なのは+『現の幻』   作:黒影翼

4 / 12
File3~フードのお助け魔導師

 

 

 

File3~フードのお助け魔導師

 

 

 

「だああぁぁっ!!」

 

空に向かって吼えるような気分で叫ぶ。

あ、負け犬っぽい。勝負じゃないけど。

 

「フードのお助け魔導師について調べててたまたま会ったのはジークリンデさんだしっ!やり辛いったらないよもう!」

 

よくよく考えると街中で有名人に会うのも中々凄い話だけど。

でもトレーニングで走り回ってるコースが変わらないならその気になれば会える人なんだよねぇ…

 

 

以下回想。

 

「や、な、なんや?」

「失礼承知で話を聞きた…あれ?ジークリンデさん!?」

「ウチの事知っとって来た訳やないんや…変わった娘やな。」

「空港火災他に現れた『フードのお助け魔導師』について調べてるんです!まさかとは思いますけど…関係ないですよね?」

「免許も許可も無いのにそんな事する人、競技選手におらんと思うけど…下手な事して大会出れんようにされたらややし。しかもその時ウチ凄い子供やし。」

「ですよねぇ…あ、でも何か知ってたら教えてください!この時間このコースで見かけたこと誰にも言わないんで!!」

「何も知らんよウチ!あ、でも…」

「はい?」

「それ、『ローブ』やなかった?いや、確かにローブにくっついとるのもフードやけど。」

 

回想終了。

 

 

折角唯一あった面白遭遇はそんな間抜けな結果で終わってしまったし、ろくに目立つ事がない。

 

でも、なんでフードになってたんだろう?

そもそも、ローブだった…んだよね、確か。

 

何かあやふやだなぁ…ちょっと再確認してみようか。

 

 

 

 

「うーん…」

 

当然の如く妙な情報ばかり飛び交うネットワーク上から情報を拾う。

 

まず、全身を覆える上に顔まで隠せるようなフードつきのローブを着て魔法行使を行う様な変わり者がそういない。

ぶっちゃけると鎧の形状とらなくても、魔力を使用して、防護服を編めば、魔導師ならそれなりの防御効果を持つことが出来る。

 

勿論、だからって下着を展開するような馬鹿はいないし、さすがに直接服になってないと防御効果も落ちるは落ちるけど、だからって全身を覆うような真似をすれば動きにくくなるしフードで顔を隠せば視界も悪くなる。

 

戦闘か実務か…いずれにしても魔法を行使しようとする人が、ローブで身体を隠そうとは思わないだろう。動きにくいから。

どうせ魔法を使ってることがばれる前提なら、まだ仮面や変身魔法の方がいい。

 

 

だから、フードで顔を隠したものの、身体についてはマントとかそんな感じの、全身を覆わないようなものを着て動いていた偽者のせいで『フードのお助け魔導師』になったって話が上がっている。

 

 

纏めるとこんな感じになるって所だけど、それにしても問題がある。

 

 

 

「本物がローブだとして、何でそんなものを…」

 

 

魔法が得意で素性を隠したいなら、バリアジャケットをいくつも登録しておけばいい。

身体つきまで変えたいにしても、各部用のパッドとかで微調整は出来るし、第一ローブを着た人は子供だって判明してる。だってすさまじく背低いし。

 

 

うーん…

 

 

 

 

 

 

「地球から来たんじゃないかな?」

 

相も変わらずクラスで情報収集がてら聞いてみると、胡散臭い感じの声がした。

その声が聞こえた瞬間に、私の話に乗ってくれた人たちが一斉に白い眼になる。

 

第97管理外世界…地球オタク。あだ名は『チキ男』。

知り合いもいなくて見に行けないからと渡航許可を貰う事が夢だそうだけど…管理外世界じゃ観光って言うのも厳しいんじゃないかな?

