なのは+『現の幻』   作:黒影翼

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File5~第97管理外世界・現地編

 

 

 

File5~第97管理外世界・現地編

 

 

 

転移ででた先は、テラスのような場所だった。

マスターさんの友達の家の庭らしい。

 

「準備よーし!天候よーし!」

「空気悪ーし。」

「ってこらっ!!」

 

自分の実家だろうに、私のテンションを断ち切るような事を言い出すマスターさんにツッコミを入れる。

でも、確かに空気はよくなかった。

 

転移してきて見えた光景は、ミッドとさほど変わらない事に少しおどろいた。

エネルギーのエコ化が進んでないからか、空気は少し淀んでのどに悪そうだったけれど、それでも結構な文明だ。

 

 

さすがに空間投影や転送なんかは普及してないけど、媒体があれば殆ど変わらないものの揃い方だ。

 

「俺は用事で来た訳だが、フレイアは特に用もないから、三人で仲良くやってくれ。」

「え!?自由でいいの!?」

「フレイアがよければな。その辺は三人で決めてくれ。」

 

エメラルドスイーツからはマスターさんとフレイアさんの二人。

それに私とクラウの四人で来た訳なんだけど…

 

 

いきなりマスターさんが用事かぁ。

 

 

「フレイアさんは何かやりたい事とかあるの?偶の帰省だし。」

「知人とは通信がつながっているし、そうのんびりできる訳でもない。二人のやりたい事の方を優先しよう。」

「やたっ!」

 

単なる遠慮とかならちょっと無理してでもフレイアさんの方優先しようと思ったけど、特に無理な様子もなくそんな返事を返してくれたから、私は素直に自分の用事を優先する事にした。

 

「それじゃこっちの端末みたいんだけど!」

「端末…というと、パーソナルコンピューターになるか。ネットカフェと言う所に行けばよかったはずだ。」

「それじゃそこ…クラウ?」

 

教えてくれたネットカフェにノリノリで行こうと言い出した私を止めるように服の裾を引っ張るクラウ。

 

「お金かかるでしょ?」

「ぅ…そ、そりゃ…」

 

旅費に加えてこっちで好き放題するような小遣いまで出して貰えるわけもなく、最低限のお金は貰ってるものの、あくまでも最終手段だ。

お土産なんかを買うなら此方で為になる事や物に使えっていわれてるし…どっかの入場料とかに使うかもしれない。

 

「なら、家で見ていきますか?」

 

唐突な声に視線を移すと、紫色の長い髪の女性が立っていた。

マスターさん、フレイアさんといい、美人さんにかこまれてるなぁ…

私も…まぁ、普通だとは思う。うん。ただ、こうも美人さんばっかりだとそれも怪しいかなぁ…はは。

 

「改めまして、月村すずかです。」

「あ、アクア=トーティアですっ!こっちは弟のクラウ。」

 

いつも通りクラウの分まで自己紹介を済ませてしまうと、クラウは丁寧に折り目正しいお辞儀をする。

礼儀正しいんだか間違ってるんだか。

 

「パソコンならありますし、ネットにもつながってます。それに、此方のキーボード操作できないでしょう?文字配置そのものまで違うんですから。」

「あ…」

 

すずかさんに言われるまで完全に失念してた。

言語翻訳は魔法やシステムでどうにかなっても、キーボードの配置とかまで融通は利かない。

人差し指立てていちいちちまちま打ち込んでたら時間かかってしょうがない。一泊二日なんだからそんなちまちまやってられない。

 

「いいのか?」

「はい。」

「すまないすずか。それではお邪魔しよう。」

「おじゃましまーすっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ローブ、ファンタジーなどで魔法使い、聖職者などが着る服。

魔法使い、空想上一般には博学で非力。民話や伝承にも残るが老人。一言でくくるが分野は多岐に渡る。

刀、直刀から太刀が作られる。居合い等に使用されるほか、美術品としても価値が高い。

 

 

 

ってだーかーらー!?

