学園都市
学生が人口の8割を占める学生の街にして、外部より数十年進んだ最先端科学技術が研究・運用されている科学の街である。そしてこの街を説明するうえで欠かすことのできないものがある。
この街は世界で唯一超能力研究の実用化に成功した街であり、現在は人為的な超能力開発が学生全員に実施されている。
この物語は、そんな街に暮らす一人の少年の物語である
◇ ◇ ◇
第7学区に存在するひと際目立つ建物、『窓のないビル』。
少年はその異様な建造物を一望することができる喫茶店で一人、コーヒー片手にスマートフォンを弄っていた。
肩まで伸ばしている金髪や透き通るような色の碧眼。迷彩柄のスポーツキャップを被った彼は一通りメールを読み終わった後、小さくため息をついた。
(あいつ、自分から誘っておいて一体いつまで待たせる気だ・・・)
そう、彼は人を待っていた。
かれこれ1時間は待っているのだが、待ち合わせ時間を提示した彼女は未だに姿を現さない。もういいかげん帰宅してもいい気がするが、そうすると待ち時間で消費したコーヒー代が無駄になる。せめて彼女からコーヒー代を奪うまでは帰れない。ついでに鳩尾を一発殴っておこう。少年がその顔に似合わず物騒なことを考えていると、彼女がやって来た。
「や、ヤバい!結局、メッチャ遅刻した訳よー!!」
―――フレンダ=セイヴェルン、少年と同じ金髪碧眼の持ち主であり、世間で言うところの「美少女」の部類に当たる。だが少年には関係ない。彼は足音を立てることなく彼女に接近し―――
「ご、ゴメンって訳よ!ちょっと急用があって・・・イッタァ!?」
その額に向かって
「言い訳は聞きたくない。つまり、お前は先に予定を入れておいた俺よりそっちを優先し、俺は一時間ここで無駄な時間を費やしてた訳だ」
「え、えーとミレイ?そんなことより早く出発したほうがいいんじゃないかなーって私は思う訳―――」
「あぁ?なんか言ったかこの遅刻魔?」
「スミマセンでしたァ!?ですからその熱く握られた拳をこっちに向けないで!?死んじゃうから!私実の兄に殺されちゃうから!!」
「問答無用」
その日、一人の少女の断末魔が学園都市に響いた。
◇ ◇ ◇
「うぅ・・・、まだジンジンするって訳よ・・・」
「つまり、もう一発殴って欲しい訳か・・・」
「何で!?」
―――ミレイ=セイヴェルン
フレンダの双子の兄にあたる彼はもうすぐ誕生日を迎える妹、フレメア=セイヴェルンの誕生日プレゼントを買うためにフレンダと二人、ショッピングモールを歩いていた。
「さて、フレメアの誕生日プレゼントをなににするかだが・・・、なにか意見あるか愚妹」
「可愛い物!何でもいいからとにかく可愛いものがいいって訳よ!!」
息を吹き返したかのように声を張り上げる彼女を見て、ミレイは眉をひそめる。
「随分と必死だな、理由でもあるのか?」
「・・・そうか。結局、ミレイには伝えてなかったっけ・・・。ねえミレイ、あの子誕生日に何が欲しいって言ったと思う?」
「・・・・・・さあ?つまり、ぬいぐるみとかか?」
苦虫を噛み潰したような顔をした妹を見て、彼は年相応の女の子が好きそうなものを挙げるがフレンダは首を横に振る。
「・・・ブラッド&デストロイって訳よ・・・」
「・・・?」
説明しよう!
ブラッド&デストロイとは対象年齢18歳以上のホラーアクションアドベンチャーゲームである。プレイヤーはガブガブ食べる側であり、その独特の世界観から今でもファンが多いゲームなのである!!