ちなみに、当然のように一般的な趣味からずれてるから引かれたり苦い表情される事が多い。

 

「どうしてそう思うの?」

 

皆は引くけど、私は素直に聞き返した。

 

気になった事を調べる。

そんなつもりで過ごしてる私だからこそ、『好きこそ物の上手なれ』って気持ちが分かる。

少なくとも、端から見てチキ男なんてあだ名つけられる位なら、地球の事に関していい加減な話はしたがらないはずだ。好きなものの話なんだし。

 

好意的過ぎる話は過大解釈とか勘違いの可能性もあるけど、それを確認するにしてもいい話は聞けそうだ。

 

「魔法使いの装備だからだよ。」

「はぁ!?ばっかじゃねーの!?地球って次元航行どころか魔力すら知られてない国なんだぞ!」

 

毛嫌いしているからか、開口一番馬鹿にしてかかる人がでた。

地球は国じゃないって…と、内心思ったけど、突っ込んでるときりがないから先を促そうとして…

 

チキ男が人差し指を立てて軽く振っていた。

こんな芝居がかった事するから引かれるんだって。かっこよくはないし。

 

「ファンタジーとしてあったよね?」

 

コミックや料理は流れてくるから、その程度の事は知ってる。

ただ、本の方はこっちの魔導師の人と一緒で結構意匠に凝っている。

とても全身を地味な色で覆うローブなんかつけてる雰囲気じゃない。

 

「そうだね、でも本物があるんだよ。それも…恐ろしいのがね。」

「恐ろしい本物?」

「薬を作り、魔法陣を血や特殊な塗料で描く。そんな『魔法使い』がいるんだ。そういう魔法使いは、ローブや帽子なんかで全身を覆えるくらいのサイズのものを着ているんだよ。全員って訳じゃないけどね。」

 

解説ではこんな感じだった。

起こる現象ややる事は儀式魔法に近いけど、問題になるのは魔法が認知されてない世界だと言う事。

そして、それを踏まえたうえで二つ予想を立てたらしい。

 

一つは、偶然魔力を扱える方法になっているものの、魔力と認知してない可能性。

もう一つは…私達が呼称してる魔力、リンカーコアとは別の力があること。

 

「全部でっち上げって可能性もあるけど…どっちにしても面白い話だよね。」

「君もそう思うか、さすが情報マニアだ。」

「え、私そんな認識だったんだ?」

 

確認の意味も込めて周囲を見回しながら聞いてみると、『何を今更』と言った空気になっていた。

興味で調べるもの決めてるだけなんだけどなぁ…

 

 

 

 

 

 

 

フードのお助け魔導師が地球出身の可能性。

それを伝えると、クラウはノートを確認し始めた。

 

「それ、あってるかもしれない。」

「本当?」

「うん、これ。」

 

私にノートを見せてくれるクラウ。

その指差した場所を見ると、刀の発祥と思われる場所が、地球の日本って地方の可能性があるって話が載ってた。

 

これが何か…あれ?

 

そう言えば、あの人も刀を持っていたような…

 

「Js事件に指し示したように現れてるフードの魔導師と覆面ヒーロー。関わりがあるなら、おかしくない。」

「へー…よく刀について調べる気になったわね。」

「ミカヤ選手の流派、看板とかによく分からない字で書いてあるでしょ?カンジとか言う。」

「それも日本からだったからって事ね。」

 

あんなごちゃごちゃした文字使う世界はあんまり聞かない。覚えるだけで10年くらいかかりそうだ。

 

「さすがに地球に行くわけにはいかないし…あんな偶然も続かないよなぁ…」

 

ヒーローとはたまたま会えたけど、あんな偶然そうそう続くわけも無い。

 

「何かいい手無いかなぁ…本物を直接見た人から話を聞けたら…ん?」

 

ちょっと考えを思いついた私は、思わず笑みを浮かべる。

 

「何をする気?」

「いや…ね、聞く方法あったなーって。」

 

不安そうなクラウを他所に、私は作戦を決行することにした。

 

 

 

 

 

 

 

「全くもう…アクアにも自分にも甘いんですから…」

「まぁそう言うな。こんな所で金をかけるのは俺達だけなんだから。」

 

お母さんとお父さんがそんな話をしながらグラスを傾けるのを横目に、私は周囲の話に耳を集中させた。

 

私が頼んだのは、酒場へ行く事。

出来るなら夜10~11時位の時間帯に、局の寮圏内の酒場に。

 

 

酔っ払いの愚痴とかからなら、局員の知ってるような話も少しくらい聞けるんじゃないかなーって考えだ。

当然一人で出歩ける時間帯じゃないけれど、どっかのお嬢様学校でもなければ家族連れで、しかも私自身はジュースで済ませるともなれば問題は無い。

局の話っていったって、機密までは聞けないだろうけど…

 

災害救助なら一人二人でやるもんでもないだろうし、隊員全員がモラルの塊なんて事も無いはずだっ!!