 

 

コレだけ分かってもどーしろっていうのか。

魔法使いのくくりに関しては収穫だったけど。

 

本当にいるのかどうかは置いておくとしても、こっちじゃ魔法は科学の一つだから、時間移動したり物質を別のものに変えたりまでする奴がいるなんて話は本当だったらびっくりだ。

 

「地球から行方不明になった人とかいないの?」

 

どうせ調べるならこういう人の情報の方が分かりやすい。

そう思って聞いては見たものの、パソコンを操作してくれているすずかさんと傍らにいるフレイアさんは揃って暗い表情を見せる。

 

「アブダクションだね。んー…間違いなくいるんだけど、さすがにそういう個人情報を調べるのは…ね。」

「管理世界に行った人は知人以外には行方が途切れるだろうが、さすがに好き勝手知れるようにはしていないだろう。」

 

異世界に飛んでしまえば行方不明と言うしかない。まして、その方法を公表できないのなら尚更。

 

間違いなく行方不明。って言うのもなんか変な話だけど。

 

「何か知らない?三段変身する人とか、人間でも機械でもない謎の人型生命体とかっ!」

「さ、さぁー?」

「苦笑いしながら引かないでよっ!魔法は知ってるのに!」

 

現地住まいのすずかさんに詰め寄って聞いてみたものの、愛想笑いを浮かべたまま私から距離を置こうとする。

 

「アクア、知り合って間もない相手にそう押してかかるものではない。」

「あ…っと、すみません。」

「ううん、気にしないで。」

 

フレイアさんにたしなめられて私はついノリが過ぎた事を自覚して反省する。

さすがに知らない大人の人相手にする対応じゃなかった。

 

「なら武術と刀については?」

 

私の質問よりは一般的で分かりやすいものについて切り出すクラウ。

別にヒーローさんたちに関係なくても、その辺は知りたいところだ。見られるなら嬉しい。

 

少し考えるそぶりを見せたすずかさんは、柔らかい笑みを浮かべた。

 

「少しだけ時間かかるけど、空手の本部道場があるよ。上手く会えれば、世界大会クラスの人もいるんだけど…」

「世界大会!?行くっ!行きますっ!!」

 

結局速攻でテンションが戻った私を見て、フレイアさんとすずかさんが揃って笑い声をもらした。

 

 

 

 

 

 

 

明心館。

 

その本部道場らしい場所まで、すずかさんの運転で来た私が見たものは、ありふれた練習から魔法を除いた格闘の光景と…

 

その中にいる、青色の長い髪を靡かせた女性の姿だった。

 

きっと強いんだろうとは思ったけど、それだけじゃなくて…『何か違う』。

私はそれが気になって、声を発するのも忘れてその人を見続けていた。

 

「アクア…アクア?」

「へ?あ、はいっ!?」

 

だから、休憩に入って何度も呼ばれている事に気がつくのに時間がかかるくらい呆けてしまっていた。

 

「眼を奪われる位気になったみたいだね。」

「えっと…もしかしなくても、あの人が?」

「そう、城島晶さん。」

 

すずかさんに名前を教えて貰ったその人は、遠くでおじいさんと話していたかと思うと私達の方に向かってきた。

 

「フレイア久しぶり!…本当相変わらずだなぁ。」

「久しぶりです晶。」

「あがっていいって許可とってきたからさ。俺も速人の顔拝みに行く事にする。」

 

挨拶もこの程度にさっさと更衣室へ向かう晶さん。

って、俺も…顔を見に行くって?

 

「一緒に来るみたいだね。」

「え…ええぇっ!?」

 

刀鍛冶の人には会えそうもないのが残念ではあるものの、それを補って余りあるくらいの幸運だ。世界大会クラスの地球の格闘技の使い手に会えるなんて。

とんでもない有名人と知り合いなんだなぁ…ホント。

 

 

 

 

 

 

「随分熱心に見てくれてたみたいだな。」

「えっ、あ、はい。元々地球の事調べたくてつれてきて貰ったので。魔力を一切使ってない格闘技を見れたのは凄く楽しかったですっ!」

 

何て言うか、ピュアストライカーが常時近接戦闘だけやったらこんな感じになるのかって感じだった。

しかも、受けてもいい攻撃って言うのがそうない。バリアジャケットがないから当然と言えば当然だけど。

まぁ、魔力があったらあったで攻撃にも魔力を使えるわけで危険なのは一緒何だけど、魔力の方は使えば発光なり何なり大抵分かりやすい反応が出る。高威力なら尚更。

何がいつどう致命打になるか判別しづらい近接戦闘なんて恐ろしい事この上ない。

 

