File1~白い堕天使の救助活動
災害に割って入ったとも噂されているリライヴ。
当然報道規制は敷かれてるんだろうけど、直接災害に関わった人が全滅してないなら知ってる人くらいいるはず。
リライヴが関わったって噂になってる火災現場。
私はその近所に集まってるおばさん達の所に突っ込んだ。
噂話が大好きなおばさん達なら、何か見てたら話位聞けるかもしれない。
話が大きくなってる可能性はあるけど、火の無い所に煙は立たない。
「あら、私見たことあるわよ。」
ビンゴ。
何度かハズレを引いて長話につき合わされかけたものの、予想してた通り知っている人がいた。
「見たの!?」
「ええ。アレは忘れないわ…光輝くようなまぶしい白一色の衣装で、脇目も振らずに家屋に飛び込んで、家の人を脇に脱出してきたの。」
話を聞く限りじゃ無策で飛び込んだって事になる。
専門訓練なんて出来る環境があるわけでもないはずだし…いや、あったのかな?
でも、とりあえず見た人がいるなら、リライヴが人助けをしていたってのは間違いない見たい。
「管理局が来る前にいなくなっちゃったけどね。」
「消化活動はしていかなかったんだ。」
うーん…凍結の魔力変換が出来なかったのかな?
確かに魔力変換は資質がないと技能が必要になってくるけど、それだけでサボるって言うのも変な話だ。
消火活動には興味が無かった?
なら何で人助けなんか…
「って訳で、噂は本当だったみたい。」
次の日、私は学校でクラスメートに調べたリライヴの話をしていた。
自慢少々、ほかに情報拾えないかなーって期待少々って感じで。
「アクアは本当そういうの好きだよね。学者にでもなるつもりなの?」
「私は気になった事調べてるだけだってば。だって『歴代最強』だよ?」
去年のDSAAで優勝したジークリンデ=エレミア。
彼女も桁外れに強い…って言えば強い。
でも、『去年』の『10代』で『競技に参加した魔導師の女性』の中でだ。
歴代最強なんて、噂でも途方も無い話だ。
まして、本物だとするなら一体…
「眉唾だろ眉唾。俺はやっぱり一番は高町なのはさんだと思うなぁ…」
「うわ、お前Mか?」
「誰がだっ!忍耐無いから厳しい指導にそういうイメージがあるんだよお前らは!」
周囲に飛び火して勝手に盛り上がる。元気なクラスだなぁ、ホント。
けど、先生がまだ来てないからって授業開始直前に話してたのがまずかったのか…
「よーしお前ら、中々元気じゃないか。それだけ強い魔導師に興味があるなら明日歴史の小テストやるから人物ミスるなよ?古代ベルカ関係は強者ごろごろしてるからな。」
「「「「ええぇぇぇーっ!!!」」」」
すさまじく楽しそうに入ってきた先生が告げた無情な宣告に、クラス中から悲鳴が上がった。
あれ?これひょっとして私のせいだったりする?
「はいコレ。」
一年の教室まで行ってクラウを連れ出した後、私は帰りがけに友人から貰った割引券を渡す。
「洋菓子?」
「そ、奢って。」
「分かった。」
押し付けるように割引券を渡して、結構無茶言ったと思ったけどあっさり頷くクラウ。
むぅ、あんまり生意気でも困るけど、こいつ超素直なのよね…
「…ねぇ、嫌なら嫌っていいなさいよ?」
私の方が気味悪くて自分から聞いてしまう。
貴重なお小遣いむしりとられて嫌じゃないわけが無いのに。
でも、折角聞いたのにクラウは何も答えない。
「ったく、じゃホントに奢ってよね!」
「うん。」
こんなんでいいのか私!と、少し思ったけど、本人が頷いてるのだからと無視した。
「いらっしゃいませ。」
ついた店は、友人の勧めどおりの店だった。
店内は綺麗で、迎えてくれる店員さんも小柄なおじさんだけど渋い感じだ。
そして、通学路やデパートなんかからは少し離れた位置にあるから、人が少ない。
席を借りて勉強するならいい所だな。
注文を済ませて…うわ、高い。
プチ贅沢って感じの値段だ、さすが専門店。
さすがに自分で買う気にはなれないなぁ…奢りでよかった。
「ショートケーキとバニラシューアイス、コーヒー二つ。」
「かしこまりました、少々お待ち下さい。」
おじさんが下がった所でノートと教科書を取り出す。
「勉強?」
「そ。明日小テストになっちゃったから、ちょっとね。」
それだけ答えて私は教科書を開く。
調べものや覚えるのはそんなに嫌いじゃないから、勉強そのものは苦じゃない。
まぁ…単に好みだからやれてるだけだから、ほかにやりたい事があると気が削げるのは皆と変わらないんだけど。
「うー…やっぱり今はリライヴのが気になるー…」
そんなわけもあって、偉人の経歴みたいなのを眺めていた私はすぐにダウンした。
速攻気が逸れた私は、運ばれてきたシューアイスに手を伸ばす。
む…おいしい!
