ミレイ=セイヴェルンの歩む道   作:月海豚

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更新遅れて申し訳ありません。
これからは大体このペースで更新していきたいと思っています・・・多分(汗)




夜の街の住人達

学園都市。

高さ5メートル、厚さ3メートルの壁に四方を囲まれたその街はそこに住む子供たちの教育の場であると同時に、世界で 唯一超能力の実用化に成功した研究機関でもある。かつてはアメリカやソ連など、世界中が超能力開発に力を注いだが未だに成果は出ていない。

 

「だがそれも今日で終わりだな、アレックス」

「ああ、明日には世界がひっくり返るぞ」

住人のほとんど学生であるこの街は、夜になると自分たちの寮に帰っていく生徒が多い。そのため人通りがかなり少なくなり、真夜中になれば人ひとりいない状態になる。二人のアメリカ人はすっかり寝静まった街を歩いていた。二人の視界に入るのはまばゆい光を放つ店の看板と、学園に配備された清掃ロボぐらいだ。

 

「それにしても学園都市の警備はザルなのか?この調子じゃあすぐに国に帰れそうだぜ」

「あまり油断するなよキーソン、まだ敵地の中だぞ」

「へいへい、肝に銘じとくよ」

彼らはアメリカの研究所から学園都市に送られたスパイであり、学園に在籍している学生のデータを入手することが彼らの任務であった。彼らは現在任務を完了し、国に帰還する準備をしているところだ。

 

「いやー、早くこんなせまっ苦しい街とはおさらばしたいぜ。アレックス、お前は帰ったらまず何がしたい?」

「・・・我が家だな。家族には随分と心配をかけた」

「全くうらやましいねー、帰りを待っててくれる人がいる奴は・・・。ほら、荷物も積みこんだし、出発するぜ」

 

我が家で自分を待っているであろう妻と子供たちを脳裏に浮かべ、彼は微笑する。

そんな相方に苦笑しながらキーソンは車のドアに手をかけ―――

 

 

 

 

 

―――直後、彼の腕が爆散した(・・・・・・・・・・・)

 

「ガ、ガアァッッッ!!??」

「ッ!?」

突如襲ってきた激痛にキーソンは冷たいコンクリートの上をのたうち回る。一方のアレックスは素早く自分の拳銃を取り出し周囲の警戒に当たる。だが周囲に人らしき影は存在しない。そう、人らしき影は。

 

(アレは・・・、学園都市の清掃ロボ・・・?)

アレックスの目に飛び込んできたのは、白いドラム缶型の清掃ロボだ。学園都市の様々な箇所に配備されており、路上のごみを掃除する目的で製造されたものである。

その清掃ロボたちがアレックス達をぐるりと取り囲んでいたのだが、アレックスは違和感をぬぐえなかった。

 

(あの清掃ロボ・・・、通常のものより二割ほど大きくないか・・・?そして、何故これだけの数が一か所に集まって―――)

直後、彼の思考は停止した。ある一つの推測が頭に浮かんでしまったからだ。先ほどまでは流れていなかった冷汗が全身を覆い、拳銃に掛ける指はカタカタと震える。

彼はその場に固まったまま動かない。否、動けなかった。もし彼の推測が真実ならば、それは自分たちが追い詰められたことを意味しているのだから。

 

『おや、気付かれましたか。案外早かったですねー』

ふいに、機械で合成された人間の声が聞こえてきた。ギチギチと、さびた機械のように首を動かすと清掃ロボのうちの一つが彼らに近づいてくるのが見えた。その動きはとてもなめらかで、モーター音も必要最低限に控えている。

 

『さすがは学園都市に潜入したスパイ様とでもいうべきでしょうか。いやー感心感心。ですが―――』

(ッ!?まずい、とりあえずにげ―――)

アレックスはその声に素早く反応し、その場から逃げようとした。だが、それはあまりにも遅すぎる決断だった。

 

『―――チェックメイトですよゴミくずども(・・・・・・・・・・・・・・・・)

次の瞬間、数十発の鉛玉が彼らに降り注いだ。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

学園都市17学区。

学園都市随一の工業区であるその学区は、ほとんどの施設が機械の手で自動化されているため、滅多に人が立ち寄らない所でもある。

そんな17学区にある廃工場の一画、四方を大小さまざまな大きさのモニターで埋め尽くされたその部屋に一人の少女はたたずんでいた。

 

