読者の皆様にひたすら感謝です。
第七学区に存在するファミレスの一つ、Bennys。
昼時になり多くの学生がそれぞれの昼食を楽しむ中、一つのテーブル席だけ異様な空気を醸し出している。一般人には察知できない、鋭い殺気がその席を飛び交っていた。
・・・いや、飛び交っているという表現はあまり正しくないかもしれない。正確には一人が一方的に放っているだけだ。
「あ、あのー・・・、俺もう帰っていいっすか―――、ヒッ!?」
その席に座っている人物の一人、
藪をつついて蛇を出す、ということわざがある。
どうやら俺は蛇ではなく、般若を突き出してしまったようだ。
彼はその顔に下手くそな愛想笑いを浮かべながら、反対側に座っている鬼に謝罪する。
「す、すみません!!や、やっぱだめですよねー」
「いや、別にお前はどうでもいいけど。ほかの二人がきちんと説明するならな」
だったらその殺気を少しは抑えてくれませんかねえ!、という言葉を飲み込みながら天城は顔を上げる。
自己紹介をする際に彼女が名乗った名前だ。
学園都市統括理事会に所属している人間の一人、貝積継敏のブレインであるその少女はその整った顔を腹立たし気に歪めながらそう言った。口ではどうでもいいと言っているが、彼女が殺気を放つことを止める気配がない。彼女がこんなにも感情を露わにするのは極めて珍しい。彼女の雇い主である
「どしたんですかー、カチューシャ先輩?いつもの人を小馬鹿にしたような態度はどこにいったんですかー?」
(おいいいいいいいい!?何でこのタイミングで煽る!?さっきまでアンタガン無視だっただろうが!)
火に油どころかガソリンをぶっかけた下手人を天城は睨み付けるが、
「大体、立場的には金髪のほうが上でしょう?上が何をしようが勝手じゃないですかー」
「おい、そこの下っ端。今すぐそいつの口を封じろ。今すぐに、迅速に」
ア、アイアイサーッ!!と雲川の殺気に耐えられなくなった天城が条理の粛清に乗り出し、ケラケラと笑いながらそれを避ける条理。目の前で繰り広げられる茶番を眺めながらミレイ=セイヴェルンは雲川に質問を投げかける。
「そんで?説明って何のことですか先輩?」
「しらばっくれるな。自分がやってのけたことぐらい、自分で分かっているはずだけど」
「そんな事言われてもねえ―――うん?もしかして・・・」
彼の脳裏に浮かんだのは、セブンスミストで起きた爆発事件。
確かあの場には目の前の女が溺愛している少年がいたはずである。
「ああー、なるほどなるほど。つまり、先輩は俺がカミやん先輩をあの事件に巻き込んだと言いたいんですか?」
「その通りだ。ようやく話を進める事ができて私は満足だけど」
―――満足ならその殺気を抑えろよ
本音が喉元まで出かけたが、そうなると話がさらに長引きそうなため止めておく。
「そんな訳ないじゃないですか。あの先輩はあなたにとっても、そして俺にとってもとても特別な人ですよ」
「・・・・・・」
「あんな危険な現場にわざと巻き込むなんてするわけないじゃないですか。恩人のカミやん先輩に」
「・・・・・・・・・」
「先輩が俺を疑うのは分かりますけど、少しは俺のことを信用―――」
「信用はしているさ」
雲川はあっさりと、あまりにもあっさりと彼の言葉を肯定した。
先ほどまで敵意が嘘だったかのように。
怪訝そうな顔をする目の前の後輩に向けて言葉を紡ぐ。
「お前のその言葉に嘘偽りはないんだろう。それは最初から分かっているけど」
「・・・つまり、先輩は俺の事を信用しているが、カミやん先輩を事件に巻き込んだ黒幕だと思ってるんですか?」
「そうだ。お前とは長い付き合いだからな、お前が嘘が下手なことぐらい百も承知だけど」
けれどな、とそこで雲川はいったん言葉を切り、こう言った。
「お前は、たとえどれだけ心を許した友であろうと必要ならば何の躊躇もなく血みどろの世界に引きずり込む外道だけど」
◇ ◇ ◇
「いっちばーんのりー!!」