ノリでいいものを買ってくるお母さんに、ここの事教えておけば気が向いた時に買ってきてくれるかもしれない。…一人で食べる可能性も否定できないけど。
「姉さん、コレ。」
「ん?」
「リライヴの事件記事まとめてきた。」
言いながら、クラウは一冊のノートを出した。
話を聞いて回るタイプじゃないから昨日は図書館に調べに行って貰ったんだ。
見やすく綺麗な字なのはいいんだけど、本当文字ばっかり。
「昨日うちで渡してくれればよかったのに。」
「関係図書何冊も借りて、休み時間とかに纏めたから。」
「そっか、ありがと。」
渡された記事を見てみる。
研究施設襲撃、管理外世界での魔法使用、公務執行妨害…
うわ、派手に動いてるなぁ…しかもコレだけやって犠牲者ほぼ0。
同士討ちとかみたいなので死んでる人もいるみたいだけど、空中で迎撃した相手を浮遊魔法で下ろしたり、相手にまで気を使ってるらしい。
救済犯罪者…『白い堕天使』。
でも、裏で整備してたとしても、材料や整備施設に費用がかかるはず、一人でこんな戦いを繰り返して、仕事もしてないはずなのに資金…
ん?
「あーっ!分かった!」
「姉さん、声。」
「っと、それもそっか。」
考えが纏まった喜びで大声を上げてしまった。いくらほかに人が見えないからって大声はまずい。
「それで、何が分かったの?」
「リライヴだよ!火災現場で人命救助してた理由!」
私は拳を握って強く断言する。
「火事場泥棒よ!」
「…え?」
「どう考えたって資金の手が回るわけ無いもの、人助けに入ればそのまま何か盗んでもばれないし、何より殆ど何もかも消えてなくなる火災!何か盗られてたって気付けないしね。」
我ながら見事に情報を纏めたものだと思う。
ふふん、管理局だってまさか人助けをしている人がそのまま並行して火事場泥棒やってるなんて夢にも
「…リライヴって容疑者じゃなくて犯罪者だよ?」
「うん。」
クラウが私に確認をとるように言ってくる。
何を当然な事を、アレだけニュースになってたし、それで調べようと思ったのに。
「今更泥棒だけ犯罪歴から隠さないんじゃないかな?」
「…あ。」
言われて気付く。
他の犯罪暦が異常に多いんだ、いくら殺人なんかの凶悪犯罪に手を染めてないからって見逃されるわけも無い。
小さな声が聞こえてきたほうを見ると、会計のあたりで銀髪の女性が俯いて笑っていた。
う、うぅ…とんだ恥かいた…
「わ、分かってるわよ!冗談よ冗談!」
「そう?ごめん。」
静かに謝られると、なんだか余計に自分の恥が浮き彫りにされる気がしてくる。
「多分資金は依頼で稼いでいたんじゃないかな、非合法の。」
「非合法の依頼?」
「研究施設とか襲撃してるし、何か盗んだり…」
静かに言うクラウ。
確かにそれが妥当なんだろうけど、そんな人が何で人助けなんか…
結局分からない。
「あ、ショートケーキもおいしいね。」
「うん。」
ひとかけらとはいえ勝手につまんだけど、結局クラウは文句一つ言わなかった。
笑顔ならいいんだけど、表情ないからちょっと不安だなぁやっぱり。
Side~リインフォース・フレイア
「あっはっはっはっは!!」
私の話を聞いた主が心底楽しげに笑う。
その隣でリライヴが俯き加減になっていた。
「リライヴが火事場泥棒って凄い発想だな。っく…」
「そんなに笑わないでよ…」
自分の経歴がとんでもない事になっているのが恥ずかしいのか、心なしか頬が赤いリライヴ。
…話を聞いて思わず笑ってしまった私が言うのも説得力にかけるのは分かっているが、それでも言う事があった。
「…良いのですか?いくら子供とはいえ、このままリライヴの事を調べさせて。」
ギリギリの手で解放させたリライヴ。
いくら一般的な犯罪にも色々解放の手があるとは言っても、元犯罪者に変わりなく、その規模も戦力も色々と並外れている。
しかも真相はかなりの裏技。
