぎて能力がよく解らない。剣の力で殴っても反動ダメージがないというのはかなりの代物であるはずなのだが。

 

「……あの、剣様? 掴める、とは?」

「ぁー、うん、僕もよく解ってる訳じゃないんだけれど、なんて言うか。うん、掴める、って思ったんだ。で、手を伸ばしたらドニさんの持ってた武器を掴む事が出来た、と」

「掌握したんじゃないの? 全く、貴方が適当だと誰が苦労すると……うん?」

 

 困惑しながらの沙恵の問い掛けに、同じく困惑したように応じる剣。そんな二人を見て呆れたように溜息を突こうとしたレイセだが、不意に何か脳裏に過るものを感じて言葉を止める。

 彼が掌握した第三の権能は、間違いなく彼が最後に倒した神から簒奪したものなのだろう。そうだとするならば、そんな特性を持つモノに心当たりがあった。

 

「……成程、ね。剣、それ、かなり有難いものかもしれない」

「うん、何となくだけど僕もそう思う。僕にとってとても大事なものだと」

 

 頷きながら己の手に目を落とす剣を見て、レイセは軽く息を吐く。そんな二人の様子に、沙恵は不思議そうに首を傾げた。

 

「……あの?」

「ん? ……あぁ、うん。結局、人でしかないモノの手じゃ神を超えることは出来ないんだな、ってつくづく思い知らされただけよ」

「はい……?」

 

 問いかけるような沙恵の言葉にレイセは愚痴にような声で応じる。意味が解らない、という様子を見せる沙恵はやはり不思議そうに首をかしげるばかり。

 そんな沙恵を前に、剣の相棒として彼の怪力を生かす道具や状況を「作る」事を己に課してきたレイセは少しばかり拗ねたような様子で軽く片手を振った。

 

「気にしないで、戯言よ。さて、新たな権能の効果もおよそ見当がついたところで、とりあえず今確認しなきゃならないことは終わったと思うんだけど、剣?」

「ん、確かに。後はまぁ、もしかしたら今日また直ぐドニさんが再戦しよう、って乗り込んでくる可能性くらい、か……?」

「それはないと思うわ。少なくとも戦闘するという目的は達成したのだし、用があると伝えたならドニ卿はこちらの都合を優先してくれるもの」

 

 剣の言葉にレイセが否定の言葉を返す。サルバトーレ・ドニという男はとりあえずカンピオーネや神と見れば勝負を吹っ掛ける王ではあるが、全く話が通じないと言う訳ではない。

 その望むところを果たす為ならばある程度の交渉にも応じてくれる度量はある。

 もっとも、望むところとなる戦闘矢勝負については一切の妥協を行うつもりはない事から、煙に巻いて逃げるということは出来ないが。

 

「……後。ドニ様のお付きの騎士の方が今日中に来日為される、という話を甘粕さんより伺っております」

「あぁ、剣がドニ卿の挑戦を受けたから解放されたのね。ならま、当分は気にしなくていいんじゃない?」

「そんなものなのか」

 

 補足するような沙恵の言葉にレイセは納得という様子を見せ、そんな二人に剣はよく解らないと言いたげな表情を浮かべながらも、とりあえずは頷いておく。

 沙恵が情報を得たのはドニ対策を考えている間だろうか。そんな事をふとレイセは考え、けれど今はたいして重要な情報でもないか、と投げ捨てた。

 

「という所で、本日はお開きでいいと思うのだけれど。どうかしら、我が王?」

「へいへい。……ぁ、そういやレイはどの部屋を使う気なんだ? とりあえず沙恵には二階の空き部屋を使ってもらったけど」

 

 空き部屋は客室として使っていたため、とりあえず布団等はあったことから沙恵に使ってもらう事にしたのだ。

 だが、もう空き部屋はない。ここから先は誰かの部屋を使ってもらう事にしかならない。レイセであればとは思うものの、それでもやはり剣は自分でどの部屋を使わせるか、という割り振りは出来なかった。

 そんな剣の様子を見て問ったのか、む、と少しばかりレイセは眉を寄せ一息の思考。

 

「研究器具なんかを持ち込みたいから広い方が良いのだけれど……客室の布団はもう一人分あるのかしら?」

「え? えぇ、っと……沙恵、どうだった?」

「ありました。広さ的にも、二人であれば問題なく泊まれると思われます」

「ん、じゃぁ今晩は客室で寝かせてもらうわ。昼にいろいろ広げるついでに、その辺の事も解決しないとね」

 

 笑顔を浮かべながら、さらりと告げるレイセに困ったように剣が頭を掻き、吐息を一つ。

 

「……ありがと、レイ。さて、んじゃ今日はお開きにして寝よう。今後の事はひと眠りした後で、ってことで!」

 

 軽く両手を打ち合わせての王の宣言を、従者二人はただ一礼を持って受け入れた。


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