なのは+『現の幻』   作:黒影翼

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File2~謎の覆面ヒーロー

 

 

File2~謎の覆面ヒーロー

 

 

「んー…」

 

あんまり大きな事件になると直接調べるのはプライバシーとかあるから避けたい。

興味本位で首突っ込むって言っても私だってそれくらいは気にするんだから。

 

「だからって、事件起こすのもなぁ…」

 

クラウに襲う振りして貰って悲鳴上げたら出てくるかもしれないけど、普通に考えて局に通報されて終わると思う。

 

通りすがりにヒーローが転がってるわけな…

 

 

「キャーッ!」

 

 

突然、近場から悲鳴が聞こえてきた。

 

ご都合主義!なんて言ってる場合じゃない!

丁度ヒーローが助けに現れたならともかく、私が悲鳴を聞いたってしょうがないんだから。

 

悲鳴の方に向かうと、カメラを手に走って逃げる男と民家が見えた。

 

覗きか盗撮か!なんにしてもその程度なら私にだってどうにかできる!

 

「こらあぁぁっ!」

「げっ…」

 

強化して突っ走る。

魔力弾撃ってもいいんだけど、権限ない人が武器振り回すと後が大変だから普通に捕まえて連絡を―

 

 

「がっ!」

「え?」

 

唐突にバインドが展開されて、逃げていた男が動けなくなる。

当然私じゃない、誰がやったのかと周囲を見渡して…

 

 

黒いスーツの、多分デバイスだろう手にしていた真っ直ぐに伸びた剣を背中の鞘に収める人影があった。

顔は、黒い布で全て隠されていて見えない。

 

「通報を。」

「えっ、あ、ちょ…」

 

一言だけ言うと、黒服はそのまま何処かへ去ってしまった。

後に残されたのは私とバインドで拘束されてる男。

 

 

 

本当にご都合展開だった…これは燃えてきたっ!!

 

 

 

 

 

 

「えーと、それじゃ善意だったんですね?」

「はい。さすがに滅茶苦茶しちゃいけないとは思って普通に走って追いかけたんですけど…」

 

とか言ってる場合でもなく、通報した所事情聴取って訳でも無いけどお偉いさんに呼び出された。

こういうのって下っ端の仕事じゃないんだろうか?

 

「それで、黒服の魔導師についてなんですけど…」

「あ、はい!私デバイス持ってたので映像残ってます!」

「拝見します。」

 

意気揚々と自分のデバイスを取り出す。

局員さんもいい反応してくれてるので何よりだ。

 

映像を映し出すと、彼女はその僅かな時間の映像を見て、溜息を吐いた。

 

「あのー…」

「はい?」

「『危険ですから絶対に真似しないで下さい』って奴だと思うんですけど、この人の事…って言うか、『謎の覆面ヒーロー』の事聞いてもいいですか?」

 

あくまでも、『私分かってますよ?』って所を言った上で聞いてみる。

いくらすっごい噂になってるからってこんな真似する気なんてこれっぽっちもない。

 

でも!だからって気にならないと言ったら大嘘だ!だって覆面ヒーローだよ!?

 

…ま、まぁ中学女子の話題かと聞かれたら首を傾げるところだけど。

 

「んー…わざわざ呼び出しに応じていただいたわけですし、質問にもよりますが、少しくらいなら。」

「やったっ!ありがとうございます!」

 

思わずガッツポーズをして、苦笑される。

っと、こんなことやってる場合じゃない、お忙しいだろうし聞くことスパッと聞かないと。

えーっとえーっと…

 

「Js事件にいたんですよね?ヒーロー。」

「…そうですね。」

 

魔導師って実力差が結構顕著に出る上に設備に関係なく戦力持ってるから、民間協力者やらで協力する人もいないことも無い。

巷での噂は間違っていなかったって事だ。

 

「実際どのくらい強いんですか!?」

 

私達からしてみれば、気になるのはこういうところだ。

身を乗り出すのを我慢しながら聞いた質問に、子供っぽいからか苦笑する局員さん。

 

「あー、魔力値でAA前後ってとこですね。」

「へ?」

「まーそんなもんですよ、一般人ですから。腕は良かったですけどね。」

 

…リアルだ、リアルすぎる。

一般人でのAAって言うのが結構な戦力な気もするけど、オーバーSとかそれ以上がいる世界では普通も普通の戦力だ。

 

