やはり彼の学校生活は間違っている。   作:材木島

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始まり

〜次の日、八幡サイド〜

 

放課後

 

「比企谷先輩、どこいくんですかー!!」

「何故だ、何故こうなった……」

そこには間宮あかりが比企谷八幡を追う姿が見えた。八幡はまるで何かに怯えるように逃げている。

昨日、平塚先生に近状報告をした後、雑談も交えながら対策を練っていた。

そして昨日の出来事を蘭豹先生に報告しようとしたところ彼女に見つかり、訳もわからず追いかけられている。そして袋小路まで追い詰められた。

「なんだよ……なんか用かよ……」

「あ、あの……えっと……」

2人とも息切れが激しく言葉が発せていない。

「昨日大丈夫だったんですか!?」

どうやら昨日の出来事を気にかけてくれたらしい。だが、その事でここまで追ってくるのも必死過ぎだ。

「あぁ、もう平気だ。じゃーな」

「ちょっと、待ってください!」

思いっきり手を引っ張られ体勢が崩れる。

「なんだよ、これで倒れてラブコメの主人公みたいな展開になっても知らないぞ」

「比企谷先輩は遠山金次と仲がいいんですか?!」

どうやらその事を八幡に聞きたかったらしい。

昨日の出来事は前置きとして本題は遠山金次の事だったのだ。

「仲良くねーよ、一緒のクラスってだけだ」

「そ、そうなんですか……遠山金次はアリア先輩と付き合ってるんですか!!」

「い、いやそこまで知らんが少なくともあいつは付き合うとかそういうのじゃないと思うが……確かパートナーだとかなんとか言ってたような」

獣のように八幡に食いつく。アリアの事になると見境が無いようだ。

「女ったらしなのに……なんでアリア先輩。

わかりました!ありがとうございます!」

そう言うと何処か行ってしまった。その背中から脱力感が伝わる。あかりはとてもアリアを尊敬して崇拝とまでは行かないがそれくらいの気持ちはあるだろう。金次の事をアリアの周りを彷徨く害虫と思っているのだろうか。

「まったくなんなんだ……」

コツコツ……と足音がする。

「お、いたいた比企谷」

そこへ蘭豹がやってきた。

「比企谷、話があるんやけど、立ち話であれやが、昨日の事だ。静ちゃん曰くやはり巨大な組織の手の者で間違えないだろうということや。お前そんな大変なクエスト選んじまったのか、大変やなあ……」

「絶対思ってないですよね、とりあえず平塚先生何者なんだよ……」

本当に教師か?という顔をしてるが本当に教師である。30の土台に乗ってるか乗ってないかの瀬戸際にいる教師だ。

「はっはっは。まあとりあえず、だ。お前強襲科に来い」

「は?」

唐突すぎて蘭豹の言った言葉が理解出来なかった。

「昨日みたいなことがあると怖いやろ?」

「いや全然。俺人との関わりなんてないし、もうあんな事もないですよ」

と言ってその場を立ち去ろうとするが首根っこを掴まれた。そして壁に押し付けられて蘭豹は笑顔を浮かべて彼に言った。

「手続きは済ませてあるからな。ん?いくよな?」

「は……はい。行きます……」

「それでいいんだよ、じゃ、今日から頑張りたまえ!」

蘭豹はそれを告げるとその場を立ち去った。

八幡はただただ立ち竦んでいた。

 

〜金次サイド〜

 

放課後

 

「はぁ……」

「どうしたのよ、金次」

今、隣にいるのは一時的に遠山金次とパーティを組んでいる緋色の髪をしている中学生の様な高校2年生、Sランク武偵、神崎アリア。

「いやもう今更だがなんで俺なんだよ、強襲科にだって戻りたくない」

「太陽はなんで昇る?月はなぜ輝く?金次はいつも質問ばかり。武偵らしく自分で考えなさい」

嫌々ながら彼は今日から強襲科に戻るのである。

「あんたが昨日誰に調べてもらったかわからないけど、私の事を調べるって事は少しは興味があるのよね?」

「ちげーよ、どんな奴か知りたかっただけだ」

ふてぶてしくそう答えるとアリアは殴りにかかった。それも凄い顔をして。

「金次のくせに生意気!奴隷は奴隷らしくしてればいいのよ!」

蹴り殴り蹴り殴りと食う!寝る!遊ぶ!の3連コンボのようにまともに食らっている金次。

「いてーよ!やめろバカ!」

アリアを振り払おうとしても軽いので離れない。

「みゃー!みゃー!」

猫の鳴き声のように喚くアリアは金次から離れようとしない。

 

でもこいつ……すごいいい匂いするんだな……

ドクッドク……

ま、まずい!!!