 

「嫁が全然相手してくれねぇんだよぉ…ひっく。」

「あのセクハラ部長ホント腹絶つわねぇーもうぅ!?」

 

…なんて意気込みも崩れそうなくらい、イヤーな愚痴やら何やらが飛び交っていた。

雰囲気を楽しむような店じゃなくて、潰れてぐだぐだになるような店がいいって言った私のせいなんだけど…正直、回らない舌でふにゃふにゃの声でどす黒い愚痴が飛び交うこの空間は結構まいるものがあった。

 

く、挫けるもんかっ!別に本題のフードの魔導師の話じゃ無くったって局内にだって面白い人はいるし、何か聞けたらもうけものなんだっ!…管理局の人が飲みに来てるかどうかもいまいち微妙ではあるけれど。

 

「くっそぉ…あんのロリキチめ…何が防御訓練だ!絶対俺らの事殺す気だろアレ!」

「軽い怪我なら治っちまうのも考えものだよなぁ…あのハンマー、車の衝突より衝撃でかいんだぜ?」

「俺…最近気持ちよくなってきた。」

「「おいっ!!」」

 

た、多分局員さん達だと思われる一団なんだろうけど、なんだか不吉な会話してた。

うんうん…馬鹿強い人相手にする気持ちはちょっと分かるよ、私も。

 

それにしても…飲み屋でたむろするような人ならとてもトップの人じゃないよね?

管理局ってエースでなくてもそんなヤバイ事してるんだ…大変なんだなぁ。

 

「コレだから男は根性ないわホント。少しはなのは様見習いなさいよね!」

「勘弁してくれよぉ…あんな化物誰も追いつけないって。」

「って言うかなのは様て、あぁファンクラブ会員かお前。」

 

そんなものまであったのか、高町なのはさん。

いや、美女で英雄でオーバーSなんて超有名人にファンがつかないわけが無いんだけど。

 

それにしても、予想通り管理局の人も飲みに位は来てるみたいだ。

コレなら…

 

 

 

「ぢぐじょおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ……」

 

 

 

思った矢先、すぐ傍のカウンター席から分かりやすく絶望的な声が聞こえてきた。

見ると、グラスを片手に突っ伏している男の人がいた。

 

「あらあら、どうしたんですか?」

「ママァ…俺も頑張ってんだよ…頑張ってんだよ畜生…」

「あぁ…いつものですね。」

 

聞くべきか聞かざるべきか、絡むのを躊躇う感じだったけれど、店員さん(酒場ではママさんとか呼ばれるらしい)が苦笑いで話を促してあげていた。

 

「俺が…俺が何したってんだよぉぉぉぉぉ…」

「本当、凄いのねそのローブの娘。」

 

目下捜索中の噂の断片。それが拾えたとなれば躊躇するいわれはない。

多少愚痴に付き合う形にもなるかもしれないけど、話を聞くしかない!!

 

変にメモとかデータをここで残すと、スパイか何かと間違われちゃうかもしれないから、クラウに記憶を任せて私が席を離れた。

 

「ねぇねぇお兄さん、何があったの?」

 

私が声をかけるとさすがに少し驚かれたのか此方を見る男の人。

正直、ちょっとお兄さんと呼べるか微妙な所ではあったものの、おじさんと呼ばれるより気分がいいかと思ってそう声をかける。

 

で、お兄さんは私の顔を見て…

 

「はあぁ…」

 

盛大に溜息を吐いた。

 

酒のにおいを受けて鼻がおかしくなりそうなのを堪えて続きを待ってみる。

基本自分の事を喋りたがるものだから、気分よく話をさせてあげる事が大事。

おばさんたちに突っ込んで情報収集をするなか、そんな変な所だけ身についてしまっていた。

 

「…おにーさんね、ぼーさいかって所で働いてるのよ。」

「人助けですよね?凄いんですね。」

 

人命救助をする所だ。

フードのお助け魔導師も人助けに関わってるって話は本当だった。

 