下手に弱くないのがまたリアル度を増している。

 

「今日はありがとうございました、くれぐれも危ないまねだけはしないようにお願いしますね。」

「…分かりました。」

 

こうして、ヒーローの正体についてはなんだか面白くない情報で片付けられた。

 

 

 

 

 

 

事情聴取を受けて、帰った後あんまり無茶をしないようにと怒られて、でも人助けに行った事を褒められてとばたばたした一日が終わり、クラウに今日の話をしてみる。

 

「おかしい。」

「え?」

 

終わった所で、クラウが相変わらず動かない表情でそう呟いた。

 

「そんな人の協力、わざわざ必要ない。まして、あんな危険な大規模テロに一般人なんて。」

「あ…」

 

しまった。局の人から、しかも『弱い』とかって感じじゃなくて普通に使える程度の戦力で教えられたから、何の疑問も無く受け入れちゃってた。

うぅー…やっぱクラウつれて歩くべきだった。

 

「何でアンタ肝心な時にいないのよぉ…」

「ごめん。」

 

睨んで言ったものの、素直に謝られて返答に困る。

本当コイツ分からない…

 

「それにもう一つ。」

「まだあるの?」

「偉い人に呼ばれたんだよね?一般人の姉さんが。」

「うん。」

 

確かに特別だ。

けど、前に関わりがあったヒーローさんが事件現場に都合よく現れて、重い話かもしれないって慎重になっただけじゃ…

 

「この事件に関わったのが本物のヒーローなら、JS事件の時に連絡先知ってる筈の本物の方に連絡取ればいいだけじゃないかな?」

「あ…」

 

そうだ、一般人をお偉いさんの前に呼び出すくらいなら面識のある方が呼び出されるはずだ。

事件自体はただの盗撮、あのヒーローが関わってなかったら私があの人と話す事だって無かったんだ。

 

「…本物のって言ったのは…アンタは偽者だと思ってるのね?」

「うん。」

 

…それで、私が呼ばれたのか。

たまたま撮ってあったけど映像記録撮って無かったら直接話して特徴聞くしかないし、あの偉い人が本物と面識あるなら証言で偽者だってはっきりさせられるし。

 

「偽者かぁ…それはそれで当たりかな。」

「探すの?」

「うーん…探すのは無理な気が…なんか騒がしい事があったら遠巻きに近づいてみよっかな。今日みたいにたまたま会えるかもしれないし。」

 

興味があると言っても仕事じゃないんだ、覚えておけば機会はある。

とりあえず偽者にしろ本物にしろ、ヒーローを直接探すのはやめておいたほうがいい。

 

 

 

 

 

…で。

 

「アンタ何で毎日教室の前で棒立ちしてるのよ…」

 

それから数日、帰ろうと教室の外に出ると大慌てで準備したらしいクラウがいつも教室の外に立っていた。

 

「嫌?」

 

真っ直ぐに聞かれて『嫌』と言えなくなる。

けど…

 

「あついねぇこのブラコン。」

「ひゅーひゅー。」

 

こーなるのは確かに嫌と言えば嫌だ。

達観してる気はないけど、さすが中学生とか言うべきなのか…

 

「だーっうるさい!行くよっクラウ!」

「うん。」

「結婚式には呼べよー!」

「出来るか!法律くらい覚えとけっ!!」

 

素直なクラウを引き連れて、背後からのヤジに怒鳴り返しながら学校を出た。

 

 

 

 

 

「ったく…あいつらっ…」

 

弟と一緒に帰る位ではやしたててくるなんて…

どれだけ人で騒ぎたいんだ全く!

 

「でも、姉さんも騒ぐよね?一緒に帰るペアがクラスにいたら。」

「そんなことは…」

 

クラウに静かに言われて考えてみる。

確かに、おとなしくはしてないだろうなぁ…

 

「うっ…うぅー…やっぱ出待ち禁止!」

 

言っては見たものの、クラウは眼を閉じただけで答えない。

むっ…普段は異常に素直なくせに…

 

「ってあれ?」

 

駆ける足音。

魔力を使ってるのか結構並じゃない速さだ。

 

ブサイクないかにもチンピラっぽい男を…

 

黒一色の服装で背中に剣を背負った人が追いかけていた。

 

 

 

「偽者だっ!」

 

遠目だけど間違いない!