 

ヒステリアモードになりそうだった金次はアリアを無理矢理振り払い、ヒスりそうなのを回避した。

「ほら、さっさと強襲科いくぞ」

「金次のくせにー!風穴開けるー!!」

アリアの声が廊下に鳴り響いた。

 

〜強襲科〜

 

「おーい!比企谷!なんでお前がいるんだ?」

「いや、お前こそ何でいるんだよ」

「八幡ね、どうしてここにいるの?あなたは探偵科じゃなかった?」

2人からの質問に答えずに下を向いて溜息を付いている。

 

不幸だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

なんだよこの学校!もうええい!不幸すぎますーー!!!

ってツンツン頭の高校生やってる場合じゃなかった。俺の場合、ツンツンしてるのは性格かな?

 

「俺は蘭豹先生に無理矢理連れてこられてだな」

「俺もだ、無理矢理強襲科に戻されてな……」

2人とも顔を合わせて溜息をつき、再度向き合うと少し表情が柔らかくなっていた。

「お互い面倒な事に巻き込まれてるな」

「遠山、色々言ってるようだがそっちの子が鬼になってるぞ」

八幡にそう言われてアリアを見てみるとガバメントを構えて怒りを露にしている。

「金次、風穴開けるってことでいいのね……?」

 

「わかったわかった!ちゃんと訓練するよ。だけどお前は俺が終わるまで違う所で訓練してろ。俺は比企谷とやる」

勝手に決められてしまって八幡がそれについて反論しようと

「いや俺別に1人で訓練するからいいし、寧ろサボりたいくらいで「俺じゃお前のレベルにはついていけないからとりあえずは比企谷とやってるから!終わったら校門集合でいいだろ?」

「まあいいわ、好きにしなさい」

と勝手に話が纏まってしまった。そしてアリアは自分の訓練へと何処かへ行ってしまった。

強襲科はクエストで敵のアジトへの突入など危険な事をすることが多い。なので銃撃戦、肉弾戦になった場合の訓練をする必要がある。

「的を射抜く射撃訓練や、CQCの実践訓練もペアでならできる」

「俺は完全にそのタイプじゃないんだけどな……」

確かに八幡は接近戦は不慣れというか、似合っていない。どちらかと言うとスナイパーや諜報員である。なのに蘭豹は何故彼を強襲科に入れたのだろうか。

「まあ俺も強襲科が嫌で探偵科行ったんだけどな。少しは居た時期もあったが、まあいい。とりあえず基本的なことを教えるぞ」

「はいはい、お手柔らかに。遠山先生」

そして2人の特訓が1〜2時間くらい続き、八幡も珍しくちゃんとやっているようで、ただやはりその動きは近接戦闘型ではない。

銃の扱いには慣れているが、CQCともなると元々の知識がない分不利になる。金次はそこを踏まえて1から教えている。

 

 

 

「お疲れさん、銃の扱いは慣れてきたな。後は肉弾戦の時か……俺も嫌いだけどさ」

「まあ少しは分かったわ、さんきゅ」

2人とも結構な量の汗をかいている。

なんやかんや言って2人は似ている所があるのかもしれない。文句を言いつつやり遂げる精神力。それは武偵に取って大切な物である。

「とりあえず俺はもう行くな、アリアが待ってるだろうし」

「おう、大変だなお前も」

金次から何かを感じ取ったのか、そんな言葉が出てきてしまった。

そして金次がその場から立ち去り、八幡も帰り支度をして行こうとしたところにとても小柄で

アリアと金次の後をつけているうさ耳をしてる感じの女の子がいた。

「……おい」

「はぅぅぅ!?」

突然声を掛けられて驚き変な声が出てしまっている。

「比企谷先輩!?なんで!?」

「いや俺実習の帰りだけど、なにしてんだ」

「遠山金次がアリア先輩に何かしないように尾行してるんです!」

 

どこまでアリアが好きなんだ、ストーカーだぞ。でもこんな可愛い後輩にされるならいいもんかもな。俺がやったら速攻で手錠出てテレビに名前のって人気者になるまであるからな……

 

そんな事を思いつつ、八幡は何事もないように

その場を過ぎようとあかりの前を通りすぎようとしたが、服を引っ張られてそこに座り込んでしまった。

「なんだよ、俺は帰るんだって「先輩も一緒に尾行しましょ!手伝ってくださいよー」

次は袖を引っ張り駄々をこねてくる。

 

くっ……かわいい……だと!?

そんな事は無い。俺は小町以外可愛いと思ったことがない、筈だ!!!!!

 

「わかったから離せ……」

そう言うとニコッと笑顔になるあかり。

天然記念物並のど天然のあかり。八幡をも虜?にしてしまうのか。

「あの二人何やってんだ?」

「何でしょうかね、2人でゲームセンター入っていきましたよ」

 

〜10分後〜

2人が出てきた。そしてアリアが何かを抱きしめて笑みを浮かべている。

「うわーレオポンだー!」

子供のように無邪気に笑顔ではしゃぐ彼女を見て金次は頬を染めて彼女を見ている。

 

コイツ……こんな表情も見せるんだな。

割と可愛いのかもな、アリアは。

 