「・・・うん、とりあえず制圧完了かな」

そう言って、彼女は椅子の上で体を伸ばす。

その少女は腰まで伸びている黒髪を一つに束ねており、それはまるで意思を持っているかのように左右に揺れている。その小柄な体格や幼さが残る顔から彼女が学生であることが分かるが、彼女がその身にまとっているのは研究者などが愛用する真っ白な白衣だった。

 

「にしても相変わらず人使い荒いなーあの金髪。自分の仕事ぐらい自分でこなせよー」

トントンと、彼女は苛立たしげに椅子のひじ掛けをたたく。それは一見乱暴に見えて、ある一定のリズムを刻んでいる。

しばらくすると彼女の怒りも収まったのか、モニターに映る画面を監視カメラの映像を消すと白衣のポケットから携帯ゲーム機を取り出す。最近の彼女は、新発売されたこのゲームに夢中なのだ。

 

「うんうん、やっぱ一仕事終わった後はこれに限るよねー。・・・うん?」

彼女がコントローラーを夢中で弄っていると、部屋のドアから誰かがはいってくる。彼女はその人物を一瞥すると先ほどまでのいら立ちが蘇ったのか、チッと舌打ちをした。

 

「よう、その様子だと仕事は完了したって訳か?」

ミレイ=セイヴェルン。

学園都市統括理事長のブレインであると同時に、今回の仕事の依頼主でもある少年だ。だが学園都市の中でもそれなりの地位を築いている彼を前にしても、白衣の少女からは彼への尊敬と畏怖の念は感じられない。

 

「やっと来たかこのヤロー。自分の仕事人に丸投げしやがってー」

「うっせーよ引きこもり。たまには自分の力を活かしやがれ」

「それを君が言うのかい?あれだけの数のグンタイアリを操作するのって結構骨が折れるんだよ?」

―――『グンタイアリ』

一見ただの清掃ロボットに見えるソレは、対侵入者用の迎撃ロボットである。その大きな胴体の中には、イラク戦争でも実際に使われたセミオート式狙撃銃「バレットM82」が内蔵されている。これだけでも相手勢力に多大な影響を与えるが、『グンタイアリ』の本当に恐ろしさはそこではない(・・・・・・)

 

「使うまでもなかったみたいだけどな」

「だねー、まあアレはよっぽどの化け物にしか使う必要がないよー」

大抵の奴はすぐくたばっちまうしねー、と彼女は世間話でもするかのようにケラケラと笑う。その言葉に人を殺したという罪悪感は全く含まれていない。かと言って人殺しを楽しんでいるわけでもない。彼女にとって人を殺すという行為は無限に出現するゲームの雑魚キャラを機械的に倒していくようなもの。そこには何の感情も生まれるはずがないのだ。

 

「相変わらず物騒なもの作るよな、お前ら」

「侵害だなー。私たちは崇高な目的のために日々研究を続ける科学者サマだよー」

「何が崇高な目的だ。お前らはやり方がえげつないんだよ」

「フフッ、まあそこらへんは否定しないよ。なんせ私達は泣く子も黙る木原だからさー」

彼女が何気なく発した「木原」という言葉。

しかしそれは暗部に所属している人間にとっては、背筋を凍らせるには十分すぎる言葉だった。しかしミレイはたいして気にした様子もなく、バカにしたかのような笑みを浮かべる。

 

「その表現、なんかすげえ三下っぽいな」

「うっさいなー、そんなこと言うなら帰れよー」

「言われなくてもそのつもりだ」

軽口をたたきながらミレイは白衣の女に背を向ける。木原である彼女に背を向ける事は本来自殺行為なのだが、廃工場の床に鮮血がまき散らされることはなかった。

口では憎まれ口を叩いているが、それなりの信頼関係は築いているのだろう。彼は最後まで振り返ることなく埃の溜まった廃工場を後にする。

 

 

 

「んじゃあまた今度な、木原条理」

「気が向いたらまた来なよ、金髪」

 

 




こんにちは、月海豚です。
もうすぐで今年が終わりますね。長かったような短かったような・・・。
今回はさっそくオリキャラとオリジナル兵器を出してみました。どうでしたか?

余談ですが実際に熱帯雨林に住んでいるグンタイアリは、アリのくせに爬虫類や鳥類を捕食することがあるそうです。Σ(||゚Д゚)ヒィィィ

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