こんな都合のいい機会はそうそうない!この機に色々見てみよう。

 

 

私が走り出すと、クラウも後を追って走り出した。

 

 

 

 

「あぁっ!」

 

 

 

人影を避けた森に消えたと思ったら、悲鳴と共に黒服の人影が転がってきた。

覆面が外れて顔が見える。

 

 

女の…娘?

 

「ははははは!身の程も知らずに正義の味方ごっこなんてするからそういう事になるんだよ、お嬢ちゃん!」

 

人前を離れた森の中、こんな所で普通に争いがあったって局員がすぐ来るわけがない。

そんなに魔法の反応に気付きがよければ、犯罪なんてそうそう起こらない。

 

 

そして、そんな私達の前に、結構やばめな事態が広がっていた。

 

 

20人近い人影。

 

 

多分…全員お仲間だよね。

 

「ちょ、ちょっと!あんた達なんなのよ!」

「一般人のお子様が大人の仲間に手を出すからこうなるのさ。」

 

ズドン。

と、鈍い音がした方を向くと、クラウが殴られて倒れるところだった。

 

「く、クラウ!」

「さてと…さすがにこのまま返すわけにも行かないんでな。」

 

じりじりとにじり寄ってくる集団。

 

「は、犯罪者!私達をどうしたってどうせ逮捕されるんだから!」

 

私の言葉を聞いた人影が少し足を止め…

 

 

「あははははははっ!!」

 

おなかを押さえて笑い出した。

 

「何が可笑しいのよ!」

「お勉強足りてないのかい嬢ちゃん。JS事件、管理局が一枚かんでるんだぜ?」

「犯罪者が上手い事捕まるように出来てないって事。因果応報なんて下手糞や夢見がちな子供の言い訳なのよ。」

 

じりじり近づいてくる集団にちょっと頭にきた私は、踏ん張って手を強く握り締めた。

 

「そんな人ばっかりな訳ないじゃない!自分達に都合いい事言って!」

 

私が…私の家で、お父さんとお母さんが『調べる』事を勧めてくれている理由。

見えている所で決めるしかない結論を、少しでもちゃんと見る場所を増やして『自分で』決める為。

 

事件に管理局の人が関わってた事については知ってる。

けど、それだけじゃない事はこの間の偉い人とか普通に仕事をしている人を見れば十分分かる事だ。

 

だから…悪い事する言い訳に都合がいいからって人の事を持ち出したこの人達にちょっとだけ頭に来た。

 

「このガキ…」

「まぁそう怒るなよ。どうせ生意気な口利けないようにしてからじゃないと離してもやれないんだからさ。」

 

怒ってデバイスを向けようとする男を、傍にいた奴がニヤニヤ笑いながらとめる。

そして、全員がゆっくり近づいてくる。

もう逃げ場もないし、さっき気絶させられたクラウを置いて逃げるわけにも行かない。

 

う…こ、これヤバイ?

 

 

「まぁテロリストって訳じゃねえんだ、命までがっ」

 

 

喋りながら近づいてきた一人が、唐突に前のめりに倒れた。

何が起こったのかさっぱり分からない。

 

「中々言うじゃないか。」

「ふえっ?」

 

唐突に、親しげな声と共に肩に手を置かれる。

びっくりして視線を向けると、長袖の黒いYシャツに黒いズボン、黒い覆面に…

 

腰に二本の短剣を差した人が立っていた。

 

短剣…って言うと少し違う。カタナ…って言うんだっけ?

 

「て、てめぇ何だ!」

「ヒーロー。」

 

楽しそうに答える黒服の男の人。

 

いつ現れたのかも分からなかった。しかもきっと、私を取り囲んでいるこの20人近い人達も気付かなかったんだろう。

 

って事は…本物!?

 

「なんだか知らねぇが、おとなしくしておけよ。動いたらこいつの頭を吹っ飛ばすぞ!」

「クラウ!」

 

気を失って縄で縛られているクラウの頭に銃が突きつけられていた。

いくら何でも人質とられてたら…

 

 

キンッ。と、甲高い音がしたと思ったら、隣の男の人が剣をしまう所だった。

ってあれ?いつ抜い…

 

 

「へ?」

 

 

間抜けな声に気付いて視線をクラウの頭に突きつけられた銃に戻すと、すっぱりと切断された銃が地面に落ちる所だった。

 

「自首と病院…どっちがいい?好きなほう選んでいいぞ。」

 

何の気負いも無い声。それで分かった。

この人にとってこの状況って、『何でもない』んだ。

 

 

本物だ…本物のヒーローなんだ!