万一知れれば大事なのは間違いない。
だからこそ、こうして二人だけを呼び出して話をしているわけだが…
「報道規制かかってて、そもそもリライヴ本人についてとなれば、報道所か局内でも規制かかるくらいの重要案件だ。興味本位でそこまで分からないだろ。」
「そうだね、それに一般人への情報規制なんて私達の仕事じゃないし。」
私の心配を他所に凄まじく軽い二人。
この軽さは、口にした内容だけの理由でなく、『何か起きてもどうにかする』余裕…心積もりが常にあるからだ。
それは感じられるのだが…心配するくらいしか出来ない身の事も察して欲しい。
主相手には無理な願いかもしれないが。
「そんなに心配ならはやてに連絡がてら顔出したらどうだ?」
「規制は公務員さんに任せればOKだね。」
…妙な所で気をあわせる二人に、私は小さく肩を落とした。
SIDE OUT
「あー…結局勉強進まなかった…」
「ごめん。」
「アンタに今謝られたら私の立つ瀬がないでしょうが!」
多分リライヴの資料を出したからだろうけど、謝ってきたクラウの額を軽くはたく。
外食に近い値段になってしまったと言うのにさらっと躊躇いもなく会計を済ませた弟に、自分が調べさせた資料を受け取って謝られる。これは酷い。
「そう言えば…あの娘は誰なんだろうね?」
スカリエッティが大騒ぎ起こしたときに対抗するみたいにあちこちに表示された銀髪の少女。
口悪かったから管理局員じゃないと思うんだけど…随分派手な事してたな。
「Js事件って、リライヴ以外にも色々あるみたいだよ。」
「え?」
「リライヴの資料見てたときに見つけたほかの奴。姉さん気に入ると思って。」
そう言って別のノートを手渡してくるクラウ。
受け取ってぱらぱら開いて見ると、『謎の覆面ヒーロー』とか『フードのお助け魔導師』とか面白い話が載ってる部分があった。
そこはまぁ、面白半分で見てたんだけど…
管理局の部隊保有制限と、JS事件の戦闘規模について書かれているページには、ちょっとびっくりした。
事態にあわせて専用の特務部隊が結成可能な管理局だけど、部隊ごとに保有制限がある。
この辺の話は局員の試験受けるなら知る事が出来る情報だけど…
普通の武装隊以外に特務部隊4、5部隊分の戦力が動いていたと言うのだ。
勿論、戦闘の記録を興味本位でとってた一般人のサイト複数からの情報だから、当然食い違いはあるだろうけど…
「こんなマニアックな話よく知ってたわね。アンタ局員目指してるの?」
クラウは黙って答えなかった。
変な所で黙りこむわね、全く。
「でも確かに面白いわねー、覆面ヒーローにお助け魔導師って。リアルにいるものじゃないでしょ?普通そういうの。」
「そうだね。」
実際に…
ヒーローなんて一般人が調子に乗ってやった所で、そうそう上手い事行く訳ない。
専門の訓練を集団でやってる管理局員の人たちだって、毎回上手く行くわけじゃないのに一人が思いつきで動いたって限界があるからだ。
もしそんなのが本当にいて、活躍できてるって言うならそんな面白い話は無い。
「明日から調べて見る?」
「本当にいたら面白いしね、よくわかってんじゃん。」
クラウの頭をぐしゃぐしゃと撫でる。
無愛想だけどいい弟だよホント。
「よーっし!やるぞー!」
「小テストの勉強?」
私が拳を突き上げた所でクラウが無遠慮に聞いて来た内容に硬直する。
…やっぱコイツよくわかんない。
「減点っ。」
軽く額を指ではじいたけど、結局クラウは表情一つ変えなかった。
比較的一般に見えるヴィヴィオ達も、テスト勉強しっかりこなして全部で好成績キープする様な大真面目。や、そうすべきなんでしょうが…
一般人なら予復習完璧にこなし、全授業ノートとって真面目に受ける…のも珍しい気が。作者の感覚酷いでしょうか(汗)。
とにかくそんな感じなんで、家事勉強、練習を全部真面目にこなすような娘ではないです。周囲も。