でもディズニーは嫌いです。
断章のグリムが好きです。
赤ずきんのお母さんが言いました。
「赤ずきん、最近森に狼が出るそうだから森のおばあさまに気をつけるよう伝えておくれ、ついでにこのパンも届けてあげてね」
森のおばあさんは占いで雨の時期を教えてくれたり、魔法で病気の治し方を教えてくれるとてもいい人です。
赤ずきんはおばあさんと仲が良かったので、
「うん、わかった」
そう言って籠を持って出かけて行きました。
出かけていった赤ずきんがちょうど森へ入った頃、灰色の汚い毛並みをした狼が赤ずきんを見つけて呟きました。
「あぁ? 柔らかそうなガキがいやがるな」
狼は一計を案じて森の奥へ向かって行きました。
赤ずきんが森の奥まで言った頃、赤ずきんに声をかけた者がいました。
「やあ、こんな森の奥まで来たら危ないぞ」
声を掛けたのは狩人さんの格好をした男の人ですが、よそ者のようで赤ずきんには見覚えがありません。猟師さんはヒゲダルマでどこから髪の毛でどこからヒゲかわかりません。お髭の中から見える歯はとても白くてとても尖ってて綺麗です。
赤ずきんは猟師さんに言いました。
「森のおばあさまへパンを届けに行くの」
猟師は鼻をひくひくさせ、
「いい匂いだね、焼きたてかい?」
と聞きました。
「ええそうよ、おかあさんのパンはむらでも評判がいいの」
「そうかい、実はおじさんもおばあさまに用事があるんだけれど、案内してもらってもいいかな?」
赤ずきんと猟師さんは途中の花畑を見て言いました。
「このお花とても綺麗ね、ここで花束を作っておばあさまに届けたいわ」
「とても喜ぶだろうね、けれどパンが冷めてしまうよ、熱々は無理でも温かいうちに届けたいじゃないか。おじさんがパンを届けてこよう、何かあったらこの笛で呼ぶんだよ」
赤ずきんから残りの道を聞いた猟師さんは風の様に消えてしまいました。
「とても足が早いのね。これなら笛があれば安心ね」
ところ変わって、おばあさまのお家に汚い狼がやってきていました。
「このドアうっとうしいなぁ」
汚い狼は頭が良くないので壊してしまいます。
汚い狼が中に入ると……誰もいません。
「ここ魔女の家じゃなかったか? 空っぽなら好都合だな」
ただ留守なだけかもしれませんが汚い狼は頭が良くないのでこの家で獲物を待つことにしました。
しばらくすると、
「随分斬新なドアだな」
寝惚けたことを言いながら家に入ってきたのはヒゲダルマの猟師さんです。
壊れてしまって開けっ放しのドアから堂々と猟師さんはお家へ入ります。お家の中を見回してもおばあさんはどこにもいないようです。
「あまり散らかっていない、狼がここでババァを襲った訳じゃなさそうだ」
何やら猟師さんの言葉遣いが怖くなってきました。目つきも悪くなってきます。目付きの悪いままお家の奥を見ると膨らんで誰かが寝てそうなベッドがあるではありませんか。
猟師さんが鼻をひくひくさせながら言いました。
「ババァじゃねぇな。でろ」
「バレちゃあしょうがねぇ! 硬くてまずそうだがてめぇからいただきだぁ!」
言われた途端に布団の中から汚い毛並みの狼が飛び出して、猟師さんに襲いかかります。
けれども猟師さんは狼の上あごを右手で、下あごを左手で掴んで狼を捕まえてしまいました。
「若造が、相手は選べ」
猟師さんが恐ろしい唸り声を上げながら姿を変えてゆくではありませんか。もじゃもじゃだったヒゲがサラサラになってゆき、爪は尖り腕も毛が生え、鼻が前に突き出てゆきます。いつの間にやら全身が黒く美しい毛並みに包まれます。
なんと猟師さんも狼だったのです。
狼に変わった猟師さんは汚い狼をビリビリ破くように引き裂き、尻尾と背中と頭のある上あご側とお腹と足のある下あご側の真っ二つにしてしまいました。
「やはり腹の中にもババァはいないか」
引き裂いた汚い狼の中を一応確認しますが何かいるはずもなく、
「つまり逃げられたわけだ」
どうやらこの綺麗な狼さんはおばあさんに恨みがあるようです。
「今度こそ元の毛並みの狼に戻れると思ったら……」
どうやら黒い毛並みや人に化ける力は欲しくもないのに無理やりされたようです。
おばあさんお家をアチラコチラを探しまわって手がかりを探す猟師さんの姿に戻った狼さん。なんだかんだ言って人の手は使いやすいようです。
狼さんが色々家の捜していると置き手紙を見つけました。けれども狼さんは字が読めません。仕方なく赤ずきんの笛か赤ずきんがおばあさんの家に来るのを待つことにしました。
しばらくすると赤ずきんがやってきて、
「な……なにこれ」
壊れたドアに荒らされた部屋、真っ二つの狼。
お家からは猟師さんが出てきて、
「待ってたよ、わるいね。どうにもこの狼が暴れてさ」
そう言って引き裂かれた狼を指さしました。どうやら家が荒らされてるのも全部こいつのせいにするようです。
「ところで赤ずきん、置き手紙があったよ。声に出して読んでおくれよ、おじさん字が読めないんだ」
だいぶ恥ずかしいことを言ってますが、所詮は狼です。手紙にはこうありました。
『私の家を訪ねてくれたのはきっと赤ずきんでしょう。そうだと思ってこの手紙は書いておきます。厄介なお客さんがきそうなのでお引越しをすることにしました。教えた魔法や占いはもう出来ますね? 私の代わりにむらのみんなを助ける魔女になってお母さんとついでに多分ヒゲダルマの猟師さんが目の前にいるでしょうから彼を召使にして三人で仲良く暮らしなさい』
「は?」
と気の抜けた声を出した猟師さんを無視して赤ずきんは手紙を読み進めます。
『あと、その猟師さんにはちゃんと髭を剃るようにと穏やかな言葉遣いは似合ってないからやめるように言っておきなさい』
「あのババァ!!」
たしかにこっちの言葉遣いのが似合っています。
「じゃ、かえろっか」
「俺を連れて帰る前提で話を進めるんじゃない」
しかし、赤ずきんは何かを思いついたようで、先ほど猟師さんからもらった笛を思いっきり吹きます。
音が出ませんでした。なのに、
「ぐがぁああああああ!」
どれだけ遠くにいても助けを求めれば聞こえる不思議な笛です。こんなに近くで吹かれたらそうなりますよね。でもどうして音がしないのに猟師さんは耳を抑えているのでしょう。
赤ずきんはもう二、三回おもいっきり吹きました。気絶してしまった猟師さんを魔法で両手にすっぽり収まりそうな子狐に変えて連れ帰りました。
それから猟師さんは狼になって強い爪と牙でむらを守ったり、人になってむらのお手伝いをしたり、子狐になって赤ずきんのかごに入ってお使いについていったりして暮らしました。
ただ、人になったときの姿は赤ずきんの魔法でヒゲもなくスラリとしたお兄さんにされてしまいました。強くて怖そうだった猟師さんの姿を気に入っていた彼は大層落ち込んだそうです。
めでたしめでたし
二度と童話パロなんてやらない。と決めたはずなんだけどなー
笛は当然犬笛ですね。犬笛なんて難しそうな道具童話で出しちゃいけない。
一度も姿を表さないのに黒幕のような存在感のババァ。コイツ絶対強い。