ミレイ=セイヴェルンの歩む道   作:月海豚

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職場体験で幼稚園に行ったら、インフルエンザ移されてしまった・・・。
皆さんも体調には気を付けてください。


人形を見たら爆弾だと思え

ミレイ=セイヴェルンは困惑していた。

本来彼は、2日前に買いそびれた妹の誕生日プレゼントを買いに来たはずだった。当初の予定通り初春と佐天、そして御坂を誘ってだ。可愛い物、というのが何か分からない彼にとって御坂達は強力な助っ人であり、彼女たちといっしょならすぐに決めることができるだろう、と密かに期待していたミレイだったが―――

 

「初春~、これとかどうよ?」

「ッ!?む、無理です無理ですッ!!」

「これを履いてたら、私にスカート捲られても堂々と周りに見せつけられるよ~?」

「見せつけないでください!捲らないでください!!」

「・・・なんでこうなった・・・・・・」

―――第7学区、セブンスミスト。

ミレイはいつのまにか彼女達(主に佐天)が買った物の荷物持ちになっている。

 

「何さミレイ、別に私たちだって買い物したっていいでしょ?」

「・・・いや、別にそこに不満はないぞ。俺だってお前らの買い物にも付き合おうと思ってた。けどな・・・、自分の荷物ぐらい自分で持ちやがれコノヤロウ」

総重量、約2キロ。

地味にきつい重さである。

 

「うーん、初春にはやっぱこっちのほうが似合うかな~、どう思う?」

「アホかお前」

そうつぶやいたと思うと、彼女は下着売り場の中から一つを取り、意見を求めてきた。まさかクラスメートにそんな質問をされる日がくるとは思っていなかったので思わず罵倒してしまったが、それは当然の反応だろう。その証拠に彼女の親友である初春は涙目になってるし、この場で唯一、エリート校である常盤台中学に在籍している御坂美琴は彼らの様子を見て苦笑いを浮かべている。

 

これなら一人でいったほうが早く済んだんじゃないか、と彼が後悔していると一人の少年の姿がミレイの視界に移った。黒いツンツン頭のその少年は幼い女の子の手を引きながら店に入っていく。彼はスッ、と目を細めるとその少年たちが入っていった店に目を向ける。

「はあ・・・、佐天。俺あっち見てくるからな」

「りょーかい、終わったら言ってよ~」

「御坂さん、こいつらよろしくお願いします」

「大丈夫、任せて」

 

彼は御坂にそう告げ、歩みを進める。ゆっくりと、狙いを定めるかのように。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「お兄ちゃん、これ似合う~?」

「お、おー。似合うぞー」

えへへー、と満面の笑みを浮かべる女の子を見ながら少年、上条当麻は苦笑いを浮かべる。

 

彼は本来道案内を終えたら少女と別れるはずだった。しかし何故か彼女から異常な信頼を得た上条は、そのまま少女とショッピングをすることになってしまったのだ。

(・・・まあ、この子が楽しいんならそれでいいんだけど・・・。この状況を土御門や青髪ピアスに見られたらヤバいぞ・・・)

 

内心冷汗ダラダラになりながら次の店に入った瞬間、パシャッ、というカメラのシャッター音が店内に響く。なにげなくその方向を見ると―――

 

「・・・カミやん先輩。つまり、遂にやっちまいましたか・・・・・・」

「ミ、ミレイ・・・?」

―――なにやら携帯電話をこちらに構えながら、知り合いが一人でうなだれていた。

 

ミレイ=セイヴェルン。

彼は数か月前、高校の先輩に紹介された中学生の少年だ。外国人特有の綺麗なブロンドヘアーや透き通るような碧眼の持ち主であり、初対面の人は高確率で性別を間違う。かくいう上条もその一人であり、間違えた瞬間にボディーブローを喰らったのはいい思い出だ。

あの時は余りの威力に上条は四つん這いになってしまったのだが、どういうわけか今回は彼が四つん這いになっている。人の目もはばからずに両手両膝をついた彼の目からは光が失われており、どんよりとしたオーラがその場を漂う。上条はおそるおそる、自分の後輩に問いかける。

 