そう叫び、フレンダ=セイヴェルンは改造されたボックスカーの中に飛び込んでいく。その顔に浮かぶ満面の笑みはこれから何十人もの人間を殺すことになる人間の笑みとはとても思えない。彼女はまるでピクニックにでも行くかのように無邪気に笑いながら車内の椅子に腰かけ、同僚に話しかける。
「絹旗―!早くしないと先に行っちゃうって訳よー!!」
「ったく、なんなんですかもう。なんだか普段の二割増しで超うざいですよフレンダ」
絹旗最愛とフレンダ=セイヴェルンは学園都市の暗部組織「アイテム」の構成員である。彼女たちの主な役割は学園都市の不穏分子の排除及び抹消。平たく言ってしまえば、なんか悪いこと考えてる大人たちをボッコボコのグッチャグチャにしてしまおう!、という組織である。
「最近のフレンダはテンションが超高すぎです。遂に頭が空っぽになったんですか?」
「グハッ!あ、相変わらずの辛口コメント・・・、でも私めげない!!なんせもうすぐフレメアのバースデイだからー!」
そういえば超ド級のシスコンだったなこいつ、と絹旗が冷めた目で反対側に座っている脳内お花畑ガールを見つめているうちに、どうやら目的地に到着したようだ。ボックスカーは音一つなく停車する。絹旗は手にしていた映画の広告を仕舞いながら、仕事仲間に声をかける。
「今日は麦野も滝壺さんもいないんですから、くれぐもヘマはしないでくださいねフレンダ」
「オッケー、そんじゃあさっさと終わらせますか!」
二人の少女は目的地にゆっくりと歩を進める。
彼女たちに課せられた任務の内容はいたってシンプルだ。
場所は第二学区のとある研究施設。
任務は、そこに存在する不穏分子の殺害。
◇ ◇ ◇
その沈黙はどれくらい続いただろうか。
数秒、数分、もしかしたら十分以上経ったかもしれない。
そんな重い空気に耐えられなくなったのか峰岸は途中で逃げ出し、木原も退屈だと言って去っていった。
そんな痛いとも感じれるほどの沈黙を破ったのは、やはりミレイ=セイヴェルンだった。
彼は珍しく、本当に珍しくその顔に笑みを浮かべ雲川に告げる。
「あーハイハイ、分かったよ認める。確かにあの事件に巻き込んだのは本当だよ。アンタの推測道理だ」
彼の発せられた言葉によって店内に充満する殺気が倍に増加するが彼はひるまずに話を進める。
「でも勘違いはすんなよ雲川先輩。さすがの俺もカミやん先輩があの爆発を打ち消しに戻ってくるとは思わなかったんだ。正直、
既に彼の言葉からは敬語は消えており、先輩というよりも親しい友人と話すかのように少年は語り続ける。
「いやー本当に計算外だったよ。あそこまででたらめなもんかねえ、『ヒーロー』って奴は」
「・・・目的はなんだ、あいつをあの場に引き込んだ目的は」
「うーん、アンタが気にすることじゃあないと思うぜ。俺はアレイスターと違って、あの右手にはそこまで執着していねえし」
「質問に答えろ」
再び高まった殺気に、ミレイはめんどくさそうに顔を上げる。
雲顔は言外にこう告げていた。
次ごまかしたら殺す、と。
(うーむ、そろそろヤバいな。けど本当の事は言えねぇしなあ・・・・・・そうだ、あれを使うか・・・)
「先輩、いいものあげますからこれで勘弁してくれません?」
「ふざけてんのかお前は、私が物につられる訳ない―――ッ!?」
ミレイが不意にカバンから取り出した物に雲川の言葉が詰まる。
彼の手には―――
―――
「お、お前ッ!!なんだこの写真は!?わ、私がこんな物に―――」
「おや、一枚じゃ足りませんか?そんじゃあ・・・」
「待て待て待て待て!!カバンをひっくり返すな!というかお前どれだけの枚数カバンに入れているんだ!!」
バサバサと、逆さまになったカバンの中から数十枚もの、上条当麻の写真がファミレスのテーブルに降り注ぐ。
「さあ、これで全部ですけど。上条当麻の完全なプライベート写真、合計45枚!これなら満足でしょ?」
「・・・・・・・・・ハ、ハッハッハ。どうやらお前はよっぽど私を低く見ているらしいな。何枚出されようと私は―――」
