GATE/サーヴァント 彼の地にて、斯く戦えり   作:虚空屍

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 アクセスして頂き有り難う御座います。

 因みに、作中に出てくる『極右骸』は虚空屍とは無関係の別人の誰かさんです。


5 鉄の逸物さ!

 炎龍を撃退した第三偵察隊により救われた元コダ村の住人達は、落ち着いた先の町や村でこの事を話し広める。

 とある町の飲み屋で女給の仕事を得たゴダ村避難民だったメリザもそんな一人である。

 

 メリザは酒場の客達に村からの逃避行の悲惨さを話し、そこに彼等が云う何処の軍隊かも解らない『緑の人』の活躍が差し込まれる。

 

「あたしゃ神に祈ったさ。せめて子供だけでもってね。でも神なんか居やしない事が解ったよ」

 

 酒場の客達はメリザの話を水を打ったような静けさで聞いている。

 

「そんな時だよ! 照り付ける太陽が有るのに大きな影が空から地面を写し出したのは! 何かと思って顔を上げ空を見るとあいつが虎視眈々と狙っていやがったんだ!」

 

 客達もメリザの話に生唾を飲み込み続きを静かに聞いている。

 

「ああ、そうさ、炎龍だよ!」

 

 酒場の聴衆達は『おおーーっ!』と声を上げざわざわし出す。

 

 たまたまこの酒場にお忍びで来ているピニャ・コ・ラーダのお供の一人である騎士ノーマはメリザの話に茶々を入れ出す。

 

「大体炎龍がそんなに簡単に撃退されるか? どうせ翼竜か新生龍の間違いだろ!?」

 

 否定的なノーマの物言いにメリザはムッとしたがハミルトンのチップを弾む機転により再びメリザは話し出す。

 

「あんたらがあれをどう考えようが構わないさ。しかしあれはどう見ても炎龍さ! 吐き出された炎で大勢が焼かれ喰われたんだ!」

 

 話は炎龍に気が付いた緑の人の戦い振りへと話が続く。

 

「彼等の荷車は馬で引いてはいないが(すこぶ)る速い! 炎龍を村人から注意を逸らすように荒れ地へ走りだし魔法の杖で攻撃をするも炎龍相手では力及ばず。するとそこの隊長が仲間に『()()』を出させたんだ」

 

 ハミルトンを始めとした客は『()()』に集中しだす。

 

()()()()さ! 形はまさにそのままだよ。それを『コホウノアゼンカクニ』って呪文を言い終わると轟音と共に炎龍の左腕が肩から吹き飛ばされたって訳だよ!」

 

 このメリザの話に酒場は大いに盛り上がるが、そんな話を盛り上げる彼女にピニャが問い掛ける。

 

「その緑の人とやらが使っていた魔杖も()()()()の様な形をしていたのか?」

 

 ピニャからの問い掛けに「ふんっ!」と鼻を鳴らし答えるメリザ。

 

「あんたみたいのを()()()()って言うんだよ! 逸物は()()さ!」

 

 ピニャは緑の人、彼等の持つ魔杖、そして逸物の意味が今一解らないが鉄の逸物について考え込む。

( これは調べてみる必要が有りそうだな…………)

 

 

 

 

 

 駐屯地にコダ村の避難民二十名以上を連れ帰った伊丹を待っていたのは檜垣三佐からの叱責である。

 

「きっ、きっ、君は何て事をしてくれたんだっ!!」

 

「は、はぁ~」

 

 伊丹の気の抜けた返事に頭を抱えてしまう檜垣三佐。

 

 檜垣は自分の職務権限では解決できない問題の為、狭間陸将の元へ伊丹を連れて行く。

 

 その頃狭間陸将は幕僚でもある柳田二尉から各深部偵察隊の持ち帰った情報を聴いている。

 

 柳田二尉は各偵察隊の現地民との一次接触は良好であり更なる情報収集の手段として、第三偵察隊が警護している避難民を利用する旨を進言する。

 

 そんなやり取りをしている部屋に檜垣三佐が伊丹を連れ訪れる。

 

「狭間陸将、実は困った事態になりまして…………」

 

 檜垣は伊丹が身寄りの無いコダ村の避難民を連れ帰った事を報告する。

 