「私…一回向こうで戦技大会出た事があるんです。」

「へぇ、それで戦闘関係に興味沸いて調べてたのか。」

「最強とかヒーローって聞いて飛びつく女の子ってのも自分でどうかと思うんですけどね。」

 

乾いた笑みを浮かべたままで話す私に、結果が芳しくなかった事は察してくれたのか、誰も何も聞かなかった。

芳しくないどころか初戦敗退で呆然と家に帰った挙句色々諦めた結果、ちょっと魔力があって魔法が使えるだけの女の子になっちゃったわけだけど。

 

「って事は、魔法使えるんだよな?」

「あ、はい。皆知ってるみたいだし、人がいないところなら見せますよ。」

 

知ってる人相手なら問題もない。だから言ってみたんだけど…

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何でこんなことに?」

 

すずかさんの屋敷まで戻ってきて早々、近場の森で私は久しく展開していなかったフル装備で晶さんと対峙していた。

長く先端も小さい、棍としても杖型デバイス『アクアリウム』を展開して、体より一回り大きめに見える半透明のひらひらした袖とスカート(当然半透明なのは腿から下までだけ)を持つバリアジャケット。

 

有事以外で使うことなんてないだろうと思ってたから、晶さんから『勝負したい』なんていわれると思ってなかった。

 

「ただの人間なんて相手にしたくもないだろうけど、ちょっと付き合ってくれ。」

「それはいいんですけど…」

 

加減できるかが心配だ。

 

下手したら…というか、結構誰も彼も地形を変えるような連中が闊歩する魔導師。

一応その中で戦うつもりで参加した私だって、その部類には入る。

 

加減して振っても…怪我させずに済むだろうか?

 

「こっちの心配はしなくていいぜ。なんかあっても授業料だと思うって。」

「い、いやでも…」

「それに、ちょっと覗いてみたいんだ。俺の尊敬する人達が辿り着いた場所を。」

 

その言葉を最後に晶さんの表情から笑みが消え…渋っていた私の方に緊張が走った。

 

それでなんとなく、なんとなく分かった。晶さんだけが違って見えた理由が。

あの道場でこの人だけは、私の居る場所よりもっと凄い所をみながら進んできたんだ。

 

一般人で終わってるとか、大会に出てるとかそういう意味じゃなくて…

 

『魔導師とかひっくるめて、私なんかより全然強い人を見て』進んでるんだ。

 

「クラウ、合図。」

「分かった。」

 

私も構えをとる。

足を開いた砲撃のような体勢。けど、同時に棍として扱うことも出来る。

 

クラウが手近な石を拾って、軽く宙に放り…

 

それが地面についた瞬間、晶さんが駆けた。

 

 

凄まじいステップだけど、所詮生身。見えない速度なんてことは当然なくて、私は単発の魔力弾を撃った。

昏倒させるなら打撃を調整するより弾一発の方が調整しやすいし、魔力ダメージに出来るから身体に影響が少ないから。

 

 

だけど…

 

 

「砕っ!!」

「うそっ!?」

 

右の踏み込みから放たれた拳が、私の魔力弾をあっさり破壊した。

そのまま間髪いれずに距離を詰められ、左の蹴りが私の脇腹に吸い込まれるようにはいる。

回避するほどの反応も出来なかった私は、まともにそれを受けて…

 

 

吹っ飛んで地面を転がった。

 

 

そのままの勢いで立ち上がったものの、既にパニックになりそうなくらいびっくりだった。

だって痛い。生身の攻撃なんて普通に考えたら通っちゃいけないものなのに。

 

ジャケットなしで受けたら死んじゃうってこれ!

 

体勢を整えて迫ってくる晶さん。

距離があれば射砲に行くんだけど、とてもそんな事やってる暇はない。

 

このとき、私は相手が生身だって事が頭から抜けてた。

だから、間合いに入った瞬間にデバイスを『全力』で薙いだ。

 

 

…筈なのに、くるりと胸元から弧を描いた晶さんの掌にデバイスが触れた瞬間、打撃衝撃の手ごたえじゃない、何かぐにゃりとした感触がかえって来た。

 

そして…

 

 

「はっ!!」

 

 

短い息が聞こえたかと思うとお腹のあたりに強い衝撃を感じて、私は意識を失った。

 

 




格好だけはそれなりでも、しばらくまともに扱っていなかったためぼっこぼこのアクア。頑張れ一般人(笑)。
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