「お、おーい。ミレイクン?一体全体何に絶望しているんだい?今なら先輩である上条さんが君の悩み解決に協力してもいいんだぞ」

「・・・、先輩・・・・・・」

その言葉にミレイはゆらっ、と顔を上げ、上条は静かに息をのむ。

思えばこの数か月間、ミレイ=セイヴェルンという少年はクールな毒舌キャラというポジションを維持してきた。土御門や青髪ピアスなどと一緒に過ごしていてもけっしてはしゃぐことはなく、冷たい目でツッコミを入れることが常だった。

そんな彼がここまでのオーバーリアクションをとっているのである。よっぽどなことがあったに違いない、と上条が決意を新たにするとミレイがポツリと呟いた。

 

「先輩、自首してください今すぐに」

「何故ッッ!?」

店内に上条の声が響き渡った。

 

 

 

「・・・なるほど、つまり君はカミやん先輩にむりやり連れていかれた訳ではないと」

「そうだよー、お兄ちゃんは私と遊んでくれてるのー」

「はあ・・・、不幸だぁー・・・」

 

数分後、誤解の解けた上条たちは三人で自販機のジュースを飲んでいた。お詫びとしてミレイのおごりである。ミレイは各々に缶ジュースを配りながら、未だにうなだれている自分の先輩に目を向ける。

「よかったですねカミやん先輩、俺があそこまで動揺するのってかなりレアなんですから。もう一生お目にかかれないかもしれませんよ?」

「誰得ッ!?それはいったい誰得なんだよこのヤロウ!?」

「黙りやがれウニヤロウ。・・・あ、後あの写真送りましたからね。残りの馬鹿どもに」

「おいいいいいいッ!?何でそんなことすんの!?」

「なんかイラッとしたんで」

 

本日二回目となる、少年の悲痛の叫びが響き渡った。

ミレイは一通り先輩を弄りまくって満足したのか、すっきりとした表情で立ち上がり、上条に声をかける。

「それじゃあ先輩、俺もう行きますから。先輩もそんなところで休んでる場合じゃないですよ。なんかあの女の子いなくなってますし」

「あれッ!?そういえばどこいったんだ、あの子!?」

「さあ?迷子ですかね?」

 

不幸だ~~ッ!?、とお決まりのセリフを吐きながら駆け出していく少年を眺めていると、

店内に一本のアナウンスが鳴り響いた。どうやら店内で電気系統のトラブルが発生したらしい。出口に向かう巨大な人の波にミレイは瞬く間に呑み込まれていいた。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

セブンスミストの周りには店から追い出された多くの客が口々に不満を言いながら、その巨大なビルを見上げている。その中の一人、佐天涙子は周りの人間とは違い、不安げにそのビルを見上げていた。その体を小刻みに震えており、両手は何かを祈るかのように重ねられている。

(大丈夫・・・、絶対大丈夫・・・。初春だって風紀委員(ジャッジメント)だし、御坂さんなんて超能力者(レベル5)なんだから・・・)

 

―――セブンスミストの店内から急速な重力子が観測されたのは今から10分ほど前の事だ。この一週間、ぬいぐるみなどがコンビニなどの店内で爆発する事件は佐天もニュースで知っていた。風紀委員(ジャッジメント)である初春飾利はすぐに避難誘導を開始、御坂も協力者として店内に残っている。

 

(私も何か力があれば・・・)

佐天涙子は、無能力者(レベル0)である。

学園都市は一般的に能力開発の街と知られている。事実、その街に子供たちは能力開発を受けることを義務付けられている。脳をこじ開けられ、様々な薬を投薬されて学生たちは自分だけの現実を見つけ出していくのである。

しかし、誰もが能力を手にできる訳ではない。能力者はその能力の強さから6段階に分けられ、レベルは学生たちの日常生活にも大きな影響を及ぼす。レベルが低ければ低い程成績が低いとされ、無能力者(レベル0)にもなると落ちこぼれとみなされてしまうのだ。

 

(なんで私はこんな所にいるんだろう・・・)

自分の無力さに佐天は胸がキュッ、と絞め吊られるような痛みを感じた。

 

そして―――

 

ドゴォォォォンッッ!!!