アリアはそのレオポンと呼ばれるぬいぐるみの2つのうち1つを金次に渡した。

「あんたの手柄だし、これはあんたにあげるわ」

見たこともないような笑顔で金次にそれを渡すと彼は返す言葉を失っている。

「なによ、何か言いなさいよ」

「お、おう。ありがとう」

「それでいいのよ♪流石私の奴隷」

女王様気分でるんるんなアリアはまるでと言っていいほど2人の尾行に気づいていない。

 

「……今日は何も無かったけど、いつかは尻尾つかんでやるーーー!」

「なんだ、ただのリア充か」

次こそは!と意気込むあかりとリア充爆発しろ、と睨みをきかす八幡。

「先輩、付き合わせてすいませんでした!」

「気にすんな、どうせこの後……ってやばい、用事があるんだ」

そう、平塚先生の元に行くのと奉仕部に顔を出さなければならない。だが時刻は17時。

今行ったても平塚先生には会えるが奉仕部には顔を出せない。

「……まあいいか。とりあえずじゃーな」

「はい!またなんかあったらよろしくお願いします!」

行儀よくお辞儀をして笑顔で八幡を送る。

その時、彼は気付いていた。彼等の後をつける1つの影を。

 

 

「ここまで来ればいいだろ、出てこいよ」

1つの影が姿を表した。それは女の子だった、とても綺麗な髪をして巫女の様な顔立ち。そして腰には日本刀。

「な、なんでバレたんですか、すごいですね、比企谷先輩」

「ふ、ぼっちスキル熟練度MAXだからな。人の視線には敏感なんだよ。つか何で俺の名前知ってんだよ」

確かに、ストーカーをされる覚えもないし、面識もないこの女の子と八幡は何も接点がない。

だが臨戦態勢にあるこの中、八幡は懐の銃に手を伸ばした。

「あかりちゃんが笑顔で話してたんです!あかりちゃんは……あかりちゃんは!私のものなんですー!いいですね!あかりちゃんに手を出したらただじゃおきませんからね!!」

名前のわからないその子はその捨て台詞を吐いて何処かへ行ってしまった。

「な、何だったんだあの女の子。というか何なんだよこの学校は」

彼の周りでこの短期間色々あり過ぎた。

少しあの先生を恨んでやろう、愚痴を言いまくってやろうと思ったところで彼はそこから離れた。

 

 

「ふむ、君も退屈しないな。良かったじゃないか」

「いや全然良くないんですがそれは……」

武偵高校の生活、蘭豹に無理矢理強襲科に転科させられたこと、謎の男の襲撃、そしてイ・ウー。彼が転校してからというもの、色々な事件に巻き込まれている。

「とりあえず近状報告は以上です。もうこの時間だし、由比ヶ浜も雪ノ下も帰りましたよね」

「あー、確かあの2人一緒に帰っていったな。そう言えば今日珍しく依頼が来てだな。クラスが一緒だった葉山隼人って覚えてるか?」

 

サッカー部でイケメンで勉強も出来てスクールカーストトップでリア王の名にふさわしい彼の事なんて全く知りませんね、はい。

 

「まあ一応は」

「彼が来てだな、君と話したいと来たそうだ」

彼はキョトンとした表情をしてしまっている。

葉山隼人も彼に全く接点がない。ないどころか認識されてるかさえ危うい。

「なんでまた俺なんですかねえ……」

「知らんな、君も知られていたんだな、良かったじゃないか!」

 

その言い方だとクラスで空気でまるでいなかったような言い方ですね!俺一応1年間いましたよ!4月も少しはいたよ!

 

「まあまた明日来ますよ、あいつらにもそう言っておいてください」

「あぁ、わかった。比企谷、頑張りたまえ」

ポンポンと背中を押され職員室を出る。

まだ入学して1ヵ月くらいだと言うのに相当疲れが見える。そして彼の人格も少しは変わっているように思える。どっちの意味でも。

学校から出ていく彼のその背中はいつもより小さく見えた。

 

〜エピローグ〜

総武高校を出たのが19時。校門から出ていつもの帰り道でマックスコーヒーを買って今までの起こったことを考えていた。

 

俺がここに入学させられた理由は定かではない。だが推測されるのは平塚先生は俺をイ・ウーの魔の手が迫る前に逃がしたのか、それとも

また別の理由があるのか。何はともあれ、まずあの謎の男。それと今日の間宮あかりの知り合いみたいなヤツ。前者はとても危険だ、後者はまあ放っておいてもいいだろう。次現れた時どうするべきかなあ……

 

そんな事を考えながら夜道を歩いていると聞き覚えのある声が聞こえた。

「比企谷先輩♪こんばんは♪」

八幡がその声に反応して振り向いたその先には全く別の人物がいた。

 




どうも、食う寝る遊ぶの三連コンボがしたい作者です……
そんな事はどうでもいいとして、やっと志乃ちゃんを出せました。
少し無理矢理感ありますけどw
次回はライカと麒麟を出すつもりです!
雪ノ下と由比ヶ浜もの出番もあるので楽しみにしててください!
アドバイスや誤字脱字があったら教えてください。
ではではー!

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