 この伊丹の行動に狭間も柳田も唖然とする。

 

 狭間陸将は連れてきた身寄りの無い人間を今更基地外に放り出す訳にも行かず、人道的措置として保護する事にした。

 

 しかし伊丹は保護した避難民の食と住の面倒を看るための段取り全てが任され、関係各所に提出する苦手な書類作製を考え悩む伊丹を柳田二尉が誘い、物干場で煙草をふかすと話し出す。

 

「よう伊丹。お前さん態とだろ」

 

 柳田二尉は伊丹の二尉昇進よりも先に二尉に昇進している為、先任将校として伊丹より一段高い地位にいる。

 

 柳田は定時連絡を欠かす事をしなかった伊丹が炎龍撃退後から連絡をしてこなかった事を問い詰める。

 

「連絡でもしたら避難民を放り出せとか言われかねないとでも思ったのか?」

 

「それはたぶん磁気嵐や電磁層の影響かなぁ~って」

 

 適当な言葉を並べ言い訳をする伊丹に柳田が話す。

 

「まあいいや、遅かれ早かれ現地民とは交流を持たなきゃ為らなかったんだが、こっちにも段取りや手順てもんが有るんだよ!」

 

 柳田は深く煙草を吸い紫煙を吐く。

 

「なあ伊丹。お前さんはこの世界をどう見るよ。豊富な地下資源があるんだぜ。日本が世界の半分を敵に回してまでも果たしてこの地を押さえる必要があるのか!? それほどの地なんだよ、この世界は! お前さんが連れて来た避難民から現地の資源状況とかも知りたいんだ」

 

「なあ柳田さん。俺は世界情勢には興味がない。俺は連れ帰った避難民の今日明日の住居や食糧にしか頭が回っていない。柳田さんがその避難民に聞き取り調査をすると言ったが、幼い子供達から金銀財宝がどこに有るのかを訊くってのか!?」

 

 子供にまで聞き取り調査の対称にされては叶わないと伊丹が柳田に喰って掛かる。

 

「なあ伊丹、それだけの価値のある世界だと思っておけ。それとお前さんには近々行動の自由が大幅に認められる。まあしっかり結果出してこいや」

 

 柳田は伊丹との話が終ると吸っていた煙草を捨て靴の裏で揉み消し去っていく。

 

 

 

 

 

 避難民の住居は、拠点内を帝国軍が攻めて来て戦闘になった時の危険を考え、丘の麓の戦闘には巻き込まれない様な土地に住まわせる事が決まる。

 

 自衛隊の隊舎もまだまだプレハブで建設中の為、仮設の住宅が出来るまで一時的にテントを避難民の住居とし、食料も暫くは戦闘食(レーション)で賄う。

 

 日を追うごとに施設科の建設重機が回され始め、チェーンソーで森を開きショベルカーが土地を掘り返し均し生活基盤の建設が見え始める。

 

 この自衛隊の重機の作業の効率の良さに関心を持ったレレイは毎日の様に現場に赴く。

( 賢者としてこの様な事を見逃してはいけない。はやく彼等の事を知らなくては………… )

 

 レレイは隊員達とのやり取りで、彼等の言葉、即ち日本語のマスターが一番であると結論付け、がむしゃらに日本語の習得にのめり込んで行くのである。

 

 テント暮らしをしている彼等の護衛はメデイアの竜牙兵である。

 

「こんな事まで頼んじまって済まない、メデイア」

 

「そんな些末な事は気に為さらずとも良いのです。耀司様もこのキャンプ設営にはかなり骨を折られたと聞き及んでいますわ」

 

「そろそろ第三偵察隊の皆にメデイアとギルガメッシュの事を話すか…………」

 

 伊丹は避難民のキャンプで動き回る隊員達を集めてメデイアとギルガメッシュの正体を明かす。

 

 炎龍撃退時、その活躍を目にしていた隊員達は今更かよと思いつつも伊丹とその従者の話を聞く事となる。

 

 メデイアは簡単な魔術を披露し、ギルガメッシュは空間から剣を取り出す。

 

「────と云う訳だ、皆。これからも頼むよ」

 

 伊丹は隊員達に手を合わせペコりと頭を下げる。

 すると隊員達は伊丹そっち除けで従者二人に集まり出す。

 