「・・・というかなんでミレイ知らないの?アレ結構有名だよ?」
「興味がないんだからしょうがないだろ・・・」
(結局、ミレイは自分が興味のあること以外をシャットアウトしすぎって訳よ・・・)
そんなことを思いながらため息を吐いていると、服のポケットから携帯の着信音が聞こえてきた。
フレンダは一瞬目を細めると、
「ごっめーんミレイ、ちょっと急用を思い出しちゃったって訳よー。というわけでぇ、プレゼントの件ミレイに任せまーす!」
「つまり、丸投げって訳か」
「あっはっは、何とでもいうがいいって訳よ!」
なるべくいつもの「
―――光の届かない、真っ暗な世界へと
「マジで帰りやがったなアイツ。つまり、次会ったらブチコロス」
物騒極まりない言葉を吐きながら、彼はショッピングモールを後にする。
あの後、彼は一人でプレゼント選びをしていたのだが、残念なことに彼は何が可愛い物なのか、いまいちよく分からない。妹のプレゼントすらまともに選べないことを痛感させられるが彼はそこまで危機感を抱いていなかった。どうにかなるだろ、と考えながら街を散策していると、彼の目に一つの看板が飛び込んできた。
「これは・・・」
◇ ◇ ◇
佐天涙子はその光景に驚愕していた。
御坂美琴や白井黒子など、今日は色々と驚かされることの多い一日だとは思っていたが、まさかこんなことがあるとは。明日は隕石でも降ってくるんじゃないだろうか。学園都市の生徒らしくない、非現実的な思想に浸っていると、佐天の後ろに並んでいた御坂が不思議そうな顔をして佐天に問いかける。
「佐天さん、どうしたの?なんか顔色悪いけど?」
「み、御坂さん・・・。その、確認してほしいんですけど・・・。私の前にいる人って金髪ですか?、迷彩柄の帽子被ってますか?」
「えーとそうね。・・・それにしてもきれいな髪ね、外人さんかな?」
・・・ですよね~、そうですよね~。ア、アハ、アハハ、アハハハハハ・・・・・・
「さ、佐天さん!?どうしたのぐったりして!う、初春さーん!!」
「どうしました~、ってキャアッ!?ど、どうしたんですか佐天さん!?も、もしかして熱中症!?」
「落ち着きなさい初春!・・・熱中症の症状ではありませんわね、いったい何が起きたんですの?」
佐天がヘナヘナとその場に崩れ落ちたことにより、場はパニックになる。そんな中、佐天がとある方向を指さしていることに気付いた初春がそこに視線を向けると、そこには―――
「ふう、ようやく順番って訳か・・・。ってオイ、俺が並んでいる間に何が起きた・・・?」
―――彼女がよく知る、クラスメートがいた。
◇ ◇ ◇
「とりあえず自己紹介しようか。ミレイ=セイヴェルン、そこのバカ二人と同じ柵川中学校の一年だ。御坂さんは先輩にあたるが、このしゃべり方はクセなんで勘弁してほしい」
「誰がバカよ、誰が!!」
「まあまあ佐天さん、ミレイ君も煽らないの」
佐天が正気を取り戻した後、ミレイ達はお互いの自己紹介を始めていた。ミレイの自己紹介に対して、佐天が喰いつく。初春は彼らの扱いに慣れているのか、二人を強引に引きはがす。
「だいたい何でアンタがここにいるのよ!?言っちゃ悪いけどアンタ自分の興味のないことに対しては全く無関心でしょ!」
「それは私も意外に思いました、クレープ好きなんですか?」
「いや、クレープはそこまで好きじゃない。俺の目当ては・・・こっちだ」
そう言って彼が手にしたのは、クレープのおまけとしてついてきた景品―――
―――ゲコ太ストラップである。
「うそ、同志!?」
「まさかお姉さま以外にもファンがいるとは・・・」
「というか、ミレイ君。男の子ですよね・・・?」
「まさかアンタ、見た目じゃなくて中身も女の子になったとか!?」
それぞれがそれぞれの反応を示す中、ミレイはストラップを掌の中で弄びながらこう告げた。
「いや、妹の誕生日プレゼントにいいかなーと思ったんだが・・・。ダメだったか?」
「「「「ダメ!!!」」」」
即答だった。
◇ ◇ ◇
「一体何がダメだったんだ・・・?」
あの後、何故か佐天達にストラップをプレゼントとして渡すことを却下された。ミレイにはその理由が分からなかったが、二日後に佐天達が一緒にプレゼントを選んでくれると言ってくれた事には正直助かったと思っていた。
(あのカエルのストラップ、結構いい線いったと思っていたんだが・・・うん?)
自分の寮に帰る途中、彼の携帯から着信音が聞こえてきた。
携帯の画面に記されていた番号に見覚えはなかったが、彼は気にすることなく通話ボタンを押す。
「よう、アンタから連絡が来るのは珍しいな」
『それは君のほうから連絡が来ないからだろう。私としては、こまめに連絡をしてくれると助かるのだが』
「減らず口を。アンタはその場から動かなくてもこの学園のありとあらゆる情報を手に入れられるだろうに」
その声は男にも女にも、子供にも老人にも、聖人にも囚人のようにも聞こえた。
仮に少年以外の人間がその声を聴いたとしたら、こう例えるだろう。だがそれはある意味正しいのかもしれない。自らの生命活動の維持を全て機械に任せ、1000年以上の時を生きている人物をはたして「人間」と表現していいのだろうか。
そんな男にも女にも、子供にも老人にも、聖人にも囚人のようにも見える人物は言葉を紡ぐ。
『確かに私はこの場から一歩も動くことなく、情報を手に入れることができる。だが君のように実際にこの学園都市に暮らしている生徒の意見を聞くという事は、学園都市の理事長である私の義務でもあるのだよ』
「建前はいい。要件を言え」
『まあそう急かすな。・・・君には一つ仕事を頼みたい』
たった一言。
その言葉だけで少年、ミレイ=セイヴェルンのナニカが変わる。表面上、変化は見られないが数分前の彼とは明らかにナニカが違った。まるでスイッチが切り替わるかのように。
「・・・詳細を伝えろ」
『期待しているよ、ミレイ=セイヴェルン』
これは学園都市統括理事長、アレイスター=クロウリーのブレインである一人の少年の物語である。
こんにちは、月海豚です。
新しい連載を始めました。よろしくお願いします。