「けどな、ローブのガキが…」

 

長い溜めを作るお兄さん。

まさか…現場に突っ込んでミスして死んじゃったとか…

 

 

 

「俺らが何をする間もなく全部片付けちまうんだよぉぉぉっ…」

 

 

 

…逆だった。

言いながら泣き崩れるお兄さん。

 

「ひぐっ…日毎しごかれてなぁ…乏しい魔力と新調できないデバイスで頑張ってんのよ俺も…なのに駆けつけて全部終わってて事後処理しながら遠巻きに給料泥棒扱いされてよぉ…畜生ぉぉぉぉ……」

 

何だろう、凄く泣けた。

いや、人命救助だし、早く安全に済むならすんだほうがいいに決まってはいるんだけど…

 

「ローブの娘はただの通りすがりだけど、お兄さん達は毎日準備して駆けつけてるんだから、たまたまその娘の方が早く気付けるときがあったからってお兄さんが頑張ってないわけじゃないって、大丈夫だよ。」

「お嬢さんの言うとおりですよ、私も分かってますから。」

「ありがとぉ…ママさん嬢ちゃん…」

 

お礼を言いながらお酒をあおるお兄さん。

グラスが割れそうな勢いでその腕を下ろすと、また深く息を吐いた。

 

「せめてそのガキが局員ならまだ救われんだけどよぉ…」

 

内部の人ならともかく知らない人にあっさり自分の領域の事をこなされては結構なストレスなんだろう。

頑張って頑張って…畑違いの人に負けたらたまったものじゃない。

 

「分かった、私が見つけて誘ってみる。」

「んぁ?」

「入ってくれるかはともかく、私こう見えても色々調べるのが趣味なんだ!任せてよ!」

 

根拠は無い。

けど、私自身会って見たいし、それで調べてるんだからついでだ。

 

お兄さんはしばらく私を見た後、ふらふらの手で私の頭に手を置いて力なく撫でた。

 

「いー子だな嬢ちゃん…ママ、俺のおごりでこの娘に飲み物やってくれ。」

「あらあら…」

 

お兄さんはそれを最後に突っ伏して、寝息が聞こえ始めた。

 

 

 

 

Side~ジークリンデ=エレミア

 

 

 

変わった遭遇からしばらく、念のためにコースを変えて走るようにしてたんやけど…

 

 

人影が見えた。

 

 

明らかな待ち伏せ。変えたといっても近場やし、見つけられたんやろ。

結局喋らずにいられんかったんか…と、少し落胆しつつも一人やったからまぁいいかとそのまま走り…

 

それがこないだの娘なんに気がついた。

 

「いやぁ…やっぱりコース変えるか。見つけるのにちょっと手間かかっちゃった。」

「…何の用?」

 

今回は既にウチの事は知られてもうてる。

大会も近いし、色々調べとるみたいやからまた何か聞かれるかと思て少し身構え…

 

「はい。」

「へ?」

 

小さな四角い箱を差し出された。

 

「え?え?」

「こないだローブだって事教えてくれたでしょ?おかげでちょっといい話が聞けたから。そのお礼に。」

 

呆然と箱を受け取ったウチに、彼女は片手を上げて笑顔を見せる。

 

 

「ありがとね!それじゃ!」

「あ!ちょ…」

 

 

何がなんだか分からない間に綺麗な笑顔でお礼を言って去ってしまった。

 

箱を開くと、少し噂になっとる高めのおいしいケーキが二つ入ってて…

 

「これ持ったまま走れへんやん…」

 

大分困った。

もういなくなってしもうた彼女の去っていった方向に視線を向け、少しの開港を思い返す。

近場とはいえ、コースを変えたウチにこれを渡す為だけにそれなりの時間を割いている筈。

 

…なんか、変わった娘やけどええ娘やな。

予定狂ったはずなんに、笑みが浮かぶのを押さえれんかった。

 

 

 

SIDE OUT

 

 




酔いつぶれるのは…どうでしょう(汗)でも、お酒は普通に入るでしょう。
スペシャルチームの6課ですらヴァイスが賭け持ち出すくらいだから休みなんかは多少はっちゃけてるんじゃないかなーと(笑)。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。