「ギルガメッシュさんの倉庫は猫型ロボットのポケットと同じなんですね!」

 

「こら待てっ! 我のは倉庫ではない! 宝物庫だ!」

 

「原初に拘っているけど、要は型落ちな訳でしょ?」

 

「無礼者! 断じて型落ち等ではないぞ!!」

 

「メデイアさん、忘年会で本物の魔術ショーをやって下さい! 人体切断とか!! なんなら二尉の首をギロチンで────」

 

「いえ、流石にそれは…………」

 

 ギルガメッシュとメデイアに集まり出し好き勝手を言い出す隊員達。

 

「みんなぁ~、二人を紹介したんだから仕事に戻ってくれるかなぁ…………」

 

 隊員達は渋々それぞれの仕事に戻って行く。

 

 

 

 

 

 保護した避難民の生活もテントからプレハブの仮設住宅に変わり生活者の名簿を作る為、レレイの通訳を交えての作業となる。

 

「さっさと並ばぬか! きちんと申告せよ。雑種」

 

 伊丹はギルガメッシュの言葉を聞き右手を握り締め上げる。その行動に青くなりブルブル震えるギルガメッシュを見た伊丹は徐に自身の左肩をトントンと叩き出す。

 

「肩が凝るなぁ…………」

( ギル! この人達を雑種呼ばわりするなよ !)

 

( ひぃっ! いっ、以後、気を付けます。伊丹さん )

 

 ギルガメッシュに変わりメデイアが特地語で避難民に声を掛けると皆が素直にその指示に従う。

 

( あらあら、まあまあ、人徳の差ですわね )

 

 メデイアは魔術繋がりでレレイやカトー導師とかなり親しくなり、その会話の中で単語や文体のパターンを見付け、日常会話位なら話せる様になっていた。

 

 伊丹はそんなにメデイアを周囲の隊員達から解らない様に頭を撫でながら褒める。

 

「やるなぁ~メデイア。やはり稀代の魔術師だよな」

 

「嫌ですわ、耀司様。褒めて下さるならベッドの中で褒めて下さいまし」

 

 伊丹の頬を意味ありげに撫でるキャスターに彼は慌てて跳び退き辺りを見回す。

 

「あわわわわっ! 他の隊員が聞いていたらどうするんだ! 俺ら夫婦は特別な計らいで一緒に居られるんだぞ。他の隊員の事も少しは考えてあげてくれると助かるな」

 

「畏まりました。他の隊員の事もお気遣いになられて耀司様はお優しいのですね」

 

「まあ、隊の責任者だから俺が率先して隊の風紀を乱すのは良くないだろ?」

 

 

 

 

 

 名簿作りで判明したことは、人種(ひとしゅ)は概ね見た目通りの年齢でレレイ・ラ・レレーナは15歳の少女ではあるが特地では成年である。

 エルフの少女のテュカ・ルナ・マルソーは165歳。

 黒ゴス神官少女のロゥリィ・マーキュリーは暗黒の神・エムロイに仕える身であり、テュカよりもずっとずっと年上で、通訳のレレイも細かい歳までは恐くて聞くことが出来ず現在年齢不詳である。

 

 

 

 

 

 朝食以外の食事と仮設住宅を与えられたカトー導師以下のキャンプの住人達が、夜に集まりこれからの生活について話し合っている。

 

「儂らは自衛隊の世話になりっぱなしじゃ。なんとか自活する術を見付け生活費位は自分達で何とかしたいが…………どうしたものか…………」

 

 テュカや年頃の女性は自衛隊員に身売りする事すら考えている。

 

「翼竜の鱗は貴重品でもあるし、丘に骸を晒している翼竜の鱗の数枚でも自衛隊から分けて貰えると有り難いのじゃがのう…………」

 

 翌朝、レレイとカトー導師はキャンプの住人代表として伊丹を通じて、野晒しにされている帝国、連合諸王国軍の翼竜の骸の鱗の収集の話を持ち出すと、自衛隊としては射撃訓練の的にしかしていないから幾らでも集めて良いとの回答を得る。

 

 この回答に驚いたカトー導師以下のキャンプの住人達。

 特地では竜の種類にこそ差が有りはするが、概ね高値で取引がされている。しかもそんなお宝が目の前に山の様に有り取り放題ときた。

 