口では平静を装っているが、目は相変わらずテーブルに広がっている写真に釘付けになっている雲川。そして―――
「あ、実は風呂上がりの写真もあるんですが」
「それを早く言え」
(相変わらずチョロイな)
―――交渉はあっという間に成立した。
◇ ◇ ◇
「はい、ドッカーン!!」
そんな陽気な掛け声とともに、フレンダは自らが仕掛けた爆弾を起爆する。凄まじい爆発音とともに一瞬で何十人もの人間を葬る凶悪な爆風が吹き荒れ、研究所を徹底的にに破壊していく。
彼女はその光景を満足げに眺めると、組織から支給された通信機を弄びながら己の戦果を報告する。
「絹旗~、こっちはもう終わった。そっちは?」
『・・・フレンダ、あなたの耳は超節穴ですか。さっきから銃声が響きまくってんでしょう、絶賛戦闘中ですよ。その様子だとそちらは終わりましたか?』
「もっちろーん!結局、ここの研究所の機材はぜーんぶ真っ黒焦げにしてってやったって訳よ!」
『あーハイハイ分かりましたよ、それじゃあ早くこっちに来てください。そろそろうるさい連中を黙らせましょう』
「ラジャー!」
威勢のいい声を張り上げたフレンダは、絹旗が戦闘を続けている場所に向かう。
まだ見ぬ獲物をどのようにいたぶるか、頭の中でシュミレーションをしながら―――
(うっ・・・、なんだか超胸騒ぎが・・・・・・。フレンダ、ヘマしてませんよね・・・?)
その頃、突如脳裏に浮かんだ嫌な予感に絹旗最愛はブルリとその小柄な体を震わせていた。
彼女は特別カンが働く方ではないのだが、今回はなんだが物凄く嫌な予感がする。なんせ一緒にいるのは、「アイテム」のトラブルメーカであるフレンダなのだ。彼女ならどんなヘマをしても可笑しくない、と判断した絹旗は早急に事を片付けるべきと判断する。
・・・・・・判断したのだが、その判断は少し遅すぎたようである。
「さて、それでは―――」
「いやっほー絹旗、調子どう?」
(・・・、遅かった・・・・・・!!)
全くもって場違いなテンションでその場に出てきた同僚に、絹旗は思わず頭を抱えそうになるが、何とかこらえる。
なんだかんだいってフレンダもプロだ。ここに来てそうそうヘマなんてしないだろう。絹旗がそう自分に必死に言い聞かせていると、フレンダが問いかけてきた。
「ていうか、なんかすごいことになってるね?」
「別に大したことじゃないですよ、これくらい」
そう告げる彼女の周りには何十、何百もの弾痕が存在しており、彼女たちが会話しているこの瞬間にも無数の弾丸が絹旗に向けて放たれていた。そんな状況下にいながらも彼女がハチの巣にならないのは、彼女の能力が深く関係している。
彼女の能力、『
「さて、そんじゃあ今度こそ片付けますか」
「はい、というわけでドーン!!」
「はあ・・・、ちょっとフレンダ!?何やって―――」
絹旗はフレンダが起こした次の行動に、おもわず息をのむ。
絹旗がやった事はいたってシンプル。
所持していた大量の手りゅう弾を敵に向かって投げたのだ。
手りゅう弾には、大きく分けて二つの種類がある。
一つは爆風の効果で狭い範囲を攻撃する
そして―――、
「あんのッ・・・!?こんな狭い部屋で
同僚の奇行に焦った絹旗が
「さて、フレンダ。遺書は書きましたか?家族に遺言は残しましたか?それじゃあ、超くたばってください」
「待って待って絹旗!?結局、さすがの私も能力使われながらチョークスリーパー決められたら窒息死しちゃう!!」
「ア―アーナ二イッテルノカワカラナイ」
「ギニャアァァァッ!??!」
数分後、研究所のとある一室に少女の断末魔が鳴り響いたという。
こんにちは、月海豚です。
はい、というわけで今回は雲川さんとの対談と、フレンダの戦闘シーンをメインに書きました。じつはとあるシリーズの中で雲川姉妹が一番好きだったりします。いずれ妹の方も出せたらいいなあ・・・。
そしてタイトルにも書きましたが、新キャラの見せ場が全くなし!恐らく次の話では大暴れするかと・・・。
自分の写真が大量に売りさばかれているという事実を、とある少年は知る由もない。