 

「ッ!?」

一人の少女の目の前で巨大なビルが爆発した。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「ハ、ハハ、アハハハハハッ!!やった、僕はやってやったぞ!!!」

薄暗く、人の目を欺くような所に位置する路地裏。介旅初矢は一人例えようのない喜びに震えていた。その耳には大きなヘッドホンが付けられており、大音量でナニカ(・・・)がかけられている。

 

爆発音からして、あの女は大けがを免れないだろう。それを思うと自然と顔に笑みが浮かぶ。自分を救わなかった風紀委員(ジャッジメント)に復讐する。

あの日心に誓ったことが、現実のものとなった。だからこそ、少年は貪るようにナニカ(・・・)を聞く。

これからも復讐していくために。

自分の手でこの腐った世界を変えるために。

 

 

 

―――だからこそ彼は気付けなかった。

自分の真後ろを金髪の青年が近づいているという事を。

 

 

(さあて、次はどいつを・・・ガボッッ!?)

誰かに後ろから蹴りつけられた。

そのことを脳が認識した時には、介旅の体は冷たいコンクリートに叩きつけられていた。全身の筋肉が不自然に震え、気持ちの悪い汗が体を伝う。

 

「ガ、ガハッ・・・。な、何が・・・?」

「いやー悪い悪い。最近軍人とかスパイとか、そういう訓練されてきた人間しか相手にしてこなかったから加減できなかったわ。悪いねモヤシ君」

その少年は言葉とは裏腹に、全く悪びれた様子はない。感情を表に出す事無くその少年は介旅に近づく。

 

「にしてもお前といいウチの妹といい、何で学園都市の奴らはぬいぐるみの中に爆弾入れたがるかねー。そこら辺、詳しく教えてくれよ。爆弾魔さん?」

「・・・何の話だい?」

どうやらこいつは自分を捕まえに来たらしい。介旅はとりあえずシラを切ることにした。呼吸が落ち着いてきたらまた逃げればいい、彼はそう判断した。

 

「僕は爆弾魔じゃないよ。ただ自分の寮に帰ろうとしただけさ」

「・・・お前さ、やるならきっちり成功させろよな。負傷者ゼロってお前、ロクな火種にもなりゃしないんだが」

「ッ!?ふ、ふざけるな!僕の最大出力だぞッ!?」

「ああ、それなんだけどな。知り合いの風紀委員(ジャッジメント)に聞いた話だと爆弾ごと撃ち抜かれたみたいだぜ、常盤台の超電磁砲(レールガン)に」

 

超電磁砲(レールガン)』。

その言葉は介旅もよく知っていた。

学園都市に7人しかいない超能力者(レベル5)の一人であり、常盤台中学のエースに君臨する人物。

自分が手にしたこの力も、その名前の前ではひどく霞んで見えた。そして、同時に激しい怒りが込み上げてくるのを、彼は感じた。

 

「ふざけるな・・・」

「にしても、まさか先輩まで介入してくるとは予想外―――、何だって?」

「ふざけるなって言ってるんだッ!いつもそうだ、いつも弱い奴は力でねじ伏せられる。常盤台の超電磁砲(レールガン)?なんで今度はそんな奴が僕の邪魔を―――、ゴバアッ!?」

 

次の瞬間、今度は彼の顔面に蹴りが突き刺さる。介旅の体はまるでボールのように二メートルほど後方に吹き飛び、薄汚い地面を転がる。ピクリとも動かなかくなった少年を見据えながら、少年が呟く。

「これがあの先輩なら説教の一つでもするんだろうが・・・、俺は別に善人でも何でもないからな。回収が終わったらとっとと退散するに限るって訳だ」

そう言ってミレイは介旅に近づく。骨が何本か折れているようだが問題ないだろう。この程度で死んでしまうほど、この街の医療技術は甘くない。

 

(まあ、どうせ後で気絶するしな・・・。つまり、何事も早ければいいって話だ)

ミレイはそう結論付けると、介旅が最後まで聞き続けていたヘッドフォンを手に取る。かなりの大音量で聞いていたため、奇妙な音楽が微かに聞こえてきた。その音に少しの間耳を傾け、ヘッドフォンをバッグにしまう。

回収を終えた少年は大きく伸びをすると一言、こうつぶやいた。

 

 

「・・・始まるか」

 

 

 

 

 

 




こんにちは、月海豚です。
今回も更新が遅れてしまって申し訳ありませんでした。
なんか毎回、遅れている気がしなくもないですが、地道にがんばっていきたいのでよろしくお願いします。

芸術は爆発だッ!
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