 さっそく男児と怪我の治った男達が翼竜の骸から鱗や爪を集めだし、女児や女達が集められた鱗や爪の洗浄と云う作業が始まった。

 

 そんなキャンプの住人達の行動に些か興味を持ち出したギルガメッシュが暇潰しにキャンプに寄る。

 

「ほう、貴様らはこの鱗を以て商いをすると云うか。面白いぞ雑─否、下々の民よ。名付ける事を許すぞ! このキャンプの協同生活の礎を!」

 

 こうしてここにアルヌス協同生活組合が誕生した。

 

 かなりの量の磨かれた鱗が集まりだし、今度はそれを換金する必要に迫られる。

 質の良い鱗一枚でデナリ銀貨三十枚から最高七十枚の値が付く。そんな鱗が二百枚と爪三本がある。因みにデナリ銀貨一枚は、五日は食べていかれる位の額である。

 

 レレイは現金決済をしてくれる大商人相手に販売したい事をカトー導師に相談すると、イタリカで商いをしている、カトー導師の古くからの知り合いのリュドーを紹介してもらいそこでの取引を考える。

 

 アルヌス協同生活組合は自衛隊にイタリカまでの輸送を依頼すると、自衛隊としてはキャンプの住人達の自活問題が解決する他、イタリカの街の様子を探れる事からその輸送任務を伊丹の三偵に任せた。

 

 

 

 

 

 隊舎に居る伊丹を喜ばせたのは、内地とインターネット通信が出来た事である。

 

「むふふふっ、やっと内地と繋がったか! これでweb小説が読めるわけだな」

 

 そんな伊丹の背後には栗林と黒川、そしてメデイアが立ち、声を掛けている。

 

「二尉…………二尉?…………二尉!」

 

「おやおや! 極右骸の話に評価で★0が付いてギックリ腰だって。腰は大事にしないと────」

 

 インターネット回線が繋がり喜ぶ余り、伊丹の耳には部下二人の声が届かない。

 そんな伊丹の脚を、半長靴の爪先で思いっきり蹴りあげる栗林。

 

「二尉!!」

 

「うがっ!」

 

 蹴られた脚を抱え踞る伊丹を上から見下ろす様に口を開くメデイアと黒川。

 

「あらあら、まあまあ」

 

「二尉、聞いて下さい」

 

 いつまでも踞る伊丹に、メデイアは指先一つで彼の首をほぼ180度にゆっくりと捻り出す。

 

「耀司様、いい加減こちらに顔を向けて下さいまし」

 

「あぐぐぐ、か、勘弁して、メデイア。首がぁぁ」

 

 改めてメデイアの恐ろしさを知った栗林と黒川は、目の前のホラー映画のワンシーンの様な状況に半ば青ざめながら伊丹に話をし出す。

 

「二尉、保護をしたテュカ・ルナ・マルソーなんですが…………」

 

「ん? 彼女がどうかしたの?」

 

 黒川はテュカが支給の食事と衣類を二人分要求し、衣類に関しては男女の物をワンセットである事を伊丹に話す。

 

「脳内彼氏を飼っているとか?」

 

 伊丹の答えに、黒川はカトー導師にも相談したらしく、エルフの生活は解らないとの返答を貰ったと告げた後、彼女なりの考えを話す。

 

「もしかしてなんですが、亡くなった家族をある期間は居る者として生活していたりするのではないかと…………」

 

 憶測の域を出ない黒川の答えに伊丹が応える。

 

「う~ん、俺からも彼女に聴いてみるよ。よく話し合ってみる必要がありそうだね」

 

 するとその場に桑原曹長が顔を出す。

 

「隊長、そろそろ出発時間です」

 

「あらっ、もうそんな時間? 鱗の売買ついでに彼女達を乗せて偵察にも出るから、時間があれば俺からも聴いてみるよ」

 

 

 

 

 

 アルヌスの丘の偵察及び敵の掃討を命じられているピニャは、寄った街で連合諸王国軍を指揮した王が街道外れの修道院で怪我の治療をしているとの話を聞きその修道院に向かう。

 

