五月に入った。
殺せんせーが地球を爆発するという三月まで……残り十一ヶ月。危機は少しずつ迫ってきている。
「……今日から来た外国語の臨時講師を紹介する。」
「イリーナ・イェラビッチと申します。皆さんよろしく!!」
新しい教師がやって来た。しかし何故か殺せんせーにベタベタである。しかも殺せんせーが「ヅラです」と言っても「構いません!!」とすごくベタベタである。
・・
「本格的に外国語に触れさせたいとの学校の意向だ。英語の半分は彼女の受け持ちで文句は無いな?」
「……仕方ありませんねぇ。」
殺せんせーが人間の女の人に、しかも体型が抜群にいい人にベタベタされて、どんな顔になるか……
デレデレだった。
普通にデレデレだった。なんの捻りもない顔だ。人間もありなのかよ。
「ああ……見れば見るほど素敵ですわぁ。その正露丸みたいなつぶらな瞳。曖昧な関節。私とりこになってしまいそう❤」
「いやぁお恥ずかしい。」
だまされるな殺せんせー。そこがツボな女なんていないから。
しかし俺達はそこまで鈍くない。この時期にこのクラスにやって来る先生、けっこうな確率で只者ではない。
休み時間は特にすることがないので、烏間先生に教えてもらった暗殺バドミントンで壁打ちをしている。しかしここの地面は凸凹で、ほとんど長く続かない。少し休憩すると、イェラビッチさんが……イェラビッチって言いづらい。略してビッチさんでいいや。ビッチさんが殺せんせーの方に走っていった。
「殺せんせー!烏間先生から聞きましたわ、すっごく足がお速いんですって?」
「いやぁ、それほどでもないですねぇ。」
殺せんせーはデレデレである。
「お願いがあるの、一度本場のベトナムコーヒーを飲んでみたくて。私が英語を教えている間に買ってきて下さらない?」
「お安いご用です。ベトナムにいい店を知ってますから。」
そう言い残すと殺せんせーは飛んでいった。
「……で、えーと、イリーナ……先生?授業始まるし、教室戻ります?」
「授業?……ああ。各自適当に自習でもしていなさい。それとファーストネームで気安く呼ぶのやめてくれる?あのタコの前以外では先生を演じるつもりも無いし、『イェラビッチお姉さま』と呼びなさい。」
……あんた何様だよ。先生を演じる前にもうすでに先生なんですけども。他の生徒も黙り混んでるし。
「……で、どーすんの?ビッチねえさん。」
赤羽もそのあだ名になったようだ。しかし、ビッチさんは嫌だったようだ。まぁ、当たり前か。
「あんた殺し屋なんでしょ?クラス総がかりで殺せないモンスタービッチねえさん一人で殺れんの?」
「……ガキが。大人にはね、大人の殺り方があるのよ。潮田渚ってあんたよね?」
そう言うと潮田にディープキスをした。というかヤバい。どれ程ヤバいかというと、もうすでに潮田がくたくたなのがヤバい。っべー、マジぱねーわ。
「あとで教員室にいらっしゃい。あなたが調べた奴の情報聞いてみたいわ。ま……強制的に話させらる方法なんていくらでもあるけどね。その他も!!有力な情報 持っている子は話に来なさい!良い事してあげるわよ。女子にはオトコだって貸してあげるし。技術も人脈も全て有るのがプロの仕事よ。ガキは外野でおとなしく拝んでなさい。」
良い事と言うのはやっぱりそういうことなんでしょうね。ぐへへ……おっと危ない、俺は別にそんな事してほしかったんじゃない。ほんとだよ。ハチマン、ウソ、ツカナイ。
「あと、少しでも私の暗殺の邪魔をしたら殺すわよ。」
しかしさすがプロの殺し屋だ。『殺す』の重みが違う。でも、俺らをガキとして見下しているのと、自分が一応教師であるとわかっていないあたり、嫌いだ。