 

 

唐突に背後に向かって拳を振るうヒーロー。

鈍い音がしてから首を動かすと、鼻から血を噴出して武器を振りかぶった男が後ろに倒れていく。

 

「病院1…と。ほかにいるか?いなかったら武器捨てて整列してくれ。管理局まで俺が見張るから。」

 

背後からの奇襲を何の気なしにさばいて普通にそう告げる彼に、これ以上抵抗したがる人は一人もいなくて、結局森を出て出頭するまでピクニックみたいに連れ立っていった。

 

 

なんて言うか…凄い人だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう!やり辛いったらないよ!」

 

私は飲んでいたハーブティーのカップを叩きつけるように皿において叫ぶ。

 

事件後、私は何処かに行く時には必ず連絡を入れるようにと言われた上に門限まで決められてしまった。

おかげで夜しかいけないような場所には何処にもいけなくなってしまった。

 

「事件なんて二個も三個も起こんないし、まして町歩いててたまたま会う機会なんて皆無に近いでしょ!?それなのにっ!」

「そう怒るものじゃない。一人娘が犯罪集団にとらわれかけたんだ、親御さんとしては心配にもなるだろう。」

 

初めて行って以来、行きつけみたいになっているエメラルドスイーツ。

通学路から遠い上に学生がお金払って席を制圧するには少しばかり高めの場所だからか人が少なくて、値段だけあっておいしいから、クラウを頼りに通い詰めている。

 

そのせいか、店長さんと仲良くなった。

クラウは必要でもないと喋んないし、それでもこのテンションの私に付き合ってくれてるだけだろうけど。

 

「第一、ヒーローといっても20人程度相手にした位なんだろう?彼も偽者ではないのか?」

「えぇっ!?」

 

想定もしてない事を言われてびっくりする。

 

「史上に残る大事件に加わる戦力なら、50~100程度軽くあしらえるだろう。20人程度ならDSAAの上位選手でも大丈夫じゃないか?」

「そう言われると…でもすっごい大物っぽかったけどなぁ…」

 

あの人ならそれくらい片付けてもおかしくない気がする。だって誰一人何をしたかも分かってなかったし、局についたらいつのまにかいなくなってたし。

でも確かにたまたま本物に会う確率だってそんなに高くない。

 

「所で、偽者の女の子はどんな娘だったんだい?一緒に話をしたんだろう?」

「事情聴取でちょっとね、ザンヒルの同い年だった。JS事件から管理局信用できなくなって一人で巡回とかしてたんだって。ヒーローの噂を借りたのは、ばれないのに都合よかったからだってさ。」

「そうか…」

 

ちょっと話をしてあげると、難しい顔をする店長さん。

心配してるんだろうな、今回だって助けられなかったら結構危なかったし。

 

「この時期特有の反抗期って奴でしょ。反省もしてたみたいだし、素直に局員目指す事にするって。」

「それはなによりだが…君が言うのはどうなんだ。」

「私はそんなすれたりしないもん。」

 

自信あったんだけど、なぜか苦笑いされた。

むぅ…そんなぐれそうに見えるかな?私…

 

「君も止めたらどうなんだ?」

 

正面でコーヒーを傾けていたクラウに話を振る店長さん。

クラウは店長さんを見て小さく首を横に振るだけで答えた。

 

事件以来クラウが教室前で出待ちすることは無くなった。

何も言わないけど、騒ぎを見に行くって決めた私を心配してたんだと思う。

でも、とめずに私についてくれていたあたり、邪魔はする気はないんだ。

 

分かってる私はいいけど、店長さんは無言で返されても困る。

 

「クラウは私の味方なの。ね?」

 

私の言葉に小さく頷くクラウを見て、店長さんは肩を竦めた。

 

 

それにしても…偽者の正体も普通だったし、本物候補も店長さんのせいで正解かはっきりしなくなっちゃったし…

 

 

あーもー!いつか絶対正体暴いてやるー!!

 

 




基本普通ステータスなので頭やら礼儀やらはおそらくヴィヴィオ達初等科チームより出来てないです(笑)
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