 そこは決して大きくはない、小さな地方の修道院であった。

 ピニャはここの門を叩き修道院長に話をし、件の人物に会わせて貰う。

 修道院のベッドには片側の手足を無くした顔を見知ったデュラン藩王国のデュラン王が寝かされている。

 

「デュ、デュラン陛下! 直ぐに帝国の医師を呼びます!」

 

 デュランは修道僧に支えられ上体を起こし話し出す。

 

「これは姫君、儂はこの様な姿ゆえもう長くは有りますまい。それに帝国の世話にはならぬ」

 

 デュランはピニャに連合諸王国軍と自衛隊との戦いを話し、約束を違えた帝国皇帝に対しての不満を口にする。

 

「妾も帝国軍が敗れたことは聞き及んでいましたが、どの様な敵が居るのか連合諸王国軍に伝えていなかったとは…………」

 

「帝国は自らに刃を向ける恐れのある連合諸王国軍を敵の力を以て壊滅させたのだぞ! 儂は悟ったのじゃ。敵はアルヌスの丘に屯する者共ではなく、背後の帝国であると!」

 

「陛下、せめてどの様な敵か教えて下さいませぬか!?」

 

 ピニャは帝国軍と連合諸王国軍を破った敵の情報を得ようとデュランに問い質すも、彼は有益な情報をピニャに渡すつもりも義理も無い。

 

「ふんっ、教えてやらぬ。知りたくば姫自ら丘へ行くがよい。但し姫よ、肝に銘じられよ。アルヌスの敵は帝国より強い神のごとき軍! 自ら呼び込んだ敵に帝国は敗れるであろう!」

 

 これ以上デュランから情報を聴き出せ無いと判断したピニャは、アルヌスの丘の惨状を自らの目で確認すべく数騎の手勢を連れ、イタリカ経由でアルヌスの丘に向かう事にした。

 

 そんなピニャの元にイタリカが軍勢に攻められそうであるとの報せが入る。

 

「異世界の軍か!? グレイ、ノーマ、ハミルトン! 妾達は先行してイタリカに行くぞ! 付いて参れ!!」

 

 彼女は配下の薔薇騎士団にイタリカに向かう様に使者を遣わし、一行は騎馬をイタリカへと向け先行偵察の為、急行するのである。

 

 

 

 

 

 イタリカ──そこは帝国内のフォルマル伯爵領の地方都市でテッサリア街道とアッピア街道の交差に位置している為、交易に富み、しかも広い平野は帝国の穀倉地としても重要な場所である。

 

 イタリカに着いたピニャは目を見張った。

 ここを攻め込もうとしているのは連合諸王国軍の敗残兵が野盗と化した武装盗賊集団であり、異世界の軍ではなかったからである。

 それでもピニャは伯爵家に赴き、身分を明かしイタリカの守備隊と合流し指揮を執り、野盗の攻撃を何とか撃退していた。

 

 しかしアルヌスの城塞都市は盗賊集団からの攻撃で無惨な姿となっていた。

 

 ピニャは部下達の安否を確認した後、民兵達に各所破損箇所の修理と交代で休みを取らせるように命じて自身はフォルマル伯爵邸へ入り込む。

 

 ピニャはメイド長に食事の用意をさせ、出されたものを平らげると一眠りすると言い、客間での睡眠をとるのだが、急用の折りには水を掛けてでも起こせて言い伝える。

 

 ピニャは客間のベッドの中で一日を振り返る。戦力にならないの程の数少ない正規兵、勇敢な民兵程早死にをしていく現実。まさにこれが皇女ピニャの初陣であった。

 

 そんなうつらうつらしているピニャに一気に現実に戻す冷水が浴びせ掛けられる。

 

「何事か!? 敵襲か!?」

 

 そこにはニンマリと笑みを浮かべながらバケツを持つメイド長がおり、慌てて飛び起きるピニャに侍従のグレイが話し出す。

 

「さあて、敵なのか味方なのか…………皇女殿下にご確認して頂きたく────」

 

 言い淀むグレイを尻目に、身支度を整えたピニャは急ぎ屋敷の外に出て、城壁の扉の覗き窓を覗き込むのである。




 最後まで読んで頂き有り難う御座います。

 そろそろ伊丹一行が戦闘に巻き込まれてしまう予感が……………………
 
 ではでは…………

                                         虚空屍
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